オカシナ記念病院

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041088210

作品紹介・あらすじ

離島の医療を学ぼうと、意気込んで「岡品記念病院」にやってきた研修医の新実一良。
ところが先輩医師や看護師たちはどこかやる気がなく、薬の処方は患者の言いなり、患者が求めなければ重症でも治療を施そうともしない。
反発心を抱いた一良は在宅医療やがん検診、認知症外来など積極的な医療を取り入れようとするが、様々な問題が浮き彫りになっていき――。
現代医療の問題点を通して、生とは何か、死とは何かを問いかける。
著者渾身の医療エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 研修医の新実一郎は、後期研修で離島医療を学ぼうと、沖縄本島北東に位置する南沖平島へやってきた。
    タイトルから、島の人々と病院での面白いドタバタ劇かと予想して読み始めたが、この作者らしい問題提起を含んだ、予想以上の面白さだった。

    人間として生き尽くす上で、本当に必要な医療とは何なのか、改めて考えさせられる。
    個人的には、縮命だけは素直に受け止めがたかったが、あえてここまで書きながらも、シリアスではなくシニカルな印象に描いていて、最後まで楽しめた。

  • 現役外科医で作家の中山先生(‪@NakayamaYujiro‬)の書評を読み、購入。
    医療とは、幸せな人生の閉じ方は、というようなことを考えながら読みました。
    時に、医療が不安や病気を作り出すこともある。
    やってみないと治療効果はわからない。
    打つ手がない時は医療よりも宗教の方が心の平穏に寄与することも。
    物語という形を取っているからこそ、頭でっかちでなく、素直に心に入ってきて、いろいろ考えさせられた。
    死生観を少し変えたかもしれない一冊。

    https://kadobun.jp/reviews/41k6qk1iy4cg.html

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    離島の医療を学ぼうと、意気込んで「岡品記念病院」にやってきた研修医の新実一良。ところが先輩医師や看護師たちはどこかやる気がなく、薬の処方は患者の言いなり、患者が求めなければ重症でも治療を施そうともしない。反発心を抱いた一良は在宅医療やがん検診、認知症外来など積極的な医療を取り入れようとするが、さまざまな問題が浮き彫りになっていき―。現代の医療の問題点を通して、生とは何か、死とは何かを問いかける。著者渾身の医療エンターテインメント。
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    エンターテインメントとして書かなければ、さまざまな軋轢を生むだろう問題が凝縮されている。文句なく面白いのだが、その裏には、現代医療の抱える問題がうずたかく積み上げられているのだということを、改めて突き付けられる思いである。気づいていながら気づかないふりをして、医者の言うなりに検査を受け、薬を飲んでいるいまの状況を、患者側の意識改革だけで何とかするのは至難の業だろうが、少しでも立ち止まって自分の頭で考えたいと、切実に思わされる。医療関係者すべてに読んでほしい一冊でもある。

  • 離島の病院にやってきた若い研修医の物語。ユーモアを交え読みやすい文章ですが、非常に深い、考えさせる物語でした。

        この病院で彼が目にしたのは、積極的な治療をせず、時には患者に違法とも思えるような行動をとる医師や看護婦たち。憤る研修医だが、島の住民たちも皆そういう治療を望んでいたのです。

    不安ばかり煽る現代の現在の医療への問題提起のような内容で、癌患者や喫煙者、健康診断に対しても積極的な治療や禁止や勧奨を押し付けない院長。確かに辛い治療をしても癌が完治することはない。自分の最期くらい死ぬ権利を認めてほしいかも。
    毎年、がん検診に行っていたけど、これを読んだら今後はちょっと考えてしまいます。

  • この話が堅い書き方でなくちょっとゆるくした書き方だからスッと入ってくる。高齢になった時を考えようと思った

  •  研修医・新美一良の離島での後期研修2年間を描く。物語は Episode1 : 赴任 からEpisode8 : 離任 までの8話からなる。

          * * * * *

     当初の予想とは違い、ギャグ要素の強くないコメディ仕立てで現代医療に一石を投じる作品でした。

     岡品記念病院の医療スタンスにはなるほどと頷けるところが多い。

     終末期の過剰医療、診療報酬を上積みするためとしか思えない過剰検査、患者の訴えを十分聴かず規定路線の医療措置を押しつけてくるだけのお仕着せ診療。

     そんな問題医療は現実に見聞きしているだけにリアリティのある描写でした。

     新美が島に残る選択をしなかったラストシーン。「できるだけ何にもしない」医療が絶対的に正しいのかどうかについて、作者はわざと明言を避けたのだと思います。

     現代医療に対するスタンスは、患者自身も確立しておくべきですよ。

     医師でもある久坂部氏からの我々に対する宿題なのではないでしょうか。

  • ありのままに死ぬ事が、今、一番難しい事じゃあないかな?「知らぬが仏」という言葉もある。歳をとれば体にガタがくるのは当たり前。こう割り切ってしまえばいいのだけれど、中々そうもいかない世の中。『ほどよい医療』をしてくれるお医者さん探そう!

  • まあいつもの久坂部節炸裂の問題提起小説です。

  • 久坂部さんの作品にはいつもいろいろ考えさせられる。読みながら、いろいろ考える。どう生き切るのがいいのか、どう死を迎えるのがいいのか。自分の場合、家族の場合でも思いや迷いがたくさん出てくる。いろいろ、いろいろ考える。

  • 研修医が南の離島の病院に赴任する。島民も病院も、何もしないことがいいこと、ありのままを受け入れて積極的な治療をしない。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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