- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041092903
作品紹介・あらすじ
加賀藩主前田斉広の三女・勇は、加賀大聖寺藩主前田利之の次男・利極と結婚。新たな人間関係やしきたりに戸惑いながらも順応していく――。不思議な縁でつながる三人の女性を描いた壮大な大河ロマン!
感想・レビュー・書評
-
年をまたいで読了。
タイトルと表紙の絵がちぐはぐな気がして、どう読み進めたら良いのか、最初の1ページをめくるのに日数がかかった。
が、飲み始めて思ったことは、さっさと読むんだった!
これは政略結婚そのものの話ではなく、お姫様達のハッピーウェディングストーリーでもない。
格式ある家に生まれた三人の、生きざまの物語。
家系図に名前がなく、「女」としか記録されない時代
家を存続させることが何よりも大事だった時代
そして家名の価値がなくなってしまう時代
そんな時代を名前のない「女」ではなく、
自分らしくたくましく、美しく、力強く生きる姿がまぶしい。
当時の価値観に抗いながらも、逆に家に助けられながら生きていることを身をもって体験し、踏んばるところがいい。
どのお姫様もよかったが、第二章『プリンセス・クタニ』がお気に入り。
特に終盤のタカさんのセリフ「すべて、貴方のおっしゃるとおりにします」がいい!
どの時代も、後世から見ると不思議な価値観があり、大なり小なり女は影響を受ける。
それにひとりで抗っても生きにくいだけ。
受け入れられるものは受け入れ、そうでないものは賢く立ち回って自分なりの小さな変革を起こし、相容れなければ自分とは遠いところにそっと蓋をしておこうと思う。
解説文もよかった!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1番好きな小説のひとつです。どれから読んでも話はわかります。個人的は、他の方もあげられた2番目のプリンセスクタニの話が好きです。
江戸時代の前田藩のお姫さまが江戸に嫁いできての話→これは後でwikiを読んで知ったのですがかなり史実が入っているのですね。てんさいの君(てんさい糖=甘い)と呼ばれた夫との関係や、江戸時代の奥の女性に求められた役割など…
明治大正の小松藩のお姫さまが2話目の主人公です。
パリ生まれで、生まれの小松藩には足を踏み入れたことのない万里子が、九谷焼を万博に売り込んでいく現代のお仕事小説のようなストーリーです。
ちなみに、私はこの話を読んでからどうしても九谷焼が欲しくなりそれなりに高価なものでしたが、金沢にいき購入しました。笑
3話目は昭和の没落華族令嬢が主人公です。
高殿円さんも2話目が創造ならば3話目が破壊だと表現していましたが、2話目の前向きな明るい話とは打って変わって退廃的な、耽美的な雰囲気の漂うストーリーです。
家も失い新宿の劇場で歌手としてレビューに立つ花音子、段々と迫ってくる戦争の影響。
花音子がステージで客の投げ入れた生の薔薇を踏み潰すシーンが、大好きです。
3話目がはまった方にはぜひ高殿円さんのグランドシャトー(戦後の大阪キャバレーのお話)もすすめたいですね。
またハードカバー版の3主人公の表紙のデザインも美しいです。 -
幸福な表紙絵の2人とタイトルから、親の決めた結婚相手と仲良く添い遂げるのだろうかと思ったが、そんな単純なことではなかった。江戸のころ作られた大皿が、明治、昭和と姫たちの行方を見守る3編。
江戸の話では、時代なりの悲劇が次々と嫁の勇をおそい、いろいろありすぎて結婚相手である「てんさいの君」の存在感も薄れるほど。でも数多の不幸を前に、義母の「死なぬものは死なぬ」という言葉を胸に顔を上げて生き、役目を全うしようとする勇は凛々しい。あと着々と出世していく蕗野もいいな。
二章のプリンセス、万里子は聡明で進歩的、でもお家のこともまだ考えざるを得ない時代に生きている。ただ"故郷"の小松藩のことを知ろうとすることが、義務感から仕方なくというふうではないのがいい。
三章は金融恐慌で没落した家のプリンセス。母と娘の関係も描きつつ、職業女優として生きる白樺かの子の心情がこまやかに描かれていて読みごたえがあった。初めて薔薇を踏んだ日、菊を拾って歌った日、目に浮かぶような場面がいくつもあった。さすがは女優だなと言いたくなるような。
ほんの100年少々の間に激変した価値観。幸せも自由も、時代によって意味が変わる。その荒波を乗り越えた女の物語、おもしろかった。 -
幕末から戦前戦後まで、それぞれの時代に生きた女性の生き様が描かれる。
その時代、その土地の匂いを鮮やかに感じることができる。
3つの時代の女性を繋ぐのは、てんさいの絵が描かれた九谷焼の大皿。 -
政略結婚ってタイトルからイメージした話とは随分違った内容でしたが、三篇それぞれ面白かったです。
江戸後期から明治までを生きた加賀前田家のお姫様の時代と、明治半ばの、パリに生まれた子爵家のお嬢様の時代と、第一次世界大戦後の昭和金融恐慌で没落した公家の流れの伯爵家令嬢の昭和・平成。
血筋や家名に掛けられた呪いが変遷する時代の波に翻弄され、やがて蜃気楼のように溶けていくまでの三世代。
三つの話を繋ぐのは九谷の絵皿。とすると三話目の主役は実は皿の持ち主の峰山奈知子なのかも?(三話目でも「蕗野」が出てくるのかと思ってたけど違った。)
氏より育ちと言うけれど、彼女たちの聡明さと時代に立ち向かう凛々しさは名家の姫ならではと思わされたりもする。血は尊い、と感じるのは、血と共に誇りと覚悟を脈々と受け継いでいるからであろうか。実に何とも、そういう世であった。
カバーの絵は、底抜けに甘々の文庫版よりも単行本のデザインの方が好き。 -
時代を跨いだ主人公三人ともバイタリティのある女性。
結婚しないことも含めて結局はその機会がきたとき
動けるかどうかがその後の人生の分岐点なのかな。
万里子さんがすき。 -
時代ごとの恋愛を描いているが、時代が違えど女性の強さは一貫としていてとても素敵だと感じた。
個人的には、てんさいの君がお気に入り。
家族、人の繋がりってすごいなと思った。