紅蓮浄土 石山合戦記

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041090176

作品紹介・あらすじ

十六歳になる孤児の千世は、本願寺の間諜組織「護法衆」の一員として育てられ、篤い信仰心と類まれな戦闘技術を身に付けていた。信長と本願寺の戦いに身を投じた千世の運命は──。著者渾身の長編歴史小説。

感想・レビュー・書評

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  • 信長vs浄土真宗本願寺派の長い闘いを、本願寺側の女忍び・千世(ちせ)の視点で描く。

    信長と仏教徒との闘いと言えば比叡山焼き討ちがまずは思い浮かぶが、この本願寺派との闘いも凄まじい。
    畿内を制した信長は莫大な戦費を本願寺に要求、さらに大坂から立ち退くことを命じる。
    当然それを撥ね付ける本願寺だが、そこから泥沼の闘いが始まる。
    信長のやり方は徹底した焼き払い、逃げて来た者は坊官、門徒、町民、老人女性子供にいたるまで撫で切り、または人買い商人に売り払うという酷いものだ。

    信長側からの視点で言えば、重要な港や商いの拠点としての大坂を何としても手に入れたい、そのために本願寺一派を追い払いたいというのは分かる。ただここまでしなければならないのか、という疑問は尽きない。
    一方で本願寺側も一枚岩ではない。法主・顕如を支える御堂衆は権力争いをしていて信長と徹底抗戦するか和睦するかで意見が分かれる。
    そしてこの御堂衆の中には門徒を単なる駒扱い、喜捨という名の富を吸い上げる財布程度にしか考えていない者がいる。
    仮にも仏法を戴く聖職者がこれでは門徒たちも付いていかないのでは…と思うが、仏敵信長を倒す闘いに命を投げ出せば極楽浄土に行ける、闘わねば地獄に落ちると説かれれば戦に突入するしかない。なんと汚ないやり口だろう。
    という、どっちもどっちの闘い。

    肝心のヒロイン千世だが、彼女は幼い頃に織田軍に村を焼き払われ、武士だった父親と弟妹も殺されるという酷い過去を持つ。その直後に本願寺派の護法衆・如雲に拾われ忍びとして鍛え上げられ、本願寺と信長との闘いが始まるや様々な諜報活動や工作、暗殺まで行っている。
    その中で長島、叡山、越前など様々な戦争を目にして行く。
    千世は本願寺の門徒同様、如雲から本願寺の法灯を守るために仏敵信長軍の人間を殺せば殺すほど極楽浄土に行け、そこで亡き父親や弟妹に会えると教えられそれを信じている。
    しかし長島で出会った大島新左衛門、忍び仲間の重蔵の影響で次第に揺れ動いていく。

    形振り構わぬ本願寺内部の権力争いと信長との闘いのための様々な工作、門徒たちを人と思わぬ残酷な闘い方。
    そして次第に内部崩壊していく本願寺派と見切りをつけ反発、あるいは離反や脱走していく門徒たち。
    何とか全面戦争を避けようと画策する新左衛門たち。
    信長と闘うために沢山の血が流れ、戦を避けるためにもまた沢山の違って流れる。この虚しい闘いを幾度人間は繰り返すのか。

    『大坂にいる門徒たちが、無辜の民だとでも? 坊主どもの口車に乗せられたとはいえ、あの連中は自分の意思で、織田家と戦うことを選んだ。殺す以上、殺されることもある。この乱世じゃ、当たり前の話よ』

    千世と敵対する忍びの言葉だが、これは戦国の世に限ったことではない話のように聞こえる。一時の熱狂にあてられて物事の本質を見誤ったり、俯瞰で見ることを放棄したりしていないか。
    後になって騙されたのだ、みんなそうしていたじゃないかという言い訳が通るのか。

    物語は殺し殺されの場面が続くので辛い。千世もあまりに人を殺し過ぎている。致し方ないこととは言え、こんなヒロインが良い結末を迎えられるのかと心配になる。
    しかし一方で新左衛門の『虚しさに呑み込まれるな』という強い言葉に励まされもする。

    それにしても、信長のこんなやり方では光秀でなくてもいずれ誰かに殺されていただろうな、と思ってしまう。
    武田信玄が死に、上杉謙信も死に、様々な運にも恵まれ天下を着々と手にしていった信長だが、そこで運が尽きた。

  • 本願寺を軸とした浄土真宗と、織田信長の戦いを描く。

    信念、命令、欲望。
    それぞれの事情や思いがあって戦う者たち。

    次第に戦の意義と、まっすぐ向き合うようになる。

    何のために戦うのか?

    大量の死者を出した一連の戦だけれど、最後の落としどころには、救いがある。

  • あーもう、切ない!
    知世ちゃんがいじらしい(T_T)
    信長との戦で父親が、幼い弟妹が目の前で殺されたために、忍になるしかなかった少女の物語。
    織田信長の比叡山のなで斬りは有名だけど、何の意図で行われたのかはいまだにわかってはいない。

    その中で本願寺で阿弥陀仏と唱えれば、死んだ家族の元へ行くことができると信じてひたすら人を手にかけてゆく知世が切ない……。
    ラスト泣いたわぁ!!

    本願寺に関しては少し調べたいとも思ったりもしてます。

  • 期待通りの読みごたえとスピーディーな展開で、大満足でした。いわゆる忍者が主役の話はカッコいいけど、切ないところが多く痺れます。お坊さんと信長のイメージが逆転してしまいました。

  • 宗教と政治。日本にこの問題がないのは、織田信長の隠れた功績なのかもしれない。
    同時に、織田信長と本願寺との争いは、罪ない門徒を巻き込んでの、歴史に現れない壮絶なものである事は間違いない。
    忘れてはならない歴史の闇を垣間見た気がする作品です。

  • テーマは良いと思うが、終盤にもう少し話の起伏が欲しかった。

  • フィクションの要素が多いけど、信長など特定の武将を中心にしたお話では詳細に描かれることのない本願寺側の視点からこの時代を知ることができ、面白く読める一冊です。同じ本願寺の合戦を別の視点から描いた和田竜さんの「村上海賊の娘」も合わせて読んでみるのもよいかも(^^)

  • 戦国物は元々好きで、でも本願寺絡みはあまりよく知らなかったので手に取った本。
    なかなか引き込まれる感はあったけど、最後がちょっとなぁ… 終わり方が若干急ぎすぎ、安っぽい感じになっちゃってるのが残念な感じ。締め方って重要ですね。

  • 戦国時代、本願寺の話。
    彼女に関わった者は次々と死んでいく……訳でもない。
    展開も良く、非常にスピード感のある作品。

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著者プロフィール

天野純希
1979年生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知大学文学部史学科卒業後、2007年に「桃山ビート・トライブ」で第20回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年『破天の剣』で第19回中山義秀文学賞を受賞。近著に『雑賀のいくさ姫』『有楽斎の戦』『信長嫌い』『燕雀の夢』など。

「2023年 『猛き朝日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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