一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041089774

作品紹介・あらすじ

ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞作!
大宅賞受賞作家の上原善広が18年間をかけて聞き取りを続けた、まさにライフワークと言える作品。
18年以上の関係から紡がれる、ノンフィクションとしては異例の一人称文体。

「全身やり投げ男」。
1989年、当時の世界記録からたった6センチ足らずの87メートル60を投げ、その後はWGP(世界グランプリ)シリーズを日本人で初めて転戦し、総合2位となった不世出のアスリート・溝口和洋。

■中学時代は将棋部。
■高校のインターハイではアフロパーマで出場。
■いつもタバコをふかし、酒も毎晩ボトル一本は軽い。
■朝方まで女を抱いた後、日本選手権に出て優勝。
■幻の世界新を投げたことがある。
■陸上投擲界で初めて、全国テレビCMに出演。
■根っからのマスコミ嫌いで、気に入らない新聞記者をグラウンドで見つけると追いまわして袋叩きにしたことがある。

無頼な伝説にも事欠かず、まさに陸上界のスターであった。
しかし、人気も体力も絶頂期にあり、来季のさらなる活躍を期待されていたにもかかわらず、90年からはパタッと国内外の試合に出なくなり、伝説だけが残った……。
その男の真実が、25年以上の歳月を経て、明らかとなる。

プロとは? アスリートとは? 天才と秀才の差とは? 日本人選手が海外選手に勝つための方法とは?
陸上界を貫き、競技を変えた漢を18年以上の歳月をかけて追った執念の取材!!
泥臭い一人の漢の生き様から、スポーツ界が、社会が、昭和と平成の歴史が彩られていく。

【目次】

プロローグ

第一章 発端
第二章 確立
第三章 挫折
第四章 復活
第五章 参戦
第六章 引退

エピローグ
著者あとがき
文庫版著者あとがき
解説

感想・レビュー・書評

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  • 「山本由伸 常識を変える投球術」に紹介されていた
    こちらの本を読んでみました。

    ※山本由伸 常識を変える投球術
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4106109859#comment

    やり投げの日本代表選手だった溝口和洋選手のノンフィクション。
    やり投げも溝口選手についてもほとんど詳しくない自分ですが、
    この本はとても面白かったです。

    ノンフィクションなので、ノンフィクション作家が
    溝口選手のことを取材してまとめた本なのですが、
    主語が一人称(溝口選手)で書かれているので、
    溝口選手が自分で過去を振り返っているような体裁になっています。

    主に80年代に活躍した選手ですが、当時から
    ・ウェイトトレーニングを重要視
    ・単なる筋トレではなく、神経回路を発達させることを意識
    ・筋肉の各部署にまで意識を向けて槍を投げている(投げることができる)
    ・引退後は、室伏広治を指導(種目が異なるにも関わらず)
    など、現代の最新トレーニングにも通ずる考え方を
    持っていらっしゃって、非常に興味深かったです。
    一方、酒・タバコも昭和の時代のようにたしなみ、
    栄養や休息面については無頓着だったようです。
    (それでも記録を出しているところがすごいですが。)

    世界記録を出したにも関わらず、
    (本書の記述が正しければ)人種差別によって
    記録が幻になってしまう不幸もあり、
    当時の時代背景を感じさせられます。

    本の中の溝口選手の写真が冒頭などに載っているのですが、
    ウェイトトレーニングをガンガンにやっているにも関わらず、
    溝口選手の筋肉モリモリではない姿なのが
    とても美しく感じられます。

  • (世界の基準に比較すれば)体格に恵まれないにもかかわらずやり投げを追求して当時世界二位の記録を出した溝口和洋氏のノンフィクション。「やり投げ道」を追求するのではない、やりを遠くまで投げることを追求するのだ、という突き詰め方は確かに、と思った。著者の本を何冊か読んでいて著者のパーソナリティを打ち出す内容が多い中で異色の内容にも思えたが、一人称で語られる内容は実は著者の作品の中でもそれほど特殊でもないのかもしれない、と読み終わって思った。

  • 自分で考えるという観点から見たスポーツの良い実践例となるのではないか。現在のスポーツでは指導者はよく指導法や理論は勉強する者も多いが、競技者(現代では学生が主となると思われるが)は学ばないし、競技知識を体系的に自分で学ぶことはあまり推奨しない。おそらく指導者が競技者に、そのスポーツの勉強を推奨しないのは、指導方法が確立されていないことと、知識を身につけた競技者は指導しづらいということが関係していると思う。しかし、自分で考え指導者がなくても自分で競技力を高めることが現代スポーツには必要となると思う。
    非常に面白い本であった。

  • 男の美学

  • 第16回OBPビブリオバトル「跳ぶ」で発表された本です。
    2017.8.30

  • 第20回アワヒニビブリオバトル「ラスト」で発表された本です。
    2016.12.06

  • 筋トレしたくなる

  • ふむ

  • 文句なしに面白い。

    ここまで自分の体、人間の体を研究したアスリートは珍しいのではないだろうか。

    トレーニングの解説書としてもよくできていて、「世の中の常識を徹底的に疑え」と試行錯誤を続けたノウハウや方法論は、現役アスリートにとっても有用だ。

    「ウェイトは筋肉を付けると同時に、神経回路の開発トレーニングでなければならない」とは、目から鱗。

    筋トレしすぎてスピードやキレがなくなったプロスポーツ選手を例に挙げて、スポーツ選手に筋トレはNGなんて言説を聞くのだが、単にやり方を間違えただけなのだろう。

    ストイックな競技生活とは裏腹に、私生活は奔放で裏表のない性格のようで、いわゆる“体育会”とは真逆のタイプだ。だからこそ、納得しないと動かない現代っ子のコーチには、溝口氏のようなタイプが最適なのかもしれない(コンプラとかうるさい輩は多そうだけど)。

  • 自分自身がアウトロー気味のジャーナリストである上原善広さんが、伝説のやり投げ選手の溝口和洋さんを一人称で描いたルポタージュです。
    18年にも渡って取材を行った集大成として、納得の名作に仕上がっています。
    そもそもやり投げにも陸上にも全く興味のない私が読んでも、ぐいぐい本に引っ張りこまれて、溝口選手を隣に感じる位の魅力が有ります。
    アスリートとしては破天荒というのは、飲む打つ買うを全てしているという所が大きく、言動が乱暴で野性味に溢れていたという事で誤解されていたのだと思います。
    これを読むと誰よりも練習と研究い明け暮れ、既存の知識ではなく自分で気が付いた事をどんどん肉付けしていく事で、新たな理論を打ち立てて実行してきた、誰よりも真剣に競技に向かい合っていた人と受け止めました。

    まあ、実際に居たら破天荒で、一緒の練習していたら殆どの人はダメになってしまうでしょう。大酒飲んで二日酔いで出場とかどう考えてもイカンでしょう。でもそれも練習の一環という考えなんですね。独特の理論がありますが、一代限りの無頼の徒だったんでしょう。それがなんともかっこいいです。

    正直今まで読んだ上原さんの本で一番いい本だったと思います。あまり読まれている気配がないけれど、色々な人に読んでもらいたいです。人によって気づきが違う本だと思います。

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著者プロフィール

1978年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。2010年、『日本の路地を歩く』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「『最も危険な政治家』橋本徹研究」(「新潮45」)の記事で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。著書に『被差別のグルメ』、『被差別の食卓』(以上新潮新書)、『異邦人一世界の辺境を旅する』(文春文庫)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)など多数。

「2017年 『シリーズ紙礫6 路地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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