暗手 (角川文庫)

  • KADOKAWA
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041091289

作品紹介・あらすじ

作家、書評家絶賛の長編ノワール、ついに文庫化!!

台湾プロ野球で八百長に手を染め、罪から逃れるために殺しを重ねた加倉は、逃れ着いたイタリアで殺し以外なら仕事を選ばない何でも屋「暗手」として生きていた。そこへ、サッカー賭博の帝王・王天から依頼が舞い込む。プロリーグ・ロッコに所属する日本人ゴールキーパー・大森に八百長をさせろというのだ。仕事に取りかかった加倉は、大森の姉・綾の写真を見て衝撃を受ける……。馳星周、原点回帰にして究極のクライムノベル!

◆『不夜城』『夜光虫』の衝撃から20年
作家、書評家より、賞賛の声続々!!◆

言い訳はしない。赦しも求めない。ただ傷ついたまま、男はより深い闇へと分け入る。
破滅へと向かう独りよがりの自我を描かせたら、やはり馳星周はピカイチだ。
東山彰良(作家)

生への意味を、誰かの中に見出そうとする虚しさと渇き。決して実らない祈り。
桁違いの業深さ、ここにあり。
垣根涼介(作家)

初期への回帰!馳 星周節が戻ってきた!
謳いあげられる血まみれの絶望と孤独の何と甘美なことか。
池上冬樹(文芸評論家)

『夜光虫』から19年。主人公・加倉昭彦の復活は、馳 星周の新たな可能性を拓いた。
裏社会で蠢く、血に飢えた男たちの姿に胃の腑が抉られる。
弩級のエンターテインメントだ。
東 えりか(書評家)

一度地獄に堕ちた人間をさらに突き落とす。
これは馳 星周にしか書けない、もっとも危険で哀しいゲームだ。
杉江松恋(書評家)

最初の1ページで、一撃で、否応無しに物語世界に引きずり込まれる。
自己記録を更新し続ける馳 星周の、完全なる最高傑作。
吉田大助(書評家)

感想・レビュー・書評

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  • 馳星周『暗手』角川文庫。

    最近は歴史小説や山岳小説、動物小説などを多く刊行していた馳星周が、原点である『不夜城』に回帰したかのようなノワール小説。『夜光虫』の続編。面白い。

    台湾プロ野球界で八百長に手を染め、殺人の罪まで犯した主人公の加倉はイタリアに渡り、顔を変えて『暗手』と呼ばれながら殺人以外の犯罪を糧に生き延びていた。ある日、加倉の元にサッカー賭博の帝王・王天からプロリーグ・ロッコに所属する日本人GK大森怜央を八百長に荷担させろという依頼が入る。

    甦る血の記憶、殺戮への渇望……加倉はどこまで墜ちて行くのか……

    本体価格
    ★★★★★

  • 「暗手」馳星周さん
    1.購読動機
    2021年に出会えた作家さんのお一人。
    レビュー評価が気になり読了。

    2.主人公の暗い影
    味覚なし、食事は毎日同じもの、酒は基本飲まない、飲むのは炭酸水。
    彼の職業はサッカー賭博の仕込み。
    主戦場はヨーロッパである。
    日本人である彼が、偽名かつ整形までしてヨーロッパにいる理由とは?

    3.裏の世界へ、、、
    彼が味覚を失ったのは、唯一愛した女性を自身の過ちで苦しめてしまったから。
    具体的には、女性を愛したがゆえ、彼女の旦那をあやめてしまったこと。

    彼は、その事件をきっかけにあやめる仕事からは足をあらい、賭博ビジネスに足を踏み入れる。

    4.愛が戸惑いを誘う。
    決して光が当たらない賭博ビジネス。
    その日常を送る中で、一人の女性に出会う。
    光があたるシャバに戻りたいのか?いなか?
    揺れる気持ちと格闘する彼には、犯罪者であると同時に、人間の性が見える。

    この類いの小説は初めてであった。血の気が多い、銃あり、ナイフあり、なんでもあり。
    一方で、愛を捨てたが、愛を拾いたく苦悩する主人公に哀愁を感じる物語でもある。


    どこかの酒場で1人グラスを傾けながら読む小説のような、、、


  • 刮目せよ!
    これこそが馳星周だ。
    暴力と嘘に塗れただけのノワール小説ではない。
    嘘に嘘を重ねて築き上げた人間関係、愛を求める男と女の恋情。
    心を深く抉られる。
    決して気持ちの良い読後感では無いが、それがかえって気持ちを揺さぶる。
    デビュー当時のような作品だが、流石に年月を重ねて表現も重さを増した。
    久しぶりにヒリヒリする作品だった。

  • まぁハードボイルドに惚れた女のためってのは定番だけど、ちょっとやり過ぎ。
    せっかく魅力あるキャラが何人か登場してたのに後半はただの殺し合いになってしまって残念。

  • 細かい評価は3.6ってところで、四捨五入して4.0にしました。馳星周さんの作品を読むのは2020年に直木賞を受賞した「少年と犬」以来。「少年と犬」は自分の中では結構好きだったので、そういう意味では安心して読めました。
    だけど「少年と犬」とは全く違った作品の雰囲気にびっくり。裏社会を舞台にしたかなりダークな作品に仕上がっていました…サッカー賭博での八百長なども全く知らない世界だったので、社会の深淵を覗き込んだような思いがしました。
    特に魅力的だったのは、主人公「暗手」が巧みに大森に八百長をさせるように罠に嵌めていく場面。
    馳さんは昔そっちの人だったの、、?と疑ってしまうほど迫力満点です。
    ただ、アクション映画などを好んで見ない私からすると銃撃戦のシーンや、馬兵との戦いのシーンなどはイマイチ刺さらなかったかなぁ……
    マフィア映画が好きな男性などからしたら、この作品は刺さりまくりだと思います。

  • 馳先生、原点回帰。やはり面白い。

  • 題名の『暗手』(あんしゅ)とは、本作の主要視点人物である「裏の世界」に生きる男の“通名”である。作中、「暗手」には一部に「アンショウ」という中国語を思わせる読み仮名が在る。
    「暗手」は日本人の元プロ野球選手で、台湾のプロ野球に流れた時に“八百長”に関わってしまう。それが契機で殺人を重ねてしまった経過が在り、台湾から欧州へ流れ着き、顔も変え、変名を使い分けて暮らしている。そして中国系のグループによる、サッカー賭博を巡る八百長の工作等、「殺し以外は何でも」と様々な裏仕事をしていて、「暗手」という通名になる。現在はイタリアのミラノに在る。
    物語はミラノ辺りを主な舞台として展開する。
    「暗手」は、“セリエA”に昇格したミラノ近郊のチームが迎えた日本人のゴールキーパーの大森を“八百長”に巻き込む工作を請け負った。
    「暗手」は「ミラノで貿易を営む日本人事業家の高中」と名乗って大森に接近し、大森を絡め取ろうと工作を重ねる。そうした中「棄てた」筈である過去を強く意識させる出逢いが生じてしまう。
    「暗手」が負っている過去と、立ち向かわなければならなくなった状況、そして繰り広げられる死闘…一寸夢中になる。
    本作は『夜光虫』という過去の作品の続篇であることを巻末の解説で知った。全然知らずに本作を読んだが、何ら問題はない。「日本人の元プロ野球選手で、台湾のプロ野球に流れた時…」という経過が『夜光虫』では綴られているのだと想像するが…本作は独立した作品として十二分に愉しい!休日に一気に読了してしまった…

  • 久しぶりの馳星周。堪能した。ノワール。
    魅力的な悪、というかクズ。
    この作者の作品は殺伐として残虐だけど、どことなく美しさを感じる。

  • これは素晴らしい。馳さんの暗黒系、でも舞台は海外なので、後ろめたさも少ない。恋愛要素も大きく、相乗効果でスリリングな展開。「夜光虫」の続編らしいけど、大丈夫です。

  •  馳氏2作目。『四神の旗』は歴史物だったからほぼ違う作者の作品のようなイメージで読んだ。(実際には本作の方が先に読み始めたのだが)
     初めて読んだノワール小説。どう読むべきか最後まで分からなかったが、現実には体験し得ない世界だからこそ、悪役目線で大森を痛めつけてほしいという気持ちで読んでいた。ただ、結末はバットエンドにはならず、期待は裏切られた。
     序盤は物語はゆっくりで少し退屈だったが、終盤の殺人の過程はスピードアップして引き込まれるものがあった。この緩急が人物の心情を体感させ、迫力を倍増させることに成功していると思う。
     本作は続編物らしく、前作を知っていると確かに面白いのだろうと思う。なぜ元プロ野球選手がこんなに殺しに強いのかは本作だけだと解せないので。ただ、遡って読むかは微妙。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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