甘夏とオリオン

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • KADOKAWA (2019年12月12日発売)
3.83
  • (24)
  • (65)
  • (32)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 434
感想 : 59
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784041089125

作品紹介・あらすじ

大阪の下町、玉出の銭湯に居候する駆け出しの落語家・甘夏。彼女の師匠はある日、一切の連絡を絶って失踪した。師匠不在の中、一門を守り、師匠を待つことを決めた甘夏と二人の兄弟子。一門のゴシップを楽しむ野次馬、女性落語家への偏見――。苦境を打開するため、甘夏は自身が住んでいる銭湯で、深夜に「師匠、死んじゃったかもしれない寄席」を行うことを思いつく。寄席にはそれぞれに事情を抱える人々が集まってきて――。

みんなの感想まとめ

落語の世界に飛び込んだ女性の成長と仲間との絆を描いた物語は、心温まる人情と共に、笑いと涙を呼び起こします。主人公の甘夏は、失踪した師匠を待ちながら、落語の魅力を再発見し、仲間たちとの絆を深めていく過程...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大阪弁が心地よく感じる、落語家たちの物語でした。師匠の失踪から始まり、三人の内弟子たちが深夜に開く寄席の様子、それぞれの落語家としての成長ぶりなどが綴られていました。

    落語の世界で、女性がやっていくことの大変さ、それをわかった上で頑張る姿を応援しながらの読書でした。

    師匠を待ち望んで、主人公の桂甘夏と兄弟子達が立ち上げた寄席は、とても粋な趣向でした。そこで繰り広げられる数々の落語が、興味をそそりました。

    女性が男性の芸のなかにはいって、認めてもらうまでに味わったことは、好意的なものばかりではないところが現実的でした。甘夏の兄弟子たちやその他の登場人物も、人間味に溢れていました。

    エピローグを読むと色々なことが想像できて、読者の私は自分なりに物語を終わらせることができました。そして、女性の落語家の噺を聞いてみたくなりました。


    〈目次〉
    第一章 師匠失踪
    第二章 宿替え
    第三章 泣き虫甘夏
    第四章 うなぎや
    第五章 鴻池の犬
    第六章 代書
    第七章 発覚
    第八章 『つる』の道
    第九章 深夜寄席
    第十章 狐と掏摸(すり)
    第十一章 らくだ
    第十二章 仔猫
    第十三章 小夏乱心
    第十四章 西の旅
    第十五章 ちくわとドーナツ
    第十六章 前夜
    エピローグ

  • 以前観ていた朝ドラ『ちりとてちん』を思いだしながらの読書だった。あのドラマでも"寿限無"や"崇徳院"をよく聴いたっけ。

    『ちりとてちん』同様、本作の主人公は女性の落語家"甘夏"。尊敬する師匠・桂夏之助に名付けてもらった名で、兄弟子たちに叱咤されつつもひたすら修行に励む日々を送っていた。
    そんな中、突然夏之助師匠が失跡。
    行方知れずとなった師匠の帰りを待ちわびる弟子たちの日々を綴った物語。

    今まであまり落語に縁がなかったけれど、落語の世界観が、一見無関係の映画や歌に通じていることに関心した。
    そして師匠の言葉「八方塞がりに陥ったとき、もうどうしようもないと思ったときにも、必ず突破口はある。答えは、落語の中にある」がとてもしっくりきた。
    不器用でアホ(いい意味でもある)な甘夏。様々な壁にぶち当たっても師匠の言葉や師匠や兄弟子たちの落語を通して日々成長していく様にとても好感が持てた。
    何より『師匠、死んじゃったかもしれない寄席』と題して月一の深夜0時から行われる落語会がとても面白かった。たくさんの落語が読めて楽しめた。
    落語の「語り」に私も何度も心揺さぶられた。
    前回読んだ『今夜、喫茶マチカネで』と同じく、語りの力に魅せられた。

  • 上方落語を舞台に失踪した師匠の帰りを待つ弟子たちの成長を描いた話。主役の3番弟子「甘夏」が中心となって物語は展開するが、兄弟子たちも個性があって、それぞれに乗り越えて、いい味出している。
    ちりとてちんの世界みたいな

    印象に残った言葉。
    「本来は見えへんもんを、見えるようにすること」
    落語も小説もおんなじ。

    ストーリーもさることながら、読んでいるのにその場で落語を聴いているように感じる噺の描写が素晴らしかった。

    で、大阪の人情ってのは、味わい深いと言って良いのか分からないけど
    突き放しているようで、放っていない。
    ストレートに見えて分かりづらい。
    居心地が悪そうで、そうでもない。
    なんだかんだで寄り添って応えている。

  • 知っているつもりでちゃんとは知らなかった、というか、漠然としか知らなかった「落語」。
    子どものころからなんとなく耳にしてはいたけれどじっくりと聞いたことがなかった「落語」。
    最近はせいぜいテレビの笑点でくらいしか目にしない。
    そんな落語、しかも大阪の落語を、大阪生まれの増山さんが描くんだから、そりゃもう面白いに決まってる。
    そして、予想通り、しっかりと面白い。面白いのにあちこちでほろりとさせる、まさに落語の世界そのものだ。

    女には無理だと言われても、なんとしても落語家になりたいと桂夏之助に弟子入りした甘夏。
    三か月だけ先輩の若夏、そして兄弟子の小夏。それぞれの落語愛にしびれる。
    夏之助の出奔が三人の弟子に及ぼした影響。それぞれの過去と事情、そして未来への想い。
    いいねぇ。なんだろう、この温かみは。大阪弁のおかげか。
    じんわりと心がほぐされていく遠赤外線のような一冊。寒い夜に読むのにピッタリだ。

  • 過去のある事が原因で自分自身の本心を隠して生きてきた主人公がひょんな事から目にした落語の一席をきっかけにその世界に入って行く。
    その噺家に弟子入りし、日々追われていたある日師匠が突然行方知らずになって、、。
    女性噺家であるが故の苦悩、難しさを少しずつ受け入れつつも乗り越えようとするストーリーに自然と引き込まれました。出て来る噺家は皆癖のある方々ばかりですが、それぞれの落語に対してのスタンスや信念が丁寧に描かれていて、嫌な感じはしない。
    会話場面が多く全体的に読みやすい文章に感じました。沢山の落語のネタが出てきます。落語とは無縁でしたが、読んでいるとどのネタも聞いてみたくなりました(本作をきっかけに初めての寄席にも行きました。落語面白いです)

  • 大阪弁が流暢なので上方落語の雰囲気が良く出ているし、落語の知識が豊富なので楽しめた。女流落語家の視線は差別との闘いの視線でもあり、頼みとしていた師匠の失踪は、彼女たちをとても辛い立場に追いやっていくのだが、何人もの師匠たちが助けるのは、それは落語という伝統芸能が絶滅の危機を繰り返してきた歴史からの学びであり、若手の落語家を宝だとする精神から、他門の人間にでも話しを教えるということなのだと思った。たくさん落語が出てくる。あらすじを解説してくれるのでわかりやすい。おもしろかった。

  • 近年女性落語家の活躍が目覚ましい。
    そんな背景を思い描きながら、重ね合わせながら読むと面白さ倍増。
    大阪の下町の銭湯の二階に居候しながら(これがまた落語家らしい・・・)修行に励む駆け出しの落語家「甘夏」女性。
    でもある日予定の高座に現れず、師匠が失踪してしまった。
    兄弟子二人と師匠を探しつつ待つことにした甘夏。
    銭湯で深夜寄席を開いたり(ひょっこり師匠が帰ってきやすいように深夜)師匠の足跡をたどる旅をしたり、そんな中でいろんな人と出会い、成長していく甘夏。

    随所に落語の演目もちりばめられ、楽しい、ちょっとじんわりするお話になっています。
    それにしても師匠、どこ行ってもたんやろ・・・

    ぜんぜん本が読めない、いや読んでいるのだけど、のめりこめる本に出合えない。
    故郷忘じがたく候・司馬遼太郎
    安西水丸のエッセィー
    タイトルも覚えていない本多数・・・ただ読んだだけ

  • 増山実の甘夏とオリオンを読みました。
    主人公の真夏は大学生の時にヤクザに声をかけられ、引っ越しのアルバイトをしました。
    お礼に余計にもらった3000円でたまたま落語を聞きました。
    甘夏はその落語のあほらしさに、今まで殻を破れなかった自分なの生きる道を見出し、弟子入りしてします。
    私にとって落語は朝早くテレビでやっているか、漫画で読んだぐらいしかありません。
    小説の中でも書いていますが、YouTubeやテレビと違って、生で聴くのは生きてる魚と死んだ魚位違いがあると言う位なので、1度は聴いててみたいものです。
    この本を読むに従って、なんとなく読んだ記憶がと思っていてブクログ調べてみたら読んでいました。笑

  • ここで描かれて落語家さんたちは、一癖も二癖もある人たちです。
    でも、落語の世界で生きていこうと、師匠が失踪しても、真夜中の風呂屋で「師匠、死んじゃったかもしれない」という寄席を開催するところなんかは、強さを感じます。
    タイトルにあるオリオンで、生き方を示すくだりは、色々な場面で使えそうです。
    落語を生で聴きたくなる本でした。

  • 師匠に失踪された女性落語家の甘夏と2人の兄弟子。
    師匠を待つために銭湯で深夜寄席を始める。
    3人の落語家としての成長、それぞれの過去。
    そして信じて待つことができる人間は強い。
    それだけ師匠は3人の弟子達に稽古以上の愛情を注いでいたのだろうな。

    落語の世界も他の世界と同じで女性は認められなかったり、上下の関係だったり、厳しいと分かった。
    特に上方落語では訛りの問題もあり、知らなかったことも。

    この本を読んで落語に興味が出て、物は試しにSpotifyで検索したら、Spotifyでも落語が聴けてまたまたびっくり。
    早速「つる」を聴く。こんなどうでもいい話(すみません)をこんなに大真面目に笑わせてくれるなんて。

    ところで、お師匠さんはどうなったのでしょう。。
    続編あるのかな?

  • 師匠が失踪する波乱の中一門を守り師匠を待つことを決めた甘夏と二人の兄弟子。深夜の落語会や九州への旅を経て成長していく姿が良かった。話の中で登場した落語もいつか生で見てみたいなと思う。ラストで「あの人はどうなったんだろう? 」と想像を膨らまされるところはなんだか落語のようで余韻の残るお話だった。

  • 一気に話に引き込まれました。
    面白かったです!
    落語歌の師匠が失踪して残された三人の弟子。
    個性的な弟子を通して見える師匠の姿。
    いつか帰ってきてほしいと願ってしまいました。

  • 女落語家の甘夏の師匠、夏之助が失踪した。甘夏と2人の兄弟子は落語会を開きながら、師匠の帰りを待つ。甘夏の父親との関係とか、師匠の失踪のこととか、すっきりしないと言えば、すっきりしないのだが、それがまた味わい深いと思えるような作品だった。

  • 甘夏と、出身地も学童にいってたのも一緒!
    真正の大阪人と書かれててうれしい…!

    突然失踪した師匠との思い出、落語の難しさ、
    落語の世界を描いたストーリーもおもしろいけど、
    玉出や北浜のおなじみの風景に
    知らなかった歴史があり、
    落語から大阪の昔の様子を想像するのがまた楽しいお話でした。

    落語って、自分の解釈ではしょったり付け加えたりしていいんや…
    今まで全然聴きに行ったことがなかったので
    行ってみたくなりました。

  • 師匠の失踪
    弟子とゲストの噺家で始める夜中の寄席
    落語は詳しくないけどタイトルに惹かれて読んでみて良かった
    師匠はその後どうなったかは分からないままだけど日常は続いていく

  • 落語家になりたくて弟子入りした甘夏だが、ある日突然師匠が失踪してしまう。
    2人の兄弟子と「師匠死んじゃったかもしれない寄席」を毎月開催し師匠の帰りを待つ。
    甘夏の成長物語ではあるが、その周りの人達の物語でもある。

    落語のお話しなので、たくさんの落語もサラッと内容に触れる感じで登場します。

    それにしても、師匠どこいったん、、

  • 初読みの作家さん。
    そうそうやっぱり生だよね。
    寄席に行きたい気分爆上がりですよ。
    いろいろ思うところはあれど、溢れる落語愛に⭐️1つプラス。

  • TLでながれて来た表紙絵に惹かれて、読友さんに落語のお話と教えて頂いて笑点しか落語は見たことがないのに挑んだ1冊。
    文庫だとこの装幀ではないということで図書館で借りた。三番弟子の女落語家甘夏の師匠が失踪したところから始まる。落語界だし、落語話も絡まるから登場人物が多いように感じたけれど失踪した師匠と主人公の甘夏に結びつく展開だから混乱することはなくいくつもの人間ドラマを読んだという読後感。
    人間いろいろ。ラストが切なくもホッとできてよかった。

  • 噺家の弟子三人が、失踪した師匠の背を追い足跡を辿り、女性弟子 主人公「甘夏」を中心に芸を磨いてゆく並大抵ではない道を歩む姿を描いた作品

    自分は寄席に行ったことはない
    ですが落語の寄席の雰囲気、つかみ、アドリブは、これこそ人にしかできない粋と感じます

  • 面白かった。
    久しぶりに、書き留めたくなる文章に出会って、ワクワクした。落語が好きなので、より興味が湧いた。
    師匠がいつ登場するのかと、待っていたが、予想外の展開で、なるほどねーって思った。

    知らんことを恥やと思う心を持て。世界はそこから広がるんや。
    心に響いた。

全53件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞した。他の著書に『空の走者たち』(2014年)、『風よ僕らに海の歌を』(2017年)がある。

「2022年 『甘夏とオリオン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

増山実の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×