- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041092057
作品紹介・あらすじ
先の見えない時代に自分を信じて歩む、
売れない作家と若手編集者、再生の物語。
「食う」「寝る」と、もうひとつ大切なこと。
作家の横尾成吾はここ数年、鳴かず飛ばずの状態が続いていた。50を前にそろそろ出版社から声がかからなくなるのでは、との不安を感じていた矢先、担当編集者からボツを食らわされ、不安に拍車がかかる。書くことを何よりも優先し、ずっと一人で生きてきた横尾。友人・弓子の思わぬ告白もあり、今後の自分の身の振り方を考えはじめる。一方、横尾の新しい担当になった井草菜種は、これまでヒット作を出したことがなく、もう後はないと気は焦るばかり。菜種は、自身同様長く停滞中の横尾と本気で向き合いはじめる――。〈2019年本屋大賞第2位〉の著者最新長編!
感想・レビュー・書評
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いい!私は凄く好き!
たぶんこれ、著者と編集者のほぼ実話なんだろうな。
そもそも今までに読んだ著者の複数の作品に渡って「横尾成吾」とその作品名が出てきていた時に、私が知らないだけで「横尾成吾」という作家さんが実在するのかと思って調べてしまったことがある。
それくらい、「横尾成吾」という作家名も作品名も私の中に刷り込まれていた。
実在しないとわかって次に思ったことは、きっと著者のもっと以前の作品に「横尾成吾」は出てきているのだろうなということ。
私は、シリーズものや登場人物がまたがっている作品の読む順番でよく失敗するので、「横尾成吾」に関してもそうだろうと。
しかし発行年月から行けば、どうやら「横尾成吾」が主役で出てくるのは本作が初で、今回は私は読む順番を間違えてはいないということになるのだろう。
横尾成吾と弓子の関係性や会話がとても良かった。
編集者の井草菜種の元カノ(ちなみに著者はいつも元カノとは書かずに元カノジョと書いている)である彩音は私は好かなかったが、菜種の妹の梓菜が彩音のことをバッサリ切ってくれたのでスッとした。
女には、このように初対面でも相手の女の本性を見抜く力(本能)があるけれど、男にはそれが無いんだろうなぁと私は常々思っているのだが、そこんところを男である作家さんが書けているのだから、やっぱり作家さんて凄いと思う。
(菜種くん、十川風香さんは絶対いい子だよ!)
ところで、今までの著者の作品と違い、本書では途中凄く読みにくくて読むスピードが停滞してしまったところがあった。
なぜなら本作は登場人物名が異常に多いからだ。
本作で横尾成吾はいつも40人くらい登場人物を書いてしまうとあったが、リアル横尾成吾であろう小野寺氏は、そんなことはなかったはずで、今までの(私が読んだ)作品ではそんな40人も出てはいなかったと思う。
本作でも人数を数えてはいないので何人かは不明だが、とにかく異常に多かった。
だから読みにくかったのだと思う。
また、小野寺氏の今までの作品で、登場人物の氏名を、どういう漢字かまでを、その登場人物同士がこだわって尋ねることが多かったし、私はそういうところが好きでもあったし、今後発行される小野寺氏の作品にも出てくるかもしれないとも思うから、途中まではメモっていたのだ。
だから停滞もするし疲れもする。
それで、途中から、あまりにも多い登場人物のことを意識することを諦めた。
結果、推理小説ではないので、それで大丈夫だった。
ただ、今後の小野寺氏の作品に再登場しても、私はもう忘れてしまっているであろうことが残念ではあるけれど。
(本書に出てきた外崎ボクシングジムも確か以前他の作品で出てきているはずだよなぁ…という風に)
次回作に本当にあのフレーズを著者が使ってくるのかだけ気になるので、あるフレーズだけは、非公開メモの方に書き留めておくことにしよう。
また、この感覚だけは大事にしようと横尾成吾と井草菜種が思う(つまりは著者の思う)ほんの些細なこと(目がきれいなじいさんに…とか、落とし物を拾って…とか)に対して共感する。
だから私は本作も好きなのだろう。
私も、食っちゃ寝て読む。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
《ひと》がハマって他の作品も読んでみたくなり本書2作目。
やっぱり主人公の人柄が良い。
歪まず腐らず地道に自分の人生と向き合っている様がホントに好きです。
自分の人生や人に対してすごく実直なところも。
厳しくても人の言葉に耳を傾け自分なりに噛み砕きでも自分の芯はブレずにきちんと持っている。
その芯を見せつけずむしろ隠しながらもきちんと持っている…とても強い人だと思います。
横尾成吾がこれからどんな作家さんになっていくのか…横尾さんの人生の続きを読みたいです。
(《ひと》を読んだ時も柏木聖輔の人生の続きが読みたいと思ったなぁ)
最後のタネあかしには「え?そーなの?そういう事?」と(笑)
ミステリー以外にもこういうタネあかしはあるんですね!
作中に《鷄蘭》の文字を見つけた時は思わず「あっ!鷄蘭」と声を上げてしまいました! -
面白かったけど、いつもと違い読み進めるのに時間がかかった。
…何でだろ。 -
作家と編集者がそれぞれの立場から一つの作品を作りあげていく。
人を書くと言う作家らしく、作家自身や編集者の私生活、人となりがよく分かる。
食っちゃ寝て、そして書いて!そこには拘りがある。
終盤になって、この作品のカラクリに気づき、してやられた感がする。
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『ひと』や『まち』、『みつばの郵便屋さん』は、主人公と彼を取り巻く人達の優しさ溢れる物語でした。
この『食っちゃ寝て~』は、優しさは感じられるんだけど、最後の最後の大どんでん返しに驚き‼これって、ミステリーじゃないよね?時間があったら、今すぐにでも最初から全部読み直したい気分です。 -
図書館本。売れない作家と訳あり編集者の1年間。
雑誌でなく小説の発刊に、これ程細かいやり取りがあるのかと驚きました。横尾成吾のこらからが気になってやみません。 -
作家さんへ印象が変わり、ちょっと身近に感じ、どんな風に作品が生まれ本になっていくのかを垣間見れて面白かった。
編集者の仕事、役割も、作家さん目線で描かれていたのが結果的に分かりやすかった。
構成も面白かった。
本から離れてしまっている人におすすめの一冊かな。 -
小野寺作品によく(名前だけだが)登場する作家『横尾成吾』が主人公。
そして同じくその著作物としてよく名前が挙がっていた『三年兄妹』『百十五ヶ月』『脇家族』などの詳細も盛り込まれていて、プラスアルファの楽しみもあった。
ストーリーは、ヒット作に恵まれない中年作家と若手編集者がタッグを組み、秀作『降らない雨はない』を創り上げるというもの。
構成も凝っていて、終盤のタネ明かしで笑ってしまった。読後感さわやか。
鷲見翔平が主人公の作品も期待したい。
著者プロフィール
小野寺史宜の作品






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