スワン

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 130
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041086391

作品紹介・あらすじ

首都圏の巨大ショッピングモール「スワン」で起きたテロ事件。死者二十一名、重軽傷者十七名を出した前代未聞の悲劇の渦中で、犯人と接しながら、高校生のいずみは事件を生き延びた。半年後、取り戻したはずの平穏な日々は、同じく事件に遭遇し、大けがをして入院中の同級生・小梢の告発によって乱される。次に誰を殺すか、いずみが犯人に指名させられたこと。そしてそのことでいずみが生きながらえたという事実が、週刊誌に暴露されたのだ。被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに一通の招待状が届く。集まったのは、事件に巻き込まれ、生き残った五人の関係者。目的は事件の中の一つの「死」の真相を明らかにすること。彼らが抱える秘密とは? そして隠された真実とは。圧倒的な感動。10年代ミステリ最後の衝撃!

感想・レビュー・書評

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  • テレビで特集されていたので、購入。

    冒頭では、事件のシーンが書かれていて、淡々とした文章が羅列しているのに事件の迫力が伝わってきます。
    その後は、何か意味ありげな生存者5人が招かれて、ある一人の被害者の死の真相について、明らかになっていきます。
    なにか秘密を抱えていそうとは思ったのですが、どう終わりに近づいていくのか、わかりませんでした。なので、どんどん予想しない展開に圧倒されるばかりでした。最後はちょっと前向きにさせるような終わり方でしたが、余韻は深く残りました。悲劇の連鎖は、いつまでも続くということを見せられました。

    この事件の真相は?とどんどん引きこまれていく一方で、複雑な気持ちにもなりました。事件には関わっていない真相を知りたくなっていく。事件を知ったところで、また新たな事件に興味を持つ。あまり深くのめり込みすぎると、誰が悪いのか、もちろん犯人が悪いのに死亡すると、新たな悪を探そうと奔走する。それで、批判する。その現場にいた人の心情は異常なのに的確な判断ができません。
    後になって、第三者が冷静な判断で、分析したところで批判する立場ではありません。それが終わったら、別の事件を取り上げる。当事者はずっと続きます。その人にしかわからない心情があるので、第三者は掘り下げないことが大切だと実感させられました。
    人間って罪深いなぁと改めて思ってしまいました。
    もしもその状況にいたら、どんな判断をし、どんな行動ができるか、あなたはどうですか?と問われたような作品でした。

  • ショッピングセンターで起こった無差別テロ。手製の銃と日本刀で手あたり次第に人を殺していく2人の犯人たち。ゴーグルにつけたカメラで録画した映像はSNSに流される。
    なんてこった。どんな事件だよ。ひどすぎる。と憤りながら読むのだけど、事件には謎が多すぎて全貌が見えない。

    被害者21名のうち多くは展望ラウンジにいた。そこで二人の女子高生が生き延びた。世間は一人に同情し、一人を責めぬく。なぜか。なにが二人の明暗を分けたのか。ラウンジでいったい何が起こっていたのか。

    生存者5名が招待された、目的のわからない茶話会。ラウンジで生き残り世間からの非難を一身に受けている女子高生いずみ隠している真実とは。
    なんだろう、この息苦しさは。そこであの日何が起こっていたのか。「真実」はどこにあったのか。すべてが明らかになってもなお消えない、いや、明らかになったからこそ消せないこの痛み。
    理不尽と理不尽が重なり合うとき、そこに生じる暗闇の深さたるや。
    どうすればよかったんだ。ほかに何ができたというんだ。
    誰もが他人事でしか体験できないこの最悪の状況をもうしばらくの間味わっていたい。

  • 重く、心に残る物語でした。
    自分だったら、一体どうしたのだろうか。

    無差別銃撃事件に巻き込まれた人物の、その後の話。
    自分がその時「正しい」と信じた行動が、自分自身や他人によって、疑念に変わっていく。人によっては責め立てられる。犯人でもないのに。

    どんな事件も、当事者にしか分かり得ない思いがある。
    現実の報道でも、その時あった真実が果たしてどのくらい伝えられているのだろうか…。

    きっとこの先どの報道を見ても、残念ながら、当事者の気持ちを本当に心から理解することはできないのだろう。
    でも誹謗中傷に走るのではなく、「真実はその人たちにしか分からない」と考えて、とどまりたい。そう強く感じました。

    簡単に人を傷つけてはいけない。
    何も知らないなら、尚更。

  • 大型ショッピングモール「スワン」で起こる無差別テロ。犯人グループは手製の拳銃を使い次々と人を撃ち、その様子は犯人の手によって撮影されネットに公開された。事件後、ある老人の死の真相を探るために5人の生存者が集められる。そこでは現場を生き延びた者だけが知る恐怖と苦悩が語られる。部外者は勝手に「謎」と呼ぶが、その場所にいた人間にとってはただの「事実」。自分ならどうしたかと自問してしまう作品。

  • ショッピングモールで起きた無差別連続殺人事件。だがそれは、この物語の序章でしかない。あの時何が起こったのか、事件に遭遇しながら生き残った関係者が集められて再検証された先にあるものは……著者が新たなステージに上がったのではないか、と思えるほどの作品だ。ラストシーンが実に素晴らしい。

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著者プロフィール

呉 勝浩(ご かつひろ)
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞。2018年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞し、吉川英治新人文学賞候補にもなった。

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