あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 859
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041089811

作品紹介・あらすじ

「語ってしまえば、消えますよ」人々の弱さに寄り添い、心を清めてくれる極上の物語の数々。聞き手おちかの卒業をもって、百物語は新たな幕を開く。大人気「三島屋」シリーズ文庫最新刊!

感想・レビュー・書評

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  • 「三島屋変調百物語」は、語って語り捨て、聞いて聞き捨てが決め事でございます。でもホントの語り手は、実は宮部みゆき女史であろうことは、読者の皆様には暗黙の了解ごとだ、と推察致します。

    そのご本人が公の場で言っていましたから、語らせて頂いてもお構いなしとさせてください。実は今回で聞き手は、三島屋の姪のおちかから次男坊の富次郎に交代致します。えっ、ご存知でしたか?それならば、
    ‥‥全体で4人聞き手が立つことになっている。
    えっ?そこまではご存知ありませんでしたか?現在27話ということになっておりますし、百物語だというと、やはりそうなるのでございましょう。絶対ではないでしょうが。

    かつて某ラジオ番組で女史が話していたんです。
    「百もの怪談って、こんなにもさまざまな物語、どうやって思いつくんですか?」
    とMCが聞きました。実際は女史の時代モノは怪談かかっている事多いので百より多いとは思いますが、
    女史は
    「定番のパターンがあるので、話ネタ自体には困りません。ただ、構成は工夫します。ABCをCABにしようとか、小道具に何を使うか、というのを考えるのが楽しい」
    とかおっしゃっていました。根っからのストーリーテラーですね。

    今回個人的に1番怖かったのは冒頭の「開けずの間」でした。忌(いみ)がどんどん拡大、伝染していくさまが、女史は意識していなかったでしょうが、目に見えないウィルスだけでなくて、目に見えない悪意さえも伝染していく(自殺者さえ出たようですね)昨今のコロナ禍と重なり、たいへん恐ろしゅうございました。

    実はここだけの話なんですが、わたし気がついてしまいました。「伍之続」の何処かで言及あるかな、と思いきやなかったので、これはどう処理するのか、わたし、おそらく20年後にドキドキしていると思うのです。何かと申しますと、今回女史は珍しく「文庫版あとがき」にこう書いています。
    ‥‥百物語という趣向は、昔から、百話完結させてしまうと怪事が起こるので、99話で止めなければならないと戒められています。一方、99話まで到達せずに途中でやめると、足りない数話分の怪事が起きるという戒めもまた存在するのです。(640p)
    書いて仕舞えば「言霊」が宿ります。女史は「とんでもないこと」を約束してしまったわけです。99話でピタリと止めなくてはなりません。女史の心配するように、「健康に留意」するのはもちろんのことですが、実はこの文庫本の巻末に「正式に」『現在までに語られた話』は「第二十七話」と書いています。これが問題です。実は26話目に付け足すように「同じ顔をした6人の男と結婚した老女の話」の「一話」があるのです。これが「数え」の中に入るか入らないか、ものすごく重要です。数えずに、百物語までいって怪事が起こるのか?それとも、数えて1話足りずに終了して怪事が起きるのか?そういうことに関係すると思うのです。20-25年後に悩むのではないでしょうか?
    いや、杞憂なら良いのですが‥‥。
    ついつい気になったので長々と書いてしまいました。どちらにせよ、おちかの嫁ぎ先の話はこのままで終わらないので、もう一波乱あるのは必須です。

    あと、おまけとしてトリビアな話を。(←話が長いぞ!)
    袋物を売る三島屋は、神田三島町にある店です。「東京時代MAP大江戸編」(新創社)を広げて調べました。現在の神田東松下町辺りでした。おちかの嫁ぎ先は神田多町二丁目だそうですが、それはそのまま地名としてあります。神田駅から秋葉原駅に中央線に沿って歩いてゆくと、神田川手前の右手に三島町、左手に多町があります。おちかはホントに歩いて300メートルちょっとの処に嫁いだわけです。この辺りは、大江戸の一大商業地帯です。果たして庶民は密に密に寄せ合って住んでいたことでしょう。また、「面の家」冒頭で起きた火事は、秋葉原駅の東北出口の辺りです。神田川挟んで500メートルなかったので、三島屋さんも焦ったことでしょう。

    • kuma0504さん
      motokoさん、はじめまして。
      気になりますよね!
      良かったぁ、同意する人がおられて。
      誰もレビューの中で、触れていないので、私、もしかし...
      motokoさん、はじめまして。
      気になりますよね!
      良かったぁ、同意する人がおられて。
      誰もレビューの中で、触れていないので、私、もしかしたら「見えていないものが見えている?」という可能性も考えていたんです(勿論、つまらんことだから誰も気にしなかったという可能性も捨てきれないのですが)。もしその場合は、私も百物語の語り手に入れるかな(笑)。

      これからもよろしくお願いします。
      2020/07/25
    • トミーさん
      kuma0504さん
      こんにちは!
      ははぁ〜実に面白いお話です。
      なるほど。
      眼から鱗。

      こちとら、まだまだ修行がたりません「もちろんだけ...
      kuma0504さん
      こんにちは!
      ははぁ〜実に面白いお話です。
      なるほど。
      眼から鱗。

      こちとら、まだまだ修行がたりません「もちろんだけど」
      2020/08/24
    • kuma0504さん
      トミーさん、コメントありがとうございます。
      私も修行がまだまだたりません。
      トミーさん、コメントありがとうございます。
      私も修行がまだまだたりません。
      2020/08/25
  • 自分が観ていた海外の警察ドラマの影響か、シリーズもののキャストの交代は苦手です。(大抵殉職するか、現場での苦い経験から、退職していく……)

    でもこの三島屋シリーズの、メインの交代は素直に歓迎できる。シリーズを通して積み上げられたものと、著者の宮部みゆきさんの暖かい眼差し。
    ここまで三島屋シリーズを読み、おちかの変化を読んできた読者に対して、物語を通して贈られた一つのプレゼントのようにも思います。

    今回の収録作品は5編。宮部さんの真骨頂だと感じたのは、妖怪や死霊を呼び寄せる「もんも声」を持った女性の奇妙な半生が語られる2話の「だんまり姫」
    その声のためなるべく人と話さず、身振りや独自の手話を通じて周りとコミュニケーションをとってきたおせい。そんな彼女の元に舞い込んだのは、言葉を発しない城の姫のお世話役。
    しかし、その城でも奇妙な出来事が起こり、やがておせいの耳に、男の子の声が聞こえてくるようになり…


    三島屋シリーズで特に好きな語りは、怪異を語る上でその現象や出来事だけでなく、語り手の人生が見えてくる話なのですが、この「だんまり姫」も語り手の人生が見えてくるよう。
    もんも声のため、身内にも遠慮しながら過ごした幼少期。転機となった宿屋への奉公。城での生活、姫や霊とのやりとり。

    三島屋の百物語が単なる怪談もので終わらないのは、怖さであるとか、人の業や哀しみを描いていること以外にも、基本的に1話にしか登場しない語り手にも、人格を与え、そして人生を浮かび上がらせるからだと思います。

    そして、この話の結末もとても良かった。お家騒動によって幼くして命を落とし、一種の地縛霊のように城にとらわれた一国様。彼の魂を城から解き放つため、おせいが取った行動。そして一国様の選んだ道。
    物語の持つ温かさが伝わってくる、傑作だったと思います。


    一家に取り憑いた行き逢い神と、その一家の末路を描く「開けずの間」は怖かった……。嘆き、嫉み、妬み、そして生まれた心の隙間に、スッと忍びよる魔。そして、翻弄され壊れていく人々。
    女性の姿をした行き逢い神の笑い声が、自分の脳内で不気味にこだまするような薄気味悪さ。ラスト一行のどこか引きずる感じが、また怪談らしくて不気味だけど忘れがたいです。

    世間に不幸をもたらすお面を描いた「面の家」も、ついつい状況を想像してしまう怖さがあります。封印されながらも、常に隙を伺い箱をカタカタ鳴らしながら、人に怪しく囁きかけるたくさんの面。こういう話好きだけど、やっぱり怖いわあ……。

    おちかの決断が描かれる表題作の「あやかし草紙」
    写本をする元侍の元に舞い込んだ奇妙な依頼と、老女の奇妙な結婚遍歴の話。
    三島屋シリーズだからこその、おちかの決意の描き方だったんだろうな、と思います。この描き方がカッコいいし、女性としての覚悟や度胸がこれ以上無いくらい現われていました。

    そしておちかから百物語の聞き手を継いだ富次郞の初陣となる「金目の猫」
    富次郞の兄、伊一郎が語るのは、単なる怪異の話ではなく、三島屋の家としての話でもあり、そして兄弟の語らいでもあり、思い出話でもあった気がします。
    シリーズの転換点にきて、三島屋のルーツの一端が見える。新たなスタートらしい一編でした。

    三島屋シリーズの好きなところは、各編で語られる一編一編の完成度もさることながら、聞き手や三島屋の移り変わりも平行して描がれるところです。おちかが徐々に聞き手として成長し、頼もしくなっていき、様々な出会いがあり別れもあり。

    今回でその聞き手は、おちかから富次郞に引き継がれたわけですが、この富次郞もきっと作中の時間を通していく中で、所帯を持つか、あるいは目標としている自分の店を持つ時がくるかもしれない。そして役目がだれかに引き継がれるかもしれない。
    それでなくても、あたりは柔らかいけど、どこか頼りなくも見える彼が、おちかのように肝の据わった頼もしく見える時期が来るかもしれない。

    そんなふうに、聞き手の変化も楽しみにしつつ、自分はこれからも三島屋シリーズを読んでいくのかなあ、と思います。各編で語られる怪異だけでなく、富次郞が、そして三島屋という店自体もどう移り変わっていくのか。
    たまにしか会わない親戚一家の近況報告を聞くような、そんな楽しみも徐々に生まれてきているように感じました。

  • 第一期完結!!!ちかの成長と心のありようを、ずっと追いかけてきただけに、感慨深い1冊になった。幸せになってねと、母のような姉のような気持ち。きっと作中の富次郎やおしま、お勝らもこんな気持ちでちかを見つめていたんだろうな。ちかの「覚悟の決め方」が爽快。
    これを機会に1作目から読み返そうと『おそろし』を手に取り…『おそろし』と呼応するかのような表紙がいい。

  • シリーズ第一期完結巻とのこと。

    なんだか、シリーズ中では一番、残った印象の薄い作品。

    「おちかが嫁にいく」がありきな巻だった気がする。
    古本屋の若旦那には、なんだかうすうすそういう予感はしていたし。。

    ただし、バトンタッチされる富二郎のキャラには十分に馴染めたので、(既に連載開始されてるという)続巻には、変わらず期待してしまう。

    ★3つ、7ポイント。
    2020.11.18.新。

  • おちかが黒白の間の聞き手を「卒業」するということが評判になっていたので、どういう成り行きなのだろうと楽しみに読み始めましたが、1話目がいきなり怖かった(><)
    2話目は一転、心があたたかくなるお話でした。話せなくなったお姫様の声が戻った瞬間の一言に嬉しくなりました。でもそれよりさらに胸がすく思いがしたのが、お家騒動のために幼くして悲しい死を遂げた若君が去り際に残した「一国の城主よりも、はるかに偉いものになってやろうぞ」という一言。気高く美しいことばに胸が熱くなりました。この巻の中でいちばん好きなお話です。
    4話目はおちかが大きな決心をします。覚悟を決めたんだなぁ。
    最終話の『金目の猫』はせつないお話でした。運に味方してもらえなかったおきんさんが、その分幸せになっているといいのだけど。
    聞き手が変わってからのお話も楽しみです。おちかの今後もときどき織り交ぜてもらえるだろうと楽しみにしつつ、次の文庫化を待ちます。

  • つらい過去を乗り越え、自分の手で幸せを掴んだのがすごくよかった。ちかちゃん、お幸せに。

  • おちかちゃん、おめでとうー!!!
    うぁーうあうあうあうあ~~~
    また600ページ強の文庫本1日で読んでしまっ...OTLiiii
    宮部先生の本はどんだけ分厚くても1日読破コースがデフォルトになった・・・もったいないことをした・・・。
    うーーー・・(泣

    気を取り直して
    魔を呼び込んだ一家のお話ー開けずの間
    不思議な声を持つお婆さんーだんまり姫
    手癖の悪い娘が見たものはー面の家
    瓢箪古堂の勘一の話ーあやかし草子
    三島屋兄弟の昔語りー金目の猫

    今回のどのお話も、貧困=欲=妬みが根源・・いや毎回か。
    貧困がもっとも誰にも降りかかりやすく、等しく心の均衡を失う要素であるからか。
    三島屋は大黒柱が健全だから魔が近寄りにくいのだろうなぁ。お勝さんも効いてるのかな。
    一番怖かったのは「開けずの間」でした。

    これから聞き手がおちかちゃんから富次郎従兄さんにかわります。しかも絵がうまいときてるから、いろいろな趣向が期待できそうです。
    富次郎従兄さんは勘一さんと仲良しだから、たまにはおちかちゃんも出てきてくれるかな?幸せであればいいなぁ。(間違いなくそうだろうけれども)

    しかし、このシリーズは文庫が分厚い・・もはや携帯しづらい・・・
    でもいいか、どうせ1日で読むし・・・うっ・・

  • 一話目がいきなり怖かった! 人間の欲と弱さがよく出てますね。この話はとても他人事とは思えない。誰だって付けこまれますよ。
    どの話もよく出来てますよ。よくこのレベルを維持できるものだなあと思います。僕は表題作「あやかし草紙」が一番印象に残りました。瓢箪古堂の若旦那、勘一は見たんでしょう。それで知っているのでしょう。彼の行く末を見届けると決めたおちかの覚悟もいいですね。この巻で黒白の間での聞き手は終わりということですが、今後は夫婦として登場するのが楽しみです。

  • シリーズとしては第一期完結編となっています。
    文庫の表紙を見ればなんとなく予感されるように、
    第五話で、今までこの物語の主役であった「おちか」が嫁入りします。
    お相手はお察しの通り瓢箪古堂の若旦那。
    つまり「おちか編」は今巻で終わり、
    次巻の「黒岳御神火御殿」からこの百物語の聞き手はいとこの、
    三島屋の小旦那・富次郎が引き継いでいくことになります。
    ちょっと寂しい感じもしますが、これからも「おちか」は時々顔を見せます。

    絵のどこに何を見るのか、見つけるのか、見いだすのかは、見る者の目と心にかかっているのだ。―――描く者はただ無心に己の心に浮かんだものを写すつもりで描くことが肝要だ。人に見せつけようとして描けば描くほどに、見せたいものは見てもらえなくなる、と

    これは第四話「あやかし草紙」の中の言葉ですが、
    一応、未熟ながらも写真などで表現をする立場のものとして、
    この言葉は心しておきたいと思いました。

    今巻も期待通りの江戸あやかし話。
    宮部ワールドでたっぷり楽しませてくれます。
    今回も期待を裏切らない安定の高評価、★4.5で。

  • 宮部みゆきのあやかし草紙を読みました。
    三島屋変調百物語伍之続ということで、三島屋の黒白の間で店主の姪のおちかが来客の怪異の話を聞くというシリーズの最新刊でした。

    1話目が陰惨な救いのない物語だったので、どう展開するんだろうと読み進めたところ、2話目がちょっとコミカルな話、3話目からはおちかの今後に関わってくる明るい話だったのでほっとしました。
    特に2話目の化け物を呼び出してしまう「もんも声」を持った女性の物語が気に入りました。

    今巻でおちかは百物語を卒業してしまいますが、三島屋の店主の次男が百物語をつづけるとのことなので、続きが楽しみです。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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