アルツハイマー征服

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041091616

作品紹介・あらすじ

アルツハイマー病の進行自体に介入する初めての薬『アデュカヌマブ』は承認されるのか?
2021年3月7日までに下されるFDA(アメリカ食品薬局局)の判断を、世界が固唾を
呑んで見守っている。

本書は、『アデュカヌマブ』開発にいたるまでのアルツハイマー病解明をめぐる研究者と患者の100年の物語。
アルツハイマー病遺伝子の特定から
トランスジェニック・マウスの開発。
ワクチン療法から抗体薬へ――。
名声に囚われた科学者の捏造事件。
治験に失敗した巨大製薬会社の破綻。
治療薬開発に参加した女性研究者の発症とその苦悩。

幾多のドラマで綴る、治療法解明までの人類の長い道。

感想・レビュー・書評

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  • 【はじめに】
    まず、この本はとても面白い。世の中にサイエンス・ノンフィクションというジャンルがあるが、日本人がここまで面白いサイエンス・ノンフィクションを書くことができるのかと思うと感動した。大河内直彦の『チェンジング・ブルー』や千葉聡の『歌うカタツムリ』もサイエンス・ノンフィクションの名作だが、いずれもその道の専門家が自分の研究領域について書いたものである。本書『アルツハイマー征服』は、いくつかの領域でノンフィクションを書いた著者が、専門外のアルツハイマー治療にテーマを定めて長年追いかけた上で物にしたということで日本のサイエンス・ノンフィクションの領域において特別なものだと評価できる。著者がかけた時間に見合うだけの素晴らしい出来で、興味がないという人にも無理矢理にでも薦めたい本である。

    【概要】
    物語はまず青森の家族性アルツハイマーの患者のエピソードから始まる。家族性アルツハイマーは本書で扱うアルツハイマー征服の旅の中でも非常に重要な役割を果たす。物語の入りとしても素晴らしいし、また最後の患者会(DIAN)へのつながりなど後半でのエピソードの回収もあり、この辺りの作品としての作りこみも本格的な欧米の一流のサイエンス・ノンフィクションらしく素晴らしい。

    認知症は、人間の寿命が伸びて人生100年時代と言われるようになった現代において、ますます大きな社会問題となり、また数多くの個人や家族に悲劇的な結果を与えるようになった。その原因のひとつでもあるアルツハイマー病は、一説では、世界で5,000万人を超える患者がいると言われ、日本国内でも約400万人がこの病に苦しんでいるという。脳の神経細胞の変性によって、何よりも自分が自分でなくなるという、空恐ろしさがこの病を特徴付ける。著者は2002年からこの病について次のノンフィクションのテーマとして興味を持ち、物にしようと考え続けてきたという。そのときから今まで、この本で書かれているような多くの出来事があった。著者のように関係者の中に深く入り重要な要素を取り出していくということがなければ業界の外には知られることがなかったようなドラマがそこにはあったのだ。

    アルツハイマー病治療の短い歴史の中では、日本の研究者も重要な役割を果たしている。具体的には発症メカニズムのアミロイド・カスケード仮説や、アルツハイマー病遺伝子の発見にも日本人が深くかかわっている。また本書の前半、日本の製薬会社エーザイでのアルツハイマー治療薬アリセプト開発の物語が一つの軸にもなる。開発を主導した杉本八郎の執念や現社長の内藤晴夫の決断が、まるでエーザイ内部にいたかのように感じ取られる。ひとつの薬の裏に、多くの人間のドラマがあることを静かな情熱とともに思い出させる。またひとつの創薬には、治験に莫大な費用がかかり、またゼロか百かの博打でもあり、その莫大な費用負担とリスクは権利を売買してヘッジするというビジネスの世界につながるということも、とてもよくわかる。

    またデール・シェンクらを中心とした創薬ベンチャのアセナ社の物語ももうひとつの軸となる。有望な科学者が情熱をもって取り組み、成功を収める。ただし、その成功のせいでマネーゲームに巻き込まれ、チームはバラバラになっていく。しかし、デール・シェンクが端緒を付けた抗体薬で、対症療法薬ではなく根本治療薬とも期待されるアデュカヌマブが、アリセプトを開発したエーザイと米バイオベンチャのバイオジェンの手によって、途中ももろもろダメになる危機がありながらも、フェーズ3治験を済ませて米FDAへ申請をした、というのが本書が刊行された状況だ。

    【所感】
    アデュカヌマブの最後を見ることなくがんに倒れた天才デール・シェンク、社内抗争に一度は敗れた杉本八郎、自身が研究するアルツハイマーの病魔に捉えられた科学者ラエ・リン・バーク、ここまでの人間ドラマを書くことができるのは丹念な取材と人間関係の構築と取材対象へのレスペクトがあったからこそであろう。そこここに著者の登場人物らに関する静かで熱いパッションがにじみ出ている。

    本の内容で、色々と紹介したいと思ったことはあったが、誰も著者よりもうまくこの物語を語ることはできないだろう。とにかく、サイエンス・ノンフィクションが少しでも好きだという人にはぜひ読んでほしい。

    私が大好きで、そして信頼するサイエンス・ノンフィクションの翻訳者の青木薫さんが、この本について次のように書いている。

    「私がサイエンス・ノンフィクションの翻訳を志したのは35年ほど前のことですが、当時、欧米の力量あるライターと日本の書き手のあいだには、埋め難いギャップがあると感じていました。なんといっても、取材力が違う。とりわけ現代の科学現場を描こうとするとき、欧米の一流のライターは、関係者への丹念な取材にもとづいて、登場人物が、悩み、苦しみ、挑戦し、泣き、笑う...そういう人間ドラマをみごとに描き出し、人間の営みとしての科学を生き生きと伝えることができる。ああ、これは、地理的な距離もあるし、言葉の壁もあるけれど、なにより文化的な蓄積がちがうな、そう簡単に乗り越えらるギャップではないな、と思ったのを覚えています。
    しかし、このたび本書を読んで、著者の下山さんは、そのギャップに橋を架けたのだ、と思いました。本書には、日米欧の多彩な登場人物が、丹念な取材にもとづいて生き生きと描き出されています。下山さんの念頭には、欧米の一流ライターが到達している高みがあったのではないでしょうか。ギャップに架かったこの橋を、今後、日本の新世代ライターが続々と渡っていくのが見えるようです。そうであってほしいと思います。アルツハイマー病という本書のテーマに興味がある人だけでなく、日本のサイエンス・ノンフィクションの転換点を目撃したい人にも、強くお薦めしたい一冊です。」

    まったくもっておっしゃる通りと膝を打つ。本の表紙には英語で"Conquering Alzheimer Disease"とある。著者にその気があれば、英訳されて海外でも相応に評価されてもよいと思わせる力作。まずは日本でぜひとも売れてほしい。


    本書刊行後の2021年2月、アデュカヌマブのFDAの審査期限が3月から6月に3か月延伸された。これは、もう少し時間をかけて確認したい点が見つかったということで、ポジティブな兆候だという。もちろん、この薬が万能であるとは思われず、どうであってもアルツハイマー征服は現在進行形として続いていく。まずは、多くの人がアルツハイマー病の悲劇を避けることができるようになり、そしてヒューマンヘルスケアのエーザイには薬の承認とともにさらに頑張ってほしいと応援したい気持ちになった。そして僕らもより明晰な頭で人生100年時代で晩年を送るのだ。

    超お奨めです。

    ---
    2021年6月7日 FDAが条件付きで承認した。今後、臨床試験の実施が要求され、その結果によっては承認の取り消しもありうるとのことだが、それでも大きな一歩だ。これをきっかけとしてアルツハイマーを含む認知症の治療に向けた医学的進歩が加速していくことを期待する。

    ---
    『チェンジング・ブルー』(大河内直彦)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4006032803
    『歌うカタツムリ』(千葉聡)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000296620
    青木薫~『アルツハイマー征服』圧倒的な取材力と筆力で読ませるサイエンス・ノンフィクション!(HONZ)
    https://honz.jp/articles/-/45882
    下山進~「結論は3カ月延長に」アルツハイマー病の根本治療薬は承認されるか (President Online)
    https://president.jp/articles/-/42909?page=2

  • 【感想】
    アルツハイマーは人類に残された難攻不落の砦である。
    分子遺伝学の発展が目覚ましい現代医学によっても、「脳」という領域は未開拓のままであり、そこで引き起こされる細胞変異に対してなすすべがなかった。アルツハイマー患者に対する治療は、異常行動を薬によって緩和するという「対症療法」が限界であった。

    しかし2021年現在、暗闇に光が差し込みつつある。
    アルツハイマー病の病気の進行そのものに介入する初の薬、「アデュカヌマブ」が承認審査を受けている。もしこれが承認されれば、病気の遅延だけでなく病気そのものを消すことができるかもしれない。いよいよ、アルツハイマーが「治る病気」となる可能性がでてきたのだ。

    本書は、過去の治療薬から「アデュカヌマブ」の開発まで、各国の研究者たちがアルツハイマーに挑んできた歴史を振り返るノンフィクション本である。

    エーザイ社内での社内政治、臨床試験での失敗の数々、論文のねつ造、そして家族性アルツハイマーを患った一族が下す決断など、読んでいて興奮を覚えるほどの熱気と密度だ。サイエンスノンフィクションという分野で、――しかも日本から出版されたというくくりでは――これを超えるものはそうそうないだろう。

    コロナワクチン開発でも話題になったが、治療薬を開発するのには数百億~数千億の資金が必要になる。一度失敗すれば会社の屋台骨がゆらぐほどの規模だ。現に、アリセプトの生みの親でもあるエーザイの杉本氏は、作っても作ってもあたらない(ドロップする)ことから「撃墜王」と呼ばれていた。

    そうした社を揺るがすほどのリスクを負ってまで、研究者たちがアルツハイマー征服に取り組む理由はなんだったのか?

    その理由は本書の最後に綴られている。
    家族性アルツハイマー病の国際的なネットワーク研究機関である「DIAN」に参加した青森の患者のスピーチを聞き、筆者が書いた言葉である。
    「自分がたとえ間に合わなくとも、若い世代が、自分の将来や結婚や出産について、自由に選択できるその日が来ることを信じて、今私たちはここにいるのだ。そして研究者もまた、彼女のスピーチを聞いて、自分がなぜこの仕事をしているのかということを再認識した。(略)彼女のような人々が、自分の将来や結婚や出産についての病気のことを気にせず自由に選択ができること。その未来のために自分たちは日々この病気と戦っているのだ。」

    新薬開発の研究者の多くが、身内をアルツハイマーで亡くしていた。ときには研修者自身も、病気にかかり命を落としていた。
    彼らは二重の意味で最前線にいた。研究者としての立場と、被害者としての立場で。

    治せない病気は目の前に迫っている。
    そして、それによって命を落とすのも、それを根絶することができるのも、自分自身である。
    その当事者としての強い思いが、彼らを動かしたのだ。

    複雑な立場にありながら、いかにして彼らはアルツハイマーと戦ってきたのか。そして、アルツハイマーは征服できるのか…。

    研究者たちの奮闘の歴史をぜひその目に焼き付けて欲しい。

    ───────────────────────────
    本書が執筆されたのは2021年1月であり、その時点では、アルツハイマー治療薬である「アデュカヌマブ」は、FDAによる審査待ちの状態です。
    参考として、2021年4月25日現在の当治療薬を取り巻く状況を記しておきます。


    FDA(アメリカ食品医薬品局)は追加の治験データの提出を求め、アデュカヌマブの承認結果の公表を3月7日から6月7日まで延長した。
    https://president.jp/articles/-/42909?page=1

    FDAの諮問委員、審査中のアデュカヌマブに否定的見解を表明
    https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/21/04/07/08035/

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    【本書のまとめ】
    1 家族性アルツハイマーの研究
    母親なり、父親なりが家族性アルツハイマーの遺伝子を持っていると、50%の確率で子に受け継がれる。
    そして、受け継がれた子は100%発症する。

    家族性アルツハイマー病の研究で見つかったのは、アミロイドに関する突然変異だった。

    1995年5月、カナダのトロント大学のピーターヒスロップが突然変異の場所の特定に成功する。突然変異する遺伝子は、テロメア、つまり染色体が交差する根っこの部分にあった。

    人類は、家族性アルツハイマー病の原因となる遺伝子を手に入れることができた。病気で苦しむ人々を救うために次にすることは、この遺伝子を使ったトランスジェニックマウスを開発することである。

    2 エーザイによる治療薬の開発
    エーザイで開発されていたアルツハイマー治療薬、「E2020」は、日本では後期臨床第二期まで進んでいたが、これまで一度も有意に薬が効くという結果は出ていなかった。

    しかし、米ファイザーから吉報が入る。米国での治験により、プラセボとの有意差が出たとの結果が報告される。E2020の投与によりアルツハイマーの進行が抑えられていたのだ。

    この試験の結果により、「導出」を出す、つまり米国の他会社に販売権を売り払って利益を得るか、続く臨床第三層を自社でやるか、選択に迫られることとなった。社長の内藤が下した決断は、「自社で行う」だった。
    その判断は正解だった。
    アメリカの臨床第三層は「有意差あり」だった。

    1994年には、エーザイは、ファイザー社とE2020について共同販促、自社売り上げ計上の契約を調印していた。

    そして1996年、ついにE2020はFDAの承認が降りた。「アリセプト」の誕生である。
    アリセプトはまたたく間に世界中に広がっていき、エーザイはこのアリセプトの成功で一気にグローバル化していく。

    1999年、E2020を作った杉本は、社長から特命事項を受ける。アリセプトのように病状の進行を遅らせる薬ではなく、「根本治療薬を作れ」との命令であった。


    3 トランスジェニックマウスの開発成功
    1995年、アメリカの医療ベンチャー「アセナ・ニューロサイエンス」がトランスジェニックマウスの開発に成功する。トランスジェニックマウスとは、遺伝子組み換え技術を使用してゲノムが変更されたマウスであり、病気の研究の際に動物モデルとして使われている。このマウスがあれば、特定の病気に対する薬学的反応を検査することが容易になる。まさに「聖杯」であった。


    4 ワクチンによってアルツハイマーを消せるか?
    ●アミロイド・カスケード・セオリー
    アミロイドが脳の中に溜まっていき、凝縮し、脳に沈着することでできるのが「アミロイド斑(老人斑)」である。それが溜まってくると、神経細胞内にタウが固まった神経原線維変化が生じて、神経細胞が死んで脱落する。これがアルツハイマー病の症状を引き起こす。
    それならば、そのカスケードの最初のトリガーであるアミロイド斑を取り除けばいい。
    これが「アミロイド・カスケード・セオリー」である。

    アセナ・ニューロサイエンスに属するデール・シェンクは、次のようなアイデアを考えた。「アミロイドβを患者の体に直接注射することで、そのアミロイドβからなる老人斑を解体できないだろうか?」
    要するにワクチン摂取だ。

    仮説は正しかった。マウスにワクチンを注射すると、老人斑の生成を抑えるだけでなく、すでにできていた老人斑を「消して」もいた。アルツハイマー病の研究の歴史の中で初めて、予防だけでなく「治療」の可能性が見えたのだった。


    5 ワクチン開発戦線
    アルツハイマーワクチンの第一号である「AN1792」は、副作用として脳炎を発症することが発覚し、治験が中止される。
    ワクチンで副作用が出るなら、ワクチンではなく抗体薬を作ろうとして生み出されたのが、第2世代の「パピネツマブ」だ。

    パピネツマブの開発中、アセナ・ニューロサイエンスは経営不振に陥っていた。親会社のエラン社の野放図な経営により会計不正が発覚する。AN1792の治験の中止も相まって、株価は95%も下落した。
    そして、最後の望みであったパピネツマブの治験も「治療効果無し」と発表された。
    アセナ社の全開発部門が閉鎖されたのは、パピネツマブの開発が中止となった一週間後のことだった。


    6 老人斑ができないアルツハイマー病
    家族性アルツハイマーの新しい遺伝子が見つかる。「Osaka変異」だ。
    Osaka変異の特性を調べていくと、毒性を持つのは老人斑ではなく、その前のAβ(アミロイドベータ)オリゴマーという物質であったことが確認された。
    そしてAβオリゴマーの研究からある仮説がもたらされる。「アルツハイマー病にかかった患者は、発症する以前に長い期間をかけて脳の中に変化が起こっているのではないか?」「病状の進んだアルツハイマー病患者を対象にしたパピネツマブやソラネズマブの治験は、そもそも介入の時期が遅かったのではないか?」「投与量の1ミリグラムは少なすぎたのではないか?」


    7 アデュカヌマブの発見
    Aβは脳内だけに生まれるわけではない。身体のいたるところで、Aβは生じている。そして、それに対する抗体もまた自然発生的に生まれている。
    この自然抗体に着目して開発されたのが、「アデュカヌマブ」であった。アデュカヌマブはAβに結合する構造を持った抗体で、神経細胞中のAβを除去する作用がある。

    一度は中間解析で「効果無し」と判定されたアデュカヌマブであったが、2020年7月8日、バイオジェン社(エーザイと共同開発を行っていた会社)は、FDAにアデュカヌマブの承認申請を果たしたことを表明した。アルツハイマーの根絶に向け、人類が大きな一歩を踏み出した瞬間であった。

  • 医療ノンフィクション『アルツハイマー征服』を、ジェンダーとケアの視点から読む。【VOGUE BOOK CLUB|治部れんげ】 | Vogue Japan
    https://www.vogue.co.jp/change/article/vogue-book-club-defeating-alzheimer

    【書評】「救済の日」は遠くない:下山進著『アルツハイマー征服』 | nippon.com 2021.2.20
    https://www.nippon.com/ja/japan-topics/bg900259/

    アルツハイマー征服 下山進著 | レビュー | Book Bang -ブックバン- 2021年2月21日
    https://www.bookbang.jp/review/article/668379

    治療薬めぐる人間ドラマ 下山進さん「アルツハイマー征服」- 産経ニュース 2021.2.24
    https://www.sankei.com/life/news/210224/lif2102240023-n1.html

    著者と語る『アルツハイマー征服』下山進氏 | 日本記者クラブ JapanNationalPressClub (JNPC) 2021年01月27日
    https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35785/report

    そこが聞きたい:ノンフィクションの可能性=作家・下山進氏 | 毎日新聞(有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20210302/ddm/005/070/009000c

    アルツハイマー征服 下山 進:一般書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321911000051/

  • 最近話題のノンフィクションの一冊。

    とにかく面白い!冒険小説のように読み出すと止まらない。内容は小難しい遺伝子、抗体、阻害薬とかの話なのに。

    日米のさまざまな研究者、企業が20年近い歳月をかけて病気のメカニズムから特効薬を開発するまでの戦国絵巻みたいな物語。

    しかも、この話はまだ結末がついていない。最後にでてきた特効薬は現在FDAで審査中。今年三月に結果が出るはずが六月まで延長。

    あまりに詳しいので著者は医学関係者かと思えば、そうではないノンフィクションライターで15年ぐらい取材をしてきたそうです。すごい人が出てきた。

  • アルツハイマー病についての情報を与えてくれる。
    アルツハイマー克服の歴史が分かる。
    アルツハイマー病に挑んだ人、今挑んでいる人や組織・会社のことが分かる。
    アルツハイマーで苦しむ人たちのことが理解できる。

    今日現在は、人類がアルツハイマーを克服できる入り口に差し掛かった段階であるかも知れない。
    FDAでもうすぐ一つの契機となるかも知れない治療薬の承認が出る可能性がある。

    非常に読みやすく書かれた深い内容です。

  • タイムリーな話題ということで選定した1冊であるが、アルツハイマー病の治療薬の開発に挑む研究者・製薬会社・バイオベンチャー、医師、そして患者を登場人物として、疾病と治療、ひいては科学技術のもたらす効用にまで思いをめぐらせることができる超一級のノンフィクション作品。

    当然、舞台はグローバル規模にならざるを得ず、日本人が描くには相当のハードルがあるテーマであるわけだが、十数年間、アルツハイマー病に関する取材を続けてきた著者でしか書けないと思わせる力作であり、このテーマでこの本を超えるノンフィクションはあり得ないのでは、という気にさせられる。

    読み進めていたら本当にページが止まらず、一気呵成に読み終えてしまった。本書のラスト、遺伝性アルツハイマー病に悩む一族の女性が、グローバルでの患者団体のカンフェランスにて行ったスピーチの内容は涙を誘う。

  • この本を読んだ直後に「アデュカヌマブ」が承認された。
    私自身は、身近に患者もいないし、化学には疎いので、どちらかというと、人間模様として読んだ。
    研究者たちも人間なのだなあ…幸運もあれば、不幸もあり…
    それにしても、この薬が、ヤングケアラー問題等の解決の一助となることを切に願う、

  • 日本、アメリカ、欧州とさまざまな舞台でいろんな人々がそれぞれの思いで行っていることが縒り合されてひとつの病気への戦いへと収斂していく。構成も工夫されており面白く読めた。ただ、まぁ「征服」された結果が出ているわけではないので、結末の落ち着き感はあまりない。またいつかの増補版を楽しみにするところですね。
    エーザイでの、巨万の富をもたらした功労者に7年も冷や飯食わすところとか、治験でのトンチキぶり(しかもそのトンチキが偉くなってる。アメリカからの助けがなければ間違いなく世に出てない)とか、怒りを感じてしまったのだが、そういう感想が見かけられないのは何故なんだろう…

  • このノンフィクションも読み応えあり。構成が素晴らしく、ストーリーとして展開が理解しやすく感じた。

    表紙カバーの袖にあるように、アルツハイマー病の解明は、家族性アルツハイマー病の家系の人々の苦しみの上に築かれたという。まずは遺伝子の特定、
    トランスジェニックマウスの開発、ワクチン療法から抗体薬へ。

    それぞれの研究、試験の過酷さが描かれるだけでなく、関係者の人柄やドラマも織り込まれている点で、読みやすく興味深い内容になっている。

  • アルツハイマー病は有効な治療法もなく、ゆっくりとだが確実に進行していく。若くして発症するケースもあり自分自身だって発症しないとは限らない。
    アルツハイマー病には、そんなおどろおどろしい印象以外に確とした知識はなかった。
    本書はそんなアルツハイマー病の治療法を巡る薬学・医学界を追ったノンフィクション。
    この病気の恐ろしさ、医者・科学者たちのパッション、新薬開発、アメリカの医療ベンチャーなど、どのテーマで読んでも一級品だ。時折挟まれているエッセイのような章も、胸をうつエピソードに満ちている。
    このような科学分野で世界的な潮流を追ったノンフィクションが翻訳物ではなく、日本の著者が書かれ、原文のまま読むことができ、大変ありがたい。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。アルツハイマー病の研究の歴史について、2000年代から興味を持つ。日・米・欧の主要人物に取材し、研究者、医者、製薬会社そして患者とその家族のドラマを積み上げる形で、本書をものした。1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA)、『2050年のメディア』(文藝春秋)がある。慶應SFCと上智新聞学科で「2050年のメディア」の講座を持つ。

「2021年 『アルツハイマー征服』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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