震える天秤

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 297
感想 : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041085493

作品紹介・あらすじ

福井県で高齢ドライバーによる死亡事故が発生。加害者は認知症の疑いがあり、責任能力を調査している。ライターの俊藤律は、事件を調べるうちに加害者の住む村へ辿り着く。住人たちは団結して何かを隠していて……

感想・レビュー・書評

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  • 社会派サスペンスです。

    フリージャーナリストの俊藤律37歳は隔週誌ホリディの編集長に命じられ東京から福井まで六時間かけてバイクで福井入りしました。

    認知症をわずらった86歳の落井正三が、軽トラでコンビニに突っ込みコンビニの店長の石橋昇流(のぼる)28歳が即死。
    店にはアルバイト店員の内方七海17歳が事故の時一緒に勤務していました。

    律は高齢者の運転問題についてルポをまとめるつもりでした。しかし律はこの事件に何か裏があるのを嗅ぎつけます。

    加害者の正三とアルバイトの七海が共にコンビニから二時間ほどの埜ヶ谷村から来ていることに気づき事件性を感じたのです。
    そして律は、コンビニのオーナーで被害者の父の石橋宏から、村の人間まで次々に当たっていきます。
    加害者の正三は本当に認知症があったのか疑いを持ち正三の入院している病院にまで潜入します。

    そして、村全体で隠している大きな秘密をみつけてしまいます。村の人間はみなで嘘をついていました。
    七海が店でアルバイトをしていたのも、正三が軽トラで突っ込んだのもすべて偶然ではなかったのです。

    村の人間たちに、律は真実を問います。
    そして律は記事を書くべきか逡巡します。
    書けば大スクープです。
    私は律には記事を書いて欲しくないと思いました。
    真実を報せるより大事なこともあるのだと思いました。

  • 今、1番ハマってる作家さん。
    今回は・・・まあまあかなー。

    とある「村」を舞台に繰り広げられる
    高齢者による過失運転致死事故がテーマ。

    果たしてこれは「事故」なのか?
    それとも故意の「事件」なのか?

    ミステリー仕立てで読み応えありました。

    ここから【少しネタバレ⚠️】

    結局、真実は闇の中・・・
    だったのが少し不満というか、まあでも
    オチはそれしかない気もするし。

    主人公の律と元妻の里美の掛け合いが
    なかなか面白かったです。

    これ、ドラマにしてもいい作品かも。

  • 認知症老人の誤運転による死亡事故に関わる社会派小説だと思っていたらトンデモない!!
    被害者家族、加害者の暮らす村、事故に至る真相·····
    事故なのか?事件なのか?
    巧妙に語られるジャーナリストの推理と決断。
    重いテーマのはずが、楽しく読めたエンタメ作品でした!!

  • 染井作品「悪い夏」「正義の申し子」からの「震える天秤」

    人間の「強さ、弱さ、醜さ、良心」のような心の動きがありありと描かれていて、一線を超えた人間の怖さを感じる作品でした。フィクションですが。

    3作品の名で、1番登場人物が皆まともでした笑

  • (図書館本)お勧め度:☆6個(満点10個)読み終えてちょと考えさせられる内容だった。主人公のジャーナリストとしての考え、結果として彼の答えは正しかったのか?ことは、殺人事件である。タイトルの「天秤」は勿論、司法のことだと思うけど、事件の隠蔽とも捉えられる結末。正に、サスペンス物によくある、知らなくていい真実の賜物のような小説だと思う。内容は、老人のブレーキとアクセルの踏み間違いによる交通事故を取材する主人公の葛藤を描いたものだけど、ラストはちょっとウルウルとくる終わり方だった。これはこれでありなのかな?

  • なんか面白かった。
    律と同じところで違和感を覚え、同じところでもっと知りたいと思う。読者の感情を置いてけぼりにしないどころか、全く同じ目線で読み進めていける。取材中の強引な律の言葉に、頼り甲斐があるなぁ、なんて感じてしまうほど。
    最後の最後まで、まさにタイミングもぴったりに佐久間と一緒に「えーっ。なんだよそれー」と叫んでしまった。

    読後に著者のプロフィールを見たら舞台のプロデューサーだった方のようで、なるほど納得。
    見せ方がうまいわけだ。
    他の作品にも触れてみたい。

  • 震える天秤。まさに、このタイトルです。凄いです。切ないです。現代社会の問題です。

  • 著者の作品を読むのは3冊目だがテイストがそれぞれ違っていてなかなか読んでて楽しい作家だ。最初に読んだ「正体」で堂場瞬一さん風を感じたが、この作品の方が先だけど、これもやはり堂場さん風を感じた。いい意味です。この作品も最初は訳の分からんような話がきれいにまとまって行って感心する。主人公の気持ちもよく分かるし、関係者も。今後も注目していきたい作家さんだ

  • じゃあ何か。おれはお前の個人的な趣味のためにあれこれ協力しただけという事か。

    結局、主人公の取材は個人の趣味に陥った。ジャーナリズムでも、正義でも、真実の追求でもない。だから、彼は逃げたのではないが、ライターをやめるしかなかったのでしょう。責任を負う覚悟がなかったのだから。

    高齢ドライバーの事故の真相を追う姿は、鋭さを感じる一方、「知る権利」をかざすマスコミの負の面が強調され不快な気持ちになる。加害者側に同情させようとしている訳ではないと思うが。

    主人公の「良心に従った判断」の是非は、どうだったのでしょうか? 記者としては、失格。人としては、…。

    事件終了後、村長らは、村人になんと説明するのでしょうか? 犯罪の共犯として村人を巻き込む算段でしょうか? 巫女・七海の「神罰を下す」は、神通力を持ち続けるのだろうか。例え被害者が殺されても仕方がない人物であっても。
    私は、なんとなく、事故を起こしたドライバー落井氏が、退院後自首するような気がしてしかたがない。

  • 孤立した村と村人の事件の話。
    山奥の村って言う舞台がツボだった。道路も舗装されてない川が流れるのどかな村なのに、村の時代錯誤なルールやら他所者に排他的な態度とのギャップがよかった。
    ずっと何が天秤にかけられているんだろう…って考えながら読んでて、正義と不義、生と死かなて思った。


    あと、主人公元夫婦も両極端な人達だと思った。

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著者プロフィール

染井為人(そめい・ためひと)
1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。本作は単行本刊行時に読書メーター注目本ランキング1位を獲得する。『正体』がWOWOWでドラマ化。他の著書に『正義の申し子』『震える天秤』『海神』『鎮魂』などがある。


「2023年 『滅茶苦茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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