ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人 (角川文庫)

  • KADOKAWA
3.45
  • (2)
  • (7)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 152
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092446

作品紹介・あらすじ

!!!【2022年3月NHK Eテレ「100分de名著」】!!!

ミステリーの原点がここに。――ポー新訳2冊連続刊行!

世界初の推理小説「モルグ街の殺人」、史上初の暗号解読小説「黄金虫」など全11編! 解説「ポーの死の謎に迫る」


彼がいなければ、ホームズもポワロも金田一も生まれなかった――世界初の推理小説「モルグ街の殺人」。パリで起きた母娘惨殺事件の謎を名探偵デュパンが華麗に解き明かす。同じく初の暗号解読小説「黄金虫」や、最高傑作と名高い「盗まれた手紙」、死の直前に書かれた詩「アナベル・リー」など傑作を全11編収録。ポーの死の謎に迫る解説や用語集も。世紀の天才の推理と分析に圧倒される、新訳第2弾!

【ポーの傑作ミステリー+詩】
世紀の天才のメジャー作から知られざる名作まで全11編

モルグ街の殺人 "The Murders in the Rue Morgue" (1841)
ベレニス "Berenice" (1835)
告げ口心臓 "The Tell-Tale Heart" (1843)
鐘の音(詩) "The Bells" (1849)
おまえが犯人だ "Thou Art the Man" (1844)
黄金郷(エルドラド)(詩) "Eldorado" (1849)
黄金虫 "The Gold Bug" (1843)
詐欺(ディドリング)――精密科学としての考察 "Diddling" (1843)
楕円形の肖像画 "The Oval Portrait" (1842)
アナベル・リー(詩) "Annabel Lee" (1849)
盗まれた手紙 "The Purloined Letter" (1844)

作品解題
ポーの用語
ポーの死の謎に迫る

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 世界初の推理小説『モルグ街の殺人』
    小学生のころの児童書で初めて読んだときは、意外な真相におおいに驚いたのを覚えています。今回改めて読んで、推理小説というもののかたちはこの時点ですでに完成していたのだと感じました。

    狂気的な殺人現場、バラバラの証言、消え失せた犯人……。それを解くのは理屈っぽい名探偵とその相棒。

    不気味で不可思議な事件に、キャラのたった名探偵が相棒とともに挑む。今なお続く探偵小説のフォーマット。それがこの時点で完成していたことがそう思った理由ではありません。奇怪な真相に至るまでのロジックの組み立てが、しっかりと本格ミステリらしく作り込まれているからです。

    不可能なものを排除していって、残ったものがどんなに信じられないものでもそれが真実である。

    これはホームズの言葉だけど、推理小説の元祖である『モルグ街の殺人』から今に至るまで、この言葉がミステリの歴史に脈々と受け継がれているのだと今回改めて感じました。そう考えると感動もひとしおです。

    『モルグ街の殺人』以外のポー作品は初読。『モルグ街』以外での有名どころは暗号小説である「黄金虫」や、モルグ街の殺人で活躍した名探偵デュパンが再登場する「盗まれた手紙」あたりかな。

    「黄金虫」も暗号解読のロジックが素晴らしかった。こういう小説の形式や楽しみを初めて生み出したポーの偉大さを改めて感じます。「盗まれた手紙」は今読むとさすがに使い古されたパターンではあるのだけれど、最初にこの観点に気づいたのは、やはりすごいと感じます。

    観点で言うと『詐欺――精密科学としての考察』という短編も面白い。いろいろな詐欺や騙しの手口が次々と出てきて、これ一編で短編集一冊分のアイディアが出て来たんじゃないかと思える。

    他にも描写の不気味な怪奇小説系の作品や詩も収録されていて、ミステリ作家だけではないポーの側面を楽しめる短編集になっています。

    解説も面白かった。ポーはアルコールが原因で亡くなった、みたいな話はなんとなく聞いた覚えがあったのだけど、今回の新訳を担当した河合祥一郎さんは別の仮説をたて、デュパンよろしく推理をしていきます。当時の証言や様々な文献から約170年の時代を超えた繰り広げられる謎解きは、ジョセフィン・テイの名作歴史ミステリ「時の娘」を思い起こさせます。

    小説でも解説でも謎解きの楽しめる一冊です。

  • 怪奇ミステリー編となっているけど、詩ありホラーあり謎解きありといろいろなテイストの作品が収録されていて読み応えがあった。

    「モルグ街の殺人」
    初めてこの作品を読んだときの「そんなのアリ!?」という驚きは今でも忘れられない。まだ読んだことがない人は新訳でぜひ。

    「ベレニス」
    ラストが怖すぎて思わず2回読んでしまった。偏執狂の描写が不気味すぎてさすが。

    「告げ口心臓」
    語り手の高いテンションのおかげで最初から引っ張り込まれる。なになに、なにがあったの、と当事者から話を聞かされている感覚で読める。いやいや、心臓よりアンタが怖いって。

    「鐘の音」
    ポーらしくないかわいい詩が始まったと思ってほっこりしていたら途中からはやっぱりポーだった。
    Twitterスペースで聴いた訳者の河合祥一郎さんの朗読がとてもよかったので、いつか原文も読んでみたい。

    「おまえが犯人だ」
    ラストが怖すぎて思わず2回読んだパート2。ホラーに耐性がないのでまんまと驚かされた。くやしい。

    「黄金郷」
    なぜこの詩が収録されているのかがわたしにとってこの本最大の謎である。

    「黄金虫」
    暗号解読で海賊のお宝探し!で、結局黄金虫ってなんだったんだ…。

    「詐欺ー精密科学としての考察」
    詐欺師の見本市。短いけど楽しい。詐欺防止キャンペーンのパンフレットにできるね。

    「楕円形の肖像画」
    ホラー風味の絵の話っておもしろいよね。『怖い絵』好きな人におすすめ。

    「アナベル・リー」
    これも原文で読んでみたい。解説によればナボコフや大江健三郎にも影響を与えたとか。

    「盗まれた手紙」
    盗まれた手紙はどこに隠されたのか?思考の読み合い合戦。人が死なない推理もの。ホラー味が足りないと感じる時点でわたしはすでにポーにハマっている。

    そしてそして、この本には充実した解説と用語集がついている。本編だけでなくこちらも読み応え抜群。正直よくわかんないなって作品は解説を読んで補強しよう。

  • 読了
    1回目 2022.6.23

  • ミステリーの原点とも言えるポーの作品。
    これはあまりに斬新すぎる犯人…!古い作品なので正直期待は薄めだったけど、180年も前のミステリーに度肝を抜かれるとは。。
    人為的なトリックも好きだけど、期せずしてこうなった、みたいな謎解きも好物です。

  • どの作品も、これがオリジナル、という独創性がある。ポーはもっと理解していきたい。

  • ポー傑作選2 怪奇ミステリー編
    『モルグ街の殺人』
    著:エドガー・アラン・ポー
    訳:河合祥一郎
    令和4年 角川文庫


    角川文庫から出ているエドガー・アラン・ポーの傑作選。怪奇ミステリーが沢山集められていて、面白い話が沢山。
    何作かに登場するデュパンは本当にスマートで、ホームズのモデルになったと言われても納得なキャラクター。
    巻末にはポーの死の真相に迫る文章もあって、面白い。

  • 新訳に感謝。読みたかったから。

  • 新訳2冊連続刊行。先月の「黒猫」に続いて本書がその2冊目。「黒猫」がゴシックホラー編で、この「モルグ街」は怪奇ミステリー編というテーマ分け。
    このシリーズ、「作品解題」が丁寧なのに加えて、「ポーの用語」と「ポーの死の謎に迫る」というオマケボーナストラック的な読み物も充実(この部分だけで100ページ近くある)。
    この2冊を揃えれば、ポーの代表的な作品だけでなく、ポー自身の生い立ちやらの理解を深められてとても良い新訳企画でした。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1809-1849年。推理小説の創始者、ゴシックホラー小説やSF小説の先駆者とも言われるアメリカの小説家、詩人、雑誌編集者。極めて知的に多様なジャンルの物語を紡ぐストーリーテラーであると同時に、音楽性に優れた詩人であり、「大鴉」は生前大ヒットしてポーの仇名にもなった。ボードレールらフランス象徴派詩人や、ジュール・ヴェルヌら後代のSF作家らに与えた影響は大きい。その生涯も謎に満ちており、まさにミステリーを体現した作家といえる。

「2023年 『ポー傑作選3 ブラックユーモア編 Xだらけの社説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エドガー・アラン・ポーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×