四畳半タイムマシンブルース

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041095638

作品紹介・あらすじ

水没したクーラーのリモコンを求めて昨日へGO! タイムトラベラーの自覚に欠ける悪友が勝手に過去を改変して世界は消滅の危機を迎える。そして、ひそかに想いを寄せる彼女がひた隠しにする秘密……。
森見登美彦の初期代表作のひとつでアニメ版にもファンが多い『四畳半神話大系』。ヨーロッパ企画の代表であり、アニメ版『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の脚本を担当した上田誠の舞台作品『サマータイムマシン・ブルース』。互いに信頼をよせる盟友たちの代表作がひとつになった、熱いコラボレーションが実現!

感想・レビュー・書評

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  • 普段は「ネタバレ警告」なんてしないのだが、今回はそれをしないと書けそうにない。でも基本的には匂わす程度に留めることをお約束します。


    ‥‥まさか、そう来るとは!
    いや、ストーリーが意外だったわけではない。
    むしろ映画「サマータイムマシンブルース」と、あまりにも相似形のストーリーに戸惑ったほどである(タイムマシンを持ってくる田村くん、穴掘り名人の犬のケチャという名前まで同じ)。

    なんと森見登美彦の文体の才弁縦横、軽妙洒脱、機知奇策、因循姑息、満漢全席たる所が鳴りを潜めているのである。むしろ夏の終わりの蜩鳴く寂寥さえ覚える静かさが、この作品の特徴である。‥‥と言ったならば、「そんな大嘘を書いてもらっては困る、夏真っ盛りに終始一つのクーラーリモコンを巡って大騒ぎするこの作品の何処が寂寥なのか!」と怒鳴り込む相島氏も出てくるや知れぬ。彼は最後の挿話は知らぬのであるから、理屈屋の相島氏は理解しないであろう。

    何故、「原案」と同じなのか?森見登美彦ならば、もっと弾けてもいいのではないか?しかし、私は最後まで読んで「承知」したのである。年代は書いていないが、これは現代の話ではない。携帯は出てくるけど、これは少なくとも映画公開の2005年の話であり、田村くんは2030年からやってきたのだ(と、推理する)。その間にあったことを、その間の人たちが青春を懐かしむ話だったのである。

    アパートから炎天下の住宅地に出たのは午後4時前、傾き始めた太陽が足下に色濃い影を落とし、街路樹では蝉が鳴いていた。
    まるでデジャヴのようだと私は思った。
    しかしこれはデジャヴではない。紛う方なき反復なのだ。(114p)

    (以下は「私」ではなく私の呟き)まるでデジャヴのようだと私は思った。
    しかしこれはデジャヴではない。紛う方なき「映画の」反復なのだ。
    「そういうことだったんですね」
    明石さんならぬ私は、呟き、ヴィダルサスーン紛失事件の顛末まで一緒なのを確かめながら、田村くんの名前が偽名だったことが明かされる。おや‥‥。

    そして、図らずも第一部「四畳半神話体系」という「小説」が生まれる瞬間が登場する。つまり、登場人物が違う他には、映画には全くない挿話が2-3出てくるのである。

    本書は、森見登美彦の見事な青春の書である。と、同時に森見登美彦から私たちに贈られた「タイムマシン」なのである。その意味の妙味を逐一書くことは差し控えたい。読者もそんな唾棄すべきものを読んで、貴重な時間を溝に捨てたくはないだろう。

  • Instagramでフォローしている方がオススメしていた本。
    わちゃわちゃした感じの表紙が魅力的。読み終えて表紙を再び見ると、表紙の絵が全て物語の中に出てくる事に気づきます。

    さらっとあらすじを紹介。
    大学生の主人公。真夏に部屋のエアコンのリモコンが壊れてしまう。この絶望的な出来事を改変するために、ひょんなことから目の前に現れたタイムマシンに乗って、リモコンの救出に向かう。しかし、過去に戻っても一筋縄ではリモコンの救出ができず•••。


    文章はユーモアたっぷりで、読んでいるとクスクス笑ってしまいます。主人公の周りは一癖も二癖もある変人だらけ。
    そんな物語の中で、タイムリープあるあるもふんだんに散りばめられています。最初は違和感溢れる物語だけど、話が進むにつれて、整合性がとれてきます。

    一番大好きな映画「バックトゥーザ・フューチャー」を小説で読んでいるような感じがしました。
    恋愛要素もあり、物語の終わり方も好きでした。

    • ゆうりさん
      オミさん、こんばんは。
      4畳半タイムマシンブルース、私も読みました(*´ω`*)。
      すごく大事っぽくなっているけれども、本当に結末までしょう...
      オミさん、こんばんは。
      4畳半タイムマシンブルース、私も読みました(*´ω`*)。
      すごく大事っぽくなっているけれども、本当に結末までしょうもない!!!って笑えるような物語で頭がスッキリしたことを思い出しました。
      森見さんのキャラクター達は、とか、本当に個性豊かで面白いですね(*´ω`*)
      2024/04/17
    • オミさん
      ゆうりさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(^-^)
      どうしようもないキャラクターばかりで、けど憎めない感じが好きです。
      森見さ...
      ゆうりさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(^-^)
      どうしようもないキャラクターばかりで、けど憎めない感じが好きです。
      森見さんの他の作品を読んでみたくなりました。
      オススメがあれば教えて下さい(≧∀≦)
      2024/04/17
  • 森見ワールド炸裂で、「四畳半」に出会った時のエモい気持ちを思い出した。唾棄すべき悪友の小妖怪、クールビューティーな黒髪の乙女、愉快で面倒臭い仲間たち。たまらなくエモい。

    クーラーのリモコンひとつで、タイムマシーンまで引っ張り出してきて戻るのは「昨日」。そんな控えめな戻り方に加えて、クーラーのリモコンのせいで、宇宙消滅の危機。

    この危機にもかかわらず、下鴨幽水荘の癖の強い面々は、自由。特に樋口師匠の自由気ままな性格は圧倒的で周りのみんなは振り回されっぱなし。さすが小津の師匠。今考えるとビダルサスーンのくだりが一番くだらないかも笑笑

    そして、たぶん「私」だけじゃなく、多くの読者も思いを寄せているであろう明石さんの心強さとぬけ感も健在。タイムトラベルとパラレルワールド、くだらなくて笑える森見ワールドがマーブル模様に練り込まれた世界観をぐるぐるまわって、たどり着く最後の一行。やはり明石さんの魅力は永遠に不滅です。

    兎にも角にもエモい。

  • 百二十五年におよぶ壮大な時空の旅路!
    「時をかけるリモコン」の物語

    いつもの四畳半メンバーと森見節全開で
    最高に堪能できました。

    明石さんを五山の送り火に誘うシーン
    「それはみんなで?それとも2人で?」
    「ぜひとも2人で」
    「なるほどです」
    「だから小津たちには内緒で頼む」
    「ええ、内緒、もちろん、はい、そのほうが、ええ」明石さんは慌てたように幾度も頷いた。

    このシーンが個人的には大好きです
    気になった方は是非読んでみてください

    明石さんは本当に魅力的で小説に登場する女の子で
    一番合ってみたい人です…笑

  • 上田氏の戯曲『サマータイムマシン・ブルース』にかなり忠実に書かれた小説。

    この戯曲を四畳半の腐れ大学生たちが演じているといっても良いだろう。

    風呂場でのシャンプー盗難事件や河童銅像事件などそのままである。

    自分にとってはネタバレしてしまっていたので、あっと驚くということはなかったが、「四畳半〜」の皆の活躍がまた愉しめたのがよかった。

    本作は『四畳半神話大系』の続編というよりもスピンオフ作品といった方がいいかもね。

  • 小津が壊したのは、下鴨幽水荘にひとつしかないクーラーのリモコンだった。
    灼熱地獄と化す真夏の京都を生き延びるべく、彼らが考えた策とは?

    上田誠「サマータイムマシン・ブルース」を原案とし、『四畳半神話大系』にもとづいて執筆されたオリジナル作品。

    モラトリアム大学生の、馬鹿馬鹿しくもたのしいドタバタ劇。
    原案の作品世界と、森見登美彦の作風の親和性が、極めて高かった。

    舞台は観ていないものの、映画は観ていたため、話の筋は把握した状態。

    舞台がキャンパスからアパートになったり、ちょこちょこ違ってくる部分を、「こうアレンジするんだ」と楽しむ。

    原作のおもしろさを活かしつつ、森見登美彦らしさも味わえる作品。

  • モリミーと言えば四畳半、四畳半と言えばモリミー…嗚呼、仲良きことは阿呆らしきかな。

    灼熱地獄の夏の京都を舞台に、腐れ大学生達が四畳半という小宇宙の中でえっさえっさと繰り広げる、可笑しさ8割切なさ2割の青春物語。
    長い長い夏休み中のたった2日間。
    この僅か2日の「今日」と「昨日」の間で、行ったり来たりを繰り返しサマータイムをさ迷い続ける。
    下鴨幽水荘、小津、明石さん、納涼古本まつり、マンゴーのフラペチーノ、黒髪の乙女等々、次々に登場する単語はモリミーファンにとって懐かしさ嬉しさが半端ない。
    夏休みが終わる前に読み終えることができて本当に良かった。

    私がもし時を戻せるなら、大学2回生がいいかな。
    あの頃は何も考えずに自由にできて楽しかったなー。
    少々辻褄が合わなくてもいいから…嗚呼、私にもタイムマシン、プリーズ。

  • 上田誠の「サマータイムマシン・ブルース」を原案とし「四畳半神話体系」世界で再構築された作品、とあったけどもう一行目から森見さん世界へダイブ。「私」に邪悪な小津・樋口師匠・城ケ崎先輩・羽貫さんに想い人の明石さんとメンバー大集合。リモコンが壊れた灼熱の四畳半でうだうだしていた一同の元に突然現れたタイムマシンと25年後の大学新入生田村君。壊れたリモコン復活とシャンプー窃盗犯特定のために昨日に戻る一同。未来や遠い過去にも行けるのに尻込みして昨日を選ぶところにまずにやにや。小さな過去改変が世界滅亡の引き金になるのでは?と「私」は元通りになるよう奮闘するがそんな事は知ったこっちゃない仲間達。この暴れっぷりが愉快愉快。しかしいつの間にか辻褄は合い田村君の正体も判明し素敵なラストまで一直線。森見節堪能しました。

  • 久しぶりに図書館に行って借りてきました。
    森見登美彦さんの作品も久々に読みました。
    少し不思議な世界観の森見ワールドが全開で面白かったです!!

  • ◯四畳半神話体系の面々に久々に会えると思うと胸が高鳴ってしまった。森見先生の小説はどれも好きで、色々読んだけれど、一番好きなのは四畳半である。ひねくれていてどこか理屈っぽい独白調の文章。斜に構えたものの見方。色々言い訳してもう一歩踏み出さない情けない姿。そう、まさしく私は私であり、どうしても自己投影して読んでしまうのだ。

    ◯この小説は原案があるようで、その内容はあまりよく知らないが、タイムマシンものとしてしっかりと全ての伏線を回収していてなるほど良くできているなぁと感心。そのせいか、この小説が書店のSF棚に置いてあったので、探し当てるのに苦労した(あまり使いたくない検索機を駆使してしまった。)
    ◯今回の話で全ての四畳半に終わりを告げてしまった感がある。本の構造上、火の鳥のように蘇るのかもしれないが、、、。しかし今までの四畳半と違う点がいくつかあり、一つは、しっかり明石さんを五山に誘っている描写である(確か四畳半ではボヤッとした描写で誘うところは描いていないはず><)。ただ誘い方は相変わらずダメ野郎。まぁそれも私らしいといえば私らしいので愛すべき。
    ◯そしてもう一つ、全く異なる点は、読者は25年後の先まで予想がついてしまったという点だ。こうなってくると、もう私は私とは違うと言わざるを得ない。私には未来は当然わからないのだ。

    ◯現実を生きる私には誘ったその先がある。誘ったは良いが次でダメになることがある。未来で明石さんの横にいるのは私ではないのかもしれないのだ。今回の小説については。成就するまでが恋は大変なのだと言いたくなる。
    ◯詰まるところ何が言いたいのかというと、私自身はまさにこれを機に、四畳半を永遠の思い出にして、次の人生をしっかり歩むべきということなのだと改めて悟る。小説にこんなことを想うのも変な話だが、まさに四畳半は私にとっても青春なのだ。

    • nejidonさん
      こんばんは(^^♪
      こちらのレビューを拝見した時にコメントしようと思ったのに、忘れていました。
      DVD版の「サマータイムマシン・ブルース...
      こんばんは(^^♪
      こちらのレビューを拝見した時にコメントしようと思ったのに、忘れていました。
      DVD版の「サマータイムマシン・ブルース」もすごく面白いですよ。
      連続で二回も見てしまいました。
      もし機会がありましたらどうぞ。

      いつもコメントしてごめんなさいね。
      面倒くさかったらスルーしてください。
      どうもyoshio70さんのレビューが気になってしまうんですよ。すみません。
      2020/08/19
    • yoshio70さん
      nejidonさん
      こんばんは!コメントありがとうございます。本当に嬉しい限りです。自己満足で感想を書き綴っていただけだったので、コメントを...
      nejidonさん
      こんばんは!コメントありがとうございます。本当に嬉しい限りです。自己満足で感想を書き綴っていただけだったので、コメントをいただけたり、交流ができるのは望外の喜びです。
      ただ、仕事等の関係で、返信が遅くなることもあって申し訳ない限りです。。。;

      「サマータイムマシン・ブルース」のDVD版ですね!是非鑑賞したいと思います。小説のように、SFだけど青春を感じられたら良いなと思います!
      四畳半は若い頃に好きだっただけに、自分の感情垂れ流しの感想で、お目汚しですいません。。。笑
      2020/08/19
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著者プロフィール

1979年、奈良県生駒市に生まれる。小説家。『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー、最新作は『シャーロック・ホームズの凱旋』。好きな食べ物はチャーハン。城崎にて人生初のスマートボールを楽しむ。

「2024年 『城崎にて 四篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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