クリスマス・キャロル (角川文庫)

  • KADOKAWA (2020年11月21日発売)
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本 ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784041092378

作品紹介・あらすじ

文豪としてのチャールズ・ディケンズの名を世界的なものにならしめた不朽の名作。クリスマスの物語として毎年一篇ずつ書かれたクリスマス・ブックの第一作で、発表後まもなく驚異的な大ベストセラーとなった。
クリスマスの前夜、老守銭奴スクルージのもとに、「過去」、「現在」、「未来」の三幽霊と、昔の相棒マーリーの幽霊が現れ、これまでスクルージが行ってきた冷血非道な行いの数々を見せる。それでも最初は気丈にふるまうスクルージだったが、やがて自分の人生の空虚さに気づき、改心して真人間の生活に立ちかえることを決意する。

感想・レビュー・書評

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  • 現在は過去の蓄積の結果。その現在を積み重ねれば、当然、未来になる。では、その未来が悲惨なものだとしたら…?
    シンプルなストーリーとメリハリが効いた構成に、クリスマスの華やかさを加えて魅せた、とても映画的なつくりをした名作小説。

    世間が大切な人と集まって賑やかに過ごしているクリスマスの夜。
    強欲かつ偏屈ゆえに世間から嫌われている孤独な初老男スクルージは、突如現れたかつての同僚で今は亡きマーリーの亡霊による忠告を契機として、三人の精霊たちによって、過去、現在、未来を垣間みることになる。
    その結果、彼は…というお話。

    結末は、ご安心を、の大団円。
    少しご都合主義かなと思うくらい、本当に後味の良い大団円。
    だからこそ、クリスマスを代表する小説として、広く世間に浸透したのだと思います。
    大好きな人たちとご馳走を囲って笑い祝うクリスマスの華やかで温かい場面は心躍るほど素敵だし、子どもへの教訓的お伽噺となる側面もあるし。

    けれど、個人的には、中〜終盤の展開に悲哀を感じ、息苦しいほどに胸が痛くなったり、悲しくなったり、身につまされたりしたことのほうが強く印象に残りました。

    特に、現在のスクルージを形作るに至った彼の過去を辿るシーン。
    誰にも顧みられなかった内気で孤独な少年時代。唯一いたわり合った妹の存在と喪失。
    貧しくも仲間もいて希望に満ちていた青年時代。
    そして…。
    ( 短いお話なので、書き過ぎるとネタバレになりそうなので、以降は省略。人生は、すれ違いや、出会いや別れの繰り返しではあることは知っていたつもりだけど、泣きそうになりました。)

    しかもこの過去、精霊が見せる幻覚だから、とても断片的でどんどん場面が切り替わっていきます。どれほどのものが積み重なって、現在のスクルージになったのかと、描かれた過去以上に、描かれなかった過去にしみじみ想いを馳せてしまいました。余白を噛み締める趣きがあります。
    そして、「来たるべき」未来の悲惨さと醜悪さは、寒気がするほどゾッとします。

    でも、そんなこんなでもラストは大団円!
    ちょっと力ずくでも大団円 !
    大丈夫!
    (繰り返しになりましたが…)

    ラスト二段落の文章は、世の真理をとても端的に綴っており、胸がすきます。

    クリスマス・シーズンでもあるので、興味のある方は是非。
    (主人公がお人好しな善人、という点でスクルージとは真逆なのだけど、クリスマスと、垣間見る幻覚、大団円が、映画「素晴らしき哉、人生!」を思い起こさせました。あの映画が好きな方にもおすすめ。)

  • 仕事と私事問わず全ての他人に対して辛辣に当たる老守銭奴スクルージ、そんな彼にもクリスマスが訪れます。
    しかしスクルージはクリスマスという日もそれを楽しむ他人も、更には人生そのものも「くだらん!」と一蹴してしまう始末。
    しかし彼の前にかつての意地汚い共同経営者の幽霊が現れ、同じ轍を踏まないでほしいと訴えます。
    過去から未来を見ることになるスクルージは、現在の積み重ねが未来に影響して自分が死んだ時に周りがどう反応するかを目の当たりにします。
    絶望し現在に戻った彼は改心し…。

    良い大人になることは難しく思い描いている通りにはなりませんが、反省することをやめてはいけないと感じました。

  • 今日的な、あまりに今日的な『クリスマス・キャロル』:北村紗衣【来るべきDに向けて】 - i-D
    https://i-d.vice.com/jp/article/z3vd9y/d

    クリスマス・キャロル ディケンズ:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000037/

  • 過去・現在・未来を見せる精霊たち。強欲で冷酷で無慈悲なスクルージ老人の見に起こる不思議な導きのお話し。
    変わってしまった今の自分を過去を振り返ることで忘れていた感情を思い出し、現在の自分を変えることで、未来を明るく照らすことができるー。
    150ページ程の薄さで読みやすく、毎年クリスマスの時期に読み返していきたい大切な一冊です。

  • 『自分を愛すように隣人を愛せ』『飢えたものに自分のパンを分け与えよ』など、聖書の教えを説いている感じがします

    子供にも良さそうだけど、大人もしっかり読める

  • 人は何歳になろうが、死の影が半分背中まで迫っていようが、気づきと覚醒を経たなら、また新たな人生の旅路に向けて歩き出すことができる。スクルージの腐りかかった心も、精霊や、クリスマスの温かな情景を通じて、溶け去っていったように。

  • 不平等な運命の埋め合わせを社会が担わなければならないことに気づかない主人公のスクルージが、改心して気づいてから行動していくのがすてきだったな

  • よくある話だよね、というのが感想。当時の時代背景から、こういう嫌儲みたいな物語やクリスマスを祝う文化がイギリスでは斬新だったんだろう。「よくある話」の先走りみたいな感じなのだろうか。

  • 冷酷なおじいさんもクリスマスを待ちわびる少年だった頃があって、意地悪くなったのは理由があるのかもしれないし、ほんとうはみんなと楽しく祝いたいのかもしれない。良い人だと笑われても、困っている人がいたら手を差し伸べたいね。せっかくのクリスマスだから。

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著者プロフィール

Charles Dickens 1812-70
イギリスの国民的作家。24歳のときに書いた最初の長編小説『ピクウィック・クラブ』が大成功を収め、一躍流行作家になる。月刊分冊または月刊誌・週刊誌への連載で15編の長編小説を執筆する傍ら、雑誌の経営・編集、慈善事業への参加、アマチュア演劇の上演、自作の公開朗読など多面的・精力的に活動した。代表作に『オリヴァー・トゥイスト』、『クリスマス・キャロル』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『荒涼館』、『二都物語』、『大いなる遺産』など。

「2019年 『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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