虜囚の犬

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092958

作品紹介・あらすじ

穏やかな日常を送る、元家裁調査官の白石洛(しらいし らく)は、
友人で刑事の和井田(わいだ)から、
ある事件の相談を持ち掛けられる。
白石がかつて担当した少年、薩摩治郎(さつまじろう)。
7年後の今、彼が安ホテルで死体となって発見されたという。
しかし警察が治郎の自宅を訪ねると、そこには鎖につながれ、やせ細った女性の姿が。
なんと治郎は女性たちを監禁、虐待し、
その死後は「肉」として他の女性に与えていたという。
かつての治郎について聞かれた白石は、
「ぼくは、犬だ」と繰り返していた少年時代の彼を思い出し、
気が進まないながらも調査を開始する。
史上最悪の監禁犯を殺したのは、誰? 
戦慄のサスペンスミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • ある一人の男がホテル内にて刺殺された。被害者である男の家の離れから酷く衰弱した女性が保護される。女性の話によると彼女より前にいた「先住民」は酷い暴力の末既に亡くなっていた。庭からは白骨死体。
    男は殺されて当然のクズだったのか。だとしたら誰が男を殺したのか。
    これが、決して大きくは無い田舎町で起きた「茨城飼育事件」 の概要である。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    監禁 拷問と聞いて漠然と浮かぶ熟語は「痛い 辛い 苦しい」ら辺かと思う。そしてそれらの言葉は基本的にポジティブに働くことは無い。だが、こんな前置きをしたって事はそれが裏切られて実はハッピーな展開.... という訳でも勿論ない。しっかり胸糞が悪かった。
    ーーー場所は地下室。暗く冷たい部屋の中、全裸の女性が鎖に繋がれている。「影」が命じるまま屈辱に屈服するしか無い残酷な空間ーーー

    「虜囚」とは、まぁそのままの意味である。囚われた人、捕虜といった意味合いの言葉だ。つまりは「何か」の「支配下」にある状態。
    【この本を読めば貴方もきっと気付くだろう。我ら人間は常にその「何か」に「支配」されているという事を】 といった鳥肌付きの教訓をくれる優しい書物........なわけが無い。
    我が暗黒仕様の脳内変換では、
    【貴方が誰かの「何か」では無いと果たして言い切れるのだろうか】と聞こえた。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    監禁時の生々しい描写がある訳では無いので内容の割には比較的穏やかな気持ちで読み進められるのだが、単語は中々にエグ味がかっている。泥水でうがいする様な気持ち悪さだ。想像力に自信があり、グロテスクに耐性がない場合はそっと本棚に戻す事をオススメします。

    そんな「監禁」のワードが醸し出す陰の雰囲気に縛られてはいたが、主人公である元家庭調査官の白石洛と茨城県警捜査一課巡査部長の和井田のコンビはシリーズ化してほしい程キャラ立ちのバランスが良かった。
    更に読み進める事に「茨城飼育事件」は横に横に複雑さを広げていき、負の連鎖、因果とも言うのだろうか...つまりは「ただの事件」では無くなっていく。作られた「悪」が必然的に起こした逃走不可避の絶望の未来。
    何が言いたいってもう無我夢中でした...。もし、結末の想像が全く出来ないまま残りのページが少なくなっていく不安感に♡悦♡を感じ始めたらもうこっち側の人です。ようこそ隣人のNORAxxです。


    でもやっぱり本著者の作品、着地はあっさりしてるんだよなぁ(笑)
    一言で言うなら「支配の逆転劇」だろうか。
    極力、誰かの「何か」にならないよう、「何か」の虜囚にならないよう、個人を尊重した日々を送れたらそれが理想です。

    • ヒボさん
      NORAさんおはようございます♪
      お返事ありがとうございました。
      なるほどぉ~ケッチャム作品との比較、私にはわかり易すぎます(笑)
      NORA...
      NORAさんおはようございます♪
      お返事ありがとうございました。
      なるほどぉ~ケッチャム作品との比較、私にはわかり易すぎます(笑)
      NORAさんに好みかと思いますと言われれば、どこかのタイミングで読んでみたいと思いました!
      ありがとうございます♪
      2023/03/30
    • NORAxxさん
      ヒボさん、こんにちは♪
      いやはや...またここでヒボさんと暗黒談義できた事大変嬉しく思います(笑)これからも更新楽しみにしておりますね(*^...
      ヒボさん、こんにちは♪
      いやはや...またここでヒボさんと暗黒談義できた事大変嬉しく思います(笑)これからも更新楽しみにしておりますね(*^^*)
      2023/03/30
    • NORAxxさん
      ほん3さん、こんにちは。お久しぶりです♪コメントありがとうございます。
      元気元気ですーᕙ( ˙-˙ )ᕗ!!
      おぉ、「隣の家の少女」映像化さ...
      ほん3さん、こんにちは。お久しぶりです♪コメントありがとうございます。
      元気元気ですーᕙ( ˙-˙ )ᕗ!!
      おぉ、「隣の家の少女」映像化されているのですね。私はもっぱらサブスクで配信されている物しか見ないのでそちらにあったらぜひ見てみたいと思いました。ありがとうございます!
      なかなか更新してないというのにまた遊びに来てくれて嬉しいです(*^^*)
      2023/03/30
  • 穏やかな日常を送る、元家裁調査官の白石洛は、友人で刑事の和井田から、
    ある事件の相談を持ち掛けられる。
    白石がかつて担当した少年、薩摩治郎。
    7年後の今、彼が安ホテルで死体となって発見されたという
    しかし警察が治郎の自宅を訪ねると、そこには鎖につながれ、やせ細った女性の姿が
    なんと治郎は女性たちを監禁、虐待し、その死後は「肉」として他の女性に与えていたという。
    かつての治郎について聞かれた白石は、「ぼくは、犬だ」と繰り返していた少年時代の彼を思い出し、
    気が進まないながらも調査を開始する。

    白石は友人の刑事・和井田から相談を持ち掛けられて捜査を開始する。
    しかし、白石はある事件があって家裁調査官を辞め妹のマンションで居候。
    主夫をしていた。
    まだ心の傷は塞がってはいない。
    プロローグは、女性が監禁され犬の首輪鎖につながれている。
    女性を侮蔑する言葉の数々・怒声・聴くに堪えない暴言や嘲笑。
    嘲りの儀式は影(犯人)が飽きるまで続く。
    犬用の皿にドックフードと水を四つん這いで食べるしかない。
    プロローグからおぞましかった。

    監禁・虐待・洗脳…実父や義父からの子供への性的虐待。
    話では読むし、時々裁判になってたりする
    頭ではわかっている。鬼畜の様な親がいる事。
    様々な虐待を受けて育っている子がいることもわかってる。。
    虐待が虐待を呼ぶことも聞いている。
    しかし、やはり残ったのはやるせなさと気持ち悪さばかりだった。
    最後のどんでん返しにはとても驚いた。
    エピローグを読んでプロローグが誰かわかった…。
    悲しいなぁ。

    やっばり櫛木さんの物語読んでしまうけど、おぞましい…。

  • おぞましい一冊。

    櫛木さん、容赦なく描くなぁ。とある殺人事件を発端に浮かび上がる世にもおぞましい事件。

    キツい描写にこれは小説と言い聞かせ心も脳内映像もシャットダウン。

    この事件から炙り出されていく、一家の忌まわしい過去、犬という気になるキ-ワ-ドがとてつもなく心をざわつかせる。

    もつれ絡まる鎖のような人間関係、ついに明らかになる真実、真犯人、衝撃と共に頭を整理。

    支配、コントロール、その言葉が頭にこびりつき、おぞましい残虐な描写にミステリの仕掛け、驚きも霞むほど…。

    人を人とは思わない行いに言葉が出ない。

  • 父親に虐げられて育った、薩摩治郎がホテルの一室で殺された。しかし、治郎の家の離れの地下室から、監禁された女性が見つかったことから、過去の事件に繋がっていく。
    首輪をつけられて、食事として与えられていたドッグフードには、保護された女性の前に監禁されていた女性の人肉が混ぜられていた。
    虐待は虐待を生むというのは、本当なのかも知れない。
    治郎の父親も、母親も親から虐待されて育っていた。
    反面教師にして、一生懸命に子育てしている人もいるだろうが、自分が親にされてきたような子育てになる人のほうが多いような気がする。
    過去の事件まで遡ると、グロい猟奇的な内容だけではなく、人格が形成されていく過程での愛情のかけ方がこれほどまでに影響するのだと悲しくなる。
    あずさこと、志津の人たらしテクニックは、素直に凄いと思った。

  • おもしろかった!
    内容はなかなかハードですが、
    読んでると続きが気になる展開が次々と続いて
    ラストは「おお~!」
    どんでん返しのおもしろさ!

    ある事件から主婦的な日々を過ごす元家裁調査官の白石洛
    彼の元に友人で刑事の和井田から相談を持ち掛けられる
    白石が担当していた少年・薩摩治郎が殺されたという
    単なる殺人事件と思いきや…
    薩摩の家には女性が監禁されていた
    さらに調べると他にも監禁された女性がおり
    監禁された女性に死んだ女性の肉を与えていたという…
    史上最悪の監禁事件を起こした犯人を殺したのは誰?
    その事件には恐ろしい真実が隠されており…

    櫛木理宇さんの作品は読んだことなかったのだけど
    他の作品も読んでみたい~!

  • 冒頭からこれはちょっと残酷な物語か…とおぞましさすら感じつつ読み進める。

    女性を飼育し殺した少年の闇がすぐにあばかれるのかと思いきや、その少年も殺される…。

    第3章からの少年2人が肝かと思っていたが、まさかの予想もつかない展開に。
    思考が追いつかないほど。
    エピローグであぁなるほど…と。

    どこまでも負の連鎖で苦しくなるのだが、元家裁調査官の白石洛が作る料理と友人の刑事・和井田の豪快さにホッとできる。

  • 元家裁調査官の白石洛は、友人でもあって刑事の和井田から、以前に担当した薩摩治郎が殺害された…担当した時の様子など知りたいと相談があった。警察が薩摩治郎の自宅に行くと、薩摩治郎は2人の女性達を監禁しおよそ人間らしい生活をさせずに、女性達は飼い犬のような扱いを受けていた。誰が薩摩治郎を殺害したのか…その過去は…徐々に明らかになっていく。
    読んでみて…あぁ~読みにくい…こんなひどい仕打ち…耐えられない…とすごく気持ちが沈み…だけどそこは櫛木理宇さんの作品だからってことなんでしょうね!それにあまりにも関係者が多くて…あれ?誰だっけ??とページを遡って確認することも何度も強いられたり…そのわりにラストはあっけなく感じられましたね…。なんか、缶入りのドックフード、しばらく見たくない感じです。



  • プロローグ

    閉じ込められて侮蔑の言葉にさらされた、
    酷く絶望感に満ちた場面から物語は始まる。

    一転して、家裁調査官の白石が担当している
    少年の審判の場面が現れて、この後話が
    どう進むのか意識が鷲掴みにされてしまう。

    時は前後し、話の中心になる時間軸が
    前後左右に自由に行き来する。

    事件は負の連鎖なのか、事件の芯の部分は何か。

    話の流れや筋と同様に、読みながら思うままに
    翻弄されてしまいました。

  • 「ま、おまえの人生だからな、おまえの好きにすりゃいい。時間を止めたまま生きるも、新たな方向へ歩くも自由だ。·····だが、一つだけ助言するぞ。乗りかかった船には最後まで乗っていけ。半端なところで下船しても、後悔の種が増えるだけだ」(P.277)

  • ビジネスホテルで男性がめった刺しにされ殺害される事件が起きる。
    その被害者宅を訪問した刑事たちは隠し部屋に監禁されている女性を発見する。
    女性は他にも監禁されていた女性がいて、その女性は以前死んだ、さらに、他にもこの家で殺された女性がいたのだと言う。

    過去のトラウマにより、今は仕事を辞めて妹の家事をしている元家裁調査官の男性は、友人の刑事にビジネスホテルで殺された被害者について聞かれる。
    被害者は主人公が家裁調査官だった頃、担当した事のある少年だった。
    少年は横暴な父親によって虐待を受け、その頃は気弱でとても女性を監禁、暴行するようには見えなかったが・・・。
    事件に興味をもった主人公は単独で被害者男性の周囲を探っていく。
    そうする中で、事故でなくなった被害者男性の父親を恨んでいた一家の存在が浮上する。

    それと別に、複雑な家庭環境の高校生の少年二人の話が途中から描かれる。
    一人は義理の母親に虐待を受け家にいられない少年。
    もう一人は少女のような美少年で、カリスマ性があるが、サイコっぽい所のある少年。
    虐待を受けていた少年は声をかけてきた美少年にどんどん惹かれていく。
    ビジネスホテルの殺人事件に異様に興味をもつ美少年の様子を見て、実は彼が犯人なのでは?と思うようになる。

    あっという間に読んでしまった。
    最近、集中力がなくて本を読むのに時間がかかるけど、この本は一気読み。
    上手に読まされたな・・・と読み終わって思う。
    ストーリーに惹きつけるのがとにかくうまい。
    最初の場面で監禁されているのは誰だろう?と思うし、読み進める内に、本当に殺された男性が女性たちを監禁していたのか?とか、もしそうならその理由は?と思う。
    さらに、少年二人の話に場面が変り、この話はどうつながるんだろう?と思う。
    ・・・という風に引きつけられた分、結末と真相にはイマイチ・・・という感じになった。
    そこまでする説得性が感じられなかったのは犯人と、その犯行理由になった「アズサ」という女性とのエピソードが無かったからだと思う。
    そこがあればもっと感じる所もあったのに・・・。
    あえて書かなかったのは犯人像が少し読めてしまうからかな・・・と思った。

    この本では結構な暴力シーン、レイプ、近親相姦というものが描かれているけど、読後感は悪くない。
    何故かというと、主人公の男性がこの事件に関わる事によって再生していくという物語でもあるから。
    過去の不幸な事件により、心の傷を負って、何年も家に引きこもるような生活をしていた主人公の男性。
    そんな人が事件の事を知って、当時の関係者に聞き込みのような事をしていくのは見ていて「すごい・・・」と思った。
    そして、行動する事によって自身が知らない内に変わっている。
    何年も罪悪感を抱えて仕事まで辞めてしまった主人公だけど、そういう人だからこそ、信頼できる人だと思うし、人の心の痛みが分かる人だと思った。
    それで、何もないようにしれーっとできる人が自分担当のカウンセラーなら私は嫌だと思う。
    それと、反対の性格のように思える、主人公の妹や友人の刑事。
    彼らを見ると、シンプルに健康的に生きる事が素晴らしいと思える。
    ただ、そういう人には、この小説は書けないだろうと思った。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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