- 本 ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041092002
作品紹介・あらすじ
青春を共にし別々の道を歩んだ友人。謎の死を遂げた夫。守りたいと初めて思った女性――。「太陽がいっぱい」「愛の泉」など名作映画をモチーフに、悲しみを抱えた人々が前を向き歩み出す姿を描く全5篇。
感想・レビュー・書評
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映画好きのための短編集、といってもいいんじゃないか。
5つの短編はどれも映画に対する愛に溢れていて、会話の中に必ず映画愛について、いろんな形で語られている。
再読だったので、旅の途中に一つずつ読んでた。ひとつ一つの短編集で、みんな苦しんでいるところを映画の力で助けられたり、元気をもらったりする。映画にはそういう力があると思う。物語の力なのかな。
本を読むことと同じように、映画と出会うことで、別の世界に連れてってくれて、新しい形を知ることができたり、今までの考えに納得できたりすることができると思う。読むとき、見る時によって気になるポイントは変わる。何度も同じ映画を見てしまう。それでも、見るたびになんか発見があっておもしろい。何度見ても、オードリー・ヘプバーンはかわいかった。
昔、初めて読んだ時には、すごくいい涙を流しながら読み終えた。今回は、愛とか優しさとかにふんわり包まれながら読了。そして、映画が見たくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
同僚から「オススメ」と貰った本。
…いや、これはイイです。かなり好みでした。
映画のタイトルに因んだ作品が集められた短編集なのですが、キレイすぎない人間描写が逆に心をじわっと暖めてくれました。
全ての作品が、心に灯りを点してくれます。
個人的には
「ドラゴン怒りの鉄拳」と「愛の泉」が特に好き。
愛の泉の溢れあまるユーモアにはクスクスと笑ってしまいました。
各作品がさりげなくリンクしているのも伊坂さん好きの自分好み。
皆にオススメしたくなります。同僚に感謝。 -
この作品に登場する映画はどれも見たことがなかったけれど、なんだか愛着がわいた。
それぞれの物語に愛があり、人を思い、映画になんらかの形で関わっていた登場人物たちがいた。 -
映画を観てみたいと思わせられる作品。
短編集だがそれぞれの話に関わりがあり、どの作品も人と人との関係、在り方、想いを強く感じた。
最後の短編「愛の泉」の終盤は涙してしまった。 -
全部の本に言ってるけど、もう一回読みたい。
映画って知れば知るほど深いし、きっと作る人のこだわりがつまりに詰まって、それがわかればわかるほど各シーンが愛おしく感じるんだろうなあ〜
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「うまくは言えないけれど、準備のできていない人間の前では好きな人は転ばないのではないだろうか」の一文が好き
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過去に読んだ入間人間の六百六十円の事情とは比べ物にならないくらい洗練された群像劇。
各エピソードそれぞれなにかしらの映画が出てくる。
"太陽がいっぱい"にて最後の数ページが段落下げされている内容、それは実際の龍一の話なのか、それとも主人公がもう会えない龍一に対して物語の中だけでも龍一を救おうと書いた物語なのか。
"ペイルライダー"は後半の演出がやりすぎかな?と感じたが、この恐怖演出のおかげでペイルライダーという存在をより際立たせるために成功している。
特に自分が読み込んだのは最終章"愛の泉"で、特にそこに登場する浜石教授の言葉がとても良かった。
「君が人を好きになったときに取るべき最善の方法は、その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、耳をすますことだ。そうすると、君はその人が自分の思っていたよりも単純ではないことに気づく。極端なことを言えば、君はその人のことを実は何も知っていなかったのを思い知る。そこに至って、普段は軽く受け流していた言動でも、きちんと意味を考えざるを得なくなる。この人の本当に言いたいことはなんだろう?この人はなんでこんな考え方をするんだろう?ってね。難しくても決して投げ出さずにそれらの答えを出し続ける限り、君は次々に新しい問いを発するその人から目が離せなくなっていって、前よりもどんどん好きになっていく。と同時に君は多くのものを与えられている。たとえ、必死で出したすべての答えが間違っていたとしてもね」
や
「easy come, easy go」 : 簡単に手に入るものは、簡単に手から離れていく
など。
また直接物語には関係してこないが、映画の豆知識やメタファーの説明も出てくる。例えば映画ショーシャンクの空にの挿入歌の説明など。 -
最後の短編に至るまでの連作において差別や暴力、不条理さがつきまとうからこそ、最後の愛の泉で描かれる穏やかな愛情に涙が滲む。
そして、もう一度最初から読み返したくたる。 -
およそ10年ぶりに再読。今すごく応援している人が、おそらくブルース・リーがとてもすきで、「頑張れ!ベアーズ」なども時々言及していて、ずっとずっとだいすきだった金城作品との符合に驚く。世界は常に、ゆるやかに交わっている。
著者プロフィール
金城一紀の作品





