超・殺人事件 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.12
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本棚登録 : 1776
感想 : 109
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041090077

作品紹介・あらすじ

人気推理作家を悩ませるのは巨額の税金対策。執筆経費を増やすため、
小説の舞台を北海道からハワイに変えたり、ゴルフやカラオケの場面を強引に入れたり、物語はおかしな方向へ――。(「超・税金対策殺人事件」)
見切り発車で書き始めたが思いつかない結末、うっかり使い回してしまったトリック、褒めるところが見つからない書評の執筆。
作家たちの俗すぎる悩みをブラックユーモアたっぷりに描いた、切れ味抜群の8つの作品集。

感想・レビュー・書評

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  • ブラックユーモアたっぷりの短編集。
    サクッと軽く読めてしまうが、この手の東野作品も好き。

    「超税金対策殺人事件」
    税金を少しでも減らすため、明らかに個人的な出費に見える旅行代や洋服代などを必要経費に計上しようと、連載中の小説の設定や展開をどんどん変更していく作家。その結末は…。
    涙ぐましいまでの労力だが、こんなに手ひどく言われる税務署も可哀相なような。

    「超理系殺人事件」
    『この小説が合わない方は飛ばし読みしてください』との注意書きの通り、「超理系」な描写満載。私は無理だな、と本当に飛ばし読みしていたら…なんとなんとそういうオチか。ホッとした~。

    「超犯人当て小説殺人事件」
    問題編の小説を読んで犯人を当てた者に新作長編をあげようと言われて意気込む四人の編集者たち。必死でひねり出した答えは…。
    やりすぎは禁物。

    「超高齢化社会殺人事件」
    90歳の高齢作家が書いた原稿は死んだはずの登場人物が再登場したり別の作品の登場人物がいきなり出てきたり、話が繋がらなかったりと支離滅裂。編集者はなんとか辻褄を合わせようと努力するが…。
    読んだ作品の詳細を忘れていく私には笑えないような。皮肉だけど現実味もある。

    「超予告小説殺人事件」
    売れない作家の連載小説通りに行われる殺人事件。事件が起こる度に作家の作品は売れ、連載されている雑誌も売れていく。気味悪く感じている作家に犯人から電話が…。
    この話が一番「小説」らしかった。ただ訳のわからない怖さは残る。

    「超長編小説殺人事件」
    『超大作』ってそういう意味?長編であればあるほど売れるとは。でも方向性間違ってるよね。

    「魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)」
    作家のプレッシャーを書いた話。こんなこと考えながら東野さんも書いてるのか。

    「超読書機械殺人事件」
    機械ではないけれど、AIの登場ですでに似たようなサービスはありますね。更に亡くなった某有名漫画家の新作をAIで描かせたニュースも以前あったし。
    まぁたまには「時間を返せ」と言いたくなるような作品もあったりするけれど、やっぱり読んでる時間は楽しいもの。純粋に本を楽しんでいる人も多数いると思うけれど。

  • 作家の悩みを書いた奇想天外な短編。

    《超税金対策殺人事件》
    急に売れ出した作家が、翌年の税金に頭を悩ませ、税理士から、領収書を経費と認められるため、小説の内容を変えるように言われる。

    《超理系殺人事件》
    「超理系殺人事件」という書物を買って、喫茶店で読んでいると、突然「特別捜査官」に連行される。

    《超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)》
    「犯人を当てた編集者に次の新作の原稿を渡す」と言われ、4人の編集者が、頭を捻っている最中、その作家が殺害されてしまう。

    《超高齢化社会殺人事件》
    若者の読書離れが顕著になり、読者も作家も、高齢者になってしまい、ボケた作家が小説を書く事になる。
    更に、編集者も・・。

    《超予告小説殺人事件》
    小説の通りに、殺人事件が起こる。ある日、その作家の元に、犯人から、電話が・・。

    《超長編小説殺人事件》
    長編である事が、売れる事の条件となってしまった出版業界。もっと、もっとと、ページ数を増やして、行き着く先は・・。

    《魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)》
    動機もトリックも犯人さえも、思いつかないまま、ラスト5枚となったミステリー作家は・・。

    《超読書機械殺人事件》
    書評の依頼に忙殺されていた書評家の元に「ショヒョックス」と言う、たちどころに書評を書くと言う機械が届けられた。ところが、他の書評家も、その機械を手に入れた。

    そんなアホな・・。

  • 推理小説作家が作品を生み出すために如何に苦悩しているかの短編集。
    どの作品も捻ったユーモアーたっぷりで、読んでいてつい苦笑いしてしまう。
    東野さんの本音もこんなところにあるのかと想像するとさらに面白い。
    最後には読んでいる私たちにも皮肉たっぷりの一言があり、何か問いかけられた様な気持ちに。
    いや、唯々本を読むことを楽しんでいるだけですと答えたい。

  • 新装版でした。読んでなかった!
    作家さんの苦労がわかる暴露作品集ですが、いろいろなオチがあってサクッと楽しめます。
    超理系殺人事件はサクッとは読めませんでしたが、最後まで読めばやられたと思うこと間違いなしです。
    東野さんの自虐本かもしれないですね。
    そういえば、「超」は流行っていましたね。

  • 東野圭吾の超・殺人事件を読みました。
    推理小説作家の視点から出版界の裏事情を描いた、ブラックな短編集でした。

    ショヒョックスという自動書評作成機械を書評家に売りつける話は面白かった。
    確かに面白くない小説を読み続けるのは苦痛なので、書評を仕事にするならそんな機械に任せてしまおうという誘惑にさからえないかも。
    現在のAI事情ではあり得ない話ではないなあ、と思いながら読みました。

    話はショヒョックスが広まったあとに、売れない小説家にショヒョックス・キラーを売りつけるという展開になります。
    作家の書いた小説のショヒョックスの評価が高くなるように修正点を指摘してくれるという機械です。

    マッチポンプの最たるものですが、現実にありそうな話なのが怖いと思いました。

  • 以前にも読んだことがあった!
    読み始めて気がついた。

    超高齢化社会殺人事件は良かった!
    超高齢化したのは作家だけでなく読者も、そして...

    超理系殺人事件は早々に読み飛ばした!
    でもそれは普通の人ってことだった!はは

  • 新潮文庫から出されていた作品の改題本!

    若干、時代の古さは感じますが逆にそれが面白い!
    世にも奇妙な物語のような感覚で読める事、いつもの短編より少し短めであること、東野圭吾の作品であることなどからページがサクサクとめくれます。


    私の中での白眉は高齢作家を題材とした超高齢化社会殺人事件で次点が超長編小説殺人事件かと思います。


    他の東野作品に触れてる話もありました。
    是非お探しください!

  • 東野さんが贈るブラックユーモア小説。

    小説家が税金対策で物語を変更したり、ページ数をかさ増しするために不要な蘊蓄を挿入したりとやってることはもう無茶苦茶。でもすごくおもしろかった。賛否あるのは作者もご承知の上。でも、内容は規格外にぶっ飛んでても、これだけ実績のある作家が書いていると、味わい深さもでてくるのだから不思議だ。
    個人的に一番の見どころは、本編最後の章である「超読書機械殺人事件」の最終頁で投げかけられる読者へのアンチテーゼともとれる一端。これだけ楽しませてもらって最後にドキっとしたね。

  • ブラックユーモアな短編小説だったよー。
    ちょっとクドイ表現もあるから、
    読んでて疲れる話もあったなぁー。
    でも、基本的にサラーっと読めましたー!!

    超税金対策殺人事件
    旅行で行ったハワイや奥さんへのコートも話に含める。
    超理系殺人事件
    何言ってるか、分からない話ー笑
    超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)
    編集者が集まって犯人を当てる。
    超高齢化社会殺人事件
    認知症になり始めの小説家が書く小説がヤバい。
    超予告小説殺人事件
    自分の書いたミステリー小説が事件になる。
    超長編小説殺人事件
    原稿枚数を稼ぐために、ダラダラ書く。
    魔風館殺人事件(超最終回・ラスト5枚)
    えっ!?こんな終わり方、あり!?
    超読書機械殺人事件
    分厚い本も、この機械であらすじが簡単に読めちゃう。

  • <驚>
    僕は東野圭吾の本をほとんど読まない。いや正確には読まないのではなくて読めないのである。それはなぜか。答え=理由は割と簡単な事なのだけれどここではあえて伏せて置く。(万一 読者諸兄姉方々の中にその理由を知りたい方がみえましたらご一報くださいませ。極気楽にお答えしますw)

    しかし僕だってチャンスがあれば, どれを読んでも面白い作品のベストセラー作家 東野圭吾の本は読みたいわけでして,それで巡って来たこの作品『超・殺人事件』は読んだのであった。
    さてさてどんなストリーとトリックなのかなぁ,とワクワクしながら読んでいると,おやなんだか雲行きが怪しいぞ。そうです,本書はそういう「普通の」作品では無かったのです。

    期待していた心境からするとそこからは外れてしまったけれど存外面白かったし,何より驚いたのは東野圭吾はこんな作品も過去には書いているのだ,ということ。今更戻って過去作から全部読む気など毛頭ないけれど またチャンスあればこういう少し毛色の変わった作品もいいのだろうな,と思った。

    今回は少し真面目な書評 いや感想で相すまなかった。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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