バック・ステージ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.40
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本棚登録 : 902
感想 : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084298

作品紹介・あらすじ

新入社員の松尾は忘れ物で戻った夜の会社で、先輩社員の康子がパワハラ上司の不正証拠を探す場面に遭遇。そのまま巻き込まれる形で、片棒を担がされることになる。翌日、中野の劇場では松尾たちの会社がプロモーションする人気演出家の舞台が始まろうとしていた。その周辺では息子の嘘に悩むシングルマザーやチケットを手に劇場で同級生を待つ青年、開幕直前に届いた脅迫状など、それぞれ全く無関係の事件が同時多発的に起きていたが、松尾と康子の行動によってそれらは少しずつ繋がっていく、そして……。バラバラのピースが予測不能のラストを象る。いま、最も注目される作家芦沢央の驚愕・痛快ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 愉快☆痛快仕様の連作短編風ミステリー
    甘酸っぱいレモンが添えられたラブストーリー仕立てであり、ライト文芸感漂う読みやすい作品だった。

    パワハラ上司 澤口が会社の銭をちまちまキックバックしている証拠を掴むため、康子女帝先輩と松尾助手が奮闘する。
    この探偵劇で炸裂するあの手この手は中々無理がある破天荒具合(主に女帝が)なのだが、読み進めていると不思議とそのバイオレンスキャラに魅入られている自分がいた。
    最終的に、『めっちゃすごい人(語彙力)』らしい脚本兼演出家である嶋田ソウが手掛けた大舞台にて物語が集結するのだが、そこに至るまでの小さな物語も見逃せない。

    とは言え本編と直接的に関わることの無いこの部分は、言葉は悪いが前菜とメインの中間に食すお造り立ち位置に感じなくもない。
    内気な自身に悶々し、「息子の嘘」で悩むシングルマザーと、会場前でチケットを握りしめ想い人を待つ健気な青年の、きっとどこかにある小さな物語だ。
    だが、誰もが持ち得る人間の複雑さを的確に表現した流石の人物描写の繊細さは、キャラ密の本筋より 強く芦沢節を感じた。

    芦澤節というと、、
    抽象的な表現にはなってしまうが、メインに関わる人物、演出家の嶋田ソウの狂気が魅力的なので是非注視していただきたい。

    そして、やんややんやで準備が整う...事はなかったものの、全力待機していた澤口との直接対決はやはり痛快な未来を期待してしまう。
    俗悪的な心拍の上昇不可避である。
    結末は是非ご自身の目と脳内にて。食後の甘酸っぱいレモンも美味しくいただいてください。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    空想的なキャラクターと芦沢央の繊細な心理描写のブレンドは、まるで新しいジャンルかの様な新鮮さであった。
    如何せん自身がどの様なスタイルで読み進めれば良いのか最後まで掴みきれなかったがそれ含めて楽しい時間を過ごせたと思う。
    個人的には...
    まぁ、なんというか
    物足りなかったです()

  • パワハラ上司の不正を暴こうとする先輩と後輩、そこから物語が始まる連作短編集。

    どの章も、主人公や登場人物たちの心の通わせ方がシュールに表現されていた。

    しかしながら私が著者に期待するのは、人間らしい生臭さ。

    ハッピーエンドが、物足りなさを連れてきてしまったようだ。

  • イヤミスやないんや…
    まあ、ラストは、ええ感じに終わってる。
    凸凹コンビの活躍が一段落して。パラパラ上司撃退劇!
    短編集なんやけど、ある舞台の舞台裏の人達の活躍?を描いてる。その話が徐々に繋がっていく〜
    何で舞台が出て来るのか、イマイチ必然性は分からんかったけど、会話も軽快で楽しかったけど…人は殺されてないはず?別にミステリーだからって、死なんでもいいんやけど、やはり、読み返してしまうわ(^_^;)

    しかし、演出家の嶋田ソウさんの迫力、俳優さん達の想いは凄い〜何か芝居が面白ければ何でもアリなんや…ホントにこんな人らが、芸能界で活躍してるなら、色んなスキャンダル出るし、会社勤めはムリです〜!

    私も将来の夢は、ミドリムシになりたい。「光合成で栄養素が取れる上に、光がある場所まで移動できる」
    うん!完璧や!
    何か、小説の感想になってない気が…
    いつもの事か…(⌒-⌒; )

  • 短編でありつつ、長編…なのかな?
    メインストーリーとは関係ない話もあったような気がする(端っこに主人公が登場するだけ)けれど、全体としては大団円で楽しめた。

    癖のあるキャラクターがクセになる。
    話の面白さ以外に人物の面白さを描ける作家さんだなぁ、と思う。

  • パワハラ上司の悪事の証拠をつかんで退治するぞ!
    新人社員の松尾くんは、ちょっと個性的な先輩・康子さんに巻き込まれて…
    お仕事小説と思いきや、舞台は「中野大劇場ホール」で上演されるお芝居?

    芦沢さんの作品は、「許されようとは思いません」と、アンソロジーに収録された短編を一つ読んだことがある。
    手の込んだ心理描写の森に囚われ、最後のどんでん返しで足元をすくわれる、そして、得体のしれない黒いものに抑えつけられているようなそこはかとない息苦しさ…が作風なのかと思っていた。
    この本の表紙も、何だか暗いし、後ろ姿だし。

    …と思っていたら、意外にもアップテンポで前のめりな高揚感があって驚いた。
    主人公の違ういくつかのエピソードが、巧みに絡み合っている。
    カメオ出演を探すのも面白い。
    荷物の取り違えから起こるトラブルや、演劇が絡んでいるところなど、昔に読んだ、恩田陸の「ドミノ」を思い出した。


    序幕
    次長・澤口の、直属の部下・玉の井愛美に対するパワハラが半端ない。
    玉の井の同期・松尾をはじめ、皆憤っているが何もできない。
    そこで、先輩・後藤康子が、松尾を巻きこんで立ち上がる。

    第一幕 息子の親友
    望(のぞみ)は離婚してシングルマザーになってふた月。
    大人しい長男と、幼稚園から保育園に環境が変わって不安定になっている次男を心配する。

    第二幕 始まるまで、あと五分
    「芝居を二人で見た後で告れば良かった…」
    2人分のチケットを握りしめて、焦れる奥田。
    しかし、伊籐みのりに振られる理由が分からない。

    幕間
    なんとかして劇場に入りたい、康子と松尾。
    そこへ、今回の芝居の演出家・嶋田ソウを発見する。
    明らかになる、康子の秘密!

    第三話 舞台裏の覚悟
    十年下積みして重要な役に抜擢された川合春真(かわいはるま)は、演劇という魑魅魍魎の住む世界の扉を開ける。

    第四話 千賀稚子にはかなわない
    75歳の大女優・千賀稚子(せんがわかこ)に認知症の兆しが見え始めた。
    稚子に35年寄り添った、マネージャー・信田篤子(しのだあつこ)の献身と思い。

    終幕
    自分の悪事を悪事とも思っていない澤口は、逆に人事をちらつかせて恫喝してくる始末。
    松尾は、康子は、愛美は?!

    カーテンコール
    読者のご想像にお任せする感じ。
    それにしても松尾くんって、こんな変わった子だったっけ?
    あれ?松尾くんの下の名前って出てきた?
    第二弾などあったら嬉しいです。

    解説は、成井豊(劇作家、演出家)
    舞台人の目から、あるいは芦沢央の読者として作品を味わう。
    “カーテンコール”は、後日譚であるが、その、雲が晴れたような明るさを、
    「芝居のカーテンコールはすべての照明が点いて、ステージは最高の明るさになるのだ」と語っているのが印象的。

  • 上司の不正を暴く話?
    タイトルとの関連が見えずに読み進めると、やはり、舞台関連の話に
    そして悪徳上司も再登場
    短編集のような、軽快さが良いです

  • 軽くさらっと読めて、面白かった。
    主人公?2人のセリフの雰囲気など、伊坂幸太郎っぽいなーと思って読んでいたが終章はほんとにそんな感じ!似てる。テンポの良さや、伏線回収など。短編として見るなら、伊藤さんと奥田くんの話が良かったかな。

  • 芦沢先生は初読みの作家さん!
    面白くないわけではないけれど、良くも悪くもちょっと私の中の印象に残りずらいかも…と思ったり

    連作短篇のようでそれとはまたちょっと異なるような物語
    序幕の住人が違う章ではモブBみたいな感じで出ていたりするぐらい
    大きく見たら、物語では事件が5つ起こってる
    それぞれの幕でそれぞれ違う人が主人公で、その人その人が思う大変、辛い、どうしようって思いは違う
    それらが混じって離れて、序幕の物語はエンディングを迎えていた

    好みの物語は、第2幕
    友達以上恋人未満の男女の嘘と恋の物語
    数年ぶりに会った大学生の2人は、好きな本について語り合う
    2人を見てると、好きな物を語り合える相手が羨ましくなる

  • 珍しく爽やかな読了感の芦沢央作品であった。
    序盤では無関係な短編集かと勘違いしかけたが、ひとつの舞台を巡る様々な"裏側"とその繋がりに、終着点への期待が自然と高まる。いわゆるイヤミス作品が魅力のひとつである芦沢央ならではの流れ。しかし既刊とは異なるちょっとした甘酸っぱさや未来への希望を感じさせるラストに、新しい側面を見た。

  • ある舞台とある会社の内部告発を軸に、多視点で語られる短編集

    ミステリーだけでなく、家族の話も恋愛も仕事の流儀も色々な要素が入っていて贅沢
    突拍子もないことができる人が主人公の相方的ポジションに来る設定はやっぱり面白いなぁと思った

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著者プロフィール

芦沢央
1984年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『火のないところに煙は』が静岡書店大賞を受賞。吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、本屋大賞、直木賞など数々の文学賞候補にノミネートが続いている。著書に『許されようとは思いません』『カインは言わなかった』『汚れた手をそこで拭かない』『神の悪手』など。

「2022年 『夜の道標』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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