ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚
- KADOKAWA (2020年1月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041083260
作品紹介・あらすじ
英国怪談の第一人者であり、古典に精通する著者が、英国・アイルランドの奇妙な物語を厳選して紹介。人の死を予言する屍蝋燭や音声妖怪、黒い犬の話、海の妖精。衒学的な怖さとユーモアに満ちた奇想天外な随筆集。
感想・レビュー・書評
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17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚を、紹介する随筆集。
雑誌「幽」に連載された作品を改稿している。
全18話。文字と挿絵は紫色で統一。
自らを“吾輩”と称し、7世紀~20世紀初頭の好事家の如くの
口調で語る、英国怪異譚中心の随筆です。
「幽」の読者を対象にした随筆と作品紹介なだけに、
マニアックで専門用語をちりばめていますが、
純粋に怪奇譚として楽しむのには、興味深い内容でもあります。
幽霊、魔所、異人への偏見と恐怖、宗教、地獄、古き神々、
ファム・ファタル、妖精、さわりの木、屍蝋燭等を語り、
加えて、そこはかとなく翻訳家の矜持を示しているのも、良い。
特に、バラッドとロバート・バーンズのタム・オ・シャンタが
楽しめました。「モンティパイソン」でロバート・バーンズの
パロディを観て興味を持った過去が懐かしいなぁ。
知らない&名前だけは知ってる作家や詩人の紹介は、
更なる英国怪異譚の世界を広げてくれました。
あとがきの「幽」の思い出も楽しかったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初は本文の間にある編者の解説がうっとうしかったが、慣れてきたらそう悪くないと感じるようになった。集められた作品は基本的に好みのものが多くて気持ちが休まる。
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雑誌「幽」に連載していた随筆をまとめたもの。イギリス17世紀~20世紀初頭の民間伝承や文学作品を、テーマに沿って気ままに紹介してくれる読み物。
随筆そのものの語り口といい、紹介される作品達に合わせた装丁のデザイン、特に本文のデザインが雰囲気にマッチしていて秀逸。フォントの選び方からレイアウト、紫のインクで刷ってる文字から漂う香気。目で楽しめて読んで楽しい一冊です。 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1342366 -
怪異譚と銘打ってあるけど、南條先生のエッセイが半分を占めている。
とはいえ、紹介する作品についての知識や時代背景、作者などにも言及していて、また背景を知らないと南のこっちゃ!という作品もあるので、勉強にもなった。
キリスト教世界に身をおかない日本人にはわかりにくいところもやはりあるので…。
詩やバラッドだと怪異と一見結び付かんですし。
古い古いケルトやらの雰囲気を匂わせた幻想的なものや、死のにおいが色濃い陰鬱なもの、霊的なものを証明するために集めた実話怪談など、いろいろな怪異譚も楽しめて、南條先生のエッセイ・解説付きというお得な一冊?
個人的なお気に入りは「地獄の門」と「老水夫行」。
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はじめにタイトル、取り寄せてみたら装丁でがっちり心をつかまれた。カバーにはおさえたパールの光沢と金の箔押し。怪しく繊細なイラスト。紫の字。手に取るとなんだか、猫脚のテーブルとチェア、アンティークのティーセットとケーキスタンドでティータイムとしゃれこんでいる気分になれる。
そして帯。わりとこだわらないタイプだけど、最近は外さずそのままにしておきたいものが増えた気がする。これも情報量とシックな味わいが素敵。
『幽』で連載していたという英国幽霊譚がテーマの随筆集。小説じゃなくても、別の回で言及した作品や著者にまた触れるということはよくあるから、連載がこうしてまとまった形で読めるのは嬉しいよね。こんなに綺麗な本になるならなおさら。
著者がその回ごとに色々な作品を紹介してくれるのだけど、掲載誌の影響もあってかユーモラスで軽快な調子で、読んでいながらにして聴いている感じになれるのがいい。おかげで出てくる作品みんな面白そうでとても気になる。著者基準でちょっと珍しいものを紹介するのが基本だから、メジャーどころはほぼ前提で、不案内な私には「そこも詳しく!」という気持ちもあるのだけど、その物足りなさを補って余りある充実ぶりだった。「地獄の門」とバラッドがとても気になる……特に「タム・オ・シャンタ」。おまけに話の導入やちょっとした小ネタに、芥川龍之介や尾崎翠、田山花袋がいたりする。『こおろぎ嬢』は読まねば。
『妖精についてのおはなし―新・妖精学入門―』で紹介されていたものも時々出てきてさらに嬉しい。「La Belle Dame Sans Merci」は「情け知らぬ美しい人」に一票だなあ。