法廷通訳人 (角川文庫)

  • KADOKAWA
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041087503

作品紹介・あらすじ

「判決重うなったんは、あんたのせいや!」劇場で見るような、怒り、涙、かけひき、ため息、飛びかう法律用語、適切な訳語への迷い――「裁判で通訳する」リアルを描き出す、胸を衝く法廷ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 関わりの薄い遠い世界の出来事ではあるが、興味深かった。

  • 327-C
    文庫(文学以外)

  • とても読みやすく、好みの文章だった。
    裁判での通訳という仕事を通して、その実務の傍に常に潜むさまざまな自問や葛藤。著者の出自から来るものもあれば、日本の裁判制度に寄るものもある。法廷通訳の仕事に資格や試験が無いことも、著者の自問の要因の一つになっているのだろうなと思った。
    必要とされているからとにかく目の前の職務を全うするまで、と割り切ることも、そのような自問を繰り返しながら責任を再確認していくことも、どちらも大事なのかもしれない。
    プレッシャーに読んでいてこちらも息が詰まるほどの場面もあった。

  • 通訳に私見は不要、これって一番難しいと思うのです。
    聞いた言葉を、相手の文化を理解した上で、自分の経験を挟まずに、真っ直ぐに通訳するなんて…。
    しかも法廷という人生を左右する場です。大変なお仕事と察しますが、著者の文体が柔らかくて温かいためか、悲惨な気持ちにならずに読了できたと感じました。

  • 法廷で韓国語を母国語とする容疑者等の通訳をする『法廷通訳人』という、そういえばそんな人が必要だよね、という職業に就いた著者のエッセイ。
    著者は通訳とはいえ母語の人とニュアンス的な違いに困惑したり、裁判員裁判制度の導入による複数人体制で同業者と手探りで通訳にあたったりと、興味深く読みました。

  • 難しい法律実務に携わる通訳の方によるリアルな記録。視点はあくまで通訳としてのもの。裁判に参加する関係者から発せられる全ての言葉を逐次もしくは同時に訳すとのこと。法律用語や裁判用語のようなテクニカルなことばだけでなく、感情的になりがちな被告人のことばも訳す苦労並大抵ではないだろう。速記人との目線と頷きを通じた意思のやりとりの話や、その日の通訳の歯車がカチっとあったり合わなかったりする感覚の話は、外国語を使って仕事をしている身としては大きく共感した。

    単行本版は短いエッセイの集まりだったようだが、文庫本版については、控訴審までいたったある裁判案件に関する記録「抜け落ちた歯」が追加収録されている。このエピソードだけで映画が一本十分に撮れそうな話。和歌山向かう特急ラピードの車内に雰囲気や、天満の造幣局のあたりの風景を思い出しながら読んだ。

  • 裁判所での韓国語の通訳を行う法廷通訳人である著者のノンフィクション作品。

    通訳業務を行ったことのある人であれば、
    同感できることがたくさん書いてあると思います。

    一方、法廷という場所で通訳をすることの緊張感を感じることができます。同じ場所に立ち会う立場の違う人々との立ち位置を配慮しながら、自分の口から発せられる言葉が人を動かし、証拠となり、最終的に人の人生を変えてしまうかもしれないということを自覚しながら仕事をされています。

    どんな通訳も大変な仕事だと思います。

  • 初めて聞く職業の話だったが、今やコンビニや飲食店に入ると若い外国人の店員さんが沢山いる中で、より必要とされていく存在なんだろうなと思った。主観的な話が多いが、こういう考えもあるんだなと考えさせられました。

  • 本屋でふと手に取り、「韓国語は全然わからないしな〜」と棚に戻そうとしつつ背表紙を見ると……

    “「わたし、通訳いりません」「判決重うなったんは、あんたのせいや」「アナタ、モウ、イイ」”

    ええええっ。何この怒涛の心折りまくりワード。パラパラと中をめくってみると……

    “「ところで失礼ですが、証人は普段、家では何語で話すのですか」
    (中略)
    「それでは、家では、お父さんとお母さんは韓国語で話して、息子さんとお母さんは日本語で話していた、ということなんですね」”(p80)

    たまたま開いたところにこのセリフがあり、購入決定。レジへ直行しました。

    「アナタ、モウ、イイ」は、想像していたものとは違う意味での発言でほっとしましたが、もう気分は著者の丁海玉さんになりきってしまい(←おこがましくも)、全般に渡って胃の痛い読書体験でした。

    韓国語のわかる・わからないは関係ありません。“ことば”が好きなすべての人にオススメ。

  • 母語が日本語同士でも上手く伝わらないことがあるのに、裁判で通訳を介して、となったらお互いに理解することだけでも難しいだろうな。裁判の様子も丁寧に描かれていて、興味深かったです。ただ「抜け落ちた歯」の被告人とは本当に一線を引き続けることができてたのか?読んだ感じでは被告人よりになっている気がした。

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著者プロフィール

1960年神奈川県川崎市生まれ。在日韓国人二世。幼少期を北海道旭川市で過ごす。1984年ソウル学校人文大学国史学科卒業。1992年大阪高等裁判所通訳人候補者名簿登録。大阪、広島、名古屋。高松各高等裁判所管内にて法廷通訳研修講師(韓国語)を務める。2002年に発表した「違和感への誘い‐‐法廷通訳の現場から」(『樹林』448号)が第22回大阪文学学校賞(エッセイ・評論・ノンフィクション部門)を受賞。著書に、詩集』こくごのきまり』(土曜美術社)がある。詩誌『space』同人。

「2020年 『きょうの肴なに食べよう?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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