変身 (角川文庫)

  • KADOKAWA
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本棚登録 : 481
感想 : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092361

作品紹介・あらすじ

平凡なサラリーマンがある朝、巨大な虫けらに変身した状態で目覚める──。不条理文学の旗手か、不器用なサラリーマン作家か。新たなカフカ像にもとづく新訳と訳者解説によって、不朽の名作がよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • 新訳だ!

    名著12 カフカ『変身』:100分 de 名著
    https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/12_kafka/

    「変身」 フランツ・カフカ[角川文庫(海外)] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000027/

    • naonaonao16gさん
      新訳!
      新訳!
      2022/02/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      naonaonao16gさん
      そう
      多和田葉子が訳した『変身(かわりみ)』(集英社 ポケットマスターピース01カフカ)以来の新訳かも。。...
      naonaonao16gさん
      そう
      多和田葉子が訳した『変身(かわりみ)』(集英社 ポケットマスターピース01カフカ)以来の新訳かも。。。
      2022/02/04
  • 自分の姿が毒虫に変わった瞬間から続く、地獄の日々。虫になっても人間の言葉は理解でき、思考も残っているのだが、家族には言葉も思いも伝えることが出来ない。本人にとっては、家族に甘えたい気持ちが残っているので、家族の前に姿を表し接触しようとするが、害虫扱いされ、攻撃を受ける。
    予想通り、本人にとって悲しい結末となるが、家族にとっては明るい結末である。それくらい、毒虫に変わり果てた姿を、家族であると信じ続けることは苦痛だったのだろう。
    毒虫は極端であっても、家族が突然難病になって長期間介護が必要な時に、傍でサポートし続けることができるのか、カフカに試されている気がした。

    後半の『ある戦いの記録』は、自意識過剰で心の不安定な主人公(青年)が人々を観察して捕まえ、禅問答のようなやり取りを繰り広げるもの。寒い冬のプラハ旧市街の路地を思い浮かべながら読んだ。

    両作品併せて、悲壮感、閉塞感、孤独を強く感じた。

  • 一言で感想を言うと、むごい。
    裏表紙のあらすじによるならば、「不条理」だ。それも青天の霹靂。

    「ある朝、グレゴール・ザムザが落ち着かない夢にうなされて目覚めると、自分がベッドの中で化け物じみた図体の虫けらに姿を変えていることに気がついた。」
    …なんて直球な第一文目だろう。
    超忙しい出張続きのサラリーマン、グレゴールは目の前に映る自分の手足が虫のわさわさとしたか細いそれであることをぼんやりと認識しながら、虫になり身幅の広くなった図体によりベッドから身を起こせない…そんな異常事態にも関わらず、早く仕事に行かなければと列車の時刻のことばかり考えている。
    いやいやいやそれどころじゃないでしょ!
    四苦八苦してやっとの思いで、ドアの鍵を開け家族や勤め先の業務代理人にその姿を見せた時……
    緩やかな悲劇がはじまる。

    とても読みやすい訳で、「変身」本編は101ページ、後の70ページほどは訳者あとがきとして、カフカの生涯や変身がどのように書かれ、出版に至ったか、また変身が世の中に広まってどのように解釈されていったか、歴代の日本語訳者たちはどのように解釈して訳してきたか、本書の翻訳に当たってどのような注意を施してきたか…などなど、とても興味深く面白い。

    表紙の装丁も大好きで、表紙図版はヴィルヘルム・ハマスホイによる<白い扉、あるいは開いた扉>という絵で、ベストチョイスすぎるでしょ…と感動した。
    絵に合わせたタイトル等のフォント選びやデザイン全体がもう好き。

    さて、詳しい変身への文学的解釈などについては、その訳者あとがきをぜひ読んで!と流すとして、教養も何もない感想を書くと、うん。つらいな………
    グレゴールは両親の借金を返すために、またヴァイオリンを弾くのが好きな妹を音楽学校にやるために遮二無二働いてきた。
    それが、突然の不条理に見舞われる。
    グレゴールにとっても、家族にとっても。
    あとがきにもあるように、この話はグレゴールにとっての不条理であり、家族にとっても不条理なものである…というのはわかるんだけど…わかるんだけど……
    いや家族が虫になるなんて受け入れ難いし自分だって受け入れられるか分からないけど、それでも突然虫になるまでは文句ひとつ言わず家族全員を養ってきた息子・兄に対する仕打ちがこれ……結構な期間があったのに(あったからかもしれないが)、最初は少しはグレゴールとして接していた母や妹も、姿を直視し続けることは難しく、誰もグレゴールらしき虫とはっきり対峙しようとしない……虫になったグレゴールが人間の言葉をちゃんと理解しているようだと気づいたのは他人の料理女だけ……(家族だからこそかもしれないが…)…こんな仕打ちをして虫けらのまま兄が死んで家族一同喜ぶなんて……そうさせてしまうこのありえない…けど、どこかありえそうな現実が恐ろしすぎてならない。もちろん弔いもない。
    えっ、おたくの息子さん、死にましたよ…?
    まあこんな醜い虫が我が息子だと思いたくない気持ちはわかるけど、それならおたくの息子さん、行方不明ってことになるんだけど…家族もそれだけ辛かった…というのは十分描写からわかる…だけに後味がつら…
    最後までなぜグレゴールが虫になってしまったのかは分からずじまいだけど、最後まで読み終わるとそんなことはどうでもよくなってしまうな。不条理って突然降りかかるものだから。

    …いやさ、我ながら嫌な連想だと思うけど、それまでは大いに役立ってきて人間として十分だったグレゴールが役に立たない虫になってしまった……という展開が、虫になるなんてファンタジーは起こらなくとも、働きすぎて重度の身体障害になったり精神疾患になったりして、人間の言葉は理解できるのに発語できない故に人間と見做されないで軽視される…現実にありがちな展開と重なって見えちゃって…その場合は人間の形を留めているから虫になるより待遇はマシなんじゃない?と思われるかもしれないけど、介護に疲れた家族の思いの行き着く先は変わらないと思う…
    と勝手に考えてつらくなるという…苦笑
    全然関係ないあかの他人の私だからこそ、彼の家族に代わってグレゴールの最期に祈りを捧げたい。
    フィクションですが。 

  • 『この早起きというのは、人間をまったく薄ばかにしてしまうのだ。人間は眠りをもたなければならない』
    『ただ我慢することだけが家族の義務の命じるところなのだ』
    『音楽にこんなに心を奪われていても、彼は動物なのだろうか』
    『これで神様に感謝できる』


    グレゴールはある朝、目が覚めると自分の姿が毒虫になっていた…
    その姿を見た家族の反応はどうなのか?
    見た目は毒虫だが、間違いなくそれはグレゴール本人。最初は妹も母親もらしく接してくれるが、徐々に毒虫としての扱いを受けるようになる。
    いずれ毒虫の死、つまりグレゴールの死が訪れる。家族の反応は…
    グレゴールには「死」の選択しか残されていなかった。


    この小説を通じて、カフカは何を言いたかったのか。
    時代背景。見た目と心の相違。
    そして人間である尊厳。
    単なる、朝起きたら姿が変わっていたSF小説ではない。

  • 読みやすい訳。カフカについての解説もあり、面白い。元ボクサー川島医師の弟さんの訳。

  • 新訳が出たので、大学生の頃に読んで以来、久しぶりに再読した。たった100ページ弱なのに面白さは一級品。不条理文学の金字塔。解説も丁寧だった。

    ある朝、平凡なサラリーマンが目覚めると、自分が化け物じみた図体の虫けらに姿を変えていることに気づいた。
    「おれはどうなったんだ?」と思い、寝直そうとするが、寝返りが打てない。
    次に頭に浮かんだのは「仕事どうしよう」。

    虫になった彼の生活は一変する。中身は平凡なサラリーマンのままなのに、周りに人間とみなされなくなるとどうなるか。
    人間として扱われなくなった虫けらが、最後の人間らしさを発揮し、自己を破滅させてしまう姿が衝撃的だった。

    p123
    シオニズムとは、世界中に離散して暮らすユダヤ人が「シオンの丘」(聖地エルサレムの別名)をめざして民族の故郷パレスチナに移住し、ユダヤ人の国家を作ることを目標とする民族運動で、オーストリアの作家テオドール・ヘルツルによって提唱された。

    p157
    つまり、それまで社会的に有用であろうとして必死に生きてきたグレゴールが突然「使えない」存在になり、無用の長物として排除されていく過程を描くというのがカフカの構想だったと思われる。

  • 珍しく外国人の方が書いた本を読んでみた。淡々とストーリーが進む。
    私はいつもわかりやすい文章の本を読んできていたので、これだけ淡々としていると感想が持ちにくかった。(持ちにくかった?笑)

    でも世では大作と言われているので、私が合わなかった、ついていけなかっただけだと思うのですが。。

  • あらすじは知ってたけど、読んだことがなかったので思い立って読了。内容については考察され尽くしてきていると思うので割愛。ラストシーンで憑き物が落ちたようになる家族のシーンが印象的。
    本文が100ページなのに、解説が70ページほどある。
    翻訳はあえて原作の初版に準拠したなど、こだわりのある作られ方をしていて好印象。こんな不条理な内容でも、人の心を長く掴み続ける作品になるのは面白いですね。

  • こんな気持ち悪い(良い意味で)作品出会ったことない!
    虫の表現がほんとに事細かくてページめくるのもためらった!良い意味でゾワゾワして気持ち悪い!
    もちろん主人公に同情するけど、主人公の家族の気持ちも分かっちゃうから「す、救われねぇ〜!」感が満ち満ちててたまらなかった。
    読了した時の「はぁ、気持ち悪かった…」って感想を充実感と共に持つことができた。良き良き。

  • なぜ、虫になってしまったのか、わからない…
    妹思いの心の優しい兄の気持ちがいい。

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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