血蝙蝠 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 135
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041092989

作品紹介・あらすじ

肝試しに荒れ果てた屋敷に向かった女性は、かつて人殺しがあった部屋で生乾きの血で描いた蝙蝠の絵を発見する。その後も女性の周囲に現れる蝙蝠のサイン――。名探偵・由利麟太郎が謎を追う、傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 横溝正史『血蝙蝠』角川文庫。

    4ヶ月連続復刊刊行の由利麟太郎シリーズ第3弾。名探偵・由利麟太郎と助手の三津木俊介の活躍を描いた2編の短編を含む9編を収録。横溝正史にしては斬れ味の悪い短編ばかりが収録されているように思うが、どうだろうか。

    『花火から出た話』。お伽噺のようなストーリーが展開する。横溝正史作品にはこうした風合いの短編も多い。由利麟太郎は登場しない。

    『物言わぬ鸚鵡の話』。舌がちぎれた物言わぬ鸚鵡を巡るブラックな掌編。横溝正史作品独特の斬れ味がある。由利麟太郎は登場しない。

    『マスコット綺譚』。縞瑪瑙のマスコットのご利益は……綺麗な意外な結末に胸を撫で下ろす。由利麟太郎は登場しない。

    『銀色の舞踏靴』。冒頭から三津木俊介登場し、ついに由利麟太郎が登場。奇怪な殺人事件が起きるが、由利麟太郎と三津木俊介が嫌に呆気なくあっていう間に解決。捻りも何も無い。

    『恋慕猿』。おかしな猿を巡る物語。由利麟太郎は登場しないが、殺人事件は起きる。今一つしっくり来ないストーリー。

    『血蝙蝠』。由利麟太郎が登場する表題作。かつて殺人事件が起きたという荒れ果てた屋敷で胆試しを行う若い男女。最初に屋敷に立ち入った女性が血で描かれた蝙蝠の絵を発見してから、女性の周囲で奇怪なことが起きる……こちらもあれよという間に事件解決。

    『X婦人の肖像』。こちらにも由利麟太郎は登場しない。

    『八百八十番目の護謨の木』。八百八十番目の護謨の木に隠された秘密とは……こちらにも由利麟太郎は登場しない。

    『二千六百万年後』。横溝正史唯一のSF短編小説。勿論、由利麟太郎は登場しない。横溝正史が見た未来の人間は……

    本体価格720円
    ★★★

  • 短編集。

    特に印象に残った一編。
    一番最後の「二千六百万年後」。
    まるで星新一の作品を読んでいるようで、今まで触れたことのある横溝作品とは全く毛色の違う作品でした。そして案外星新一の無感情な雰囲気の文章と似ていると感じました。
    ただ、やっぱり横溝作品は長編であってこそ、と個人的には思います。

  • 由利先生シリーズのドラマ化に合わせて再登場した
    関連本を購入、まず、この『血蝙蝠』から読み始め。
    1938~1941年に発表された短編9編。

    収録されているのは、
    日中戦争勃発によって江戸川乱歩らの探偵小説が検閲を受け、
    自由に執筆できなくなり、当局に睨まれないよう
    スパイものにシフトせざるを得なかった時期の作か。
    理由・動機はどうあれ
    日本人が同胞を殺すというストーリー展開が、けしからんと
    お咎めを受けたとか〔参照:論創社『守友恒探偵小説選』〕。
    とはいえ、ここでは殺人事件も起きているのだが、
    なるほど、さほど猟奇的な展開ではないのだった。

    以下、ネタバレなしで全編についてサラッと。
    ★には名探偵・由利麟太郎&新聞記者・三津木俊助が登場。

    ■花火から出た話
     昭和13年3月『週刊朝日特別号』掲載。
     船員・風間伍六が街に戻って巻き込まれた、
     猫目石の指環を巡る珍事、そして、可憐な令嬢との恋。

    ■物言わぬ鸚鵡の話
     昭和13年10月『新青年』掲載。
     マヤが交際相手から贈られたオウムは舌を切られていて、
     少しも口真似をしなかった。
     落胆する妹のため、兄が経緯を調べると……。

    ■マスコット綺譚
     昭和13年11月『オール読物』掲載。
     縞瑪瑙のペンダントをお守りにした途端、
     スターダムにのし上がった女優・青野早苗は、
     青年実業家から愛人になれと迫られたが……。

    ★銀色の舞踏靴
     昭和14年3月『日の出』掲載。
     銀色の靴を履いた美女を襲う犯人の正体を
     名探偵・由利麟太郎が暴く。

    ■恋慕猿
     昭和14年5月『現代』掲載。
     愛らしい猿を伴ってカフェを訪れる寂しげな男の過去。

    ★血蝙蝠
     昭和14年10月『現代』掲載。
     鎌倉に避暑に来ていた若者たちが肝試しを行って
     死体を発見し……。
     三津木俊助と由利麟太郎が真犯人を追い詰める。

    ■X夫人の肖像
     昭和15年1月『サンデー毎日特別号』掲載。
     展覧会に出品される『X夫人の肖像』が
     失踪した知人女性に似ていることに気づいた夫婦。
     その絵が公開早々、何者かに盗まれた――。

    ■八百八十番目の護謨の木
     昭和16年3月『キング』掲載。
     婚約者に掛けられた殺人容疑の謎を解いた女性は、
     彼が逃げたはずのインドネシアへ――。

    ■二千六百万年後
     昭和16年5月『新青年』掲載。
     作者・横溝の夢想が綴られたSFの一種だが、
     時世故か物騒な結びに。

  • 短編集
    由利先生シリーズとなっているが、由利先生や三津木か出てくる話もあり、出ない短編もあり、恋愛小説風からSFまで幅広い趣向にとんでいるが、どれも基本はミステリだ
    やはり、そこがいいところだと思う
    解説にあるように、時代が戦争へ向かっていく時勢を感じさせる作品かある

  • 短篇集。由利・三津木シリーズは二作のみ。
    大体血腥い事件ばかりだけど、とてもロマンチックで真の愛は勝つ、というすっきりとした読後感。
    花火から出た話と恋慕猿が好きです。
    表題作の血蝙蝠と銀色の舞踏靴は三津木くんの人柄の良さがよく伺える話でした。
    最後の二千六百万年後も面白かった。横溝先生のSF作品なんてとてもレアなのでは?
    どれも楽しく読めました。

  • 全9篇で、由利麟太郎が登場する作品は『銀色の舞踏靴』『血蝙蝠』の2作だけです。

    個人的には『X夫人の肖像』が好きでした。

    歴史の勉強になるのは、『八百八十番目の護謨の木』。日中戦争を「日華事変」と記したり、ボルネオがオランダ領だったり、この頃の日本人のインドネシアへのゴム栽培事業進出とかも興味深く読みました。

  • 2020/05/30読了

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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