アノニム (角川文庫)

  • KADOKAWA
3.45
  • (62)
  • (182)
  • (214)
  • (52)
  • (11)
本棚登録 : 2557
感想 : 160
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092941

作品紹介・あらすじ

ジャクソン・ポロック幻の傑作が香港でオークションにかけられることになり、美里は仲間とある計画に挑む。一方アーティスト志望の高校生・張英才のもとには謎の集団「アノニム」からコンタクトがあり!?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 年齢を経るごとに名前などを覚えられなくなっているので、洋物を避けていたのですが、つい原田さんと思って買ったら大変でした。
    香港を中心に世界中の話題が。中国人名も地名も現地読みの振り仮名が付くものの、メモをしていないので、同じ名前が出るごとに前に戻って確認作業が入る。
    同様にアノニムのメンバーも、一人を除き外国人。正業の他にアノニムの愛称があり、両方の名前を使い分け。正業の他に幾つもの組織が現れ、美術品を巡り大騒動。誰が誰やら、敵か味方か理解に時間を要する。
    美術品に関しては流石の内容で、本自体は読み切ったが、非常に苦労した読書だった。

  • 漫画ライクなアートエンターテイメントストーリ
    冒頭に登場人物がイラストで紹介されていて、ライトノベルといった感じ。

    ストーリとしては、
    様々な業界の表で活躍する一流の人たちが集まったアート義賊団、アノニム。盗難された美術品を盗み出し、修復までして持ち主に返す集団です。
    そんなアノニムの今回のターゲットは、ジャクソンポロックの幻の作品「ナンバーゼロ」
    これをオークションで落札しようとしているコレクターとの戦い。
    オークションで史上最高価格で落札させる一方、贋作を渡すといった展開。
    その贋作を描くのが、高校生の英才。
    英才の想いが、そして、アノニムの想いが語られる物語です。

    このアノニムの使うガジェットがすごい(笑)、映画で出てきそうなシステムばかり(笑)
    そもそも登場人物の設定も億万長者だったり、美術史の権威だったり、建築家だったり...
    まさに、漫画ライクなエンターテイメントです。

    しかし、英才が最後に語ったスピーチが熱い!
    原田マハさんの熱い想いが伝わってきます。

    「ポロックは、一枚の絵を通して、おれたちに教えてくれている。もしも目の前にドアがあるなら、まずノックしてみろ、と」
    「アートには世界を変える力はないかもしれない。けれど、ひょっとすると、アートで世界を変えられるかもしれないと思うことが大切なんだ」

    楽しめました。
    お勧め。

  • ルパンとかオーシャンズシリーズのような華麗で最新鋭な技術を使い、致している事は鼠小僧のようにあくまでアートのために。
    アート関係各界のトップクラスのメンバーからなるアノニムというチーム。そしてそのチームリーダーのジェットによるテンポの良いストーリーで、サクサク読み終えました。
    原田マハさんのアートについての作品が好きで、今回も楽しませて頂きましたが、欲を言うとポロックについての深掘りも見たかったかなぁと。いつも沢山の画家と作品が出てきて、(全く無知故に)ネットで調べながら、こんな作品なんだ〜!って思いながら読むのも楽しみで。
    また、メンバーそれぞれの事情ももう少し知りたかった!頁数が少ない!って思うくらい面白かったんですけどね。英才君のその後とかね。

    ジェットが素敵でした♡

  • 原田マハ『アノニム』角川文庫。

    登場人物のイラスト漫画が掲載されている時点で少し嫌な予感がした。本作で初めて、信頼していた原田マハに裏切られるのか……

    これまでの原田マハ作品は1つのテーマを冒頭からゆっくりとじっくり丁寧に描いていたように思うのだが、本作はエンタメ性が強く、これまでに読んだ原田マハ作品を全否定するかのような作品だった。しかし、さすがは原田マハ。アートに関連する知識がふんだんに盛り込まれ、ストーリーは面白い。残念なのは、ラストが『暗幕のゲルニカ』と同じパターンであったこと。『暗幕のゲルニカ』を読んでいなかったら、かなりの爽快感を味わえたと思う。

    盗難された美術品を人知れず盗み出し、持ち主の元に返す謎の窃盗団『アノニム』。IT長者のジェットが率いる『アノニム』のメンバーたちは香港のオークションに出品されるジャクソン・ポロック幻の傑作『ナンバー・ゼロ』をある人物に史上最高価格で落札させ、それをある人物の手元に届く前に贋作にすり替えることを目論むが……

    本体価格680円
    ★★★★

  • 世界を股にかけ暗躍する美術品窃盗団アノニムが、香港で開催される現代美術のオークションで狙ったのが、ジャクソン・ポロックの作品、"ナンバー・ゼロ"。
    そして、アーティストを夢見る香港の高校生、張英才にアートで世界を変えられると信じさせ、ナンバー・ゼロのコピー作品を描かせて、オークションで落札した本物とすり替える。

    巨額の富が動くアートの世界の裏側を描きつつ、香港の決起集会に参加する高校生の思いを描いたストーリーは、スリリングでありながら、微笑ましい場面もあり、すっかり引き込まれてしまった。

    やはり、原田マハさんの作品は面白い。

  • 香港で行われるオークション。その目玉出品は「アクション・ペインティング」の旗手ジャクソン・ポロックの幻の作品 "ナンバー・ゼロ"。オークションを舞台に、狂気のコレクター〈ゼウス〉と、とても盗まれた名画を元に戻す謎のアート窃盗団〈アノニム〉の戦い。そしてアノニムは、アーティストを目指す香港の高校生、張英才の才能を見出だし、肩入れする。

    まるでコミックのような軽い作品。ラノベなのかな? 著者の他の作品とは明らかに違う作風だった。

  • 面白かった。アート版のオーシャンズ・イレブンと言った感じ。

    表題のアノニムとは、謎の芸術集団のこと。芸術と言っても、画家はいない。建築家やオークションのネゴシエーターや、それから美術のコレクターなど。各分野の一流の人間が集まって構成された組織。

    彼らは裏のやり方で盗品を取り返す、などと言ったいわゆる義賊的な活動を行ってきた。

    そんなアノニムが次に目をつけたのがジャクソン・ポロックの「ナンバーゼロ」。ナンバーゼロのオークションへの出品を巡って、アノニムが暗躍する。

    一方で、オークションの舞台が香港であることにも意味がある。本作では、香港の学生運動をテーマの1つとして扱う。

    学生運動にあまり興味のなかった少年が、アノニムの筋書きによって、アートを通じて運動の中心に関わっていく。

    という複線的なストーリー。アートと政治を絡めて、それでいて娯楽小説として仕上がっている。原田マハらしい一作。

    惜しむらくは物語の薄さかもしれない。欲を言えば、もっと長編でもよかった。それに、表紙とタイトルの印象から勝手に大人っぽい物語を想像していた。けれど角川文庫だし、ターゲット層は若年層に設定されているのかもしれない。まぁそこはしょうがないかな。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/04/25/%E3%80%90%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E7%89%88%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%96%E3%83%B3%E3%80%91%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%8B%E3%83%A0_-_

  • 原田マハさんのアートをテーマにした小説(2017年6月単行本、2020年7月文庫本)。今回はアメリカ現代美術の天才アーティスト、ジャクソン・ポロックの作品「ナンバー・ゼロ」を巡る物語で、香港を舞台にした数百億円の攻防のオークションの始まる前から終了までの間の表の息詰まる駆け引きと裏の本当の目的、そして香港の若者の熱い闘いが同時に描かれる。
    物語は盗難にあった美術品を修復して持ち主に返す活動をしている8人の義賊窃盗団「アノニム」が、「ナンバー・ゼロ」をホテル王の悪徳冷血コレクターにオークション史上最高価格で落札させた上で奪うという手のこった物語。しかもこのミッションの本当の目的は冷血な悪徳コレクターへの制裁でもなければ、希少な美術品の獲得でもない。これからの若者にアートの可能性、勇気や希望を確信させ、世界を変え、世界を豊かにする力があることを植え付けることだった…と結末にちょっと共感できなかったのは私の未熟なせいだろうか…。
    ボスは世界有数のアートコレクターで大金持ちのIT長者の台湾人(通称ジェット)。メンバーは香港の巨大美術館のメインアーキテクトで建築家の日本人女性(通称ミリ)、絨毯店経営者で世界的な美術史家のトルコ人(通称エポック)、ニューヨークでギャラリーを経営するイタリア人女性(通称ヤミー)、ラグジュアリーブランドのオーナーでファインアートのコレクターのフランス人(通称オブリージュ)、世界屈指の美術品修復家のイギリス人女性(通称ネバネス)、天才エンジニアで億万長者のメンバー最年少インド系アメリカ人(通称オーサム)、そしてオークション会社の花形オークショニア(通称ネゴ)。とアニコムのメンバーがアート業界の表と裏のスーパープレイヤーを揃えて凄い。このメンバーを見ただけでこれから何が起こるのかワクワクする。
    舞台が香港というのがまたいい。20年以上前の香港映画「恋する惑星」の描写が 文中で出てきて、思わず昔観たDVDを引っ張り出してきて懐かしく観てしまった。今正に世界が注目する激動の香港、自由と民主主義が奪われようとしている香港。政治も世論も群衆の力も世界のメディアも止められない自由と民主主義の危機をアートはその流れを変えることが出来るのか。マハさんは凄い問題提起をしてしまった。
    単純にこの凄いメンバーが活躍する、多彩なアートを教えてくれるような物語をもっと見てみたい気がする。
    「アノニム」のシリーズ化を期待しているが、今作の続編にすると簡単ではなさそうな感じ…。でも期待したい。

  • 初、原田マハ。
    登場人物と横文字が多く挫折しそうになることもあった。
    だが、あらすじの面白さと是非本棚に飾りたいと思い読了。
    読む人によって評価はそれぞれだが、私は最後に良かったと思えた作品でした。

  • 主要人物の紹介が漫画仕立てになっていたので、読んでいても何となく漫画チックに感じてしまった。
    読みやすく面白いが、結末が予想通りでもう少し捻りが欲しかったと思う。
    現在の香港の実情を憂うとギャップがあって気分が落ち込んでしまう。
    ただ美術関連についてはズブの素人であるので、知識としての吸収がある事はこの作家のこの手の作品の魅力だ。

全160件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×