その境界を越えてゆけ (カドブンノベル Special Edition)
- KADOKAWA (2020年1月28日発売)


- 本 ・本 (420ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041090732
作品紹介・あらすじ
「物語の力が、私たちを少しだけ前に進ませてくれる」
2017年9月に刊行された、「早稲田文学」増刊「女性号」(筑摩書房)は、出版界に確実な爪痕を残しました。#MeTooとタグ付けされて告発されたセクシャル・ハラスメントの数々は、これまで無自覚に、また自覚的にも目をつむってきた我々の問題に目を向ける端緒となりました。女子受験者の得点を一律に減点していた医大入試の現状が明るみになり、ベストセラーとなった『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房/チョ・ナムジュ・著、齋藤真理子・訳)のほか、フェミニズム関連の小説やノンフィクションも多数刊行されています。「韓国・フェミニズム・日本」特集を掲載した『文藝』(河出書房新社)秋季号が重版を重ね、さらなる大きなうねりとなったことを感じさせました。現代特有の拡散力によって、世の中の温度がいま、まさに変わろうとしつつある、そんな実感があります。
フェミニズムの問題だけではありません。同調圧力や貧困、差別や環境問題。私たちが生きる世界が生々しく姿を変えてゆくなかで、生きづらさの源はあちこちに転がっています。諸問題の根底に共通して流れる、得体の知れない気持ちの悪さを、どう表現したらよいのか。世の中はどこへ向かっていくのか。どう立ち向かうことができるのか。
それらの問いに絶望しかけたときに、私は、誰かの物語に思いを馳せます。
物語はいつも、私にまだ見たことのない世界を見せ、まだ感じたことのない痛みや喜びを我が身のことのように感じさせてくれました。しなやかに、誠実に、かろやかに、前へと進むために。「物語の力が、私たちを少しだけ前に進ませてくれる」物語の可能性を信じて、旗を掲げます。
【contents】
■対談 桐野夏生×小池真理子
「私たちを後押ししたのは徹底的な「怒り」の感情だった」
■対談 辻村深月×大槻ケンヂ
「どうしてみんな生きづらい? それでも生き抜いていくための、いくつかの方法」
■小説
彩瀬まる/近藤史恵/津村記久子/寺地はるな/古内一絵/似鳥鶏「日本最後の小説」/宮内悠介
■座談会
イ・ミンギョン(「私たちにはことばが必要だ」著者)×すんみ(翻訳者)×小山内朝子(翻訳者)×谷澤茜(元・書店員)「出張! 本屋でんすけにゃわら版」
■「カドブンノベル」(電子書籍型文芸誌)から長篇第一回を掲載 王谷晶/河野裕/こざわたまこ/白尾悠/高殿円/深沢潮
■漫画 オカヤイヅミ「よいとしを」
■イラストエッセイ ぬまがさワタリ「境界線に雪は降る」
■エッセイ 佐藤亜紀/はらだ有彩
■ブックガイド「私たちを少しだけ前に進ませてくれる3冊」
感想・レビュー・書評
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境界を越える、をテーマにした対談や短編が集められた一冊だ。
ジェンダーに関する境界が主なテーマだが、それ以外の境界、差別、そういったものを扱っている作品もあり、好きな作家が多数寄稿していることもあって面白い内容だった。
意識するとしないとにかかわらず、社会にはありとあらゆる境界があり、その境界に苦しむ人もいれば、越境しようとする人がいる。
後半の作品はすべて連載の第一話であり、続きが気になるところ。個人的には物語は連載で楽しむのではなく一気通貫で読むほうが圧倒的に好きなのだけれど、初めて読んだ作家さんもいて、新しい出会いがあるところがこういった文芸雑誌の面白さだなあ、と思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館にて。
どの内容もよかったが、冒頭の桐野夏生と小池真理子の対談が良かった。
強さを持つ言葉を紡げる女の人が好きだ。
「あの日の電話」近藤史恵、「いちご」寺地はるなもすごく良かった。
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「物語の力が、私たちを少しだけ前に進ませてくれる」
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世界中にはびこるさまざまな境界。たとえばジェンダー、たとえば人種。積もり積もった差別の実態は、一朝一夕に乗り越えられるものではない。境界線のこちらとそちらには、想像を絶する格差があったりするものである。そんな不毛な境界を、物語世界で越えて行こうという試みである。極個人的には、この雑誌的な作りは、何となく集中できない気がして苦手ではあるのだが、内容自体は興味深く読める一冊ではあった。 -
よかった短編→彩瀬まる 寺地はるな 古内一絵
続きを読みたい→王谷晶/食う寝る処にファンタンゴ 高殿円/忘らるる物語 深沢潮/翡翠色の海へうたう -
【収録作品】「私たちを後押ししたのは徹底的な“怒り”の感情だった」 桐野夏生 小池真理子述/「どうしてみんな生きづらい? それでも生き抜いていくための、いくつかの方法」 辻村深月 大槻ケンヂ/「わたれない」 彩瀬まる/「あの日の電話」 近藤史恵/「隣のビル」 津村記久子/「いちご」 寺地はるな/「日本最後の小説」 似鳥鶏/「競わせる女」 古内一絵/「ラクパ・ナワンの噓」 宮内悠介/「出張! 本屋でんすけにゃわら版」 イミンギョン すんみ 小山内園子 谷澤茜述. /「境界線に雪は降る」 ぬまがさワタリ/「出張版野性歌壇」 加藤千恵 山田航/「あんまりスウィートではない『SWEET MEMORIES』」 佐藤亜紀/「ダメじゃないんじゃないんじゃない」 はらだ有彩/「私たちを少しだけ前に進ませてくれる3冊」 タカザワケンジほか/「食う寝る処にファンダンゴ」 王谷晶/「昨日星を探した言い訳」 河野裕/「夢のいる場所」 こざわたまこ/「魔法を描くひと」 白尾悠/「忘らるる物語」 高殿円/「翡翠色の海へうたう」 深沢潮/「いいとしを」 オカヤイヅミ
角川書店の作品





