緋色の稜線 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041091890

作品紹介・あらすじ

ホテルに連れ込んだ行きずりの女を殺してしまった吉行は、車で逃げる途中不思議な兄妹と出会う。兄の名は「白兎」、幼い妹は「和子」と名乗り家に帰る途中だという。吉行の生まれ故郷の村の、その先の山中に自分の村があるのだと、あどけなく話す和子。雨の山中でもあり、奇妙な縁を感じた吉行は二人を車に乗せ近くまで送ってやることにする。親子に見間違えられながらの逃避行に、ふと吉行は自分の人生を振り返る。やがて夜になりこれ以上進めないとなり、三人はひとまず小さな宿で一晩休むことにする。穏やかな夕食と温泉、まるで本当の親子のようだ。独り言ちる吉行の目に飛び込んできたのは、和子の首に残る赤い一筋の線だった! 過去の記憶がよみがえり苛む。彼岸と生死の狭間に現れる不思議な少年の正体とは? 大人のサスペンススト―リー。

感想・レビュー・書評

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  • かなり好きな世界観の一冊。

    夢か現か…明確な掴みどころのない世界観はかなり好き。

    殺人を犯し逃げる男が、月夜の晩に山中で出会った少年と幼女。
    家まで乗せて欲しい…って、どこかホラーな雰囲気で掴みはバッチリ。
    しかも男をずっと待っていたらしい。

    この少年達は何者なのか。道中、男の記憶がミステリアスに絡まり、幻想的なシーンも相まって、ぐぃっとラストまで惹きつけられた。

    幼女を眠らせてはいけないって、そういう意味だったのね。

    哀しみがたまらないけれど負けないぐらい読後感も良い。

    白兎の導きが静かに心に残る。

  • どこまでが幻でどこからが現なのか、読者をも幻惑する。
    行きずりの女を殺して逃亡を図る男の前に現れた、少年と幼女。
    彼らはいったい何者なのか。
    その正体を知りたくて、ひたすら頁を捲ってしまう。
    『バッテリー』などの青春ものとは一線を画す、人間の心の闇を描く『弥勒の月』シリーズに位置するものだろう。
    白兎シリーズともいうのだろうか、後の3篇も読まなくては。

  • うーむ…

    あまり好きではないかも。

    書店で「白磁の薔薇」を手に取って、シリーズと言うことだったので、まずは本書を購入。

    「大人のサスペンス・ミステリー」という裏表紙の解説で読み進んでいったが、ちょっとちゃうのでは?

    次を読むかどうか微妙…

  • 白兎シリーズとでも言うのだろうか、第一弾。
    山下和美さんのコミックであった不思議ナ少年のようでもあるが、やはり、あさのあつこさんは違う。大人をかく時のこの作家さんは妙な色気があると思う。妖艶というか、決してイヤなエロではなく明治大正昭和初期の文豪の持つエロチシズムとでも言うのか。内容はしっかり骨太な生と死に絡むサスペンスだった。ただの逃亡者だけではない、主人公の最後に余韻が残る。

  • 白兎シリーズ第1作目の「透明な旅路と」を文庫化した作品です。
    「バッテリー」や「THE MANZAI」、時代劇ものなど若者を主人公にした青春小説を多く描いているあさのあつこさんがミステリー?それも殺人を犯した大人が主人公?という二度見してしまったくらい衝撃的でしたので、読んでみました。
    白兎シリーズは知らなかったのですが、結果的には白兎が主人公でしょうか。最後まで謎めいた少年?でしたが、最初の段階ではこれはホラーなの?と疑っていました。

    殺人を犯した主人公・吉行は逃避行の途中、山中で謎の少年と幼女に出会う。二人の関係が他人同士。少年は少年らしからぬ素振りや佇まいにどんな物語になっていくのか、次々と疑惑なことが出てくるので、予測不能でした。大人向けの小説ですが、文章は読みやすく、あっという間に読めました。
    吉行だけでなく、少年・白兎と幼女のキャラクター性も際立っていて、印象に残りました。そういった描写は、さすがだなと感じました。

    時折、吉行の過去と行き来しながら、次第に幼女の正体が明らかになるのですが、少年の方は結局わからずに終了するので、消化不良になりました。そもそも、この物語もどこからが現実で、どこまでが幻なのか、ずーっと霧のようなぼやけた空間で読んでいた感じがしました。
    最後ら辺の色んなことがあったけれども、人を犯したことへの罪は罪であることには深い何かを感じました。

    全4部作だそうなので、白兎の正体が何なのか、次作を楽しみにしたいと思いました。

  • kindle unlimitedにあったので読んでみた。
    読んでる途中、ずっと胸がざわざわ落ち着かない感じ。
    少し重くて暗いイメージだけど、吉行と白兎の掛け合いが明るさを醸し出してる。
    全4巻のようなので、次も読んでみようと思う。

  • ミステリというよりは幻想小説。
    ホテルで行きずりの女を殺してしまった男が車で逃亡中、山奥で少年と少女を拾う。
    彼らは兄妹ではなく、少女を家に送り届けるために一緒にいたらしい。
    少女の家は、男の故郷のさらに奥。
    雨のため温泉旅館へ泊り、少女と過ごすうちに思い返される男の過去。
    不思議な少年と無邪気な少女。彼らは一体何者なのか。
    男の兄が山に入った理由はわからないままだった。
    山に呼ばれたということなんだろうか。
    どうやらシリーズものらしい。
    作者のファンなら楽しめるのではないだろうか。

  • 少年の名前が白兎だったので、主人公は騙されて滑稽な感じで終わるのかなと思いましたが、違いました。因幡の白兎ではなかった。

    人でないものの扱いが斬新で面白かったです。少しづつ増えていく謎が、いろいろな登場人物の過去と混ざり合っていて、それが繋がっていく展開にドキドキしました。過去の事実と出会うたびに揺さぶられていく主人公が、不審に思いながらも、女の子を大切に扱っているところが虚しさを誘ってきます。妄想だと言われた時の絶望感を一緒に味わいました。

    背負った罪は消えないと言いつつも、最後は、捕らわれた過去と決別できそうな希望で終わります。過ちや罪は、その過程で希望があるからこそ、重さを知ることになるのかもしれません。償いは、生きていればこそできるものなのだと感じました。

  • 白兎は、何者?
    主人公の深い心の内を、表に出し認識させ、行動をせまる。
    さまよう魂を救済する。
    現実と幻想が入り交じり、独特の雰囲気が漂う。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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