君たちは今が世界

  • KADOKAWA
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本棚登録 : 558
感想 : 68
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084328

作品紹介・あらすじ

みんなと、居たい。みんなは、痛い。
教室がすべてだったあの頃の、まぶしさとしんどさがよみがえる。
教室というちっぽけな王国の先に、本当の世界が待っている。

六年三組の調理実習中に起きた、洗剤混入事件。
犯人が誰も名乗りでない中、担任の幾田先生はクラス全員にある言葉を言い放ち、去っていった。
先生の残酷な言葉は、誰かが守ってくれる子どもの世界に終わりを連れてくる。
いじられ役、優等生、『問題児』、クラスの女王の親友。
教室での立ち位置がまったく違う4人は、苦悩と希望を抱えながら自分の居場所を必死に探し求めていて……。

感想・レビュー・書評

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  • 学級崩壊になりかかっている6年3組の生徒4人を語り手にした短編連作。
    小学校がこんな状態に?と衝撃を受ける。
    生きにくい。
    自分の気持ちを押し隠し、周囲に合わせる。キャラを演じる。今が通り過ぎるのをひたすら我慢する。みんなと違うことの辛さ。子どもが子どもでいられない家庭状況。

    子どもの目線で子どもの問題を示しながら、同時に先生や親へ目を向けさせられる。当然ですね。子どもは社会の中で生きているのだから。それも狭い狭い小さな社会。逃げ場がなく、子どもたちの生きにくさがヒシヒシと伝わってくる。

    「皆さんは、どうせ、たいした大人にはなれない」担任の言葉に衝撃をうけた。
    決して言ってはならない言葉だったが、真剣に話す担任に向かって「やべ。先生スイッチ入っちゃったよ」とまた茶化す。
    子どもは『少年法によって守られている』とたかをくくっている。結果、担任は保護者によって外される。親によっても守られているのだ。
    「親や先生が守ってくれる世界は、いつか終わってしまうからね」その通りだ。

    エピローグでは、大人になり小学校の先生になった6年3組のひとりが当時の思いを語る。
    「皆さんは、どうせ、たいした大人にはなれない」と言った担任のことを「絶対にあの先生のようにはなるまい」と思っていたが、あの呪いの言葉を別の意味で捉えるラストが素晴らしい。

  • 4人の子どもの視点から、学校生活が描かれる。

    友達や先生、家族との距離感がうまくとれなくて苦悩する子どもたちの姿が巧みに描かれていて、「あるある!わかるー!」の連続。当時の自分やクラスメイトを思い出して懐かしい気持ちになった。
    私もあの頃は一部しか見えてなくて、自分や周りの人の素敵な個性を、たくさん見落としてきた気がする。


    『君たちは今がすべて』だけど、未来は未知で明るいんだよというメッセージを感じる物語だった。

  • 小学6年生のクラスで必死に生きようとしている子ども達のお話。クラスの中から4人をとりあげて、
    それぞれ異なる視点でクラスメート、先生、クラスの出来事が描かれている。

    今やっていることは、自分がやりたくてやってるんじゃない。今話していることは、自分の本心とは異なる。クラスでの自分のポジションを維持するために、違和感を抱えながらも、子どもたちは"自分"という役を演じ続ける。
    クラスの中心的な子どもはもちろんだが、その時間をただ災いを避けながらやり過ごそうとしている子どもも同じ。本当の自分らしい自分を生きることは出来ない。

    集団の中での生き苦しさを痛感する。どの子も、一人ひとりが必死に"自分なりの正解"を選択していくのに、結果は必ずしも○とは限らない。集団の暴走でとんでもない方向に進んでしまうこともある。

    この話の舞台は小学校だけれども、会社だったり、ママ友仲間だったり、大人の社会でも同じことが起こっているのではないか⁉︎
    君たちだけじゃない。私たち大人も今が世界(すべて)だ。子どもよりは、その世界から逃げ出せる可能性が大きい、それを自分で決めることが出来るかもしれない、というだけ。
    歳をとれば大人になるという訳ではない。子どもの頃と同じように、自分の欲望第一に行動する人もいるだろう。それが上司だったりすれば、実際に権力を持っていたりするから、ある意味子どもよりもタチが悪い。

    子どもにとって、なんといっても身近な大人の影響が大きい。家族、教師、友だちのお母さん、近所の人たち、今ならテレビやネットに出ている有名人も含まれるだろう。まずは大人たちが、間違ったメッセージを送らないように、自分たちの言動に気をつけるべきではないか。そして、自分の言動が招いてしまった結果に、きちんと責任をとらなきゃいけないと思う。

    本書でも、我が子と同じように自分のことを気にかけてくれる友だちのお母さん、共通の趣味を持つ大学生のお兄さんなど、子どもたちに手を差し伸べる大人が登場する。そういう大人の存在が子どもたちには必要なんだと思う。正しい道を示してくれるような、周りの棘から守ってくれるような、自分らしさを認めてくれるような、そういう大人の存在が。

  • 読んでいると小学生の頃や中学の頃の自分を思い出す。
    そして、もっと子供を全力で楽しんでおいた方が良かったなとも思う。

    今思えばだが、少しませていておとなしい子供だったような気がする。そして、子どももいろんなことを感じて大人を見て、不安になったり嬉しくなったりいろいろな感情になっていたことを思い出す。

    どの章を読んでも甘酸っぱいような切ないような心になり、あの時の自分に戻ったり、あの時の自分や友達に会って、いろいろと助言したいなと思った。

    今思えば、もっと価値観の違う当時仲のよくなかったというか特に深い付き合いではなかったような子とこそ、コミュニケーションをとってみたいなと思わせてくれる1冊だった。

    登場人物の4人はみんなそれぞれどこの学校にもいそうな子たち。
    そして、その4人すべての子たちの心の機微が丹念に詳細に描かれていて、こんなに細かい部分をちゃんと描けるのは朝比奈さんだからなのかなと思った。

    改めて他の作品も読んでみたいと思う。

  • 小学校教諭としては、人ごととは思えない話で、読んでいて苦しくなる。子どもたちにとっては、学校が、学級が自分の世界。そこで生きていくのは、子どもなりに大変なこと。自分を守るために、ずるく生きていく。そんな子どもたちを指導するのは、自分を出してくれることがないためとても難しい。反抗されれば腹も立つ。それでも、仲良しを、グループをみな同じように見るのではなく、その中でも一人一人違うことを忘れずにいたいと思う。
    そして、自分の小学校時代も少なからずはずるく立ち回っていたことを、思い出して苦笑する。

  • むかしむかしの小学生の頃を思い出す小説。
    小学生の頃、連帯責任でみんな並んで先生に殴られた友達はいま、どうしているのかな。「みんなに迷惑かけたなぁ」と思い出してしまった。
    印象に残った文章
    ⒈ たいした大人になれない
    ⒉ ここ以外の場所のほうがずっと広いということを、どうか、覚えておいてください
    ⒊ その言葉には、時間を経たからこそ響く、まごころがあった。

  • 児童書かと思っていたが、大人、特に、子どもがいる人に読んでもらいたい。同じクラスの子どもたち一人ひとりが、それぞれの考えや悩みを持っており、学級という世界で生きている。小学6年生という多感な時の日常の日々が描かれているのだが、大人でもなく子どもでもなく、何とも言えない葛藤がうまく表現されている。友達付き合いってこんなに難しかったっけ。昔の何倍も今の子は悩みがあるのかもしれない。それとも、忘れてしまったが、自分もこうやって悩んでいたのか…。

  • 小学生の世界。
    大人から見ると学校という枠の中の出来事なのかもしれないけど、その頃はそれが全てだし、精いっぱい生きてるんだよね。
    大人になると忘れてしまう視点や気持ちを思い出した気がします。

  • 小学六年生。無邪気でいられるほど子どもではなく、とりつくろえるほど大人でもない。
    ティーンになる一歩手前の、柔らかく繊細で、少し鈍感な年ごろ。
    親や家族よりも友達との世界が大きくなり始める時、今、目の前にあるものが自分の全てであると思う。今のこの場所が、自分の全てである、と。
    一日の大半を過ごす学校、特に、クラス。そこにいること、そこで起こること、そこで思うこと、全てに神経を研ぎ澄ませる。
    4つの物語の4人の小学生。あぁ、こういうことあったよね、と思いつつも大人としての厳しい目でも見てしまう。それでも彼らの絶対的な「今」に少し同情もする。そしてエピローグ。ここで物語がぎゅっと締まる。うまいねぇ。ここがなければ単なる「そんなときもあったよね」で終わる小さな物語たち。彼らにとって「世界(すべて)」である「今」はあっというまに「過去」になり、そしてあのころ自分には見えなかったオトナになる。彼らに同情していたオトナであるこちら側と同じ目を持つ。
    小さな世界に住む彼らの「今」が大人になったとき「懐かしい」物語となりますように。そして陽太くんがカッコいいドラゴンを作れますように。

  •  4章とエピローグからなる群像劇。舞台となるのは小学校の6年2組。各章ごとに主人公が異なる。

     絶妙なタッチで描かれる子どもの世界の残酷さ。平気で他者を貶めつまらぬ満足感を得ようとする幼稚な欲望。そんな世界を的確に描きつつも、子どもたちの揺れる内面まで上手に挟み込んでいた。

     子どもたちの自分勝手で傲慢な言動の源泉は不安感だ。それは、マウンティング合戦に勝利しピラミッドの頂点に君臨する子どもも例外ではない。

     一見、気持ちがささくれ立つような物語でありながら共感できる部分が多く、ほろ苦いノスタルジーを味わうことのできる作品だった。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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