毒牙 義昭と光秀

  • KADOKAWA
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041086438

作品紹介・あらすじ

織田信長から助力を得て、上洛を果たした足利義昭は、兵力もない形ばかりの将軍となった。だが、才気溢れる明智光秀との出会いが、彼の心を大きく揺るがしていく──。新たな視点で描かれる本能寺の真実とは。

感想・レビュー・書評

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  • 主要人物 足利義昭、織田信長、明智光秀

    目的のために、自分を信じてくれる人を犠牲にする。足利義昭はその信念を持って乱世を戦い抜いてきたが、最後には後悔が残るだけだった。

    人を裏切り人が離れていき、落ちぶれていく義昭は可哀想にも思えた。

    信長からみると厄介で卑怯な将軍に見えるが、視点を変えると外交だけで大きな戦を指揮し、いかに信長を苦しめたかというところから義昭の凄さがわかる。

  • 足利義昭を主人公にした物語。兄の足利義輝を討たれ義昭自身にも危機が迫るなか織田信長と言う庇護者の元将軍となるが義昭は将軍の名の下に統治を目論むが信長は義昭を信長の治世の道具として考えすぐに互いの齟齬を生む。物語では明智光秀は実直な武将として描かれており義昭の毒牙に少しずつ蝕まれてゆく

  • 室町幕府最後の将軍、足利義昭を主人公とする歴史小説。

    織田信長にいいように利用され、逆ギレして自滅した暗愚な将軍というイメージの足利義昭。が、本小説の義昭は知略に富み、時代を先読みし、信長と対等に敵対する。兵を持たない義昭は将軍の威光と書状で戦国時代の勝者を目指す。

    特に将軍を心底、崇拝する者へのマインドコントロールは天才的。その術中にはまってしまったのが明智光秀。義明は光秀の心を巧みに操り、信長への猜疑心を植え付け、やがて本能寺の変へ。

    足利義昭が優れた策略家であり、明智光秀は気が弱いお人好し。架空の設定ではあるが、義昭が戦国武将たちを言葉巧みに操って、世の中を渡っていく様は痛快。

    信長、光秀の死後、秀吉の保護下で安らかに天寿を全うした実際の足利義昭は戦国時代の勝者の一人とも言える。

  • 足利義昭の視点で、光秀と信長、ひいては、戦国の世の移り変わりをみていくもの。
    なかなかに面白い。たしかに言い得ている。光秀を人が好く、細やかに過ぎる人として捉え、武士としては頼りなく映るほど優しい心根であるからこそ、信長を信じられなくなり、光秀は本能寺の変を引き起こす毒牙となったのだ。
    本能寺の変をある意味、よく描いている作品でしょうね。

  • 久々に完走して視聴した大河ドラマ「麒麟がくる」のちょっぴりロスと知識の補完のために手に取った作品。
    今まで、光秀=裏切り者、という薄ーい知識しかなかったんだけど、大河では光秀の周囲の様々な人々が「信長を討て」という期待で光秀に接しすぎていて、周囲の期待と時代の奔流に呑まれるような流れで謀反、という印象でした。
    まぁ、大河の光秀も、この作品の光秀も、どちらも「有能過ぎた、人の心情を汲むことに長けすぎていた」という「いい人」が損をする、というなんとも苦い結末ではあるのだけれど。大河ドラマでも有能過ぎて、周りからどんどん依頼や役割を負わされてしまい、(「あ、また光秀クエスト受けちゃったよ」とか言いながら観てたワタシです(笑))なまじ人心を読むことに長けているもんだから、相反する立場のどちらの心情もわかるよ、わかるよ、でも、どうすれば…って自分を追い込むことになっていくのが観てて辛かったですもの。
    大河が光秀の周囲すべてが彼を心理的に追い込んでいっているのに対して、この「毒牙」という作品では将軍の足利義昭が主となって(と言うか、ほぼ単独で)じわじわと巧妙に光秀の心を壊していく。
    ただ、義昭自身、光秀の才と人柄は認めていたし好もしいと思っていたにも関わらずに、だ。この辺りになんというか、お気に入りの人物への好感と、それを操って謀りごとを少しずつ確実に進めていくという、相反する仄暗い喜悦の感情が義昭にはあったのではないだろうか。こんなに有能で人に優しい光秀が、自分の仕掛けていく謀りごとの毒でゆっくり少しずつ墜ちていく、うーん、仄暗いですね。まぁ義昭が仄暗くなってしまう時代と周囲の背景ももちろんあるのですが…。
    秀吉が天下を獲ったあと、再び得度して仏門に入った義昭と秀吉の最後の会話もなんだか苦い含蓄があります。
    「世を正しく保つためには、天下の主は力ある者や功ある者を早めに除かなければならない」
    これが信長のことを指しているのか、光秀のことを指しているのか、おそらく両方なのではないだろうか。
    一見矛盾した言葉のように聞こえるが、おそらくこの作品を読了したあとであれば、なるほど苦い含蓄を持った言葉に聞こえることだろう。
    なんていうんですかね、清濁併せ呑むというか、この世は智慧者とか正しいことだけでは回らないというか、それが現代の政にも当てはまるのかどうかはワタシは語りませんが、愚かしい部分も許容しないと駄目なのかもしれませんね。この世は無菌の清潔な世界ではないのですから、ちょっと悲しいことかもしれませんが。

    光秀の謀反の真相は歴史上謎に包まれているので、様々な解釈があるのですが、この作品はなかなか読み応えがあって面白かったです。

  • <毒牙>という題名に2人の人名が付されている。義昭は「足利義昭」で、光秀は「明智光秀」である。
    足利義昭は、室町幕府の15代にして最後の将軍であった人物である。かの織田信長が彼を擁して京都に入って、彼は将軍となったが、後に織田信長によって駆逐されてしまった。そして足利義昭に仕え、後に織田信長に仕え、<本能寺の変>で織田信長を倒してしまうのが明智光秀である。
    本作はこの足利義昭と明智光秀とを中心視点人物に据えた小説である。義昭が中心の部分と光秀が中心の部分とが在るのだが、義昭が中心の部分の比率が高い。
    将軍位を継承し得る者を出す一族に産まれながら、嫡男ではなかったことから仏門に入って興福寺で僧として活動していたが、兄で将軍であった義輝が害されたことから「将軍位を継ぐ者」として擁立されて人生が大きく変わった義昭が在る。この義昭の目線で、織田信長に擁されて京都に入ることになるまで、将軍に就任、織田信長と共に「世の秩序」の確立を目指そうとした頃、やがて織田信長に反感を抱くようになって、様々な手段で織田信長を排しようとする頃、そして織田信長に駆逐される頃、更にその後というような「信長が台頭した時代」を「裏側になる義昭の目線」で語っているというような感であるのが本作だ。
    その義昭の目線で語られる物語の中に、義昭と信長の両者の間で動き回るということとなった光秀の想いというような事柄が挟み込まれている。光秀は、義昭が身を寄せた越前の朝倉家の食客であった。義昭側と朝倉家との連絡調整役を請け負うこととなった。義昭の将軍就任を果たす率兵上京を実現すべく織田信長への使いを果たさなければならなくなった時、光秀は「義昭の臣下」ということになる。他方、光秀と出会った信長は光秀を高く評価し、自身の臣下としようとする。本作での描かれ方だ…
    「将軍」とは言っても、義昭の足利家に軍事的な威力、そして軍勢を支える経済的基盤等は無きに等しかった。それでも「将軍」という名と地位には「圧倒的な権威」は在った。その権威が利用される、または敢えて利用させるということで、義昭の将軍就任の頃からの歴史は在るのかもしれない。
    本作は、これまでに在りそうで、意外に無かったかもしれない視点で、「織田信長が駆け上がろうとし、もう直ぐ天下を取りそうになった経過」が描かれ、なかなかに興味深い。非常に愉しく読んだ。

  • 義昭主役、コイツはポンコツじゃない
    御行書や会話を毒牙に一人の心を蝕む
    久秀はステレオタイプだったが最新の
    研究成果に基づいた事実にそい適度な
    想像を加えてステキな物語に仕上げた
    大河のおかげで時代背景本読んだ成果
    により、この本の面白さが増した
    主役の三人は全員天下静謐目指してる
    信長との亀裂原因を北畠攻めにしてて
    タイミングで言えばそうなのですが、
    5ヶ条覚書内容が御行書中心と思う
    (物語的には北畠問題が正解)

  • 今年の大河ドラマの主役明智光秀繋がりで手にした一冊。

    本能寺の変に至るまでの足利義昭と明智光秀を斬新に描いており、読み物としては中々面白い。

    それにしても光秀、武将としては他より優れておりながら最後は無念。何故か石田三成の重なる。

  • 織田信長は、執念深い。昔の裏切りも、諫言も、決して忘れない。その性格が義昭を、そして、光秀を裏切りへと掻き立てる。
    良い作品であった。

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著者プロフィール

吉川永青
一九六八年東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。二〇一〇年「我が糸は誰を操る」で小説現代長編新人賞奨励賞を受賞。同作は、『戯史三國志 我が糸は誰を操る』と改題し、翌年に刊行。一二年、『戯史三國志 我が槍は覇道の翼』で吉川英治文学新人賞候補。一五年、『誉れの赤』で吉川英治文学新人賞候補。一六年、『闘鬼 斎藤一』で野村胡堂文学賞受賞。近著に『新風記 日本創生録』『乱世を看取った男 山名豊国』などがある。

「2023年 『憂き夜に花を 花火師・六代目鍵屋弥兵衛』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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