- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041084236
作品紹介・あらすじ
さまざまな世界との対峙の仕方を描く、衝撃の短編集!
村田沙耶香ワールドの神髄を堪能できる4篇を収録。
■「丸の内魔法少女ミラクリーナ」
OLの茅ヶ崎リナは、日々降りかかってくる無理難題も、魔法のコンパクトでミラクリーナに“変身”し、妄想力を駆使して乗り切っている。そんなある日、元魔法少女仲間のレイコが、恋人の正志と喧嘩。よりを戻すためには「レイコの代わりに魔法少女になること」を条件に出すと、意外にも彼は魔法少女活動にのめり込んでいくが……。
■「秘密の花園」
「見ているだけでいいから」と同じ大学の早川君を1週間監禁することにした千佳。3食昼寝付きという千佳の提案に、彼は上から目線で渋々合意した。だが、千佳の真意は、小学3年生からの早川君への初恋に終止符を打つため、「生身の早川君がいかにくだらない男か」を目の当たりにし、自分の中の「幻想」を打ち砕くことにあった――。
■「無性教室」
髪はショートカット、化粧は禁止、一人称は「僕」でなければならない――。「性別」禁止の高校へ通うユートは、性別不明の同級生・セナに惹かれている。しかし女子であろう(と推測される)ユキから、近い将来、性別は「廃止」されると聞かされ、混乱する。どうしてもセナの性別が知りたくなるが、セナは詮索されるのを嫌がり……。
■「変容」
母親の介護が一段落し、40歳になって再び、近所のファミレスで働きはじめた真琴は、世の中から「怒り」という感情がなくなってきていること、また周囲の人々が当たり前のように使う「なもむ」という言葉も、その感情も知らないことに衝撃を受ける。その矢先、大学時代の親友から「精神のステージをあげていく交流会」に誘われるが……。
感想・レビュー・書評
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『人は見た目ではわからない。でも、本当はみんな鞄の中にそんな秘密を潜ませているのかもしれない』。
あなたは、通勤、通学の鞄の中にどんなものを入れているでしょうか?この質問の答えは男性と女性で大いに異なるような気がします。勝手な印象で恐縮ですが、男性は財布の他、いつのものかわからないレシートが適当に底に入っているだけ(それ、さてさての鞄やん!というツッコミが入りそうです(笑))というイメージ、その一方で女性の鞄にはさまざまなお化粧道具がビシッと入っている、そんなイメージがあります。
しかし、他人の鞄の中身を実際に見る機会などまずありません。人は当然にそれぞれの価値観の中に生きています。自分の部屋の中、自分のスマホの中、そして自分の鞄の中、そんなプライベートな場所はそれぞれの価値観が詰まった場所とも言えます。そこには、他人にはどうでもいいもの、でもその人にとっては宝のようなもの、そんなものが詰まっているのだと思います。”あなたの鞄の中身を見せてください!”、そんなテレビ番組があったらなかなかに面白そうではあります。
さて、ここに、見た目には『ごくごく普通の、少し浪費癖がありそうな三十代の女性会社員』が主人公となる作品があります。そんな女性の鞄の中には『秘密のコンパクト』がしまわれていると言います。『私の名前は茅ヶ崎リナ!小学校3年生のとき、魔法の国から不思議な動物ポムポムがやってきて、私にこの魔法のコンパクトをくれたの』と『魔法の力』を得た女性は、『コンパクトに向かって呪文を唱えれば、魔法少女ミラクリーナに大変身!』できると言います。
この作品は『今年で36歳になる私は、魔法少女を始めて27年目に突入する。まさか自分でもこんなことになるとは思っても見なかった』と今までを振り返る女性が主人公を務める物語。会社のトイレの個室に入り『キューティーチェンジ!ミラクルフラッシュ!』と叫ぶその先に『ミラクリーナに早変わり』する主人公の姿を見る物語。そしてそれは、そんな主人公が『大人になるということは、正義なんてどこにもないと気付いていくことなのかもしれない』と感じる瞬間を見る物語です。
『小学校3年生のとき、魔法の国から不思議な動物ポムポムがやってきて、私にこの魔法のコンパクトをくれたの』というのは主人公の茅ヶ崎リナ。そんなリナは、『コンパクトに向かって呪文を唱えれば、魔法少女ミラクリーナに大変身!』と説明します。『困った人をこっそり助けたり』、『闇魔法を使う悪い魔女の闇組織、ヴァンパイア・グロリアンの企みを阻止したり』というリナは、『今日も皆を笑顔にするために、ミラクリーナはがんばります!』と続けます…という『設定』で『魔法少女ごっこ』をしていた小学校時代を思うのは『今年で36歳に』なったリナ。しかし、そんなリナは『黒のセリーヌのバッグ』に入れた『ポムポム』という『ブタのぬいぐるみ』のことを思います。そんなリナは、『遅くなってごめんね、マジカルレイミー』と居酒屋で先に待っていたレイコに話しかけます。そんなリナに、『もうやめて…いつになったら許してくれんの』とレイコは返します。『小学校の時からの友達』というレイコの誘いで始まった『魔法少女ペア』、それを『今でも現役で続けているのは、私だけかもしれない』と思うリナ。『妄想するだけならだれに迷惑かけるわけでもなし、お金がかかるわけでもない』というリナは、会社で嫌なことがあった時などトイレ個室に入り『キューティーチェンジ!ミラクルフラッシュ!』と『ミラクリーナに早変わり』して危機を乗り切っています。そんなある日、『11時を過ぎたころ、レイコが暗い顔でやってき』ました。『上司と昼ご飯食べに行った』ことを『浮気だ』と騒いだ彼氏の正志に『スカート』をぼろぼろに切られ、『壁を殴』り続けられたというレイコの説明を聞いたリナは、取り敢えずレイコを泊まらせることにしました。結局、しばらくリナの元に留まることになったレイコ。そんな四日目のことでした。家に着くとドアの前に正志を見つけたリナ。そして、ドアから現れたレイコを見た正志は『レイコ、許してくれ、頼むよ!!』と大声を出し始めました。やむを得ず部屋に正志を入れたリナは、二人の話を聞くことにし、自分がレイコを守ろうと決めます。そんな中、『レイコを連れ戻すためなら何でもする』と泣き顔を見せた正志に、リナは一つの提案をします。『何でもやるって言ったわよね…じゃあ、魔法少女になりなさいよ』。そんな提案に半ばやけになった正志は『俺はやる!俺はマジカルレイミーになって、レイコへの愛を証明してみせる!』と宣言するのでした。そして、『ミラクリーナと二代目マジカルレイミーのパトロールがはじまった』という丸の内の『駅の平和を守る』日々が描かれていきます…という最初の短編〈丸の内魔法少女ミラクリーナ〉。冒頭から”村田沙耶香ワールド”どっぷりに浸れる絶品でした。
“さまざまな世界との対峙の仕方を描く、衝撃の短編集!村田沙耶香ワールドの神髄を堪能できる4篇を収録”と内容紹介にうたわれるこの作品。それぞれに繋がりのない四つの短編が内容紹介どおりの”村田沙耶香ワールド”にどっぷりと浸らせてくれます。村田さんの作品は、その書名だけでなく、表紙もかっ飛んだものが多いように思いますが、この作品も「丸の内魔法少女ミラクリーナ」という書名、そして二人の女性がコンパクトを手にした現代アートのような表紙に、否が応にもどんな世界が待ち受けているのか期待度MAXに心も踊ります。
では、まずは「小説 野生時代」に連載されたという四つの短編の内容をご紹介しましょう。
・〈丸の内魔法少女ミラクリーナ〉: 『魔法少女を始めて27年目に突入する』という『今年で36歳になる』茅ヶ崎リナが主人公。『皆の笑顔が、私にとっての最高のマジック』というリナは、友人のレイコが彼氏からDVを受けていることを知り匿います。しかし、そんなリナの部屋に彼氏の正志が訪ねてきて、レイコと三人での話し合いに。その場でリナは正志に、レイコを連れ戻したかったら『魔法少女になりなさい』と命じます。そして、丸の内の『平和を守る』活動が始まります。
・〈秘密の花園〉: 『駅前のコーヒーショップ』で、友人のナツキとお茶をする千佳は、『同じゼミの早川』に彼女の亜里沙から電話が繋がらないと怒っている話を聞きました。3LDKの実家で親の転勤のため一人暮らしをする千佳。そんな千佳は『私は、同じ大学の早川くんを監禁している』という状態にありました。『早川くんは大人しく、この鍵に閉じ込められている』と『銀色の鍵をそっと撫で』る千佳。そして、『ただいま』と帰った家で『早川くんの手錠を外し』ます。
・〈無性教室〉: 『トランスシャツとよばれるぴっちりとしたタンクトップ』『を着て胸がつぶれた状態に』した上から指定の制服を着たユートは家を後にします。『ユート、おはよう』と声をかけるのはユキ。そして『コウとミズキ、後ろからセナが三人で歩いて』きて合流した面々。そんな中、『トランスシャツで締め付けられている』セナの『身体がどうなっているのか』知りたいユート。『一人称は「僕」でなければならない』という、ユートの『学校では、「性別」が禁止されてい』ます。『本名は「優子」』というユート。
・〈変容〉: 夫の提案を受け、ファミレスで働き始めた真琴は、同僚で大学生の『高岡くんと雪崎さん』と過ごす時間を『心地よく感じるようにな』りました。そんなある日『そっちのミスだろうが!…』と怒鳴る男性客に頭を下げる高岡の姿に『えらいね…むっとした顔もしないで』と労う真琴に『むっとする…?』と『ぴんとこない様子の高岡。同じことが雪崎にも起こります。そんな二人は『怒る』というのは『昔の本』に出てくる感情で自分たちには理解できないと語ります。
いかがでしょうか?内容紹介に書かれた”さまざまな世界との対峙の仕方を描く”という感覚がどことなくお分かりいただけるかと思います。よく”ざらっとした感覚”という表現を聞きますがまさしくそんな雰囲気です。そんな四つの短編は二つに大別できるように感じました。それは、現実世界にもギリギリありそうなものと、間違いなく未来世界を描いていると思われるものです。
まずギリギリありそうに感じる前者ですが、一編目と二編目が該当します。その代表が36歳になっても『魔法少女』を続けるリナの物語でしょうか。『残業が終わってやっと帰ろうという時』、『今日中』にと書類を突きつけられたリナ。そんなリナは一旦トイレ個室に駆け込み、『キューティーチェンジ!ミラクルフラッシュ!』と叫び『ミラクリーナに早変わり』します。そして、自席に戻ったリナは『異様な集中力』で『仕事を仕上げ』てしまいます。そんなリナが友人のレイコの彼氏である正志に仲直りの条件として突きつける『魔法少女になりなさい』の先に描かれるのは壊れてゆく人間の物語。とても良くできた物語の中に痛快感溢れる作品です。『私は、同じ大学の早川くんを監禁している』という衝撃的なシチュエーションから展開する千佳の物語も展開のエグさはありますが、ギリギリ現実世界の物語です。ということで、これら二つの作品はリアルさを感じる分、自分の身近にもいるのではないか?という思いも感じさせるところに面白さがあると思いました。
一方で、三編目と四編目はどう考えても、少なくとも現代社会にはありえない感覚の物語です。『学校では、「性別」が禁止されてい』るために、性が判別できる身なりは禁止されているというユートの世界の物語は、昨今のSDGsの動きの中でこの国でも語られるようになったLGBTQの行き着く先の人間社会を表しているようにも感じます。『性』というものは何なのだろう、私たちは『性』なくしてどんな社会を生きていくのだろう、展開する強烈なシチュエーションにギョッとはしますが、どちらかと言うと”考えさせられる”物語がそこに描かれます。そして、『怒る』という感情は『教科書とか昔の本とかですごく出て』くるものであり、『学校で習ったんで辞書の上での意味はわかる』ものの『感覚』として理解できないという大学生を見て衝撃を受ける真琴の物語では、さらに”考えさせられる”度が増すのを感じました。『むっとする』という感情がないという時代、なんだか一見幸せなようにも感じますが、”喜怒哀楽”の四つの感情の一つが消失すると考えるとそこには薄ら寒さも感じます。これら二編は、こんな未来が来るのではないか?とそこはかとない不安を感じさせる面白さがあるように思いました。
四つの短編それぞれに個性が炸裂するこの短編集。短編集というと、残念ながらどんな傑作にも出来不出来が存在するものですが、この作品はどれもが傑作、よくここまで第一級の作品を揃えたものだ!と、出し惜しみの不要な村田さんの溢れる才能を改めて感じました。
そんな“さまざまな世界との対峙”を描く物語は、あくまで淡々と、当たり前のごとく描かれていきます。そこにあるのは、この世界への没入感のみ。そう、他のどこにもない唯一無二の”村田沙耶香ワールド”がそこに広がっています。そんな物語の中で、四人の主人公たちはそれぞれの気づきを得ていきます。そして、そんな奇妙奇天烈な物語世界にも関わらず、主人公たちと一緒に、なるほどと物語の前提を理解してしまっている自分がいることにも気付きます。
”たぶん、こういう魔法が誰の中にも眠っていて、私たちはいつでも誰でも魔法少女になれるんだ、とどこかで強く信じているのだと思います”と表題作を語る村田沙耶香さん。そんな村田さんの描く物語は、振り切った感覚世界の中にそれでもそこに人のドラマがあることを感じさせてくれるものでした。強烈なシチュエーションの先に待つ納得感のある結末を見る四つの短編が収録されたこの作品。もっと、もっと…と村田さんに求める感覚が麻痺していくのも感じるこの作品。圧倒的な表現力の世界に囚われて、戻ってこれなくなるのではないかと不安にもなるこの作品。
“クレイジー沙耶香”の極みを見る圧巻の物語。これぞ”村田沙耶香ワールド”を堪能できる絶品でした。 -
「信仰」を読んでいきなり地雷踏んでしまったので、その前に彼女のエッセイ勧められたのですが生憎借りられており「生命式」を読むにあたって耐性つけておこうと借りてきました。丸の内魔法少女。
4つの短編は次第に狂気度が増してゆく。何処まで耐えれるのだろうとモビルスーツに乗込む。
まずは、レベル1に入る。あっタイトルは魔法少女どうたらだったような、まっ気にしないでください。すぐに忘れちゃうから、もうなんだっていいんです。36歳になってもマジカルチェンジして、なんたらとゆう悪の組織から平穏を守って社会に溶け込もうとするリーナ。残業したり、道案内したり、もう消しまくって都合の良い世界にしちゃってください。
でも、安心して決してあなた一人で戦ってるんじゃない。私も、キューティクルハニーとしてシラガーと戦ってました。必殺技はメラニンフラッシュ、敵はイラガーとストレス、ラスボスのエンケーダツモーは強かったww
ある日、アンダーヘアにもシラガーが潜んでいるのを見つけたときは血の気が引いたけど・・
レベル2はなんだったけ、あっ初恋の相手を監禁するとか、リアルな奴を見て忘れ去り、新しい自分を生きるために、
そんな話、古典にもあったような、想いを寄せる姫を忘れられず、なんとか嫌いになろうと彼女のウンチを盗んで見るとか臭いまで嗅いで・・
そんな気持ちって、げぬへばって気がした。
最上級は、もげぬへばっw
意味は猟奇的な興奮とかそんな感覚w
レベル3で、性別意識しないでコミニュケーションするため互いの性を隠して教育を受けるとかっw
うハァ、げぬへば(((o(*゚▽゚*)o)))♡ってきたぁあゝ
最後に、レベル4、怒りのないことに怒ってたってゼネギャップしてて異世代間交流のための何かツールが欲しくなる。
例えば尻尾とか耳のようなもの。ツッんと立ててったら嬉しいとか、垂れてたら敵意はないとか判るもの。
ぐるぐる回ってたら、おとといきやがれこのスットコドッコイとか。
七色のペンライトとか振って感情を表現しても良いかもしれない。パリピ孔明っポくw
なんかドカーンって思いっきり殴られた感じです。
親父にも殴られたことないのにぃ!
マインドコントローラーのゲージは振り切れてしまった
「まむまぬんでら」って新しい概念が誕生する瞬間は、創造神により得体の知れないヌルヌルが産み落とされ、やがて世界は漆黒の闇に染まっていくとか中2病っぽい瞬間に立ち会ったような。らまーずな気分になってしまいました。
村田沙耶香は破壊神なのか創造神ナノカ、もげぬへばw
魔沼ぬんでらヌルらまーず、きっと天地の始まりに神はそんな言葉を唱えたに違いない。 -
まみまぬんでらだった。
この本、凄くまみまぬんでらだった。
友達とある人の悪口を言っていた時、
凄くまみまぬんでらだった。
その時ある人は、1人、
とり残されて凛と咲いていた。
恋愛小説のことが凄く好きな子を見ている時も、
お菓子をたくさん食べた時も、
大好きなぬいぐるみといる時も、
まみまぬんでらだった。
凄く、
まみまぬんでらだった。
ああ、そうだったのか。
今まで感じてきた
この感情は
まみまぬんでらだったんだ
「まみまぬんでら」という言葉が
出てくるまで私は、五十川さん側だった。
「なごむ」では、まだわからなかった。
まみまぬんでら、まみまぬんでら、
すごくしっくりくる。
この作品は短編集。
そして、上の文は「変容」という話。
他の話が衝撃的すぎて、
題名になっている
「丸の内魔法少女ミラクリーナ」
が日常的というか、普通の話のように感じられた。
「無性教室」という話が好きかな。
この話は、文章だけだからだろうか、
凄く生々しかった。
決して、
友達にすすめれるような作品ではないが
(すすめたけど)
面白かった。
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みどりのハイソックスの女さん
はじめまして。
いつも楽しみに読ませていただいております。
ネタバレが掛かっているので、コメントを書こうか...みどりのハイソックスの女さん
はじめまして。
いつも楽しみに読ませていただいております。
ネタバレが掛かっているので、コメントを書こうか迷ったのですが、何か、みどりのハイソックスの女さんが、新しい扉を開いていく過程を目の当たりにして、私もすごく新鮮な気持ちにさせられたので、その感謝の思いを書きたくて。
それから、私の、日の当たらなかった過去の感想に、いいねを下さり、ありがとうございます(^-^)2022/03/01
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さまざまな世界との対峙の仕方を描く、衝撃の短編集。
新しい一面を見てしまった…
村田沙耶香先生の魅力が止まらない。底知れない… もっと他の作品も読みたくなる。 -
魔法少女:日常に妄想をちりばめ人生楽しく。善意の押し付けの正義は要らない。
秘密の花園:初恋の消滅の仕方は監禁。
無性教室:性別禁止の高校。禁止じゃなく性別に囚われない生き方が良い。 -
表題作は正直に言うと、私の知っている村田沙耶香さんじゃないと感じた。変わった設定だけれども、理解のできる範疇なので。魔法少女といえば「地球星人」で、もっととんでもないものを期待してしまった。
しかし、秘密の花園、無性教室、変容と読み進めるにつれて、村田沙耶香さんの世界観に痺れてしまう。長編小説に比べてしまうと物足りないところもあるのだけど、こっちの日常が変なではと思えてくるのは本当にすごい。
特に「変容」。なんとかホームパーティやら、まみまぬんでらやら、言葉や表現は奇抜に感じる。でも、人間の性格にも流行があり、そしてそれは誰かに作られているって、フィクションではないのでは?という気になってくる。
恋をしない結婚しない子供を産まない若者。子供を産み育てることこそが人生の全てという諸先輩方。その流行ってどこから来たんだろう。
「本当に怖いのは、世界に喋らされている言葉を、自分の言葉だと思ってしまうことだ。」とあったのは「地球星人」。
世界に喋らされている変容の人物たち、世界に抗っているのは無性教室の高校生たちとミラクリーナ。
自分はどっちなんだろう。どっちでいたいのだろう。 -
村田沙耶香さん2作目です。
『殺人出産』に比べると、平和でどこかにありそうな設定だと感じていましたが、後半の方の編はかなりぶっ飛んだ設定でした。
特に最終編の「変容」はゾッとしました。感情がトレンド化されていて、「怒り」の感情を持たないのがスタンダードになったという設定です。
怒りっぽい、何にでも怒るのは嫌ですし、優しく寛容でありたいとは思いますが、ムッとしたりイラついたりすること自体が時代遅れになるのは、さすがに怖いです。
「流行りの感情」というフレーズも出てきて、気味が悪く感じる一方、時代錯誤な態度とされるものは実際にあるしな、とザワザワした気分になりました。
他の編は割とスカッとする終わり方で、価値観に向き合う村田ワールドの姿勢を崩さずに、楽しく読み終えられました。 -
はじめて村田沙耶香さんの作品を読んだ。
日常でありそう、、?なシチュエーションを盛ったような話(丸の内魔法少女ミラクリーナ)もあれば、SF感強めな話もあり、バリエーションに富んでいて飽きずに読めた。
他の作品も少しだけ違うけど今を風刺したような世界を感じるものが多く面白そうなので気になる。 -
まさに村田ワールド全開です。
一つ一つの話が、世間一般の価値観とかけ離れたストーリーです。村田さんの作品によく出てくるテーマが性の価値観です。何で結婚しないといけないのかとか何でパートナーがいないと妊娠・結婚できないのかなど、そういったテーマをちょっとクレイジーなストーリーとしてはめ込んでいく。村田ワールド入門書としてオススメです。
実際食べるとなると、毒が入っていて不味そうな気もしますが、中毒性がありそう。
さてさてさんは、長文なので、自分にとってはハー...
実際食べるとなると、毒が入っていて不味そうな気もしますが、中毒性がありそう。
さてさてさんは、長文なので、自分にとってはハードルの高い感想です。が、とてもいいことを書いていただいているので、たまに覗かせていただきます。
これは、面白かったです。村田沙耶香さんの持ち味がそのまま活かされている感じ、村田さんだからこその物...
これは、面白かったです。村田沙耶香さんの持ち味がそのまま活かされている感じ、村田さんだからこその物語を堪能させていただきました。
三年前に読書&レビューを始めた時は、読書した翌朝に大慌てで書いていたので長くなることもなかったのですが、今の長さは貯めて書くようになった弊害ですね。文字数無制限のブクログさんの太っ腹ぶりに感謝しています。
みどりのハイソックスさんのレビューでは、私も読んだ「あの日の交換日記」の視点になるほどと感じました。さまざまな属性の方が集うブクログの良さですね。ありがとうございます。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします!