AX アックス (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.12
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本棚登録 : 2906
レビュー : 228
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084427

作品紹介・あらすじ

【伊坂幸太郎史上最強のエンタメ小説<殺し屋シリーズ>、『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる待望作!】

\鳴りやまぬ驚愕と感涙の声!/
★2018年 本屋大賞 ノミネート作!
★第6回静岡書店大賞(小説部門) 大賞受賞作!
★フタバベストセレクション2017(フタバ図書) 第1位!

最強の殺し屋は――恐妻家。

物騒な奴がまた現れた!
物語の新たな可能性を切り開く、エンタテインメント小説の最高峰!

「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。
一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。
こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。

感想・レビュー・書評

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  • 最強の殺し屋は、、、、恐妻家。。

    短編連作。
    文章が面白すぎて、殺し屋なのに共感が持ててしまう。
    最後にはとてもいいお話にまとまってしまう。
    3年かけた連作だというのに、さすが伊坂幸太郎氏。

    殺し屋3部作のうち、これが初めて読んだけれど、これまでのグラスホッパー、マリアビートルも是非読んでみたいと思いました。


    メモ

    p10 音は立てずに食べられる夜食は魚肉ソーセージ。

    p27 妻への対応

    p30 ケーキ6個

    p87 食事のリクエスト

    p94 フェア

    p152 他人の気持ち

    p174 古山高麗雄

    p178 ケネディ大統領がこう言っていたんだって。「汝の敵を許せ。だが、その名をは決して忘れるな。」

    p201 弱いものいじめはいけない。ただし、弱いものいじめをした者に対しては除く。

    p241 世の中で、何が正しいかはわからないが、フェアではいた方がいい。

    p366 解説 伊坂幸太郎は死の不安を書く作家だ。
    AX 斧 蟷螂の斧

  • 「克巳君のお父さんってたぶん、他人とどう付き合っていいのか分からない子供だったんじゃないかな」兜の息子の嫁さんが、そんな鋭いことを指摘していた。私もそう思う。いや、それどころじゃなくて、もっと酷いサイコパス手前の少年だったんじゃないかな、とさえ思う。サイコパスは、ヒトが本来持っている「共感能力」を持ち合わせていないという。その代わりとして、物凄く頭が良いとか、他の能力が良くなるという話が今までその他の小説で語られてきた。その流れからいくと、兜は身体能力と状況処理能力が優れていたのだろう。最悪のサイコパスが活躍する「悪の教典」(貴志祐介)のハスミンが憂実と結婚出来ていたら、こんな物語になっていたのかもしれない、とさえ思う。

    兜が、暗黒街の殺人者から手を洗おうと考え始めたのは、結婚して息子の克巳が産まれてかららしい。日本昔話などを読み聞かせていた頃だ。「良いおじいさんは最後には報われ、悪いおじいさんはひどい目にあう」そういった物語を兜自身が読んで「悪くもない人間が、むやみに殺されるのは良くない」「自分が殺した相手にも父親や母親がいたのかもしれない」と初めて思うようになった。

    それは兜にとっては劇的な変化だったはずだけど、伊坂幸太郎はわざと劇的には描かず、淡々と筆を進める。革命はいつもさりげなく訪れる。伊坂幸太郎は分かっている。だから当然最終章の1番最後の行にその〈革命〉の始まりを持ってきているのである。

    これは、サイコパスたる殺人者が自らを変革していく貴重な小説だった。「グラスホッパー」も「マリアビートル」も新しい暗黒街小説だったけど、これもかなり新しい暗黒街小説だ。

    解説子はローレンス・ブロックの「〈殺し屋ケリー〉シリーズ」の影響を指摘している。私は池上正太郎の仕掛け人藤枝梅安と元締め(蔓)との関係と、映画「レオン」の中の殺し屋と少女マチルダとの関係を足して2で割り、伊坂節をかけ回したような作品に思えた。

    私たちの「理解の及ばない世界」と「理解の及ぶ世界」の接合を試みた、意欲的なエンタメ小説だったと思う。


  • 家族思いの殺し屋の話。

    さすが!としか言いようがない。
    伊坂ワールド全開。
    連作短編的ではあるが、全編を一つの物語として、しっかり読める。
    技巧に唸らされ、最後にはほっこりとさせられる。
    素晴らしい。


    「フェアネス」
    「相手を労る気持ち」(何よりも「大変だね」と一言)
    「やれるだけのことはやっておくこと」

    この小説の重要なポイントをあえて3つに絞ると、そんなところかと。

    同じく殺し屋が主人公の「グラスホッパー」と「マリアビートル」も読みたいと思った。

  • 「グラスホッパー」
    「マリアビートル」に続く
    シリーズの三作目
    (順に読まなくても良いが、続けて読むとニヤニヤする箇所が多々あります)

    トップクラスの実力を持つ殺し屋ながら恐妻家である「兜」が主人公

    「AX」「BEE」を読んだ時点で心を掴まれた。
    と言うより主人公に共感している…

    妻を起こさないよう、帰宅後
    "最も静かに食べれるモノとして
    「魚肉ソーセージ」を選んだ兜
    私は…バナナまでは到達してました。
    (まだまだ素人でした…)

    そして「BEE」こちらは家の外に蜂が巣を作って兜が対処してますが、私の場合は部屋に一匹迷い込んで来て虫嫌いの嫁が大騒ぎ。
    (フィクション意外ではじめて
    「仕留めろ!」って台詞を音声で聞きました。
    むしろこっちの方が殺し屋の妻っぽい)

    …読んでて「妻」が登場すると
    脂汗が出てくる……
    殺し屋との対決シーンより緊迫感があった。

    主人公の人柄が、殺し屋なのにほんわか
    (前作の天道虫のよう)してて、他の本の様な
    「殺し屋の凌ぎを削る世界」から
    乖離してるなぁ…
    と思いきや淡々と
    普通の生活と隣り合わせで
    生き抜かねばならない厳しい世界を描く
    他の作家には無い伊坂流「殺し屋の世界」は健在

    でも兜は、殺し屋なのに、妙な親近感があるのが
    良い違和感を出してて、各話を連続して読んでいくうちに、とんでもないサイコパスなヤツなのでは?と、少し怖くなってくる。
    (感情の欠落や把握しきれない問題を冷静に捉えられるのに、対処しきれなくて苦悩している様に見えた)

    伊坂さん自身が子供も生まれてから
    感じた家族の要素を「オー!ファーザー」とは別の形で表現しつつ「殺し屋シリーズ」に融合させてるような印象 奇妙だけど暖かい家族の話でもあった。
    (解説にも書いてあって納得)

    ムック本か何かで
    伊坂幸太郎さんの薦めている本の中に
    「妻の帝国」と言う本があったが、そちらからのインスパイアもあったのではないか?と読んでもないのに考えてしまう。
    そちらも読んでみようか?

  • 伊坂幸太郎 著

    読みかけの本を途中でおいてまで…「AXアックス」
    文庫本を本屋さんで見つけ、早速購入して、読みました。やっぱり、凄いなぁ…伊坂幸太郎さんの本は裏切らないというか…どんどん読み進めてしまう。
    あっという間に読み終えてしまうのだけど(息をもつかせぬ感覚で入り込んでしまうというか…)
    でも、ストーリーが終わってしまうところで、いつも、もっと読み続けたい気持ちがいっぱいになって終わってしまうのが物悲しい気分になってしまう。

    殺し屋小説なのに、悲壮感を感じさせる間をあたえない疾走感に溢れる。怒濤のストーリー展開だけどどこか軽快な語り口がまた小気味いい。
    『グラスホッパー』『マリアビートル』の長編2冊に続く、一人称で話は構成されている『AX』は連作短編で一人の殺し屋「兜」の物語。
    殺し屋であるはずの「兜」なんだけど、人の感情がイマイチ分からないと言いながら、とても無骨ながら優しい人間味溢れる兜に、思いっきり心を持っていかれてしまう。また、息子の克巳もいいですね
    恐妻家の妻に怯えながらも、何気にフォローを投げる息子 本当にいいなぁって親の兜のような気持ちになって受け止めてしまう。
    感想になっていないような感想だけど、ほっこりした思いも 死と生の間を行き来する危ういかたちも上手く表現出来ないのだけど…
    「蟷螂の斧」って言葉が、とてもこの殺し屋「兜」の運命、人生を言い当てており、親子の話しの内容は割愛するが、息子の克巳が「そのことわざは、カマキリもその気になれば、一発かませるぞ、という意味合いではないんだろ」と言うと…
    「どちらかといえば、はかない抵抗という意味だ」
    と、「兜」は云う。
    殺しに関しては瞬発力も頭脳も力もある彼だが、
    結局 支配され支配する者には逆らえないのか…
    それは、一般的な社会でも同じなのかもしれない。
    でも、出来るなら何でもフェアに…という信念に突き動かされる。
    「兜」が死んだ…ってことが、どうしても信じられないまま読み進め、何処かで「実は…」ってひょっこり顔出すんじゃないと…ずっと思っていた、
    でも、そうはならなかった。
    克巳の中に生きる兜 生きること、死ぬことって
    そういう事かもしれない。
    いつか、終わりが来るんだ!って思って生きている。
    でも、生きてる間はフェアに生きたいなぁって素直に感じさせてくれた。
    これって、殺し屋の話だよね⁉︎って思わず、思い返してみたくなる秀作だ!

  • 「グラスホッパー」、「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズです。
    前二作はいずれも長編で、個性的な殺し屋が多数登場したことで、群像劇的「殺し屋列伝」のような趣でした。

    今回は連作短編形式で、前二作同様に、何人かの殺し屋は登場するものの、基本的には一人の殺し屋に焦点を当てて、ストーリーは進行します。
    そして、その殺し屋「兜」は妻子がいる家庭持ちというのが、これまでの殺し屋たちとは全く異なり、凄惨な雰囲気の中に(シニカルではない)笑いと涙を添えるのに成功していると思います。

    それでですね、いや殺し屋なんやから、表向きどんな風貌や物腰であっても、友達にはなりたくないと思うところなんですが、結構言動に共感したりうなずけるところが多くて、ものすごい親近感が湧くんですよ。

    冒頭、寝静まった我が家に帰ってきて、玄関ドアに鍵を差して回すとき、それからドアを開けるとき、極力音を立てないように気を遣うところ。
    (決して僕は恐妻家ではありませんww)
    夕飯の献立に悩んでいたら、パパっと手軽にできるものや店屋物をサジェストするところ。
    (もちろん僕が恐妻家なわけではないですよww)
    ちょっとハードルが高いことでもYouTube見て自分でやってみてしまうところ。
    (これは絶対に恐妻家ではないですよねww)
    などなどなど。

    あと、一人息子の克巳とのやり取りもええなぁ。
    殺し屋であることを、ついつい忘れてしまい、ずずずずいーっと感情移入してしまって、特に最後の二篇では涙が溢れました。

    読み終わったら、家族の寝顔をしげしげと見つめたくなるような、そんないとしい物語でした。

  • 先が知りたい!でも、読み終わりたくない!の葛藤と共に読了。
    帯の文言にも惹かれて、本棚に寝かす暇もなくあっという間に取り付かれました。伊坂作品の中でも一番好きな殺し屋シリーズ。
    人殺しはするのに、奥さんには弱いし、弱いものイジメは嫌いだし親近感と愛しさしか感じない。それがたまに顔を出すストイックを際立たせる。
    こんな優しい殺し屋達なら、現実で殺し屋稼業もアリなんじゃないかと思わせるおそろしさ。

  • え、、、ってなって手が止まる。
    最後には泣いていた。

    ちょっとズレてはいるけれど、
    すごくあたたかみのある殺し屋。

    マンションの管理人が良い仕事をする。
    それがここで活きるか!
    っていう面白さがたまらない。

    「大事な人ができると、ちょっとしたことでも
    相手が離れていくんじゃないかって怖くなるんだよね」

  • なんて面白いんだろう。
    この殺し屋シリーズの3作は、私の宝物になりました。
    愛しすぎる。
    前2作と違い、出てくる殺し屋の視点は主に主人公の「兜」。
    兜は恐妻家で、妻の機嫌ばかり伺って生きている。
    妻への返事や行動を取るたびに「何が正解か」を考える様子は、私が女で既婚者だからか、とてもきゅんきゅんさせられます。
    人との接し方が分からない兜にとって妻への試行錯誤の対応が、息子や他の人の感覚とズレている所もまた萌えまして。
    後半は涙無くしては読めませんでした。
    ラストはすっきり。

  • グラスホッパー→マリアビートル→AXの順に読むことをおすすめする。

    兜編が連続して出てきて場面が切り替わるが兜の話が続くのが面白かった。連作短篇集形式というらしい。

    兜は殺し屋として腕が立つのに恐妻家というのがすごく可愛らしかった。
    恐妻家は弱いのではなく、心が大きいのだと思う。
    人間ができているから女を見下さないのだ。


    悪口を言われてるんじゃないかと被害妄想をよくしてしまうのだけれど、そんな時に救ってくれる文があったので抜粋↓
    「いいか、その悪口を言った相手は、そこで何かポイントを取ったか?おまえの父親が駄目社員であるのは、そいつの功績なのか? 違う。そいつはただ単に、事実を指摘しただけだ。事実ですらないかもしれない。事実を声に出す。そんなことは誰にでもできる。けれど、誰もやらない。分別と常識があるからだ。強いて言えば、そいつは、感情に任せて、分別を失って、言ってもどうにもならない事実を発声しただけだ。その件に関して、おまえは、そいつにポイントを取られていない。逆に言い返せばいい。おまえの先祖は猿じゃねえか、とかな。これも事実だ」

    昼は会社員、夜は殺し屋というのはかっこいい。
    私も夜は殺し屋をやってるような気になってしまった。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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