- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041085059
作品紹介・あらすじ
いつか、どこかに、私にしか愛することのできない誰かがいるかもしれない。
その時にちゃんと愛を始めてみたかった――
現役AV女優として活躍するかたわら、自らの言葉を綴ってきた戸田真琴。
真実を捉えていて、それぞれの立場に寄りそい、読むひとの心に届く彼女の言葉には男女ともに多くのファンがいる。
恋愛がすべてではないし、男女である前にひとりの人間同士だし、いつも器用に生きられなくたっていい、そうわかってはいるけれど、やり場のない感情を抱いてしまうとき。
この本に記された言葉は、そんなあなたに見つけられるのを待っています。
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言葉を残したくなるのは、嬉しいときでもいい気分のときでもなくて、やっぱり何かが悲しいときだ。誤解をされてしまったこと、納得いかなかったこと、世の中のことが嫌いになってしまいそうな夜に、言葉をどこかに書こうと思う。
悲しみの中で書かれた言葉が、誰かの悲しみに触れる時、私の悲しみは、この世にあってよかったものだったんだと、そう思うことができた。
私の言葉が光る時、それは君が眩しそうな顔をして読んでいるそのときだけなのだ。
本書「第3章 私は私のままで、あなたはあなたのままで」より
感想・レビュー・書評
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著者の戸田真琴さんはとてもユニークで優しい人だ。きっともともと優しい人なのだと思うけど、自分にも他人にも優しくあろうと常に努めている人だという印象を持った。彼女の真心やひたむきさが文章に滲み出ていて素敵だなと思うし、読んでいて切なくもなる。
そんな戸田さんが、自身の生い立ちや職業、折々に感じてきた思いや矛盾や葛藤を丁寧に綴った一冊。
家庭では親の信仰や特殊な価値観に疑問を持ちながら育ち、外に出れば同世代の会話や恋愛事情に上手く馴染めない。それでも戸田さんは自分の頭で考えることを大切にし、同時に人を大切にすることを諦めない。
人を大切にする、と簡単に言っても、彼女の場合は「私とあなた」の関係性をとことん大切にしていて、自分と関わる人一人ひとりとの一番良い向き合い方を探り続けるという、人気商売(彼女自身は「汚れ仕事」と言い切っている)ではかなり無茶なことに諦めずトライし続けている。
幼い頃からずっと自分を否定されても、ないがしろにされても、周囲から笑われても、憐れまれても、誤解されても、それでもすり減らないものがあるのだと彼女は語る。これは私自身もそうで、自分の中にあるこのすり減らないものが一体何なのか、生まれ持ったものなのか、環境によって育まれたものなのか、私はずっと不思議に思っていた。家庭環境や世間への怒りだけを原動力に生きていたら、きっと私の人生はダメになっていたと思う。
この本を読んでいると、孤独も悲しみ喜びも私だけが感じているものではないというシンプルな事実を実感できる。上手くいかなくても、馬鹿だと思われても、私なりに誠実に生きようという勇気が湧いてくる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルに惹かれて図書館で借りた。
最初の方の女の価値を値踏みされている感じ。分かります。若いと特にそうですね。
こういう事って異性である男性を中心に考えてしまうとそういう思考になりがちなように思います。
著者は高校は共学だったようですが、女子校だと「モテ」に振り回されることなく、男性から値踏みされることもなく、自分の「好き」をとことん追求できる楽園となっております。世界は大まかに男と女で成り立っているから、どちらか一方だけで暮らす事は出来ないけれど、男性に振り回されたくなかったら、接触する男性の数を減らしてみる、という手法も良いのかもしれません。
女を有効利用出来ない女の子。良いじゃないですか。ぶきっちょ女子は素敵です。純粋さが漂う。
そしていつまでも自分を変わらず愛してくれる永遠の愛。両親や恋人、配偶者に期待するのでしょうけれど、やはり悲しいかな、他人への期待は程々にした方が得策。愛と裏切りは表裏一体。とにかく自分が自分を思いっきり愛してあげてください。まずこれが一番大事なように思います。
著者は芸術的思考も持ち合わせているからか、AVの世界で自分の精神性を表現しようとしたのですね。これをアートに昇華出来たらちょっと良いですね。世間に一石を投じることになりそうです。
ただ、途中で読むのを止め、後書きを読んで表紙を閉じてしまいました。私には文章がいささかキラキラし過ぎて。。。彼女はポエムなんかも合ってそう。
頑張って欲しい。 -
タイトルを見て、ああそういえば私ってそうだったなと思った。
そして「しても」の続きをこの人はなんて言葉を紡ぐんだろうと気になった。
図書館の本だったので借りるまでに時間がかかって結果半年も待った。
その間にいろんな方法で自分の孤独を見つめ直したように思う。
結果、確認のような形でこの本を読むことになった。
社会に馴染めない自分。
幼少期に抑えられていた自我。
女としての生きづらさ。
どれもとても共感できるものだった。
孤独を分かち合うことはとても幸福なことかもしれない。
誰かを愛せる日が来ることを待つのは孤独との長い闘いになると思う。
そんな時自分の哀しいという感情を可愛がってあげられる強い人になろう。
ミステリートレイン観てみたいな。 -
まず、タイトルとカバーに惹かれた。
どこか寂しさの漂う本だった。
だから気になって読んでみたら、著者の思想と孤独感がしたためられていた。
「あ、なんかわかるな」
「そんな風に考えちゃうんだ」
「確かにそういうのもありかも」
と、まるで本と対話しているような気分になった。 -
共感できることがたくさんあった。
私と同じ考えや私生活を送ってる人がいることを知れて嬉しかった。
また何回でも読み返したいし、ドッグイヤーを付けたけどもう一度読み返したときはきっと、違うところにドッグイヤーをつけるんだろう。 -
戸田さんとは全く違った生き方をしてきたのに、戸田さんが綴る「独り」は僕の感じる「独り」にとても似ている。世界への怖れや疑いと相反するようで同居している世界への慈しみに深く共鳴した。戸田さんの言葉を通して自分と対話するような豊かな時間をすごすことができた。