氷獄 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092781

作品紹介・あらすじ

手術室で行われた前代未聞の連続殺人「バチスタ・スキャンダル」。
被疑者の担当となった新人弁護士・日高正義は、
有罪率99.9%を誇る検察司法の歪みに、正義のメスを入れる!

医療と司法の正義を問う、リーガル×メディカル・エンタテインメント!


「私が絞首台に吊されるその時、日本の正義は亡びるのです」

新人弁護士・日高正義が初めて担当する事件は、2年前、手術室での殺人事件として世を震撼させた「バチスタ・スキャンダル」だった。被疑者の黙秘に苦戦し、死刑に追い込めない検察。弁護をも拒み続ける被疑者に日高正義は、ある提案を持ち掛けた。こうして2人は、被疑者の死刑と引き換えに、それぞれの戦いを開始する――。(「氷獄」)

『チーム・バチスタの栄光』のその後を描いた表題作を含む、全4篇。
待望のシリーズ最新作。田口・白鳥も登場!

◆収録作
「双生」……医師・田口公平のもとで研修に励むすみれ・小百合の桜宮姉妹。外来患者の夫の異変に気付いたすみれは、ある斬新な治療法を提案する。
「星宿」……十字星を見たい――。看護師の如月翔子は、手術を拒否し続ける少年・村本亮の願いを叶えるため、便利屋・城崎を呼び出し――。
「黎明」……末期癌の妻が入所した東城大学医学部付属病院のホスピスは、治る希望を捨て、死を受け入れるという方針だった。夫・章雄は反発するが……。
「氷獄」……新人弁護士・日高正義は「バチスタ・スキャンダル」の被疑者のもとを訪れた。弁護の拒否を続ける被疑者に、日高正義はある提案を持ち掛ける。

感想・レビュー・書評

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  • 海堂作品は、流石にそれは・・!?と思うほどの設定やウルトラCが散りばめられているにも関わらず、ぐいぐい引き込まれてしまうのがいつもながらすごい。これぞエンタメ。

  • バチスタシリーズの短編集。これまでの登場人物の個性が断片的に見とれた。
    特に本のタイトルにもなっている「氷獄」ではそれぞれの人間性や考え、信念に基づいた「正義」の交錯が描かれており、非常に面白かった。
    医療と司法の関係については今後の展開に期待できそう。

  • 桜宮サーガの中短編集。「黎明」は死なせる医療を取り上げる。「治療法はないから、いろいろなことを試すのは、医療資源の無駄遣いになる」(88頁)。何も治療をせず、死ぬのを待つだけにする。患者の希望をなくし、早く死なせてしまう。

    これに違和感を抱いた患者家族は民間感覚を持っている。「多様な選択肢の中から好きなものを選べるオーダーメイドはリフォームでも最高の贅沢だ。そうした精神は医療でも同じはずだ」(102頁)。民間感覚を医療に反映することが医療を良くする道である。

    「氷獄」は『チーム・バチスタの栄光』の犯人の刑事裁判を描く。『チーム・バチスタの栄光』は著者のデビュー作であり、桜宮サーガの出発点である。原点回帰はファンに嬉しい。「氷獄」では日本の刑事司法の問題が指摘される。冤罪や不当逮捕事件も絡めている。

    「取り調べや裁判では被疑者は圧倒的に不利な状況にある。取り調べ時間の決定、調書を作成するのも検察官の思い通り。従わないと長期間勾留する。欧米では取り調べの際、被疑者の弁護士が同席できるが、日本ではそんなことはありえない」(169頁)

    「検察は被告人がシロを示唆する証拠は開示せず、被告人をクロにするのに好都合な情報だけ開示する不適切な体質で、情報化社会における不適合者さ」(237頁)

    公務員のアリバイ作りへの批判もある。「国という暴力装置が、自分のルールを押し付けようとする時に、大衆から非難されないためのエクスキューズなのでは」(147頁)

    著者が2020年に刊行した『コロナ黙示録』は安倍政権批判が露骨であった。これは小説を楽しみたい向きには疑問がある。しかし、日本の刑事司法の問題点から社会批判を強めた結果としては理解できなくもない。一方で2019年参院選広島選挙区を巡る買収事件で自民党であった渡辺典子県議の起訴に対してインターネット署名「冤罪をゆるさない!違法な捜査・曖昧な規制を見直そう!」が立ち上がった。安倍政権を批判する側にとっても支持する側にとっても日本の人質司法は問題である。

  • この作品を読む前に初めて「桜宮サーガ」シリーズに触れる方は、別の作品を読んでからをお勧めします。

    個人的にはあまり、シリーズを読んでいないので、作品の魅力の半分ぐらいしか味わえなかったかなと思いました。背景があまりわからなかったため、医師達の日常のような雰囲気を感じました。

    この作品では、3編の短編と1編の中編の作品が入っています。
    特に表題の「氷獄」は、第1作目「チーム・バチスタの栄光」の続編で、犯人も登場しますので、第1作目を読んでからをお勧めします。

    他にも「ジェネラル・ルージュの凱旋」「イノセント・ゲリラの祝祭」「アリアドネの弾丸」「螺鈿迷宮」「ナイチンゲールの沈黙」での出来事や登場人物がふんだんに盛り込まれています。
    一部しか読んでいませんが、懐かしさと同時にその後がどうなったのか楽しめました。

    表題の中編「氷獄」では、バチスタ事件や医療過誤の問題を取り扱いつつ、司法や検察、医療の闇も垣間見れて、考えさせられました。

    シリーズではお馴染みの田口と白鳥のコンビは面白く、メインというわけではないのですが、際立っていました。

  • 桜宮サーガの短編集
    バチスタ裁判の表題作を含めて収録は4編

    ・双生 1994年 春
    田口先生のところに桜宮すみれ、桜宮小百合が短期研修していた頃
    すみれと小百合のそれぞれやりたいことの片鱗がこの時期にも発露されていたのですねぇ
    でんでん虫の倒壊のあれこれや、その後の暗躍にまで関わってくるとはね……


    ・星宿 2007年 冬
    オレンジ病棟で南十字星を見ようとするお話
    ナイチンゲールの沈黙の後くらい

    手術拒否する小児患者の「南十字星を見たい」という願いを叶えようとする如月翔子
    便利屋 城崎を頼って実現した方法とは?

    オレンジ病棟の建設の経緯やら、タヌキの思惑やら、白鳥の力技やら、田口先生の消費カロリーの少ないアシスト等々


    ・黎明 2012年 春
    終末医療施設である黎明病棟発足当初のゴタゴタ

    ホスピス棟に入所することになった、膵臓癌末期の千草
    夫の章雄は、今まで苦労させた負い目もあってなんとか治療をしてやりたいと思っているが、ホスピス棟の看護師長黒沼はその考え自体を否定する
    ホスピスというのは、死を迎える覚悟を作る場所であい、治療は不要だと
    諦めきれない章雄は、ホスピス棟に入所している山岡から、看護師の若月に相談する事を勧められる
    若月のやった事、そして事態は意外な真実を明らかにする

    それにしても、高階院長の提示した最善策の無茶振りっぷりよ
    そんな事、田口先生ができるわけないじゃんw

    あと、最後に仄めかされていた、田口先生が巻き込まれる事って、新型コロナのあれですね
    単行本の発売時には書いてなかった文章なんでしょうね、きっと

    他作品の感想でも書いたけど、田口先生は後に教授になってるはずなのに、この時点でまだ講師という違和感もあるなぁ


    ・氷獄 2019年 春
    新人弁護士・日高正義によるバチスタスキャンダルの被疑者の弁護の回想
    弁護の拒否を続ける被疑者
    被疑者からの他の事件へのアドバイス
    日本の司法の問題点とは?

    科学的な手法をどこまで司法に反映させるか?
    その情報の開示を誰が掌握するかという問題
    検察は有罪にするために、自分達に不利な情報は出さないというのはダブルバインドではないのかという疑問

    やはり、これまで桜宮サーガを追いかけてきたからこそ感慨深いものがある
    別宮葉子、斑鳩芳生とか他シリーズを読んでいると「おぉ!」と思うところがあるけど
    この作品を最初に読む人にとってはよくわからない小説に感じるかもね

    東日本大震災や新型コロナウイルスも作中に込めだすと
    先述の通り登場人物たちの年齢が結構気になるんですけどねぇ


    ところで、田口と白鳥のシリーズは完結したんじゃなかったっけ?
    そのシリーズではなく、あくまで桜宮サーガの短編ということか?

  • バチスタ事件のその後を中心に検察システムに一石を投じる短編集。一連のシリーズのキーパーソンが数多く登場し、謂わばバチスタシリーズを締め括る作品のように感じます。
    田口先生や白鳥技官を始めたする個性的な人たちの言動が久しぶりに読めて楽しかった。

  • バチスタ裁判と東城大に関連する短編集です。
    主要メンバが揃い踏みで楽しく読めました。
    やっぱり白鳥のロジカルは群を抜いてますね。物語が加速して厚みが増します。
    そして新章幕開けの感もあり、これからの田口白鳥ペアの活躍が楽しみになってきました。

  • 2022.09.09

    桜宮サーガ短編四篇 碧翠院姉妹の研修時代 小児病棟のプラネタリウム ホスピス棟の闇 バチスタ事件裁判

    四話目、やっぱり白鳥が登場すると楽しいな。新キャラを無理なくいろんな話に後付けにも関わらず嵌め込んでいく手腕はさすが。

  • 久しぶりに海堂尊さんの書籍を読み面白かった。
    途中難しい言葉が多く、長く感じるところもあるがこれがこの本の良さなのかも。
    最後はスピード感もあり楽しかったです。

  • このシリーズは、読み始めると止まらないですね。懐かしい登場人物が出てくると、あの時どんな話だったかな?なんて。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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