甘夏とオリオン

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041089125

作品紹介・あらすじ

大阪の下町、玉出の銭湯に居候する駆け出しの落語家・甘夏。彼女の師
匠はある夜、一切の連絡を絶って失踪した。師匠不在の中、一門を守り、
師匠を待つことを決めた甘夏と二人の兄弟子。一門のゴシップを楽しむ
野次馬、女性落語家への偏見――。苦境を打開するため、甘夏は自身が
住んでいる銭湯で、深夜に「師匠、死んじゃったかもしれない寄席」を
行うことを思いつく。寄席にはそれぞれに事情を抱える人々が集まってきて――。

感想・レビュー・書評

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  • 上方落語を舞台に失踪した師匠の帰りを待つ弟子たちの成長を描いた話。主役の3番弟子「甘夏」が中心となって物語は展開するが、兄弟子たちも個性があって、それぞれに乗り越えて、いい味出している。
    ちりとてちんの世界みたいな

    印象に残った言葉。
    「本来は見えへんもんを、見えるようにすること」
    落語も小説もおんなじ。

    ストーリーもさることながら、読んでいるのにその場で落語を聴いているように感じる噺の描写が素晴らしかった。

    で、大阪の人情ってのは、味わい深いと言って良いのか分からないけど
    突き放しているようで、放っていない。
    ストレートに見えて分かりづらい。
    居心地が悪そうで、そうでもない。
    なんだかんだで寄り添って応えている。

  • 知っているつもりでちゃんとは知らなかった、というか、漠然としか知らなかった「落語」。
    子どものころからなんとなく耳にしてはいたけれどじっくりと聞いたことがなかった「落語」。
    最近はせいぜいテレビの笑点でくらいしか目にしない。
    そんな落語、しかも大阪の落語を、大阪生まれの増山さんが描くんだから、そりゃもう面白いに決まってる。
    そして、予想通り、しっかりと面白い。面白いのにあちこちでほろりとさせる、まさに落語の世界そのものだ。

    女には無理だと言われても、なんとしても落語家になりたいと桂夏之助に弟子入りした甘夏。
    三か月だけ先輩の若夏、そして兄弟子の小夏。それぞれの落語愛にしびれる。
    夏之助の出奔が三人の弟子に及ぼした影響。それぞれの過去と事情、そして未来への想い。
    いいねぇ。なんだろう、この温かみは。大阪弁のおかげか。
    じんわりと心がほぐされていく遠赤外線のような一冊。寒い夜に読むのにピッタリだ。

  • 大阪弁が流暢なので上方落語の雰囲気が良く出ているし、落語の知識が豊富なので楽しめた。女流落語家の視線は差別との闘いの視線でもあり、頼みとしていた師匠の失踪は、彼女たちをとても辛い立場に追いやっていくのだが、何人もの師匠たちが助けるのは、それは落語という伝統芸能が絶滅の危機を繰り返してきた歴史からの学びであり、若手の落語家を宝だとする精神から、他門の人間にでも話しを教えるということなのだと思った。たくさん落語が出てくる。あらすじを解説してくれるのでわかりやすい。おもしろかった。

  • ここで描かれて落語家さんたちは、一癖も二癖もある人たちです。
    でも、落語の世界で生きていこうと、師匠が失踪しても、真夜中の風呂屋で「師匠、死んじゃったかもしれない」という寄席を開催するところなんかは、強さを感じます。
    タイトルにあるオリオンで、生き方を示すくだりは、色々な場面で使えそうです。
    落語を生で聴きたくなる本でした。

  • 師匠に失踪された女性落語家の甘夏と2人の兄弟子。
    師匠を待つために銭湯で深夜寄席を始める。
    3人の落語家としての成長、それぞれの過去。
    そして信じて待つことができる人間は強い。
    それだけ師匠は3人の弟子達に稽古以上の愛情を注いでいたのだろうな。

    落語の世界も他の世界と同じで女性は認められなかったり、上下の関係だったり、厳しいと分かった。
    特に上方落語では訛りの問題もあり、知らなかったことも。

    この本を読んで落語に興味が出て、物は試しにSpotifyで検索したら、Spotifyでも落語が聴けてまたまたびっくり。
    早速「つる」を聴く。こんなどうでもいい話(すみません)をこんなに大真面目に笑わせてくれるなんて。

    ところで、お師匠さんはどうなったのでしょう。。
    続編あるのかな?

  • 女落語家の甘夏の師匠、夏之助が失踪した。甘夏と2人の兄弟子は落語会を開きながら、師匠の帰りを待つ。甘夏の父親との関係とか、師匠の失踪のこととか、すっきりしないと言えば、すっきりしないのだが、それがまた味わい深いと思えるような作品だった。

  • 甘夏と、出身地も学童にいってたのも一緒!
    真正の大阪人と書かれててうれしい…!

    突然失踪した師匠との思い出、落語の難しさ、
    落語の世界を描いたストーリーもおもしろいけど、
    玉出や北浜のおなじみの風景に
    知らなかった歴史があり、
    落語から大阪の昔の様子を想像するのがまた楽しいお話でした。

    落語って、自分の解釈ではしょったり付け加えたりしていいんや…
    今まで全然聴きに行ったことがなかったので
    行ってみたくなりました。

  • 落語家になりたくて弟子入りした甘夏だが、ある日突然師匠が失踪してしまう。
    2人の兄弟子と「師匠死んじゃったかもしれない寄席」を毎月開催し師匠の帰りを待つ。
    甘夏の成長物語ではあるが、その周りの人達の物語でもある。

    落語のお話しなので、たくさんの落語もサラッと内容に触れる感じで登場します。

    それにしても、師匠どこいったん、、

  • TLでながれて来た表紙絵に惹かれて、読友さんに落語のお話と教えて頂いて笑点しか落語は見たことがないのに挑んだ1冊。
    文庫だとこの装幀ではないということで図書館で借りた。三番弟子の女落語家甘夏の師匠が失踪したところから始まる。落語界だし、落語話も絡まるから登場人物が多いように感じたけれど失踪した師匠と主人公の甘夏に結びつく展開だから混乱することはなくいくつもの人間ドラマを読んだという読後感。
    人間いろいろ。ラストが切なくもホッとできてよかった。

  • 一気に話に引き込まれました。
    面白かったです!
    落語歌の師匠が失踪して残された三人の弟子。
    個性的な弟子を通して見える師匠の姿。
    いつか帰ってきてほしいと願ってしまいました。

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞した。他の著書に『空の走者たち』(2014年)、『風よ僕らに海の歌を』(2017年)がある。

「2022年 『甘夏とオリオン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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