- 本 ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041084243
作品紹介・あらすじ
たったひとつの失敗で夢と居場所を失くし、ずっとうちひしがれていた。
強い風に海鳥舞う北海道の離島との出会いが、少年を救い新たな試練を与える。
中学二年生の頃、医師を目指していた川嶋有人は、重度のアレルギー発作を起こした転校生を助けようとするが失敗し、軽度の障がいを負わせてしまう。それ以来、夢も未来も失ったと引きこもっていた有人だったが、憧れの叔父・雅彦の勧めにより、彼が医師として勤める北海道の離島・照羽尻島の高校に入学することに。「海鳥の楽園」と呼ばれるその島の高校の全校生徒は、有人を含めてたったの5人。待っていたのは島男子の誠、可愛くて優しい涼先輩、ある事情により札幌を離れた桃花、鳥類学者を目指すハル先輩など個性ある級友たちだった。東京とは何もかもが違う離島での生活に戸惑いながらも、有人は少しずつ自信を取り戻し始める。しかし、突然の別れと残酷な真実が有人に降りかかり……。
熱い涙なしでは読めない、明日へ踏み出す勇気をくれる感動の物語!
感想・レビュー・書評
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クラスメイトを助けようと、勇気を出し思い切ってしたことが、裏目に出てしまい、それが元で有人は不登校に。そして引きこもってしまう。
これは青春の成長物語。私には若すぎる(お話)かな、と思ったのに、読むごとに有人のありのままの心情描写が伝わってきて、ラストには涙ものだった。
あの日さえ、過去から消えれば。あの日さえなければ。
そう思ったって過去は変えられない。それがあったから今の自分がいるわけで。どこかにそんな思いを抱えているからか感情移入してしまった。
未来なんかもうないって、今自分は奈落の底だ、と嘆く有人。その後また困難な道に入り込めば、またここも奈落の底だ。って、いつまで嘆いてるの?まだ十代、人生序盤だよ!と叱咤しながら読む。有人を叱咤しながら自分に喝を入れた。
北海道の離島照羽尻島。青い空、青い海、美味しそうな海の幸、四人の仲間、人生の師叔父さん(医師)、島の人々。情景が浮かんできそう。恥ずかしながら「ウトウの帰巣」も初めて知った。
最初は良い所しか見えてなかった過疎の島での暮らしだったが、いちいち人に関心を持つ島の人々に嫌気がさす。あることが元で憧れの叔父にも猜疑心がわく。
仲間4人にも色々あって。人には自分にはわからない事情や気持ちがあり、そうやって人と関わることで成長できると有人は実感していく。叔父の愛情が最後にわかるところは泣けた。
意気地がなくぼんやりとした学生生活を過ごした私には、有人を通して過去の自分と向き合うことともなった。名言がたくさんありすぎて書けない。
「動け」
「前に進むときに感じるのは、必ず向かい風だ」 -
中学二年生の時に『取り返しのつかない』ことを犯して引きこもってしまった有人。16歳の時に叔父の奨めで叔父が勤務する北海道の離島・照羽尻島の高校に一年遅れで入学することにする。
そこで始まったのは東京とは正反対の生活だった。
途中までは有人にあまり共感も好感も持てなかった。
医者の息子で医者になりたいという夢は持ちながら、その原点は航空機内で具合の悪くなった人をヒーローのごとく救った叔父の姿であって、患者や病気に向いているわけではない。それは子供の視点から見ればとても格好良く見えただろうし叔父の姿に憧れるのは悪いことではないのだが、中学二年生の時の『取り返しのつかない』ことの後、有人は自分の失態を恥じ同級生たちからの視線を辛く思うばかりで、肝心の自分が仕出かしたことの相手の状態を心配する様子がない。
そちらは両親に任せきりで自分は部屋に閉じこもり、可哀想な自分に浸っている。
安易な生兵法で、下手したら相手は死んでいたかもしれないことに対しての反省もなく、アッサリと医師の夢を諦めてしまう。
これでは同級生の『川嶋くんがお医者さんになるとか、すごく怖くない?』という痛い言葉も仕方ないのかなと思ってしまう。
と、かなり厳しい言葉を書いてしまったが、人はそれぞれ、性格も物事の受け入れ方も違う。多分、自分以外のものに目を向けられないくらい、有人の器は小さくなっているのだろう。第一、有人は14歳のまま時が止まってしまっているのだから。
島の人たち、特に同じ高校の生徒(といっても有人を入れて5人しかいない)たちが良い。
島育ちの二人と島外からきた二人、それぞれの立場や経験、性格も含めた様々な視点で有人を見つめている。
またあまり目立たないが、兄の存在も良い。最初は軽いのかと思っていたが、有人から返事が返って来なくとも言葉を投げ掛け続ける姿は頼もしかった。
離島ならではの濃厚さ煩わしさ厳しさも含めての生活は有人にどんな刺激と変化を与えてくれるのかと思いつつ読み進めた。
中盤、有人の環境を激変させた叔父が突然亡くなってしまうという驚きの展開が起こる。
なぜ有人に何も言わずに島を去ったのか、その訳はすぐに分かるのだが有人の気持ちを考えると何とも切ない。さらにその直後、叔父の見方を一変させる出来事があり有人は揺れ動く。
それにしても登場する少女たちは強い。
有人が『取り返しのつかない』ことをしたと思い込んでいた相手・道下も、旅館の娘・涼も、有人同様、訳ありで島外からやって来た桃花もしっかり地に足つけて先を見ている。
一方で研究者肌で我道を行くタイプのハル先輩も、漁師の息子で直球タイプの誠も誠の父も、強そうで不安を抱えている部分もある。でもそこも人間味があって良い。
最後に有人にこんな場面を用意してくれるなんて、乾さんはやっぱり上手い。
『過去は変えられねーんだ』『でも、過去をどう思うかってのは変えられるよな、今の自分で』
まだまだ自分に甘い部分がありそうな有人ではあるが、そんな自分を自覚したからこその新たな一歩への選択。
有人の時間は再び動き始めた。
『未来の自分』をようやく考えられるようになって良かった。-
fukuさん
こんにちは
いいね!有難う御座います。
朝方は、すごい雨でしたが、いまは☼/☁です。
やまfukuさん
こんにちは
いいね!有難う御座います。
朝方は、すごい雨でしたが、いまは☼/☁です。
やま2019/11/11
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人命救助した叔父に憧れ医者を目指す中学生・川嶋有人。転校生の女子を助けようとするがうまくいかず、その女子は軽い障害を負ってしまった。そのことで周りからいじめを受け、引きこもってしまう。叔父は自分が勤務する北海道の離島に有人を誘う。有人はそこで新しい高校生活が始まった。東京とは違う生活、島民との距離感、次第に慣れてゆくが、突然叔父が亡くなり、叔父を疑いたくなる文章を目にすることになりまた心が乱れ…。
有人の心の様子が痛いほど伝わる。転校してから、地域の親密度の違い、学校の仲間との距離感での戸惑いが。そして高校の仲間たちの熱い心も、そして鳥たちが舞う空も。動け、と自分自身にもエールをもらったよう。読後感良しで、前向きになる青春小説、満足。 -
最近いじめや引きこもりをテーマにした本が多い。
あえて選んでいるつもりはないので、分母が多いのだろう。
最近はリアルとネットと両方気にしなければならないので、逃げ場もない。 -
少年の成長を描いた青春小説。
とある事件で引きこもりになった有人くん。
医師である叔父さんと離島での生活で少しづつ変化していく。
「未来の自分を想像してみないか」
叔父さんからの言葉の真意が最後に分かり...
とてもいいお話でした(o^^o) -
☆4.4
展開は読めるけどそれでも泣いた -
有人の失敗と、学校での辛い思いは、中学生らしい残酷さを感じる。
でも実は、周りの人はそれほど酷い人ばかりではなく、有人を追い詰めているのは、有人自身のようにも思えた。
島の高校で出会う高校生たちも、それぞれに事情を抱えていて…。
そんな中で、漁師の息子の誠が大らかで温かくて、とっても良かった。
有人が誠と出会えて良かった。
離島で出会う海鳥は…
知らなかったウトウ、ケイマフリ、オロロン鳥(ウミガラス)
読みながら、検索しました。
この本の裏表紙のウトウが、とても好きです。
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