無貌の神 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041094242

作品紹介・あらすじ

万物を癒す神にまつわる表題作ほか、流罪人に青天狗の仮面を届けた男が耳にした後日談、死神に魅入られた少女による七十七人殺しの顛末など。デビュー作『夜市』を彷彿とさせる傑作ブラックファンタジー!

感想・レビュー・書評

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  • 下記6篇からなる短編集。

    「無貌の神」
    「青天狗の乱」
    「死神と旅する女」
    「十二月の悪魔」
    「廃墟団地の風人」
    「カイムルとラートリー」

    どれも雰囲気や場面が異なる短編であるが、恒川光太郎節ともいうべき珠玉のダークファンタジーがつづられている。
    全て良作であると思うが、特に気に入ったのが「死神と旅する女」、「カイムルとラートリー」である。
    短いながら、良質なファンタジー映画を観終えたいうような心地よい読後感が得られた。

    『夜市』が非常に気に入り、その後ずっと文庫で追いかけているが、これまで手に取った作品すべてが面白く、はずれなしの作家である。
    多彩な作風を持つ作家でありながら、どこか通底する郷愁のような寂し気で、かつ温かみのある物語づくりは本作も健在。
    また今作を読み通して、「夜市」、「風の古道」など初期作品に近い空気を感じた。
    原点回帰というわけではないのだろうが、その作品の空気を懐かしいように感じながら、読み終えた。

    • 地球っこさん
      ぴよこさん、おはようございます。

      「夜市」「風の古道」などの初期作品に近いとのこと。
      これは気になります!

      恒川さんの作品は、...
      ぴよこさん、おはようございます。

      「夜市」「風の古道」などの初期作品に近いとのこと。
      これは気になります!

      恒川さんの作品は、今はまだ数冊しか読めてませんが、わたしも追いかけたい作家さんです!(あ、ぴよこさんの「夜市」のコミカライズにも同じようなこと書いてました……ぼちぼち、ゆっくり追いかけます 笑)

      2020/09/16
    • ぴよこさん
      地球っこさん、こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      「夜市」「風の古道」が好きなら、おそろく本作も気に入ってもらえるのではと...
      地球っこさん、こんばんは。

      コメントありがとうございます。
      「夜市」「風の古道」が好きなら、おそろく本作も気に入ってもらえるのではと思います。
      うまく言えないのですが、どこか湿り気のある、残酷なようで優しい、不思議な世界感ながら懐かしさを感じる、そんな空気が本作でも感じられるかと。
      どの作品も、とてもよいですし、もちろん本作も面白いので、よければゆっくり追いかけてみてくださいです(´・ω・`)b
      2020/09/16
    • 地球っこさん
      ぴよこさん、ありがとうございます!

      本は逃げませんものね。
      「追いかけたい」が強くなりすぎて、急いで読んでも勿体ないですよね。

      ...
      ぴよこさん、ありがとうございます!

      本は逃げませんものね。
      「追いかけたい」が強くなりすぎて、急いで読んでも勿体ないですよね。

      ゆっくり作品の世界観を楽しみながら追いかけます(*^^*)
      2020/09/16
  • 赤い橋の向こう、世界から見捨てられたような場所に私は迷い込んだ。そこには人を癒し、時に人を喰う顔のない神がいた。(表題作)

    童話やファンタジーのような、ホラーやSFのような不思議で残酷で美しい話が6話収められた短編集。
    どの話も寂しく静かでとても素敵なのですが、表題作の『無貌の神』が一番好きでした。世界から見捨てられたような場所。神の屍を食らったものは、もう元の世界に帰れない。ヨモツヘグイ的な、共食信仰(=同じ釜の飯を食う事は、同じ仲間となったという事)の考え方が織り込まれた寂しい集落の雰囲気がとても良かったです。宗教的共食の雰囲気や考え方には何だか惹かれるものがある。

    『死神と旅する女』は、この本の中では少し異色で、静かでしっとりした話の多い中では比較的活劇的……というか、さっぱりしていて爽快。時代劇のようなのにSF的でもあって面白いです。

    他には、この本の最期に収められている『カイムルとラートリー』。話すことができる獣とお姫様の、異国の童話のようなお話。
    本当に、どこかの国で語り継がれていても不思議ではない雰囲気があり、自由と友情を感じる優しい話です。ラストシーンも美しくて好き。

    どの話も、読後に少しの寂しさを残しながらもさらりとしていて、ほんのりと優しさや希望が胸に残ります。

  • 現実と幻想の境界の狭間を漂うような、異界や時空間を越える物語から、SFチックなもの、そしてどこかの国の民話で伝えられていそうな獣の物語まで全6編。
    『スタープレーヤー』のような、がっつり異世界と冒険のファンタジー路線も好きですが、異界であったり、どこかにあり得そうな冷ややかで残酷な不思議であったり、そうした恒川光太郎さんの路線も好きだなあ、と改めて思いました。

    恒川さんの作品は、どこか寓話的なものが多いように思います。表題作の「無貌の神」は現実世界と異界を繋ぐ橋があります。しかし、それは異界の神の肉を食べ不死になると、目に見えなくなってしまいます。異界は敵もなく、食べ物の心配もなく安全な場所。しかし大切な出会いも、不死になり現実に帰れなくなった主人公は、活かすことはできません。そして主人公が取った行動は……

    「死神と旅する女」の雰囲気も良かったなあ。
    突然見知らぬ若者に斬りかかられた少女のフジ。そんなフジに対し若者と一緒にいた男は、逆に若者を斬り返せば、命は助かると言い……
    奇妙な夢の中を彷徨っているような、非現実な感覚も好きですが、物語の意味が明らかになってくるとともに、死や罪が世界の中に目に見えないほどに渦巻き、そして自分たちの預かり知らない幸せを左右している、そんなことを考えさせられました。

    「廃墟団地の風人」は突然空から落ちてきた“風人”と、その風人を唯一見ることの出来る少年の物語。童話のような設定から、悪としか呼びようのない存在が二人を脅かし、そして現実は変わらないのに、どこか新しい世界に降り立ったような気持ちになる短編。

    最終話に収録されている「カイムルとラートリー」も童話のような、それもどこか外国で昔から伝えられていそうな、異国情緒もある短編。人の言葉を話す獣と、どこかの国の皇女の自由をめぐる物語。ラストシーンの光景がただただ好きです。

    多種多様な物語たちですが、恒川さんの著述は常に変わらないような気がします。どんなに奇抜な物語に対しても、文体は飾りすぎず、どこか一定の距離を置いているよう。前に寓話的と書いていますが、物語の中でその世界やストーリーの解釈的なものは、決して語られることは無いように思います。

    様々な物語たちが自分の心の中にスッと立ち現れては、余韻だけを残して消えてゆく。その余韻をどう解釈するかは読者次第で、あくまで恒川さんは自らの奇想やアイディアに対し余計な味付けは排して、読者に提供しているように思います。

    一応自分の中では、それぞれの短編に共通するテーマはあったように思うのですが、それをここで得意げに書くのも野暮に思えてきました。様々な物語が立ち替わり入れ替わりやってきて、それをつかもうとしても追いつけなくて、自分はただその物語の残り香を感じ、当てもないことを思うだけ……

    やっぱりこの読後感は、恒川さんにしか書き得ないなあ。

  • ダーク感の強い短編集。表題作の「無貌の神」は、顔の無い神が祀られているとある村。神は、癒しの存在であるが、人間を食べる存在でもある。その神を殺し、人々はその肉を食べ、神を殺した者が、また新しい顔の無い神になる。その繰り返しの世界。恐ろしい世界だが、「神は人間の一部であり、人間もまた、神の一部である」という一節を思い出しました。確か、「神様の御用人」という本だったと思います。

    「死神と旅する女」は、人間がたくさん殺されるので、殺伐とした話と思いきや、死神の絵筆(刀)で描かれる世界(歴史)の不思議さに引き込まれ、読み終わった後も、その余韻にしばらく浸れる作品でした。

    一番のお気に入りは、最後の「カイムルとラートリー」。カイムルという、人間の言葉を話す崑崙虎と、ラートリーという、古代インドを思わせる王国のお姫様との、種族を超えた深い絆の物語。読み終わった後、私の胸に心地よい風が吹き抜けました。おすすめです。

  • 文通仲間との、文通読書会の今回の課題図書。
    短編集で、どれも異界のものがしっかりとした存在としてこの世に存在する。
    顔のない神様は人を食べ、その神様を倒したときは神様を食べる人たち。彼らは神様とひとつになることを麻薬のような救いに感じている。
    無罪の罪で島流しにあった男は、差し入れられた青天狗の面をつけ、虐げた武家の人間を人外のものに憑かれたように襲っていく。
    女の子が出会った男は、世界の流れを変えることで絵を描く。彼女に小刀を渡し、77人を切れば家に返すと、約束した。彼女はたくさんのさまざまな人間を斬り、そして彼女は未来、戦争で焼かれなかった東京の土を踏む。
    廃墟と化したマンションに落ちてきた風は、ひとりの少年と交流をしていくうちに、空へと帰る術を失う。そして自身の消滅を感じながらひとつの時間足を踏み入れていく。
    一匹の崑崙虎の子供が、身を守るために身につけた『言葉』とともにさまざまな人の手に渡り、そしてたったひとりの王女様と檻を出ていく物語。
    それぞれが独立している短編。そのどれもが世界が確立され、その中へと強く手を引かれて入り込んでしまう。物悲しさや、怖さとともに、あたたかさが内側にシミを作る。淡々とした文章と、ドラマチックな内容。あっという間に終わってしまう長さが口惜しいくらいだった。そしてどれもが美しい。結晶を作り出す作家さんだとおもった。

  • ものすごく好きな世界観ですね。
    ホラーなのでしょうが、美しい。
    何度でも読み返したい作品です。

  • どの話もさすが恒川さんといった感じ。
    私が1番印象に残った話は青天狗の乱。恒川作品の中で初めて時代小説を読んだ。見届物を届ける仕事、島流しにあった人の末路、江戸から明治への開花など時代小説として楽しめるだけでなく、不思議な面をめぐるある男の話の、結末がはっきりとわからないからこそ色々と想像を巡らせる楽しみがあった。私の推測は青天狗は島の住民の誰かで、とみせの放火もロショウが青天狗役の住民に託したんじゃないかと思った。根拠としては街中で遭遇したそっくりさんの反応が本当に人違いな感じな印象を受けたのと、青天狗の殺陣シーンがあまりにもプロだったこと、語り手にもとみせの女将の殺人を依頼するくらいだから色んな人に頼んでいそう、っていう薄い根拠ですが。
    死神と旅する女も「時影様と時をかける少女」ってタイトルが浮かんだ。解説を読んでサムトの婆様に近い描写があること知ってさすが、と思いました。
    解説を読んでわかる設定が多くあってそこもまたいい。夜市の風の古道が私は好きだけど、今回風を感じる作品が多くあって好みに近い小説だった。

  • 「神」と「風」をテーマとした作品集。筆者はハッピーともバッドとも、何とも言えないような結末を迎える作品が多い中、「死神と旅する女」はこれ以上ない結末であり、爽快であった。しかし、筆者の文章が持つ独特の余韻は失われることはなかった。そして最後の短編「カイムルとラートリー」は筆者屈指の名作である。「竜が最後に帰る場所」でゴロンドという未知の生物がいたように、今作では言葉を話す虎の生涯が描かれる。短編ではあるが、どんな大作にも負けない大叙事詩であると言っても過言ではない。誰が読んでも面白い小説であると断言できる。

  • 世界から見捨てられたような場所だった。

    1行目を読んだ瞬間、恒川光太郎ワールドが始まるぅぅと嬉しくなった。
    しばらく恒川さんの作品を読んでいなかったから尚更そう思ったんだと思う。

    音楽にしても文学にしても、これはこのジャンル、とカテゴライズするのはあまり好きではないというか、単純に売るにも探すにも便利なだけで、本質的には必要でないものだと思っている。
    という弁明(弁解?)をしたうえで言わせてもらうと、恒川さんの作品は、基本的には、ダークファンタジーだとかホラーだとかに分類されるのだと思う。ていうかだいたいホラー文庫だし。
    なのでちょっと変なのかもしれないけど、正直私は、怖いというよりどうしようもなく憧れてしまう。
    いつか自分も、理不尽な異界に放り出されたいと思ってしまう。
    それが救いようのないお話だとしても。

    解説の方が、
    「まったくといってよいほど奇を衒わず、常に平明かつ明晰」
    と仰っているように、恒川さんは奇妙な異界を当たり前の事みたいに淡々と物語って、異界は私達のすぐそばに本当に存在して、なにか小さなきっかけでころんと向こう側に迷い込むんじゃないかと思わせてくれる。
    好きです。

    現実の暮らしに満足したら、異界に憧れたりはしなくなるのかな。

    いつものように本の感想から脱線した気がする。
    カイムルとラートリーの読後感が良かった。
    インド神話楽しいよね。

  • 本作品の白眉は『死神と旅する女』
    謎の男達に殺されそうになる女の子?
    度胸という性格で助かるものの謎の男と旅する事に?

    まぁ好みだと思います。



    何故か恒川氏の初期の作品を思い出しました。



    表紙が何故か豪華に見えるのは私だけでしょうか?

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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