最後の晩ごはん 閉ざした瞳とクリームソーダ (角川文庫)
- KADOKAWA (2019年12月24日発売)


- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041091128
作品紹介・あらすじ
芦屋の小さな定食屋で働く、元イケメン俳優の海里。
今の夢は、街のカフェバーで、憧れの人と新たな舞台に立つことだ。
そんなある日、海里は事故で視力を失った女性、瞳と出会う。
彼女を気遣ったつもりが、返ってきたのは意外な反応。
一方、店長の夏神には、昭和のレシピ再現メニューについて取材依頼が。
しかしかつてのトラウマから消極的な夏神を、
海里は残念に思い……。
思いやる気持ちがすれ違う、青春お料理小説第13弾。
感想・レビュー・書評
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夜だけ営業の定食屋<ばんめし屋>を舞台にした、ちょっと不思議でほっこりした物語のシリーズも第13作。思っていたより長いシリーズとなった。
思いがけないトラブルに巻き込まれて芸能界を追われ、今は<ばんめし屋>で働く海里と、やはり過去の登山事故をきっかけに世間から離れてひっそりと<ばんめし屋>を営んでいた夏神という、それぞれ過去を背負っている二人が少しずつ前向きになってきた前作。
海里は朗読劇を毎週行っている女優・倉持悠子のとの出会いで芝居への情熱を取り戻し、夏神は戦前の料理本をヒントに、古いレシピを現代風にアレンジして客に提供するという新たなメニューに取り組んでいる。
今作はいよいよそれぞれがリスタートへ向けて本格始動するのかと思いきや、主役は事故で目が見えなくなった女性・中山瞳。
倉持悠子の朗読劇を聴きに来たという彼女は、最初こそ海里に友好的だったのだが、ある一言をきっかけに頑なになってしまう。
色々と考えさせられる言葉が今回も出てくる。
瞳のような身体的ハンディを負った方だけでない、様々な辛い状況にある人にどんな視線や言葉や態度を向けるのが正解なのか、難しい。その時々のシチュエーションや環境や心理状態によって、その人と自分との関係によって違うだろう。
それでも海里が言うように何もしない、何も返さないよりはずっと良いのではないかと思う。
また倉持悠子の『自立することは大切だけど、それが孤立とイコールになってはいけない』という言葉にもハッとさせられた。
『自立した一個の大人だと認められたい』というプライドがあまりにも先行しすぎて、本当に必要な大切な手まで自ら振り払っていないか。
このシリーズのもう一つの要素、幽霊話がなかなか出てこない、今回は無しなのかと思っていたら意外な形で登場してきた。
こういう幽霊ならありがたい。
そして瞳に一目惚れしている坂口も、少々騒々しいが正直で良い人だ。少々周囲のフォローは必要かも知れないが、懸命に前を向いている人は気持ちが良い。
肝心の夏神だが、過去の事件から世間に注目されることへの不安はまだまだあるが、それでも一歩踏み出したことは嬉しい。
次回は海里の話がメインになるのだろうか。そしてロイドは相変わらず英国紳士スタイルで二人を見守ってくれるのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ第13弾。
今回は事故で視力を失った女性、中山瞳のお話と、夏神の昭和レシピ再現メニューにまつわるお話が中心。
毎週水曜日の夜、女優の倉持悠子が朗読イベントを行う店に、瞳は一人でやって来た。
その店で手伝いをしながら、朗読を学んでいる海里と瞳が出会う。
ここで色々あるのだが、また考えさせられる言葉がたくさん出てくる。
障がいのある人との接し方、関わり方。
良かれと思った行動が「優しい差別」と捉えられる事もある。
苦しいとき辛いとき、「差し伸べてくれる手を一度は握ってみなさい。自立することは大切だけど、それが孤立とイコールになってはいけない」
良い言葉。
人は、頼ったり頼られたりですね。
また夏神には、新聞社から「昭和の料理」についての取材依頼が舞い込む。
辛い過去を持つ夏神は、悩みに悩むが依頼を受ける事にする。
海里も夏神も少しずつ前へ進み、成長しているなぁ、としみじみ感じる。
このシリーズは、二人の成長物語ですね。
あ、幽霊もちゃんと出てきます。
出番少な目ではあるけど、良いお話です。 -
夕方から明け方まで営業する、メニューは定食ひとつだけ、時々幽霊のお客さんもおみえになります。
…の「ばんめしや」のシリーズももう13弾目。
店主・夏神留二と元イケメン俳優・五十嵐海里が、時々現れる幽霊のお客さんの心残りを料理で癒していくシリーズとして始まったが、今は、過去に傷を持つ二人の成長物語としても、大いに読み応えのあるところ。
しばらくは、海里の演じることへの情熱と、それを見守りながら、自分は何がしたいのかと自問する夏神が描かれていたが、今回は夏神にスポットが当たる。
夏神の料理の師匠の形見とも言える古い料理本は前作に初出だが、引き続き「昭和のメニューを現代に」と研究していた夏神の努力が認められる形である。
作品名物の幽霊さんも、そう来るか、という形で登場。
今回もいろいろ考えさせられる言葉があった。
事故で目が不自由になった女性が口にした、“優しい差別”という抗議もその一つ。
障害のある人にどう接するのがいいのか、この歳になっても自信が無いというのが正直なところ。
なるべく特別扱いはせずに、困った時には「手を貸してほしい」と気兼ねなく言ってもらえる信頼関係と雰囲気を作るのが大切なのではないか、と頭では考えるのだけれど。
夏神の前進に、ちょっと焦る海里。
焦らずに、良い意味で競争してほしい。
調整役は、いい味出してる眼鏡、ロイドさんにお任せします。
『豚肉と野菜の胡麻酢和へ』のレシピを巻末に載せてほしかったなあ~
プロローグ
一章 つつがなき日々
二章 上手くいかない日々
三章 そっともたれかかること
四章 思いがけない人物
五章 それぞれの荷物
エピローグ -
最後の晩ごはん、13巻。
コンスタントに半年に1冊のペースで新刊が出てるんですね。
今回登場した幽霊は目の見えない孫娘を見守るおじいちゃん。シンプルながら泣かせる展開でした。坂口君やるやん!!
1巻ごとに夏神さんも海里も少しずつ成長しているのが見られて嬉しい。そしてそれを優しく見守る眼鏡…普段は天然だけど、年長者として締めるところは締めるロイドが大好きです。 -
登場人物が少しずつ前に進んでいく過程が心温まる。
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目が見えなくなった女の子と、その人を支えたい人。そして、遠くから関わる人。
悠子さんの言葉が心に強く残った一冊でした。
すごくすてき。 -
話の流れから、海里くんの朗読の仕事が進展するかと思いきや、夏神さんも・・しかし、今回の主人公はまた別人でした。
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今回は感動回だった!ついに恋愛か?!と思ったが……なるほど、そういうオチか!となった。
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海里は、倉持悠子の朗読劇のレッスンを受けつつ、毎週水曜日には、悠子のアシスタント兼、シェストラトスのスタッフとして働くようになる。
その間、ばんめし屋は、夏神とロイドの2人で営業で、多少ばたつく。
ある日、朗読劇を聴きに来た、目の不自由な瞳と知り合う。親切のつもりで、瞳を悠子に合わせようとすると、差別的なエコ贔屓はやめて欲しいと拒絶された。
一昨年に、交通事故で目が不自由になり、同情されるのに拒否反応をしてしまう。悠子は、我が子を亡くした事を、回りに同情され、その気持ちが物凄くわかると、瞳に寄り添う。
瞳は、海里にお詫びに、ばんめし屋を訪れる。そこで、バンドマンの坂口と知り合い、一目惚れされる。ある日、怪我をした瞳がシェストラストに来た時に、海里はお爺さんの幽霊が、怪我を教えてくれて、手当をした。
その後、瞳が自立するための引越しに、海里、ロイド、坂口が手伝う。
また、ある日、雨の日で途方に暮れた瞳から、連絡を受け、海里が探すと、瞳は車に引かれそうになり、お爺さんの霊が助けた。それで、かなり玲としての力を失い、消えそうになる。
夏神は、お爺さんの好きだった飲み物を聞き、クリームソーダを用意。お爺さんは、瞳の花嫁姿を見たいと…坂口は、告白し、友達から始めて欲しいと…。お爺さんは、大好きなクリームソーダを飲み、孫を好きでいてくれる青年を見届けて成仏。
その間に、新聞社が、夏神を取材。昭和のレシピを今風にアレンジした料理を提供している店。また、その記事が評判となり、連載で、夏神の昭和レシピを週一回紹介することになる。
著者プロフィール
椹野道流の作品





