白磁の薔薇 (角川文庫)

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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041091913

作品紹介・あらすじ

標高千五百メートルの麗峰の中腹に建つ『ユートピア』、そこは死を間近にした人々が最高で最期の治療と看護を保証された豪華なホスピス。入居者は元女優の凛子や著名なエッセイストの水原など莫大な費用が払える特別な人間ばかりだった。看護師長の千香子はオーナーの中条に見込まれ独身のまま住み込みで務めていた。ある日、季節外れの嵐で起によってがけ崩れが起き『ユートピア』は完全に孤立してしまう。千香子や心配だと駆けつけてきた介護士の優太を含め宿直のスタッフ全員が中条の部屋に呼ばれる。そこで彼が話し出したのはとんでもない提案だった。その翌朝、駐車場でスタッフの一人が他殺体で発見される……! 大人のサスペンス・ミステリ―完結編!

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ4の一冊。

    今作は孤立した終の住処「ユートピア」での殺人事件。

    白兎の正体と併せてちょっとしたサスペンスを楽しめた最終巻。

    間もなく迎える死を待つ場所で交錯する人々の思い、根っこに抱えた埋み火なるものを存分に盛り込み、最後に意外な展開で締めくくるのが良かった。

    まさに人の心に棲みつくもの、それが一番心を脅かす。

    白兎の存在が時に現実味を帯びるように色濃く、時に今にも消えそうな薄さへと変わる、この対照的な魅せ方描き方も幻想感溢れて好き。

    白兎の存在に込められた、作者の生と死への想いもじんわり沁み渡るのも良い。

  • 嵐により道が崩壊し、外界から閉ざされた豪華なホテルで起きる殺人事件。
    関係する人物は限られており、正当な密室殺人を扱った本格ミステリーかと。
    しかし、本書はやはり白兎シリーズの4。
    「この世にいてはいけない魂を還すのが、おれの役目ですから」と、白兎が登場する。
    読者の前に二重三重に用意された扉が、次々と開いてゆき、登場人物たちの真の姿が明らかにされる。
    「生と死のあわいに存在する者」として白兎を据え、生と死を巡る言葉を綴るこのシリーズ。
    『バッテリー』などとは一線を画し、『弥勒』シリーズとともに、著者の多様性を示す作品。

  •  選ばれた持てる人たちのホスピス、「ユートピア」。嵐により孤立した「ユートピア」で、オーナーの中条がスタッフにある提案をする。翌朝、看護師のひとりの死体が見つかる。

     選ばれた最高級のスタッフという割には、なんだかな~と思っていたら、そういうことか。オーナーはゲスだし、もう一人サイコパスがいるし、でとんでもない面子だった。被害者は身から出た錆で、むしろ加害者が気の毒で残念。こんなのを殺して罪を負うなんて。
     元大女優の凜子さんが素敵だった。

  • 白兎シリーズ最終刊。今作だけは、少し違うサスペンス調。白兎の登場も少ないのが、寂しい。

  • シリーズ最終巻。まだ続きそうな感じも残しつつの終わりだった。シリーズを通して生きている事死することが描かれていたが、なによりもその間にある時間について考えるシリーズだったように思う。ファンタジーに包まれた哲学のように感じた。密室事件があるので、そこそこの緊張感もあり読み終わりはちょっと疲労感があった。

  • 「白兎」シリーズ、最終巻。生と死の狭間に生きる白兎は、不思議な存在だと認識されてもなお、自然と受け入れられていきます。

    結局、思考をさらしてしまうことは野暮だから、彼自身の思いが語られることはなかったんですが、役目についてどう思っているのか知りたかった気持ちはあります。言葉の端々には出てきているけど、歯がゆい思いをしつつも、何故その役目を果たそうとしているのかとか。なぜ少年の姿なのかとか。

    > 生きることが希望だと思わないけれど、死もまた救済にはならない

    40代にもなると、生まれた意味を問い続ける時間は終わって、ずいぶん前から、生きた証を残していくことに時間を費やすことが必要になりました。でも、それは生きた奇跡そのものなのだとしたら、何も探求することなく、ありのままの自分でいることで意味のある人生だったと言えるんだなと思えました。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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