バルタザールの遍歴 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092675

作品紹介・あらすじ

「私の筆跡にやや乱れが見えるとしたら、それはバルタザールが左手で飲み、私が右手で書いているからだ」
1906年、ウィーンの公爵家に生まれたメルヒオールとバルタザール。しかし二つの心に用意された体は一つだった。放蕩の果てに年若い義母との恋に破れた彼らは酒に溺れ、ウィーンを去る。やがてナチスに目を付けられ、砂漠の果てに追い詰められた二人は――。
双子の貴族が綴る、転落の遍歴。世界レベルのデビュー作。
解説 石井千湖

感想・レビュー・書評

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  • <トヨザキが読む!豊﨑由美>佐藤亜紀、世界文学クラスの才能 直木賞 無視なぜなんだ:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/58224/

    バルタザールの遍歴 佐藤 亜紀:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000255/

  • 再読。双子のマグダやベルタルダに対する気持ちより、メルヒオールのバルタザールに対する愛情が印象に残った。「出歩いている」ときに何かあるんでもなければ絶対に孤独にならないふたりがすこしだけ羨ましい。そして結末でもまだ彼らは30になったくらいなのだ。そして心機一転外国に旅立つんだから、またいつか会いたい人に会えるんじゃないか。若いってすばらしいわね、と思って本を閉じた。

    2回目なので、地の文で交わされるメルヒオールとバルタザールの会話がすいすい呑み込めて快適だった。メルヒオールはおおむね実務担当だった気がするのだけど、痛い目に遭って気絶するのは先なのね。読むのがしんどいので気絶してくれてこちらも助かったけれど。

  • 実際に読んだのはハードカバーのオリジナル版で1991年の発行のもの。
    (表紙にはバルタザールがスーツを着て、少し背を壁にもたれて立っている+その隣にメルヒオールのシルエット)
    これがブクログには見当たらないので、この文庫版で代わりに登録しておきます。

    いやあ、凄い。
    これがデビュー作で作者はまだ20代でこれを書いていたわけだ。
    ものすごく緻密で、何より言い回しや空気感が19世紀から20世紀初頭の欧米の文学の翻訳そっくり。
    まさに生きてきたみたいにこの時代の雰囲気を作って語るのでそこにただ口を開けて読んでいたかんじでした。
    すごいなあ。

    ストーリーはほとんどなくて、それも昔の翻訳小説みたいなかんじ。
    メルヒオールの正体?というか仕組みや父親からの特異体質遺伝のあたりは分かりにくいけどね。
    マグダもベルタもあまり好きではない。
    酒には気をつけようってなストーリー???
    ごく序盤に登場した、「彼女はただのダダだった」という一文に笑った。

    1人の体に2人の人格。
    森博嗣なら4人くらい入ってるしな、と思ったけど、同時期に読んでたぺソアなんか70人の人格があったわけだし。まあよくあることなんだよ、きっと。

    主人公の淡々とした語り口調が印象に残る。

  • 再読。
    一度目に読んだときが佐藤亜紀作品デビューだったので、落ち着いて読めていない部分も多かったと思う。
    一度目も楽しかったんだけど世界観への順応とか歴史の知識とかにエネルギー使ってしまい本編を純粋に楽しむ余裕なかったかもしれない。双子であるにも関わらず身体がひとつという設定にいちいち興奮していたみたい。

    そういう基本設定と話の筋もわかった上で改めて読んでみたら、メルヒオールとバルタザールはじめ登場人物をより深く理解することが出来たと思う。
    注釈もないまま当たり前のように引き合いに出される馴染みのない文学作品とか演劇の台詞とかには「分からないやつは読むな」と言われているような気持ちになるけど、、(どっかの論評にドSと書かれていた)それでもGoogleに頼りながらどうにか食らいついていけばたくさん良いことがあります。

  • 怠惰な金持ちが投げやりになって落ちぶれていく物語

    第一次大戦から第二次大戦の間のヨーロッパの雰囲気は世界史の教科書でしか読んだことがなく、世界観がなかなか掴めない。インディージョーンズやサウンドオブミュージック、チャップリンの映画の世界観をイメージしながら読み進めるが、なんとなくピンとこない。

    読み進めるまで一人の体に二人の人格という設定がなかなか理解できず、登場人物の名前も覚えづらく感じられてなかなか読む勢いがつかなかった。

    後半に差し掛かってやっと設定が理解でき、SFを読むような感覚で最後まで一気読む。

    何が面白かったのか、うまく説明できないが、面白かった。設定を理解できた二度目、三度目に読んだ時の方がきっとさらに面白く感じられると思う。

  • 主人公の貴族が絵に描いたように転落していきます。え、まだ落ちるの?というところまで。ですが、本人たちはあまり気にしていないようなので、読んでいて不思議と「辛さ」や「悲壮感」を感じることはあまりありませんでした。また、決して性格が悪いわけではないのですが、ダメ人間です。あそこまでダメになれるのは、自分以外の人間が常にいて、どんなにダメ人間になっても絶対に一人にならないという安心感からなのではないかと思う。だから、実際に一人になった時の絶望感は想像がつかなかった。この後も2人はこれまでのように、彼等らしく思うままに生きていくのだろうなと思った。

  • 佐藤亜紀という作家はいわば"作家に愛される作家"という立ち位置にいるように思う。ベストセラー作家とは違う独自の作風を持っており、大抵は「海外」「過去」を舞台としている、というのが3作ほど彼女の作品を読み、軽くその遍歴を調べた私の印象だ。
    デビュー作である本書も例にもれず、1918年のウィーンから始まっている。「1つの体に、2つの魂」という設定は意外とすんなり受け入れられ、美文なこともありすいすい読める。前半はのんだくれになった主人公の転落を描き、後半はさらなる転落と、仕掛けの種明かし、幽体離脱、決闘と徐々にエンタメ度が上がってゆく。
    なるほど、処女作でこれを書き上げるのは並の筆力では無く、後の作品遍歴に関わる要素も散りばめられていると思う。だが、話運びにはそれほど訴求力が無く、パラパラと大筋を追いかける形で読んでしまった。
    他の作品はこれ以上に高い評価を集めているものが多数あるので、これから少しずつ追いかけていけたらと思う。

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2022年 『吸血鬼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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