来世の記憶

  • KADOKAWA (2020年7月10日発売)
3.17
  • (5)
  • (16)
  • (20)
  • (7)
  • (5)
本棚登録 : 297
感想 : 26
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784041094136

作品紹介・あらすじ

「あたしの前世は、はっきり言って最悪だった。あたしは、おっさんだった」地球爆発後の近未来。おっさんだったという記憶を持つ「あたし」の親友は、私が前世で殴り殺した妻だった。前世の記憶があるのは私だけ。自分の容姿も、自分が生きてきて得たものすべてが気に入らなかった私は、親友が前世の記憶を思い出すことを恐れている。(「前世の記憶」)「ああもうだめ」私は笑って首を振っている。「うそ、もっとがんばれるでしょ?」「だめ、限界、眠くて」寝ている間に終わった戦争。愛も命も希望も努力も、眠っている間に何もかもが終わっていた。(「眠りの館」)ほか、本書のための書き下ろしを加えた全20篇。その只事でない世界観、圧倒的な美しい文章と表現力により読者を異界へいざない、現実の恐怖へ突き落とす。これぞ世界文学レベルの日本文学。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

多様なテーマを持つ短編集は、前世の記憶や女性の苦悩を描き出し、読者に深い感動を与えます。特に、女性として生きることの重圧や、過去の痛みを乗り越える姿が印象的で、心強いメッセージを届けています。一方で、...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小説×クラシックで紡ぐ、2021年の新しい寓話 - ウレぴあ総研
    https://ure.pia.co.jp/articles/-/1046915

    『来世の記憶』著者、藤野可織さんインタビュー。「小説には小説の快楽があってほしい」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
    https://croissant-online.jp/life/133170/

    GINZA編集部が32冊の現代日本文学をレコメンド vol.8|藤野可織『来世の記憶』etc. | 【GINZA】東京発信の最新ファッション&カルチャー情報 | CULTURE
    https://ginzamag.com/culture/ginzalibrary08/

    藤野可織さんが読んできた本たち 作家の読書道:第218回|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13512793

    来世の記憶 藤野 可織:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322001000198/

  • 短編集。トランスフォームものが多かったような印象。タイトルずばりの「ピアノ・トランスフォーマー」ではピアノが勝手に演奏を始め、人間がピアノ化しちゃうし、「ニュー・クリノリン・ジェネレーション」では、人体に生まれつきクリノリン(※ヴィクトリア朝時代のドレスのスカートを膨らますためのお椀型の骨組みみたいなの)が備わった赤ん坊が生まれたり(ジェンダー問題も含んでる)、「スパゲティ禍」では、なんと突然スパゲティ化して人が死ぬようになったディストピアの行く末が描かれる。スパゲティ禍が面白かった。たぶん私、それでもスパゲティ食べられるタイプの人間だと思う…。

    その他、好きだったのは「切手占い殺人事件」「れいぞうこ」「キャラ」「いつかたったひとつの最高のかばんで」など。「れいぞうこ」は、腐らないために冷蔵庫で眠りたがる女の子のお話。「キャラ」は4頁くらいしかないけど、キャラと呼ばれる卵型のカプセルを人間が被るようになり、性別や年齢が意味をなくした近未来の話で、ディストピアだけどこういうのちょっといいなと思ってしまう。個性は失われるが、少なくとも外見で差別されることはない。

    「切手占い殺人事件」は、女の子たちがなぜか切手に夢中になり男子は眼中に入れてもらえず、やはり女の子たちは無個性化して男子からは見分けがつかなくなっていくが、その理由が男子を意識しなくなったせいというのが面白い。男性側からの女性に対しての個別認識というのは結局そういうことなんだなと。もちろんすべての男性にとってではないだろうけど。

    「いつかたったひとつの最高のかばんで」では、ある日突然、非正規社員の長沼さんという女性が失踪し、大量のカバンが残されていたことから物語が始まる。たったひとつの最高のかばんをようやく見つけて、旅に出てしまった長沼さん。女性ばかりが非正規社員の現代社会を皮肉っている部分もあるけれど、単純に長沼さんのように旅に出てしまいたいという誘惑に駆られる。終盤はまるでハーメルンの笛吹きのようだった。

    ※収録
    前世の記憶/眠りの館/れいぞうこ/ピアノ・トランスフォーマー/フラン/切手占い殺人事件/キャラ/時間ある?/スパゲティ禍/世界/ニュー・クリノリン・ジェネレーション/鈴木さんの映画/眠るまで/ネグリジェと世界美術大全集/スマートフォンたちはまだ/怪獣を虐待する/植物装/鍵/誕生/いつかたったひとつの最高のかばんで

  • 私の好みとは違った。

    自分の感性と噛み合わず気味悪さと異質な感じが際立ってしまい、途中で読むのを止めようかと思った。

  • 良い本を読みました…藤野さん、ありがとう…。
    女であることが理由で打ちのめされることは、いっぱいある。
    そんな中で、ただ女であるだけで負わされる恥ずかしさや恐ろしさや悔しさを、最高の物語たちにしてくれているこの短編集の心強さ。
    大好き。
    どれもとても好きだけど、「鍵」がほんとにほんとにほんとに最高。
    二人と並んで練習する私と、無数の女たちの姿が見えた。

  • 安定の藤野可織さんワールド。短編集ですが、一発目から眩暈がするような不気味さと衝撃、それがページを捲り終わるまで続くのでした。
    この本の読了後に村田沙耶香さんの「地球星人」を読み、さらに頭が破壊されそうに。一冊他の本を噛んでおいてよかった・・・。

  • 良作ぞろいの短編集。少女の残酷さと若さへの追憶、執着が、程よい怖さとエンタメの素になっている。「フラン」、「切手占い殺人事件」、「時間ある?」(一番ゾッとした)が印象的。ベストSF2021に収録された「いつかたったひとつの最高のかばんで」も収録されている。

  • 藤野さんらしいどこか不穏さを感じさせる短編集。「スパゲッティ禍」が好きだった。

  • タイトルに惹かれて借りた初読みの作家さん。長短20編が収録されているが、意外なことに同じタイトルの作品はなかった(「前世の記憶」というタイトルの作品はあった)。うーん、なんというか……。純文学系の作家が書いたSF的な作品が多い印象だった。異常が当たり前の日常に焦点を当てて展開するが、どこにも行き着かない。好き嫌いが別れると思うが、どちらかというとぼくは苦手なタイプだった。

  • ほとんどのお話が不穏な余韻を残していく、仄暗い世界観を纏った短編でかなり好み。

    「眠りの館」
    眠って眠って放棄して何もかも終わった世界、でも本当に?

    「れいぞうこ」
    腐ることを恐れて冷蔵庫で眠り、でも穏やかに腐りゆく未来を覚悟している少女

    「スパゲティ禍」
    死のかたちがあまりにもシュールすぎるディストピア

    「スマートフォンたちはまだ」
    なぜかはうまく言えないけどこのお話が一番好き。
    自分自身に対してなんだか切実で祈りみたいなものを感じて。

    「怪獣を虐待する」
    怪獣の存在も、怪獣を虐待するという行為も、すべてが何か別の意味を持っている気がして。怪獣を虐待した夜に見る夢も不穏で、この世界が気になる。

    「誕生」
    昨日までの世界が、外では確実に壊れている気配がずっとあるのに全体像が明かされず、余韻が怖すぎる。

  • 変な世界、最初は表現についていけなかったが、読み込んでいくうちにハマりました。
    ちょっと考えながら読むので、気持ちに余裕がある時に読んでください。

  • 余韻の残る読後感。
    特に好きだったのは、
    『時間ある?』はラストにゾッとしたし、
    『スパゲティ禍』の茹で上がりのホカホカ感とすぐ冷めて「もうこれ以上冷たくなることはないと思っても、まだまだ冷たくな」るのが、スパゲティあるあるだなと思ったけど、それが元〇〇だった物だと思うとえも言われぬ気持ち悪さを感じたし、
    『鈴木さんの映画』はわたしもニコラス・ケイジのホログラムがほしかったし、
    『鍵』のシスターフッドにアツくなったし、
    『いつかたったひとつの最高のかばんで』は、彼女たちがうらやましかった。

  • ニコラス・ケイジ登場です

  • 20の短編。

    ・前世はおっさんだったあたし。
    ・友達と部屋で遊んだまま眠りこけて世界が戦争になったと・しても眠り続ける私。
    ・自分自身を腐らせないために、毎晩冷蔵庫に入って眠る私。
    ・ピアノがいつの間にか凶暴化し、ピアノが上手だった子がいつしかピアノ化していくまで。

    ・私が19歳だった頃、大阪に当時の彼氏と行った思い出。
    ・切手に取り憑かれたクラスの女子たちの狂気。
    ・大好きで軽蔑す友人と電話のやりとりと彼女に贈ったサンスベリア。
    ・人々がスパゲッティを嫌い、人自身もスパゲッティになっていく中、毎日それを食べて生き続けるぼく。

    ・美術館に入ったまま戻ってこない彼女と彼女が探し求めていた喉仏を持つ彼。
    ・ニコラス・ケイジ風の医療用AIに話しかける事務員。
    ・ネグリジェで外出するおばあちゃんの若い頃の記憶。
    ・怪獣を虐待する住民たちが見る夢。

    ・花柄の服を嫌う少女と合唱の発表会。
    ・夜に出歩く赤い服のおばあちゃんを怖がる夫と私。
    ・出産した後の病院の外で起きていることを確かめるまで。

    全部じゃないけど。独特の、藤野香織さんらしい世界。

    夜に外を歩いているおばあちゃんの見方をする私、鍵、が印象的で面白い。

  • [p. 111 以降]

     とても面白かった。後半の印象深かった作品を挙げてみる。「スパゲティ禍」「ニュー・クリノリン・ジェネレーション」「眠るまで」「ネグリジェと世界美術大全集」「怪獣を虐待する」「植物装」「鍵」「誕生」「いつかたったひとつの最高のかばんで」。やばい。厳選するつもりだったんだけど、無理やり何作か入れなかっただけで、ほぼ全部だ、これだと。
     大体において、登場人物たちは普通に生活を送っているはずなのだけれども、内部に残虐性を抱えている。それはその普通のはずの生活のなかでほんのちょっと見え隠れしていて、読んでいるとちくちくっと胸に刺さるものがある。けれども、その残虐性は確かに自分にも存在していて、普段はそれを普通のはずの生活のなかで隠して生きているのだという気にさせられる。そして、笑って周囲の人と話しをしたりして。けれども、その残虐性が不意に出てきてしまったとき、それは確かにみんなが持っているものなので、世界は不穏で満ちる。
     わかりあえる/わかりあえない、が、そこここで存在している。けれども、わたしたちはその不穏な世界のなかで、やはり生き続けているのだ。

    --

    [pp. 55-110]

    「フラン」。読んでいるときの層の重なりが、個人的にすごかった。物語のなかには、46 歳の主人公と、19 歳の娘と、19 歳の主人公とが、時間軸を交わらせながら、同等に存在している。ページのこちら側では、主人公寄りの年齢の現在のわたしが、物語のなかの複数の時間軸を追いながら、2011 年ぐらいの過去へ飛び、けれどもそこにいるのは 19 歳の自分であるという、奇妙な読書時間のなかにいる。京都や大阪といった都会へやって来た年若い自分が、幼いつきあいのなかで当時の、いや、2011 年ぐらいの? 街を、不器用に動いている。さて、これを読んでいる今の自分は、一体何歳のつもりでいるのだろう。自分の年齢はわかる。けれども、主観的な自分は、一体何歳ぐらいで、何年ぐらいに生きているのだろう。とても不思議。

    「キャラ」。周囲と同等の自分であることの安心は、自分にもわかる。作りものであることの安心も、自分にはわかる。例えばこちらやあちらに文字で書き殴っている自分は、それがいかに自分の本心であろうとも、どうしてもやはり、見る人のことを考えた、作りものの自分なのだ。そういう自分を壊すことの怖さというのは、確かに自分にもある。プロフィールを確認して近づいてきたほしいという、カーテンのようなもの。それを壊したい? そう問われると、おそらく答えはノーなのだ。けれども、歪な自分を歪なものとして愛でたいという気持ちもやはりあって。けれども、その歪な自分を誰かに見せようと考えた時点で、それは作りものになる。わたしが大事にしている自分というのは、果たして何もの?

    「時間ある?」。「親友」という言葉の意味を考える。まるで理想のような存在でありながら、けれども、枠を踏み越えてくるそれは、恐怖の対象でもある。女友だちとのあいだの距離は、自分にはとても厄介だ。そこに彼女のパートナーが絡んでくると、そこに家族が絡んでくると、さらに。ものすごくあやふやな気持ちが、すべて「親友」という言葉のなかに押し込められる。謎解きのないあやふやさが、「親友」という言葉ですべて覆い隠され、納得してしまう。

    --

    [p. 54 まで]

    「れいぞうこ」。この話にはいろいろなものが詰まっている。子どもの頃の、大人になりたくなかった自分。小さな教室に押し込まれて、そこからはみ出たくなかった自分。友だちと同じように、けれども、友だちとは違うようでありたかった自分。知っている世界は狭い頭のなかで出来あがった作りもので、そのなかで自分の想像できる範囲の未来へ進むのだろうとぼんやり考えていた自分。そういうものがごちゃまぜに全部つっこまれていて、読んでいてなんだか懐かしく、哀しくなる。母親がまるで娘の言うことをわかったような気になっているのも、母親らしさを発揮して娘の身体を気づかったりしているのも、過去の自分の母親像になったり、今の自分の、子どもの頃の記憶を断片的にもったまま、まったくできそこないの大人になった様が重なったりして、本当に、いろいろなものがごちゃまぜに全部詰まっていて、読んでいてうんざりもしたり、楽しくもなったりする。でも、腐敗したくない気持ちはわかる。今の自分にもとてもよくわかる。

  •  20編のザワザワした余韻を残す短編が収められている。
     どの作品も、サイコでグロテスクでシュールな世界を描いているが、同時に現代に生きる我々の内面もさりげなく的確にえぐり取っており、不思議なフィクションだと思って読んでいるとドキリとする瞬間があった。

    ”あたしの前世は、はっきり言って最悪だった。
     あたしは、おっさんだった。”(p.7『前世の記憶』)

    ”クラスの女子のなかで、さきちゃん一人が順調に腐敗していくようである。それがうつっては困るから、女子はみんな、さきちゃんにあまり近づかないようにしている。”(P.31『れいぞうこ』)

    ”ピアノが、噛み付くようになった。ピアノたちはついに我々人類に戦いを挑むことにしたのだ。”(P.35『ピアノ・トランスフォーマー』)

    ”その日、人類のおよそ十八%がいきなり茹で上がったスパゲティの束となって崩れ落ちた。”(P.116『スパゲティ禍』)

    ”母たちだって怪獣を虐待したくないわけではないのだ。むしろ、機会さえあればいつでも虐待したいと思っている。”(P.199『怪獣を虐待する』)”

    ”これは女の子らしくてかわいいから着てるんじゃないの。植物は、ひとつの体に男と女の両方を持ってる。私もそう。私は女だけど、それだけじゃない。私は、私の中にいる少年や若い男や中年男や老人を祝福してこれを着てる。だからあなたも着ればいい。あなたの中の少女や若い女や中年の女や老女を祝福するために。”(P.222『植物柄』)

  • 初めて読む作家さん。たくさんの物語が入った短編集。さくさくとは読み進めず。
    不思議で、胸がモヤっとするような独特な世界観。
    好きな人は好きだと思うし、自分も何かが少し違ったらハマるような気もするけれど合わなかった。
     なのにクスリと笑えるようなもの、風刺的で胸にくるものがあったりもした。
    キャラ、スパゲティ、ニコラスケイジ、怪獣の虐待、最高のかばん、鍵・・(タイトル端折ってる)あれっ、胸にひっかかってるのが次から次へと出てくる。笑

  • とてもいい。突飛なことが起きても恬然としてる物語世界の人が、強くていい。

  • 「前世の記憶」★★★
    「眠りの館」★★★
    「れいぞうこ」★★★
    「ピアノ・トランスフォーマー」★★★
    「フラン」★★★
    「切手占い殺人事件」★★★★
    「キャラ」★★★
    「時間ある?」★★★
    「スパゲティ禍」★★★
    「世界」★★
    「ニュー・クリノリン・ジェネレーション」★★★
    「鈴木さんの映画」★★★
    「眠るまで」★★★
    「ネグリジェと世界美術大全集」★★★
    「スマートフォンたちはまだ」★★
    「怪獣を虐待する」★★★
    「植物装」★★★
    「鍵」★★★
    「誕生」★★★★
    「いつかたったひとつの最高のかばんで」★★★★

  • 20201101

  • 中身は、ある意味SFのショート。常識を逸脱した社会を仮定して、そこに生きる非常識を楽しんでいる。

全24件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

藤野可織(ふじの・かおり)
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』でフラウ文芸大賞を受賞。著書に『ファイナルガール』『ドレス』『ピエタとトランジ』『私は幽霊を見ない』など。

「2022年 『青木きららのちょっとした冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤野可織の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×