クリスマス・キャロル (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092378

作品紹介・あらすじ

文豪としてのチャールズ・ディケンズの名を世界的なものにならしめた不朽の名作。クリスマスの物語として毎年一篇ずつ書かれたクリスマス・ブックの第一作で、発表後まもなく驚異的な大ベストセラーとなった。
クリスマスの前夜、老守銭奴スクルージのもとに、「過去」、「現在」、「未来」の三幽霊と、昔の相棒マーリーの幽霊が現れ、これまでスクルージが行ってきた冷血非道な行いの数々を見せる。それでも最初は気丈にふるまうスクルージだったが、やがて自分の人生の空虚さに気づき、改心して真人間の生活に立ちかえることを決意する。

感想・レビュー・書評

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  • 原題は"A Christmas Carol"、初出は1843年。
    ディケンズのあまりに有名なこちら、クリスマスの物語として思い出される筆頭である。
    簡単なストーリーは児童向けの本で知っていたけれど、改めて読むとやはり名作!と思う。
    越前敏弥さんの訳はいつもながら読みやすくて好き。

    ロンドンで〈スクルージ&マーリー商会〉を営むスクルージ。
    がちがちの締まり屋、冷酷で無慈悲。醜悪で嫌われ者の老人である。
    スクルージは、クリスマスの前日、優しい甥からのクリスマスパーティーの誘いをすげなく断り、貧しい者への寄付を募る紳士に「死んだ方がましと思うなら、そうしてもらえれば余分な人口が減る。知ったこっちゃない」と言って冷たく追い返し、クリスマス休暇を申し出る事務員ボブに、「あさっての朝は早く出てくるんだぞ!」と嫌味を投げかける。守銭奴で人付き合いのないスクルージにとって、クリスマスなどはくだらなくて不愉快なイベントにすぎない。

    しかしその夜、スクルージのもとへ、7年前に亡くなった共同経営者のマーリーの幽霊が現れるのだ。

    「今夜、こうして会いにきたのは、お前に忠告するためだ。おまえには私も同じ運命から逃れる機会と希望がある。」──

    そうして現れたのが3人の精霊。
    精霊たちはスクルージに、忘れていた過去を、目を背けていた現在を、そしてスクルージのいない未来を見せる。

    特に秀逸だなと思ったのは未来である。
    誰も参列する者のいない、「悪魔」と呼ばれた男の葬式。その男の家から、死体の服を剥いでまで持ち寄った盗品自慢をする3人の男女。身ぐるみを剥がされ、涙する者も見守る者もなく、放置される男の亡骸。
    あまりに救いのない男の死に震えるスクルージ。そしてスクルージは墓で、その男の名前を知る…。

    あまりにうまく行きすぎな感じもあるスクルージの変貌ぶりは清々しいほど。
    イギリスで当時、家族でクリスマスを祝う習慣廃れ始めていたのが、この作品を機に一気に復活したという。今の世界のクリスマスの原点となる作品なのだ。

    • 土瓶さん
      マリモさん、こんばんは~^^
      この有名なストーリー。どこかで観た覚えはあるんですが、それと、「クリスマス・キャロル」というタイトルが一致して...
      マリモさん、こんばんは~^^
      この有名なストーリー。どこかで観た覚えはあるんですが、それと、「クリスマス・キャロル」というタイトルが一致してませんでした。
      勉強になりました(⁠^⁠∇⁠^⁠)⁠
      2022/12/24
    • マリモさん
      土瓶さん
      私は、「クリスマスキャロルの〜流れる〜頃には〜♪」を思い出してしまいます。笑
      どこかで何となく読んだことはありますよね。全訳でも短...
      土瓶さん
      私は、「クリスマスキャロルの〜流れる〜頃には〜♪」を思い出してしまいます。笑
      どこかで何となく読んだことはありますよね。全訳でも短いのでおすすめです〜。
      2022/12/24
    • 土瓶さん
      マリモさん、おはよう&メリークリスマス^^
      稲垣潤一ですね。わかります(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠)
      マリモさん、おはよう&メリークリスマス^^
      稲垣潤一ですね。わかります(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠)
      2022/12/25
  • 現在は過去の蓄積の結果。その現在を積み重ねれば、当然、未来になる。では、その未来が悲惨なものだとしたら…?
    シンプルなストーリーとメリハリが効いた構成に、クリスマスの華やかさを加えて魅せた、とても映画的なつくりをした名作小説。

    世間が大切な人と集まって賑やかに過ごしているクリスマスの夜。
    強欲かつ偏屈ゆえに世間から嫌われている孤独な初老男スクルージは、突如現れたかつての同僚で今は亡きマーリーの亡霊による忠告を契機として、三人の精霊たちによって、過去、現在、未来を垣間みることになる。
    その結果、彼は…というお話。

    結末は、ご安心を、の大団円。
    少しご都合主義かなと思うくらい、本当に後味の良い大団円。
    だからこそ、クリスマスを代表する小説として、広く世間に浸透したのだと思います。
    大好きな人たちとご馳走を囲って笑い祝うクリスマスの華やかで温かい場面は心躍るほど素敵だし、子どもへの教訓的お伽噺となる側面もあるし。

    けれど、個人的には、中〜終盤の展開に悲哀を感じ、息苦しいほどに胸が痛くなったり、悲しくなったり、身につまされたりしたことのほうが強く印象に残りました。

    特に、現在のスクルージを形作るに至った彼の過去を辿るシーン。
    誰にも顧みられなかった内気で孤独な少年時代。唯一いたわり合った妹の存在と喪失。
    貧しくも仲間もいて希望に満ちていた青年時代。
    そして…。
    ( 短いお話なので、書き過ぎるとネタバレになりそうなので、以降は省略。人生は、すれ違いや、出会いや別れの繰り返しではあることは知っていたつもりだけど、泣きそうになりました。)

    しかもこの過去、精霊が見せる幻覚だから、とても断片的でどんどん場面が切り替わっていきます。どれほどのものが積み重なって、現在のスクルージになったのかと、描かれた過去以上に、描かれなかった過去にしみじみ想いを馳せてしまいました。余白を噛み締める趣きがあります。
    そして、「来たるべき」未来の悲惨さと醜悪さは、寒気がするほどゾッとします。

    でも、そんなこんなでもラストは大団円!
    ちょっと力ずくでも大団円 !
    大丈夫!
    (繰り返しになりましたが…)

    ラスト二段落の文章は、世の真理をとても端的に綴っており、胸がすきます。

    クリスマス・シーズンでもあるので、興味のある方は是非。
    (主人公がお人好しな善人、という点でスクルージとは真逆なのだけど、クリスマスと、垣間見る幻覚、大団円が、映画「素晴らしき哉、人生!」を思い起こさせました。あの映画が好きな方にもおすすめ。)

  • 今日的な、あまりに今日的な『クリスマス・キャロル』:北村紗衣【来るべきDに向けて】 - i-D
    https://i-d.vice.com/jp/article/z3vd9y/d

    クリスマス・キャロル ディケンズ:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000037/

  • 『自分を愛すように隣人を愛せ』『飢えたものに自分のパンを分け与えよ』など、聖書の教えを説いている感じがします

    子供にも良さそうだけど、大人もしっかり読める

  • 人は何歳になろうが、死の影が半分背中まで迫っていようが、気づきと覚醒を経たなら、また新たな人生の旅路に向けて歩き出すことができる。スクルージの腐りかかった心も、精霊や、クリスマスの温かな情景を通じて、溶け去っていったように。

  • 不平等な運命の埋め合わせを社会が担わなければならないことに気づかない主人公のスクルージが、改心して気づいてから行動していくのがすてきだったな

  • スクルージと一緒に自分がどこから来て何を感じていたかということを考えて自分の原点に立ち返らせてくれる様な本。

    誰もが、一皮下には複雑な思いや事情を抱えていたりするもので表面的に評価を下してはいけないんだと戒めてくれる

  • 最後改心してよかったな。

  • (12/26/2021)

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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