- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041085615
作品紹介・あらすじ
12月のある日、加奈江は同僚の男から突然平手打ちをされる。しかも男はそのまま退職してしまった。加奈江は悔しさのあまりその男を探して銀座を歩き回るが…(「越年」)。恋愛にまつわる傑作短編を収録!
感想・レビュー・書評
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金魚繚乱や老妓抄など8編。
文章がとても美しく、物の表現の仕方に作者の豊かな感性を感じた。
話の内容も耽美でまだ夢の中にいるような読了感。
私はとくに「夏の夜の夢」が好きです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
8編からなる短編集。
恋愛小説集と副題にあるが、甘さとはほど遠い、独特で少し奇妙な、幽かに漂うような恋情ばかりである。
呆気にとられたまま置いてけぼりをくうような「気の毒な奥様」、胡散臭いと思っていた老人の思いもよらぬ正体に息を飲む「家霊」。
タイトルにもなっている「越年」や「夏の夜の夢」は若者たちの恋心を扱っているが、それこそ夢の中の出来事のようなつかみどころのないような雰囲気がある。
短編の名手ともいうべき一冊。 -
表題作含む短編8編収録。初めて岡本かの子は読みましたが巻頭を飾る「金魚繚乱」からして私の好みどストライクでした。兎に角、文章が美しい。水や緑の匂い、花の色、水中を泳ぐ煌びやかな金魚達。描かれる豊かな香りと色彩は官能的で男女の複雑な心理を時には鮮明に、ある時は靄に包まれたかのように遠近感をもって綴られています。「気の毒な奥様」はユーモアな掌編で思わずクスリと笑ってしまいました。「夏の夜の夢」の風景は幻想的で美しい。1番のお気に入りは「過去世」。兄弟の倒錯した愛憎を描いた本作は文章の間から立ち昇る淫靡な色気が壮絶。もっと岡本かの子の作品を読みたくなりました。