- 本 ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041092736
作品紹介・あらすじ
幕府と朝廷の礼法を司る「高家」に生まれた吉良三郎義央は、13歳になり、将軍・徳川家綱から名家・吉良家の跡取りと認められた。高家の役割は、朝廷への使者のほかに、大名や旗本の官位官職の斡旋などがある。今回は、前田家と毛利家が昇爵を目論み、吉良家への音物(進物)が届けられた。だが三郎は、父・義冬から、幕府に反抗的な毛利家に対し、厳しい通達をするよう命じられ──。武家の光と闇を描く、待望の新シリーズ!
感想・レビュー・書評
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跡継 ― 高家表裏譚シリーズの1作目
2020.03発行。字の大きさは…小。
赤穂浪士の討ち入りで有名な高家・吉良上野介義央(よしなか)の若き日の物語です。
鎌倉以来の名門吉良家当主の父・吉良左近衛少将義冬(よしふゆ)から厳しく学問と武術を学び、高家旗本四千石の跡継として成長して行く、吉良三郎(幼名)の成長の様を書いています。
三郎は、高家こそ、武士の鑑。武家を導く者であると、父・義冬から厳しく育てられます。高家の役目は、礼法を司ることであるが、礼は武と表裏の関係にあると。
そんななかで大名家、旗本の昇爵(しょうしゃく)の時期が来ます。昇爵の推薦を行うのも高家の重要な仕事です。此度は、萩三十万石毛利長門守綱広の昇爵を求めて、毛利家から吉良家をはじめ高家及び公家に音物(いんもつ)を送るが。
吉良義冬は、毛利家から送られて来た音物(賄賂)が加賀前田百万石と比べて少ないので、毛利長門守の昇爵を認めないと、高家寄合の場、老中との話し合いの場で、強引に持論を主張し毛利長門守の昇爵を朝廷に申し入れないこととする。
吉良義冬は、まことに、自分に入る賄賂の金高で物事を左右する、あさましい人間である。その教育を受けた三郎が、後に赤穂四十七士に打ち取られるのも判る筋書になっている。
三郎が、毛利家を訪れて次席家老に、毛利長門守の昇爵は朝廷に奏上しないと言ったことを聞いた毛利長門守は、三郎を殺そうとするが……。
【読後】
江戸時代、官位を金で買うことが、公然と行われていたことが読み取れます。ただ、その金について、受ける吉良義冬(貰って当たり前)と、払う毛利家の感覚が違ったことが悲劇を生みます。赤穂事件でも、浅野家の家老が、賄賂を出した金額が、吉良の思惑と合わず。このため吉良上野介から嫌がらせをされて……。
いまも変わらず、金々ですが、ほんと嫌な時代です。
上田秀人の本は、理屈ぽく、説明文が多いが。今回は特に、理屈をこねまわしている本です。
【豆知識】
「高家(こうけ)」は、江戸幕府における儀式や典礼を司る役職。また、この職に就くことのできる家格の旗本(高家旗本)を指す。役職としての高家を「高家職」と記すことがある。高家旗本のうち、高家職に就いている家は奥高家、非役の家は表高家と呼ばれた。←Wikipedia
「吉良義央(きら よしなか)」は、江戸時代前期の高家旗本(高家肝煎)。赤穂事件で浅野長矩により刃傷を受け、隠居後は赤穂浪士により邸内にいた小林央通、鳥居正次、清水義久らと共に討たれた。同事件に題材をとった創作作品『忠臣蔵』では敵役として描かれる場合が多い。幼名は三郎、通称は左近。従四位上・左近衛権少将、上野介(こうずけのすけ)。一般的には吉良上野介と呼ばれる。←Wikipedia
「昇爵(しょうしゃく)」、その意味は「爵位(しゃくい)を上にあげる」こと。←コトバンク
「毛利綱広(もうり つなひろ)」は、長州藩2代藩主。初代藩主・毛利秀就の四男。母喜佐姫が徳川家康の孫なので、綱広は家康の外曾孫に当たる。←Wikipedia
「音物(いんもつ)」は、贈り物。進物。賄賂 (わいろ) 。←goo辞書
【著者紹介】
「上田秀人(うえだ ひでと、1959年4月9日 - )」は、日本の小説家。大阪府出身。兼業作家であり、本業は歯科医である。←Wikipedia
2021.03.30読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幕府と朝廷の礼法を司る高家の跡継ぎとして、13歳の吉良三郎義央が、家綱から認可された。
父の左近少将義冬から、「武は礼に通じ、礼は武による」と、受け継がれている。
赤穂浪士の事件から悪役のように嫌われた吉良家の跡取り息子の話である。
遺恨を持った毛利家の汚いやり方。
こちらに非が、無くても、一度、噂になると取り返しのつかない事になる。
ちょっとした事が、お家断絶へと導くこともあるのには、、、、驚きである。
そして、音物(進物)の値の張るものㇸの配慮は、今の賄賂に等しいかもしれない。
しかし、お城にも行かず、仕事もしない者を昇爵などをもくろむ毛利家も あくどい。
84ページの毛利が、徳川からの本領安堵を約束されていた・・・と、書かれていたのだが、、、、
我が母も、祖母から、口伝で、我家は巻物の系図、お城の図面、色刷りであり、足利尊氏のあんど状(口伝え似て漢字の書き方が、わからない・・・)と、書いた母の実家の家系を記した書が、出て来て、「安堵状」と、記すのだと、知った次第である。
若い母が、鎧兜が、飾られている前で、裁縫をしている写真もあったし、陣笠、長槍も飾っていたそうであるが、広島で、戦争の時に焼失したとの事。
実家に、鎧兜前での写真は、残っているけど・・・・断捨離で、捨てられているかもしれない。
話が逸れてしまったが、この時代、武士も平穏になっても、パワハラの様な事が、上下関係では、あったのだと、思いながら、このシリーズは、どのような展開になるのだろうか?と、少し、心配な第1気持ちで、話を読み終えた。 -
新シリーズ第一弾
高家筆頭吉良家の話、記憶では後継ぎは赤穂浪士の討ち入りに際し負傷して後継ぎに不適格の烙印をおされた記憶だが
いずれにしても良くは把握できてないのは事実
今回は毛利家との遺恨?、それに関係して近衛家との確執
シリーズ物なので今後に期待、少なくとも一方的に悪者にされる所以は無いと思われるので -
吉良上野介の若き日の話
生まれる家は選べないとはいえ、うっかり名家に生まれてしまうと生きるのが大変そうだ。 -
「日本一の嫌われ者」吉良上野介を若かりし頃から書いたシリーズ。彼の属する高家や、そこと深く関わる幕府、藩主、朝廷など、当時の支配層に渦巻く権謀術数を取り上げ、題材としては非常に興味深い。
それだけに文章が気になった。用語や状況を逐一解説してくれるのはいいが、詳しすぎてその度に話が脱線する。物語の中に小さな入れ子がポコポコ出てくる状態で、「あれ、本筋何だっけ」となることがしばしば。下手をすると説明の筋すら見失う。
会話文も同様で、「Aからこう言われたBが反論した」のような説明(地の文)を会話とほぼ交互に挟んでくるので、その度に流れが切れる。
恐らく作者はマメで厳密な方なのだろうが、いち読者としては、情報を絞り込むことを念頭に置いて書いていただけるとありがたい。たぶん、半分くらいの長さで同じ内容が書けると思う。
肝心の主要キャラクター吉良親子は、海千山千の政界にあってどちらも金と政治力学に大変シビアで、今のところ「うわあ、お近づきになりたくないなあ」以上の印象が持てない。
主役・三郎(後の上野介)は礼儀作法にも優れ、剣の腕もなかなかという良ステータスなのだが、いかんせんそれを踏まえても読者として感情移入できるほどの要素がなく、かと言ってヒールたりうるパワーもない。
というか、どのキャラクターも「古狸」「バカ殿」「三下」などなどのラベル通りのステレオタイプがそのまま服を着て歩いている感じで、心に響くほどの深みが見えてこない。魅力のない主人公を立たせるために敵方をもっとダメな人間に描いている印象。
そのせいで物語そのものも徹頭徹尾、誰かと誰かの腹の探り合いとマウント合戦。正直、辛い。史実の高家や政治はそういう物かもしれないが、そこを超えた物語こそ読みたかった。
今回の星1つは「高家」という題材のユニークさに充てた。「吉良上野介」という主人公にもう1つ充てようとも思ったが、同じ主人公でずっと面白い先行作品がいくつもあるので、今回は見送り。
※4巻まで読みましたが大体同じ印象なので、続刊分の感想は割愛。 -
あの吉良上野介が主人公のお話です❗️
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吉良上野介側からの成長物語なんて、読み応えありそう。
著者プロフィール
上田秀人の作品





