バック・ステージ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.58
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本棚登録 : 278
レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084298

作品紹介・あらすじ

新入社員の松尾は忘れ物で戻った夜の会社で、先輩社員の康子がパワハラ上司の不正証拠を探す場面に遭遇。そのまま巻き込まれる形で、片棒を担がされることになる。翌日、中野の劇場では松尾たちの会社がプロモーションする人気演出家の舞台が始まろうとしていた。その周辺では息子の嘘に悩むシングルマザーやチケットを手に劇場で同級生を待つ青年、開幕直前に届いた脅迫状など、それぞれ全く無関係の事件が同時多発的に起きていたが、松尾と康子の行動によってそれらは少しずつ繋がっていく、そして……。バラバラのピースが予測不能のラストを象る。いま、最も注目される作家芦沢央の驚愕・痛快ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • パワハラ上司の悪事の証拠をつかんで退治するぞ!
    新人社員の松尾くんは、ちょっと個性的な先輩・康子さんに巻き込まれて…
    お仕事小説と思いきや、舞台は「中野大劇場ホール」で上演されるお芝居?

    芦沢さんの作品は、「許されようとは思いません」と、アンソロジーに収録された短編を一つ読んだことがある。
    手の込んだ心理描写の森に囚われ、最後のどんでん返しで足元をすくわれる、そして、得体のしれない黒いものに抑えつけられているようなそこはかとない息苦しさ…が作風なのかと思っていた。
    この本の表紙も、何だか暗いし、後ろ姿だし。

    …と思っていたら、意外にもアップテンポで前のめりな高揚感があって驚いた。
    主人公の違ういくつかのエピソードが、巧みに絡み合っている。
    カメオ出演を探すのも面白い。
    荷物の取り違えから起こるトラブルや、演劇が絡んでいるところなど、昔に読んだ、恩田陸の「ドミノ」を思い出した。


    序幕
    次長・澤口の、直属の部下・玉の井愛美に対するパワハラが半端ない。
    玉の井の同期・松尾をはじめ、皆憤っているが何もできない。
    そこで、先輩・後藤康子が、松尾を巻きこんで立ち上がる。

    第一幕 息子の親友
    望(のぞみ)は離婚してシングルマザーになってふた月。
    大人しい長男と、幼稚園から保育園に環境が変わって不安定になっている次男を心配する。

    第二幕 始まるまで、あと五分
    「芝居を二人で見た後で告れば良かった…」
    2人分のチケットを握りしめて、焦れる奥田。
    しかし、伊籐みのりに振られる理由が分からない。

    幕間
    なんとかして劇場に入りたい、康子と松尾。
    そこへ、今回の芝居の演出家・嶋田ソウを発見する。
    明らかになる、康子の秘密!

    第三話 舞台裏の覚悟
    十年下積みして重要な役に抜擢された川合春真(かわいはるま)は、演劇という魑魅魍魎の住む世界の扉を開ける。

    第四話 千賀稚子にはかなわない
    75歳の大女優・千賀稚子(せんがわかこ)に認知症の兆しが見え始めた。
    稚子に35年寄り添った、マネージャー・信田篤子(しのだあつこ)の献身と思い。

    終幕
    自分の悪事を悪事とも思っていない澤口は、逆に人事をちらつかせて恫喝してくる始末。
    松尾は、康子は、愛美は?!

    カーテンコール
    読者のご想像にお任せする感じ。
    それにしても松尾くんって、こんな変わった子だったっけ?
    あれ?松尾くんの下の名前って出てきた?
    第二弾などあったら嬉しいです。

    解説は、成井豊(劇作家、演出家)
    舞台人の目から、あるいは芦沢央の読者として作品を味わう。
    “カーテンコール”は、後日譚であるが、その、雲が晴れたような明るさを、
    「芝居のカーテンコールはすべての照明が点いて、ステージは最高の明るさになるのだ」と語っているのが印象的。

  • 軽くさらっと読めて、面白かった。
    主人公?2人のセリフの雰囲気など、伊坂幸太郎っぽいなーと思って読んでいたが終章はほんとにそんな感じ!似てる。テンポの良さや、伏線回収など。短編として見るなら、伊藤さんと奥田くんの話が良かったかな。

  • ★3.5
    全8編が収録された連作短編集。著者が芦沢央なので本書もイヤミスなんだろうと思っていたら、軽妙で可愛らしく良い意味で裏切られた。確かに、パワハラ全開の上司、暴言を吐く演出家が登場するけれど、前者はしっかりお仕置きされるので胸がすく思い。そして、連作とはいえ繋がっているのは僅かで、その些細な繋がりが楽しくて面白い。私的には、「第二幕」と「第五幕」がお気に入り。あと、松尾と康子さんが登場する作品は言わずもがなで、それぞれの視点から綴られた「終幕」のラスト、「カーテン・コール」が微笑ましくてほっこり。

  • この著者だもんなぁ、このタイトルにこの表紙、絶対イヤミスだよなぁ。もともとは軽めのものよりも少しヘヴィーな話のほうが好きなんですが、今はちょっと凹みそう。頁数が手頃というだけでヘヴィーなやつに手を出しちゃったかなぁなどとウダウダ思いながら読みはじめました。そうしたら予想外に軽妙。

    恩田陸の『ドミノ』を読んだときのよう。同じ時間に複数の人物に何が起きていたか、種明かしのように綴られる話は本も映画も楽しいもんです。『運命じゃない人』(2004)、『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』(2005)、『机のなかみ』(2006)といったところを思い出す。

    パワハラ上司をぎゃふんと言わせられるか。巻き込まれた新入社員・松尾のキャラがイイ。先輩社員・康子とのコンビはまた見たい。玉ノ井も混ぜてあげてね(笑)。

    映画『運命じゃない人』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/a67704dbfcf2756e16ac84cf3974958b
    映画『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/675f6d37d941a3fc5071a7f38da179e4
    映画『机のなかみ』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/16cf4881ee0b953f27a2776512aaf03e

  • 上司の不正を暴くため、先輩社員と行動に出る話から始まって、舞台のお話など一つのステージにいくつかの裏場面が描かれています。

    一つ一つの章は面白かったけど、一本のストーリーとしてみたとき、繋がりが弱く感じました。

  • 久しぶりの小説

    パワハラ上司の不正の証拠をつかもうとする先輩社員康子と、新入社員の松尾。証拠を追って、開演直前の舞台にたどり着く。

    劇場周辺では、全く関係ない4つの事件が起きていたのだが、康子達の行動で少しずつ繋がって…予測不能のラストに導く。という話。

    事件といっても、子育てもの、恋愛もの、舞台の役者の絡んだものなので、人の気持ちの上での事件です。あぁ、私もそう思うことあるなぁと共感もできたし、最後は予想外の展開で驚かされもしました。

    そして、無関係な事件が繋がって、大本ののストーリーの解決結びつくのもすごい!

    物語の内容も爽快でいいし、構成が面白い。

  • ひとつの舞台を中心にその周辺にいる人たちの生活が描かれる。一編一編ゆるくつながっているけれど独立してしてもいいくらいそれぞれ面白い。なにか不安や気がかりを抱えた人たちが徐々に向き合い心が晴れていく。その過程にある謎のようなもの、全てがつながった時の驚きがいい。第一章のラストがとくに印象的。

  • もう読了した瞬間「ステキかよ!」と叫びたくなった。
    パワハラ上司を告発しようとする松尾と康子さん(どうしても、さん付けになってきまう)の奮闘。それに絡んで繰り広げられる親子の情愛、学生の臆病な恋愛、若手俳優の動揺と興奮、ベテラン大女優のマネージャーの切なさ。初めから終わりまで、なんかもう大好き!
    康子さんのキャラもいいけど、松尾もいい!康子さんの
    =====
    でも、私は偽物なんだよ。変わった人だと思われたいから変わったことをするのって、すごく普通だよね。きっと本当に変わった人って、松尾みたいに面倒くさいからっていう理由でみんなと同じ色を選べるんだよ。それでも、ちゃんと浮いてる
    =====
    って台詞が「ああああ、なんかわかるうぅ」と悶えるくらい納得。
    そんな松尾だからこそ、ラストでさらりと、しかも間接的に康子さんへのラブを言葉にしているのがキュンキュンした。
    そして第一幕の「息子の親友」で描かれる母・望の純粋でいて、一歩間違えば毒母にもなりうる浩輝への愛。そして浩輝のピュアな優しさ。これがまた素敵。浩輝よ、ヒエラルキーの上位になんていなくていい。そのまま大きくなれ。

  • 珍しく爽やかな読了感の芦沢央作品であった。
    序盤では無関係な短編集かと勘違いしかけたが、ひとつの舞台を巡る様々な"裏側"とその繋がりに、終着点への期待が自然と高まる。いわゆるイヤミス作品が魅力のひとつである芦沢央ならではの流れ。しかし既刊とは異なるちょっとした甘酸っぱさや未来への希望を感じさせるラストに、新しい側面を見た。

  • 一見、バラバラな出来事なのですが、読み進めるうちに一つに繋がっていて、なるほどそうきたかと思わず思ってしまいました。ただ、思ったよりはガッツリと繋がっておらず、断片的だったので、ちょっと肩透かし感はありました。

    主に5つの出来事が収録されていて、それぞれの出来事には、ちょっとした驚きの展開があり、短編集としても楽しめました。軸となる話は、パワハラ上司の不正の証拠を手に入れるために色々奔走する話ですが、出来事が変わるごとに主人公は異なります。点と点だったのが、後になって、この人ってもしかして…と繋がる瞬間は、ちょっとした驚きや意外な感覚があって、面白かったです。

    芦沢さんというと、オドロオドロしいのを表紙から想像したのですが、今回は軽めで明るい雰囲気を醸していました。サクッと読むのには良いかと思いました。
    読後感はスカッとしましたが、よくよく考えてみると舞台編の結末が気になったり、あの人のその後などが気になったりとモヤモヤ感も残ってしまいました。

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著者プロフィール

芦沢央(あしざわ よう)
1984年生まれの作家。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『罪の余白』は2015年に映画化された。その他代表作に、2016年版「週刊文春ミステリーベスト10」第7位、「このミステリーがすごい!」2017年版第5位、第38回吉川英治文学新人賞候補『許されようとは思いません』、そして第32回山本周五郎賞候補および本屋大賞ノミネート作となった『火のないところに煙は』など。2019年8月28日、『カインは言わなかった』を刊行。

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