事件持ち

  • KADOKAWA (2020年5月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784041093122

作品紹介・あらすじ

【ぶつかりあう報道と捜査の信念!元新聞記者の著者が描く傑作ミステリ!】

千葉県下で起きた連続猟奇殺人事件。
入社2年目の報日新聞の記者・永尾哲平は事件直後の聞き込みで、被害者2人を知る不審な男・魚住優に偶然接触する。
その後、魚住は失踪。県警一課の津崎庸介も重要参考人として、魚住の後を追う。
捜査情報をつかめずに苛立つ記者クラブは県警批判を開始する。犯人逮捕の手がかりを得られない県警は、ある取引を報日新聞に持ち掛けるが――。
永尾と津崎、2人は交錯する2つの使命に揺れ動く。

▼事件持ち
自分の持ち場で頻繁に大きな事件が発生する記者を表す単語。揶揄でもあり、大きなヤマを踏めるわずかばかりの羨望も混ざっている。


警察とマスコミの双方に存在理由を問う真摯な姿勢。唸るほどの終盤の畳みかける展開。一作ごとに実力をつけてきた著者の熱量の高い力作だ。
――三橋曉さん(書評家)

なんたる臨場感、凄い!フェイクニュースはびこる今だからこそ、この作品が必要!
――内田剛さん(フリーランス書店員)

感想・レビュー・書評

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  • あらすじ
     事件持ちとは、大きな事件によく出遭う記者のこと。訪日新聞、地方局二年目の永尾は警察廻り担当。殺人事件が立て続けに二件起こる。二人は中学校の同級生だった。たまたま周辺住人を取材すると、同じ中学校の同級生がいたが、彼は姿を消す。永尾は社内の人間関係や、新聞記者とは何かについて考えながら取材する。
     県警一課津崎は父親が優秀な刑事だった。本人は熱血・正義感とは違ったタイプ。しかし、娘のために犯罪のない世の中にしたいと思っている。

     初めて読んだ作者。面白かったー。うすーい層を重ねて行くように、ちょっとずつちょっとずつ取材を重ねる記者。関係者のところも丁寧に何度でも訪ねていく。作者は元新聞記者のようで、新聞ができあがるまでの時間や、警察との関係についても詳しく書かれている。
     事件のストーリーに加えて、仕事小説としても面白かった。新聞の魅力って減っている。新聞を購読している人も減っている。若者で記者になりたい人も少なくなっているんじゃないかと思っていた。作品では合間合間に、数ページにわたって新聞の存在意義とか、記者とはどうあるものかっていう文章もあって興味深かった。

  • 続編があるといい

  • それぞれの視点で事件に迫っていく。
    社会人になって、仕事は何のために?ということを節々で感じさせられました。
    人として成長する姿を間近で感じました。
    今後、シリーズ化望みます。

  • 連続殺人事件を、刑事と新聞記者それぞれの視点で真相を追う。刑事として記者として、葛藤しながらも己の職業に対する矜持と誇り、意義を見出していく真摯さが描かれていました。事件の真相も核となる部分はぼんやりと想像つきますが、伏線の張り方がとても丁寧で面白かった。

  • 面白く、気持ちよく読めました。
    人として踏み外してはいけないラインや人間としての理想が、押し付けなく自然に若い主人から溢れていたのが読んでいて気持ちよかった。

  • 48これまでの冷たく暗い感じの人物表現とは違って、静かでも熱い気持ちが感じられる成長の物語でした。続編読みたいなあ。

  • 新聞の書評を見て面白そうだと思ったもの。初めて読む作家さんなので、最初は読みにくい感じがしたけど、どんどん引き込まれていった。報道とは、警察とは。新聞記者2年目の永尾も捜査一課の津崎も自分の仕事に迷いながらも進んでいく。そして、それぞれいい上司に恵まれている。そして、田淵と山浦というすごく嫌な人間も出てくるのが、またリアル。永尾が被害者遺族の中田のお母さんと話せたところは涙が出た。被害者遺族のルポを思い出す。誰からも明るくいい人と評される、相澤と中田が恨みを買う、というのもいまいち腑に落ちなかったけど、最後の真相が分かるとそこもすっきりして良かった。ミスリードにはまんまと引っかかったけど。書評にもあったけど、報道小説だし、警察小説だし、ミステリーだし、とても読み応えのある本だった。やっぱ書下ろし長編を一気に読むのはいいね。それにしてはレビューが少ないわ。もっとみんなに読まれていい本だと思う。

  • 本作は、私の土地勘が深い場所が舞台となっている作品だけに場所がすぐに頭に浮かんできて親近感のわく作品でした。
    内容はミステリーで、刑事と新聞記者の攻防が主体となり、刑事、記者それぞれの本質は何かと自分に問いながらも、それぞれの使命感をもとに、難事件を解決するという展開で、なかなか面白かったです!

  • 報日新聞の2年生記者・永尾と千葉県警捜査一課の刑事・津崎がある事件をきっかけに、報道と警察の存在意義に悩み、それぞれの正義を求め、成長していく物語。
    連続殺人事件を解決していくミステリというよりも、仕事への矜持を描いた作品として面白く読んだ。

    永尾と津崎それぞれに真面目で、事件に取り組む過程で、社会を良くしたいという自らの理想を確固たるものとしていくところがいい。青臭いとか綺麗事と言えばそれまでだけど、こんな理想を追い求めて働く記者や刑事がいてほしいと思いながら読んだ。

    事件そのものがちょっと物足りなかったのと、2人の真面目キャラが被っていて、途中であの場面はどっちだったけ〜と混乱するところが惜しいけど、最後に距離が縮まった2人のその後をまた見たいから、続編があるといいな。
    伊兼さん初読みですが、好感が持てるので他にも読んでみたい。

  • 2020/12/29 087

  • 最初、誰が何をどう言っているのかよく分からなかってた。

  • 警察と報道、それぞれの立ち位置から「事件持ち」の者が自らの歩む道についてその意義を問いかけながら進む。自らのするべきことに真摯に向き合うからこそ立ちはだかる壁に出会い、自分の手で自分の中に軸を打ち立てて行く物語。潔さを得る

  • 2020.10.8

  • 伊兼作品の真骨頂。元新聞記者の著者だからこそ描けた心揺さぶられる熱い傑作。新聞記者・事件報道記者の存在意義と矜持とは。公権力たる警察官だからこそ常に襟を正し、困難だが犯罪の起きない世の中をいつも標榜しなければならないのでは。主人公の新聞記者2年生と元警察幹部を父に持つサラブレッド刑事の事件との対峙から成長を描く。何箇所も胸を打たれるシーンがあり、特に最終盤の犯人を自供に追い込む刑事の言葉ひとつひとつは心に残るものだった。本当に上梓される毎に円熟味が益し、特に登場人物の背景や描き方に磨きがかかっている印象。もっともっと売れていい作家さんだと思う。今すぐにでも直木賞を取らせてあげたい。

  •  肝心の事件の印象が薄い。

  • 一つの事件に 新聞記者と警察官の二つの視点で立ち向かうストーリー
    読み進めるうちに 立場の違う二人が ライバルにも バディにも思えてくる

    それぞれが この事件を通じて 自分の職業に対する 理想が明確となり 覚悟が固まっていく

    ミステリーとしても 人間ドラマとしても 楽しめる作品だと思う

    文章のクセなのか エピソードが唐突で「あら この話って どこで出てきたっけ?」「あ 初出しなのね」と戸惑う箇所がチラホラ
    そこさえクリアすれば読みやすく 引き込まれるお話

    他の作品も読んでみたくなる作者さん
    読んで良かった

  • 殺人事件の犯人は大体予想通りだったけど、それよりもこの小説の主題は、メディアとしての報導・新聞の在り方、警察の存在意義などを、それぞれ記者と刑事という二人の若者の葛藤を通じて考えるという点にこそあったのだろう。

  • 8月-11。3.5点。
    警察回りの2年目記者と、父親も警察官だった若手刑事。
    ある連続殺人を巡ってミスしたり、成長したり。

    犯人推理だけでなく、マスコミと警察の駆け引き、被害者家族との触れあい方など、盛りだくさん。
    なかなか上手くまとめたと思う。
    成長過程がちょっと暑苦しかったかな(笑)。

  • いやもう現代の松本清張かと。

    最初はミステリーとして読み始めたので、刑事と記者の二人の主人公の心境の記述がいちいち面倒くさいし、派手な事件も起きないし、真犯人の目星はわりと早めについちゃうし、「こりゃ失敗だったかな」と思ったんだけど、読み進めていくうちに、けっこう社会派なところもあり、主人公たちの「熱さ」にぐっときたり、犯人との最後の心理的な駆け引きとか、ぐんぐん引き込まれてしまいました。

    新聞と警察の内部もリアルに描かれているように思います。たぶんこれなら、FB友達の元記者さんたちも合格点つけてくれそう。

    映画化を切に希望。

    あ、もしかするとだけど、作者は、吉信ちゃん事件の記録とか参考にしたのかも?

    以下、気になった点。

    ①ハンマーの柄のほうで殴ったというけど、いくらスチールハンマーとはいえ、人を昏倒させるほどの衝撃を与えられるとは思えない。

    ②いくら警察に予断があったとはいえ、さやの睡眠薬の入手経路ぐらいは調べるんじゃないのかな?
    それに強姦されたのなら証拠が残るはず。検視も司法解剖もされなかったのかね。

  • 報道と警察の両面から一つの事件を追ったミステリー小説(事件持ちとは、自分の担当で大きな事件が発生する記者のこと)。入社2年目の新人新聞記者・永尾と、県警一課の津崎庸介が、千葉で発生した連続猟奇殺人事件の犯人を追う。新聞記者と警察官という水と油の関係上、両者は最初は対立するのだが、しだいに認め合っていく様が描かれる。人の成長もテーマだが、スマートフォン1台あればだれでもSNSで記者になれる時代、新聞記者の存在意義は何なのかを問いかける作品でもある。

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著者プロフィール

1978年東京都生まれ。上智大学法学部卒業。新聞社勤務などを経て、2013年に『見えざる網』で第33回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。2015年に『事故調』、2021年に「警視庁監察ファイル」シリーズの『密告はうたう』がドラマ化され話題に。本作は地方検察庁を舞台としたミステリ『地検のS』『地検のS Sが泣いた日』と続く「地検のS」シリーズの最終巻にあたる。他の著作に、『巨悪』『金庫番の娘』『事件持ち』『ぼくらはアン』『祈りも涙も忘れていた』などがある。

「2022年 『地検のS Sの幕引き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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