明日の僕に風が吹く

著者 :
  • KADOKAWA
3.86
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本棚登録 : 361
感想 : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084243

作品紹介・あらすじ

医師を目指していた有人はアレルギー発作を起こした転校生を助けようとして失敗してしまう。心に傷を負った有人は叔父の勧めで北海道の離島にある高校に通うことに。だが、そこは何もかもが東京とは違っていて……。

感想・レビュー・書評

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  • さわやかな青春小説でした。
    最後までネタバレで全部書いています。

    飛行機でドクターコールに応えて仕事をする医師の叔父の川嶋雅彦に憧れた14歳川嶋有人は叔父と同じように体育館でアナフィラキシーショックで倒れたクラスメイトを助けようとして失敗したことから引きこもりになります。

    そんな有人が叔父の雅彦が勤める北海道の離島である照羽尻島の高校へ1年遅れで入学することになります。
    離島で任期の1年を過ぎ七年間過ごした叔父はもはや島の神様のような存在でした。

    離島の高校に入学して二人の同級生、誠と桃花、二人の先輩陽樹と涼ともうちとけてきた頃、叔父が突然本土に戻り、癌で亡くなってしまいます。
    その後後任の星澤医師が一カ月もたたないうちに退職します。

    そして叔父の学生だった柏木から送られてきた草稿を見て、有人は自分が叔父から患者とみられていたことにショックを受けます。

    でも、正月に漁師である誠の父の船に乗って誠と一緒に船酔いに苦しみながらも御来光を見ます。

    誠は言います。
    「それでも、こうなったら命懸けでも船出すって決めてるのが俺にはひとつだけある。誰かが沖に出なきゃ親父やおふくろや桃花やおまえが絶対死ぬってとき」
    そして誠の父。
    「本気でいっとうきれいな夜明けが見たいんだったら、自分から動いていかなきゃならねえんだ。待つもんじゃねえ。進んだ先にあるもんなんだよ」

    そして有人に草稿が渡ったことに気付いた柏木が叔父の本当の気持ちを語った、音源を送ってくれたのを誠に言われて聴いて、本当の叔父の気持ちを知ります。

    そして有人は島に訪れた観光客がアナフィラキシーショックを起こしているのに気づき救ったことによって再び叔父と同じ道への憧れを募らせ、東京の医学部進学コースのある高校を受験する決意をして島を出て行きます。

    もしもいつか叔父さんみたいに医師になれたら。
    僕は。
    僕は必ずもう一度…。

    とてもいい話でした。
    最近ミステリーばかり続いたので癒されました。
    有人には是非、医師になって島に戻ってきてもらい、涼先輩とうまくいくといいなと思いました。

  • クラスメイトを助けようと、勇気を出し思い切ってしたことが、裏目に出てしまい、それが元で有人は不登校に。そして引きこもってしまう。
    これは青春の成長物語。私には若すぎる(お話)かな、と思ったのに、読むごとに有人のありのままの心情描写が伝わってきて、ラストには涙ものだった。
    あの日さえ、過去から消えれば。あの日さえなければ。
    そう思ったって過去は変えられない。それがあったから今の自分がいるわけで。どこかにそんな思いを抱えているからか感情移入してしまった。
    未来なんかもうないって、今自分は奈落の底だ、と嘆く有人。その後また困難な道に入り込めば、またここも奈落の底だ。って、いつまで嘆いてるの?まだ十代、人生序盤だよ!と叱咤しながら読む。有人を叱咤しながら自分に喝を入れた。
    北海道の離島照羽尻島。青い空、青い海、美味しそうな海の幸、四人の仲間、人生の師叔父さん(医師)、島の人々。情景が浮かんできそう。恥ずかしながら「ウトウの帰巣」も初めて知った。
    最初は良い所しか見えてなかった過疎の島での暮らしだったが、いちいち人に関心を持つ島の人々に嫌気がさす。あることが元で憧れの叔父にも猜疑心がわく。
    仲間4人にも色々あって。人には自分にはわからない事情や気持ちがあり、そうやって人と関わることで成長できると有人は実感していく。叔父の愛情が最後にわかるところは泣けた。
    意気地がなくぼんやりとした学生生活を過ごした私には、有人を通して過去の自分と向き合うことともなった。名言がたくさんありすぎて書けない。
    「動け」
    「前に進むときに感じるのは、必ず向かい風だ」

  • ★3.5

    川嶋有人は離島の診療所に勤める叔父に憧れ、自らも医師を目指していた。
    だが、重度のアレルギー発作を起こした転入生を助けようとして失敗し、
    彼女には障害が残ってしまう。
    罪悪感と絶望に押しつぶされた有人は、
    引きこもりの日々を過ごしてきたが、
    叔父の勧めにより北海道の離島・照羽尻島で暮らすことになる。
    この島は「海鳥の楽園」と呼ばれていて、
    高校の全校生徒はたったの5人―島生まれの誠と涼先輩、
    有人と同じ“訳あり”で島外から来ている桃花とハル先輩だった。
    島の生活に戸惑い、時に反発しながらも、有人は徐々に前を向き始める。
    だが、突然の別れと残酷な真実が降りかかり…。


    叔父に憧れ、医者を夢見る中学二年の有人が、
    同級生を助けようとして失敗し、不登校の引きこもりになる。
    叔父の勧めで北海道の離島の高校に入学することに。
    東京とは全く違う、閉鎖的だが濃密な人間関係の島での
    暮らしに戸惑いながらも、少しずつ生きる力を取り戻していく。

    うじうじとなかなか前を向けない有人がとてももどかしく
    感じられましたが、ありきたりのストーリーにせず、
    途中で一ひねりも二ひねりもあり、飽きさせられなかった。
    もどかしく苛々してたのに…有人が一歩踏み出した時には、
    ウルッとしました。

    大人でもウジウジしてしまいます。
    天気と過去は変えられない。でも過去をどう思うかは変えられる。
    とても素晴らしい言葉でした。
    そして、十年後の自分を想像して今を振り返ってみたいです。

  • 人命救助した叔父に憧れ医者を目指す中学生・川嶋有人。転校生の女子を助けようとするがうまくいかず、その女子は軽い障害を負ってしまった。そのことで周りからいじめを受け、引きこもってしまう。叔父は自分が勤務する北海道の離島に有人を誘う。有人はそこで新しい高校生活が始まった。東京とは違う生活、島民との距離感、次第に慣れてゆくが、突然叔父が亡くなり、叔父を疑いたくなる文章を目にすることになりまた心が乱れ…。
    有人の心の様子が痛いほど伝わる。転校してから、地域の親密度の違い、学校の仲間との距離感での戸惑いが。そして高校の仲間たちの熱い心も、そして鳥たちが舞う空も。動け、と自分自身にもエールをもらったよう。読後感良しで、前向きになる青春小説、満足。

  • 中学二年生の時に『取り返しのつかない』ことを犯して引きこもってしまった有人。16歳の時に叔父の奨めで叔父が勤務する北海道の離島・照羽尻島の高校に一年遅れで入学することにする。
    そこで始まったのは東京とは正反対の生活だった。

    途中までは有人にあまり共感も好感も持てなかった。
    医者の息子で医者になりたいという夢は持ちながら、その原点は航空機内で具合の悪くなった人をヒーローのごとく救った叔父の姿であって、患者や病気に向いているわけではない。それは子供の視点から見ればとても格好良く見えただろうし叔父の姿に憧れるのは悪いことではないのだが、中学二年生の時の『取り返しのつかない』ことの後、有人は自分の失態を恥じ同級生たちからの視線を辛く思うばかりで、肝心の自分が仕出かしたことの相手の状態を心配する様子がない。

    そちらは両親に任せきりで自分は部屋に閉じこもり、可哀想な自分に浸っている。
    安易な生兵法で、下手したら相手は死んでいたかもしれないことに対しての反省もなく、アッサリと医師の夢を諦めてしまう。
    これでは同級生の『川嶋くんがお医者さんになるとか、すごく怖くない?』という痛い言葉も仕方ないのかなと思ってしまう。

    と、かなり厳しい言葉を書いてしまったが、人はそれぞれ、性格も物事の受け入れ方も違う。多分、自分以外のものに目を向けられないくらい、有人の器は小さくなっているのだろう。第一、有人は14歳のまま時が止まってしまっているのだから。

    島の人たち、特に同じ高校の生徒(といっても有人を入れて5人しかいない)たちが良い。
    島育ちの二人と島外からきた二人、それぞれの立場や経験、性格も含めた様々な視点で有人を見つめている。
    またあまり目立たないが、兄の存在も良い。最初は軽いのかと思っていたが、有人から返事が返って来なくとも言葉を投げ掛け続ける姿は頼もしかった。
    離島ならではの濃厚さ煩わしさ厳しさも含めての生活は有人にどんな刺激と変化を与えてくれるのかと思いつつ読み進めた。

    中盤、有人の環境を激変させた叔父が突然亡くなってしまうという驚きの展開が起こる。
    なぜ有人に何も言わずに島を去ったのか、その訳はすぐに分かるのだが有人の気持ちを考えると何とも切ない。さらにその直後、叔父の見方を一変させる出来事があり有人は揺れ動く。

    それにしても登場する少女たちは強い。
    有人が『取り返しのつかない』ことをしたと思い込んでいた相手・道下も、旅館の娘・涼も、有人同様、訳ありで島外からやって来た桃花もしっかり地に足つけて先を見ている。
    一方で研究者肌で我道を行くタイプのハル先輩も、漁師の息子で直球タイプの誠も誠の父も、強そうで不安を抱えている部分もある。でもそこも人間味があって良い。

    最後に有人にこんな場面を用意してくれるなんて、乾さんはやっぱり上手い。
    『過去は変えられねーんだ』『でも、過去をどう思うかってのは変えられるよな、今の自分で』
    まだまだ自分に甘い部分がありそうな有人ではあるが、そんな自分を自覚したからこその新たな一歩への選択。
    有人の時間は再び動き始めた。
    『未来の自分』をようやく考えられるようになって良かった。

    • やまさん
      fukuさん
      こんにちは
      いいね!有難う御座います。
      朝方は、すごい雨でしたが、いまは☼/☁です。
      やま
      fukuさん
      こんにちは
      いいね!有難う御座います。
      朝方は、すごい雨でしたが、いまは☼/☁です。
      やま
      2019/11/11
  • 少年の成長を描いた青春小説。

    とある事件で引きこもりになった有人くん。
    医師である叔父さんと離島での生活で少しづつ変化していく。

    「未来の自分を想像してみないか」
    叔父さんからの言葉の真意が最後に分かり...

    とてもいいお話でした(o^^o)

  • 未来を変えてみないか?

    天気と過去は変えられない!

    この言葉が良いなぁと思った。


    誰にでも消してしまいたい過去、やり直したい失敗がある。
    何度も何度も、あの時こうなっていたら…、あんなことやらなければよかった…、でも、ああするしかなかったんだ…、堂々巡りの自問自答が続く。
    時には、あいつが全部悪いんだ、あの人がいなければ上手くいったのに…と悪者探しをしてしまう。
    そんなことをしても、現実はちょこっとも変わらないのにね。

    未来を変えてみないか?
    こんな一言が、今の自分に一歩前へ進むきっかけを与えてくれる。
    それでも、未来を考える時、縁を切ったはずの人たち、諦めたはずの針路、蓋をしてなかったことにしていた過去の自分と向き合わなければならないと思うと…動けなくなる。

    天気と過去は変えられない!
    考えても何にもならない!
    過去は変えられないけど、これからの未来は変えられるんだ!
    どんな失敗も、未来のための糧になってるんだよ。きっと。
    こんな風に、一歩ずつ進む勇気をくれる言葉だ。

  • 主人公川嶋有人の挫折と再生の物語である。医者の家系に育った有人であったが、叔父の医師としての姿勢にあこがれを抱いていたが、学校での自分の判断ミスによって道下さんに障害を残したと思いつめ自分を責め、その後のいじめにもよって引きこもりになってしまう。叔父の薦めによって北海道の離島照羽尻島の高校に転入することによる四人の友との邂逅そして叔父との永遠の別れによって再生していく有人。そしてエピペンで始まった物語はエピペンで閉じることに。自分の未来を見出した有人は医師を目指すことに、この島に帰って来いよ有人。久々に読む青春小説という感じだった。

  • 2020.1.3.読了
    両親が医師で将来自分も医師になりたいと漠然と思っていた川嶋有人。中学2年生の時、クラスメイトを助けようとしたことが裏目にで、救うどころか相手はかえって重症になってしまいその心の傷から学校に行けなくなってしまう。そんな有人を優しく見守っていたやはり医師である叔父の勧めに不承不承したがって北海道の離島の高校に進学する。いろいろ体験するなか、少しずつ成長していく有人の姿が描かれていく。

    中学生が希望を持てるストーリーでそこはとても良かった。ただ、有人が不登校になったきっかけの事件だが、級友がいじめやからかい?のネタにするのは仕方ないかも知れず、今の情勢を思うと納得できるが、親や先生まで有人を責めることなのか、そこは疑問に思った。頑なな有人の心を溶かしていく叔父の存在がとても素敵で、尊敬できた。

  • 中学生にとってクラスメイトの前で吐いてしまうなんて、本当に最低最悪だ。しかもそれまで「医者の息子」としてヒトより医療に詳しいとみられていた自分が、それを期待されている状況でなら、特に。
    両親が医者であり、同じように医者である叔父に対するあこがれから自分も同じ道を進むことを疑っていなかった主人公が「失敗」によって引きこもり、進学もままならない。兄は順調に医学部への進学を果たしている。これはもうどうしようもなく辛い。

    そんな自分を引っ張り上げて外へと連れ出してくれた憧れの叔父。離島で診療所に勤める叔父との同居と高校進学が有人に与えてくれたもの。
    大自然と共に生きる人たち。都会とは全く違う対人関係、そして距離。
    生きること、そう、人と、そして自然と共に生きること、その大きさに少しずつほぐれていく有人の日々が心地よい。なのに…
    例えば、クラスメイトの前での失態なら、その仲間から離れてしまえばいつかは薄れていく傷である。だけど、自分にとって最後の最後の砦である理解者に裏切られていた、という「真実」を突きつけられたら…しかもそれを質すこともできないとなったら…自分を支えていたすべてが崩れ去ってしまうだろう。有人の絶望を思うと心が張り裂けそうだ。

    あきらめるな、とか、立ち直れ、とか軽々しく言ってくれるな。
    時が満ちるまで、自分の中で何かが変わるまで、そして誰かの思いが届くまで、倒れたままでいいんだ。
    その時、きっと風の形が見えるから。

    心に灯がともる一冊。

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著者プロフィール

乾ルカ

1970年北海道生まれ。2006年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。10年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『わたしの忘れ物』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆した。近著に『明日の僕に風が吹く』『龍神の子どもたち』がある。

「2021年 『おまえなんかに会いたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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