- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041090152
作品紹介・あらすじ
人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学一年の春、僕は秋好寿乃に出会った。周囲から浮いていて、けれど誰よりもまっすぐだった彼女。その理想と情熱にふれて、僕たちは二人で秘密結社「モアイ」をつくった。――それから三年、あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。そして、僕の心には彼女がついた嘘がトゲのように刺さっていた。傷つくことの痛みと青春の残酷さを描ききった住野よるの代表作。
感想・レビュー・書評
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この本は娘から借りた本。
主人公が青くて、痛過ぎる。
正直、途中で読み出すのをやめてしまおうか、と思ったほど。
でも、最後まで読むと、見えるものが変わる。
「君の膵臓をたべたい」にしてもそうだが、住野さんは深い奥行きがあるものを途中までは表層の部分しか見せてくれない。だから、中盤までで弛緩し切ってしまうのに、終盤やたらと(いささか、過剰気味に)緊張させる。その落差にやられてしまう。
まるで、恋愛の常套手段のようだ(笑)
冗談はさておき、心を抉られる小説だと思う。
誰しも田端みたいに、青くて痛くて脆い時代があるからだ。
きっと誰しも秋好みたいな存在の人がいたんじゃないか(もしくは、今いるんじゃないか)と思う。
読み終わって、尾崎豊の「傷つけた人々へ」が聴きたくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
青くて痛くて脆い。
青くて、痛くて、脆い…!!
これ以上、この作品を表すタイトルがあるだろうか。
"あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。
高校卒業までの十八年間でそういう考えに至った僕は、自分の人生におけるテーマを大学一年生にして決めつけていた。つまり、人に不用意に近づきすぎないことと、誰かの意見に反する意見を出来るだけ口に出さないこと。そうしていれば少なくとも自分から誰かを不快にさせる機会は減らせるし、そうして不快になった誰かから傷つけられる機会も減らせると考えた。"
冒頭の僕。
傷つけ、傷つけられることをただ恐れ、人との接触を避けようとしていた18歳の僕の、この"人生におけるテーマ"は、読了後に読むと、痛みを増す。
そんな僕に近づいてきたのが、秋好寿乃。彼女は平和構築論の授業中に「暴力はいらないと思います」と堂々自分の意見表明を始め、周りに"ヤバい人"と敬遠されるような空気読めない女子。
僕は彼女と話すうちに打ち解けていき、「なりたい自分になる」をテーマに、自分たちの居場所として秘密結社「モアイ」というサークルを立ち上げる。
二人きりの地味で他愛無いモアイの活動に、興味を持つ人が増える。しかし、理想を掲げて理想に生きるリーダーを失ったことで、モアイは決定的に目的や活動の意味を変え、自分の利益を求めるだけの団体に変容してしまう。
サークルを出ることになってから二年半、モアイを苦々しく見てきた僕は、就活を終えて思う。
今のモアイを潰してやりたい。そして元のモアイに戻したい。
僕は友人に協力を求め、モアイの醜聞を探り出すーー。
時々ニヤッとしちゃうような言い回しが散りばめられていて、特にテンポある会話のセンスに警戒心がとかれる。そして唐突に嵌められる。
住野さんは決して難しい言葉を使うわけではないのに、言葉に表しにくい感情やその揺らぎを巧みに描く。
勝手に傷ついておいて、自分が傷ついた以上に相手を傷つけたいと思う。自分も相手を"間に合わせ"に使っておいて、自分が"間に合わせ"に使われたことに憤る。
誰しも経験があるのではないか。
大人になってから読んでも、当時の自分を思い出してじくじくしてくる部分があるのだけど、まさに青くて痛くて脆かった、青春リアルタイムに読みたかったな。 -
久しぶりの住野よる氏の作品を読了。
もう少し恋愛小説っぽいものを想像していましたが、思いっきり
『青春の痛み』
的なものを味わされました。
そう、青春ってこんなんだったよなぁ。
自分のことしか考えてなかったよなぁ。
そんなことを思いながら、とっくにオジサンになってしまった僕は自分の生きてきた道のりを思い起こすのでした……。 -
人に不用意に近づきすぎない。誰かの意見に反する意見をできるだけ口に出さない。この2つを自らのテーマにかかげて過ごしてきた主人公楓。
久々に嫌な主人公だ!!と思いながら読んだのですが、読み終わった今、わたしは楓がすきです。 -
今の自分に、この本に出会えてよかったと思う。
ぜひ、10代におすすめしたい。
初めの方は普通に話が進んでいったが、最後の方になると、続きが気になり、ページをめくる手が止まらなかった。
大学生という、大人でも子どもでもない時期だからこそある悩みに向き合って、自分なりにもがきながら人と関わることの難しさや嬉しさに気づかせてくれる話だと思う。
また、この本の特徴は、主人公の繊細な心の動きが丁寧に書かれていることだと思う。 -
こ、この小説の主人公、、ヤバイ、、、痛すぎる、、、と、
客観的に見ているはずなのに、
何故か自分自身にもグサグサ刺さってしまうという不思議な小説でした。
おそらく筆者もこれを狙っているんでしょうね?(笑)
自信過剰なくせに、あえて自分は空っぽだと言い張り誰かに否定されるのを期待してみたり、
自分から離れていったくせに、もう一度頼ってくれるのを待ってみたり、
ただ嫌われるのが怖いだけなのに、他人に興味のないふりをして人と距離をとって生きてみたり。
全て自分の良いように理由づけして、世界が自分の思ったとおりに動かなければ、ぜーんぶ他人のせいにする。
そんな、青くて、痛くて、脆い、人間が
この世にはどれほどいるんでしょう。
とっくに学生の身分ではなくなって社会に出ている私ですが、読んでいるとまるで自分のことのようで苦しくなりました。
この小説を読んだ人全員、こうなるんよね?私だけじゃありませんように…(笑) -
まさに「青くて痛くて脆い」僕の話。
他人と仲良くしない主義の田端。
大学で知り合った、誰も傷つけない美しい理想を語る秋好。
彼女を「痛い奴」と遠巻きに見ているはずだったのに、何故か仲良くなり一緒にサークルを作ることになる。
世界平和や理想を追い求めるサークル「モアイ」。
そこから数年、田端は就職活動をなんとか終わらせる。しかしあのモアイでの日々も秋好も今はいない…
そんな回想から始まる。
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あの頃のモアイを取り戻す。
そうやって行動を起こしている段階ではテンポ良く読み進められた。
仲間の菫介と仲違いしたくらいから、徐々に田端の暴走が気になり始める…
田端がなんか好きになれず。モヤモヤ。
それにモアイが起こしたスキャンダルの真相もちょっとよく分からず。
なぜそうなった。
うーん…(^-^;
それにしても田端よ。
自分からはぶつかりに行かないくせに、相手にされなくなったからって拗ねてるだけじゃない。あんたが一番痛いやつでは?
秋好に対する気持ちもハッキリしないし。
物語のラストはそのことに気づき、希望が持てそうな終わり方で良かった。
登場人物のなかではヤンキー女子の川原さんが一番好き。
【弱い自分をちゃんと認めて成長っていう気がする。だからちょおっとずつでも、怖いけど、っていうけど、っていうのの先に行けるようにしたいんだよね】 -
過去を美化して主人公だけの時間が止まっている。その間周りは動き続けていたのに。
そのことに気がつかず、気づいたときには傷つき、自分を守るために相手を傷つける言葉でまくしたててしまう。
あとになって本当のことに気づき、相手を傷つけてしまった自分に後悔と恥が襲ってくる。
そんな青春の痛くて脆い心を描いた作品。
最後の一文が
ちゃんと傷つけ。
で終わっている所がまだ青くて脆い者へのメッセージを感じる。
誰しもが誰かを間に合わせに使う。間に合わせって心の隙間を埋められる、心の隙間に必要とされたってこと。誰しもが空洞を埋められる人。
著者プロフィール
住野よるの作品






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