汝、ふたつの故国に殉ず 台湾で「英雄」となったある日本人の物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 67
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041089781

作品紹介・あらすじ

台湾で、その命日が「正義と勇気の日」に制定された日本人がいた――。日本と台湾の絆を表す「英雄」が歩んだ苦難と感動の物語。史上初の「日台」同時発売ノンフィクション!

1895年、ひとりの若者が台湾を目指して故郷・熊本をあとにした。台湾の治安維持と発展に尽くすためである。やがて台湾女性と家庭を築いた彼は、のちに「英雄」と呼ばれる男の子をもうけた。しかし、戦後の台湾の悲劇は、一家を動乱に巻き込んでいく。日本と台湾の“絆”を表わす「5代120年」にわたる壮大な一族の物語――。

「私には大和魂の血が流れている」「台湾人、万歳!」。台湾最大の悲劇となった1947年の「二二八事件」で、そう叫んで、永遠の眠りについた英雄がいた。坂井徳章弁護士(台湾名・湯徳章)である。父親は日本人、母親は台湾人で、生まれながらにして日本と台湾の“絆”を表わす人物である。父を早くに亡くした徳章は、貧困の中、辛酸を舐めながら勉学に励み、ついに当時の最難関国家試験である高等文官司法科と行政科の試験に両方合格する。

帝都・東京から故郷・台南へ帰り、台湾人の人権確立のために活動する中、徳章は国民党政府の「二二八事件」弾圧から台南市民を救うために奔走する。自らの身を犠牲にしながら、多くの市民を助けた徳章は、50年後に忽然と“復活”する。苦難の道を歩んだ台湾と、なぜ今も台湾人が日本と日本人をこれほど愛してくれているのか、その根源を解き明かした感動の歴史ノンフィクション――。

感想・レビュー・書評

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  • 台湾で、今も崇められている日本人のお話です。終戦後、蒋介石により台湾は、ひどい目にあい、二二八事件で坂井徳章さんも殺されました。2014年、台南市は、彼の命日を「正義と勇気の記念日」に制定しました。
    https://www.honzuki.jp/book/247712/review/278272/

  • 頭は低く志は高く。日本人でありながら台湾人であった徳章。常に行動は台湾ため、台湾人のために。狗が去って豚が来たと言われる蒋介石であるが、まさに酸鼻を極める圧政であり、軍隊はそれを強固に守る暴力装置であった。常に自分のため、国民のことは考えもしない。文中にもあるがマッカーサーの最大の過ちと言っても過言ではない。ここ数年中国の台湾に対する行動は危険水域に近づいていると言って良い。万一のことがあったとき、西側諸国が今回の対ロシア以下の対応になるのは想像に難くない。
    本当の自由とは、本当の民主とは。自らを律することに他ならない。それを湯徳章は現代にも教えてくれているのであろう。

  • 台湾と日本の深い繋がりを感じさせてくれる。日本統治時代に、内地から台湾に渡り台湾に尽くした日本人の物語を多く読んできた。が、坂井徳章、湯徳章は日本人であり台湾人だ。ニニ八事件で犠牲にとなった徳章の台湾人の自由と人権を求める闘いは、白色テロの闇を経て、民主化を成し遂げた李登輝、中国共産党に対峙する蔡英文に通じているだろう。1月に総統に再選された蔡英文の片腕は、かつて台南市長時代に湯徳章の命日を台南市の「正義と勇気の記念日」に制定した頼清徳だ。湯徳章の闘いは彼等には受け継がれ、今も脈々と続いていると思う。本編と共に、おわりに、あとがき、解説、も味わい深い。

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著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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