イノセンス

著者 :
  • KADOKAWA
3.45
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  • (1)
本棚登録 : 234
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041095669

作品紹介・あらすじ

【Innocence:[名]無罪、潔白】

音海星吾は美術サークルに所属する大学生。中学生時代、不良に絡まれた星吾は、彼を助けようとして身代わりに刺された青年を見捨てて逃げてしまう。青年はその後死亡したため、星吾はネット社会を中心とした世間の誹謗中傷を浴び続ける。
大学入学後も星吾は心を閉ざして生きていたが、ある日、ホームから飛び降りようとした中年男性に「そんなに死にたいなら、夜にやってよ。朝やられると迷惑なんだ」と心無い言葉をぶつけてしまう。現場を目撃していた同じ大学の学生・紗椰にその言葉を批判されるが、それがきっかけで星吾は彼女と交流を持つようになる。星吾は心惹かれるようになった紗椰に思いを告げようとするが、自らの過去の重みのため、踏み出すことができない。コンビニのバイト仲間の吉田光輝、美術サークルの顧問・宇佐美ら周囲の人間との交流を通して、徐々に人間らしい心を取り戻しかける星吾。
そんななか、星吾を狙うように美術室の花瓶が投げ落とされ、さらに信号待ちの際、車道に突き飛ばされるという事件が起こる。星吾を襲う犯人の正体は? そして星吾の選択とは――。

一度過ちをおかした人間は、
人を好きになってはいけないのだろうか。
魂を揺さぶるラストが待ち受ける、慟哭のサスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • デビュー作『ジャッジメント』で度肝を抜かれた小林由香氏の最新作『イノセンス』。

    本作も非常に考えさせられるものがあった。

    あらすじであるが、

    不良3人からカツアゲされていた中学生がある若者に助けられた。しかし、その若者は不良にナイフで刺されてしまった。その場でその中学生が助けを呼べばその若者の命は助かった可能性が高かったが、中学生は何もせずにその場から逃げ出してしまう。このことが後で世間から問題となった。この逃げた中学生は、犯人以上に社会からバッシングを受け、住所、名前を特定され、ネットで炎上した。この中学生は社会から逃げるように日々を生き、現在身をひそめるようにこっそりと大学生となって暮らしている。そこへまたある出来事が降りかかってくる。

    という感じである。

    デビュー作の『ジャッジメント』でもそうであるが、小林由香先生のテーマは『罪と罰』であろうと思う。言い換えるなら『憎悪と赦し』であるだろうか。

    どんな人間でも『過ち』を犯す。それを『赦す』ことができるのもまた人間だけであろう。

    外国の文学であれば、ここに『神の赦し』というテーマが入ってくるのであろうが、日本では『神の赦し』をテーマにするとちょっとおかしな方向に行ってしまう可能性もあるのであえてそこには触れていない。
    やはりこの部分が日本と西洋の大きな違いなのだろな。ドストエフスキーの『罪と罰』を引き合いを出すまでもなく、人間を赦せるのは西洋では『神』であり、日本では『人』ということなのだろう。

    このテーマを論じ始めるとレビューが終わらなくなるので、このあたりでやめたいが、非常に興味深いテーマであることは間違いない

    本書も、人のあるべき姿を映した良作である。
    おすすめである。

  • 息苦しさが続いた一冊。

    今回は一度過ちをおかした人間は人を好きになってはいけないのだろうかーという問題提起。

    ずっと息苦しさが続くような読書時間。

    付き纏う誹謗中傷の苦しみ、自由に呼吸ができないようなもがき、黒一色の心を抱えたような星吾の感情は何度も胸を打つ。

    一番悪いのは殺めた人。なのに憎しみや哀しみ、自分の都合の良いように相手を選び、ぶつけるのが人間なのか…終盤は特に息苦しさに襲われる。

    過ちは誰にでもあるしそれは消せない。けれどそれをどう繋げどう生きるかが大切なのかも。そしてそれを導いてくれる一つが人、人の言葉と温もりなのかもしれない。それを信じたい。

  • 確かに主人公は罪を犯していない。自分の弱さから2人を見殺しにしたという罪悪感。しかし彼は生きている間、常にそれと対峙しないといけない。その苦悩を鮮明に綴った作品だった。主人公はそれにどう対峙すればよいのか?一方、故人の家族や恋人は主人公を恨み続けている。それを知ってしまったら、自分は幸せにならなければ良いのか?自死すればいいのか?故人のために祈り続ければよいのか?答えは「ない」あるいは「自分では決められない」ということなのか。主人公が最後に描いた表紙絵、彼の苦悩と赦してほしいという意思が見えた気がした。

  • 主人公のやったことは許されると思いますか? 連載中から賛否両論の嵐。小林由香の最新小説『イノセンス』10月1日発売!|株式会社KADOKAWAのプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000007535.000007006.html

    イノセンス 小林 由香:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322002000902/

  • 作品を発表するたびに、社会的な問題を提起する作者。
    今作では14歳の時に恐喝から救ってくれた男性が刺されたのにも関わらず、警察にも消防にも通報せず、逃げてしまったことでその男性を死なせてしまった大学生の苦悩の物語。
    帯では「事件の加害者は人を好きになってはいけないのか」と問いかけているが、厳密に言うと主人公の星吾は事件の加害者ではない。
    もちろん救護しなければいけない人を放置したことは、決して許されることではないが、14歳の少年がその場に居合わせた時にそんな冷静な判断が出来るだろうか?
    それでも星吾は、自分を救ってくれた人を放置して死なせてしまったことを、ずっと後悔し、他人と関わらない人生を選ぶ。
    しかし、ネットで逃げた少年と特定された星吾の周囲では、彼への脅迫行為が続く。
    デビュー当時から作者が問いかけて来た私的制裁の有無が今作の軸でもある。
    味方だったはずの人が、事件の関係者であったり、ミステリー要素もありながら、ラストに星吾が描き上げた絵について触れた部分では、14歳の自分が救えなかった命を未来では救ってみせる、と言う強い意志が感じられる。
    人間は完璧ではない。時には間違いも犯す。それは誰しも同じ。そのあと、どういう行動をとるか?どう考えるか?どう生きるか?
    そんなことを感がさせてくれる作品だった。

  • 少年が14歳の時にカツアゲにあい危ない目にあった
    その時助けてくれた青年は残念ながら死亡した。
    そのことにより少年の運命も他の人の運命も狂っていく
    一体何がよかったのだろうか

  • 最近の不寛容な社会を背景にしたミステリ・サスペンス。ただし、ミステリ要素は付け足しと感じるくらいに、背景が重い。犯罪は被害者も被害者家族も人生が変わってしまうが、巻き込まれた不作為者も社会の目の中で罪悪感に押しつぶされる。まさに不寛容な社会だ。法律で裁かれないものは償いをどうすればよいのか?答えのない重いテーマだが、最後にうっすらと光明が見えるようでほっとする。

  • 読後、タイトルと装丁が哀しく痛い。
    星吾は加害者なんだろうか…とずっと思いつつ読みました。当事者としてみればそう考えるのは致し方ないと思うものの、全然関わりのない立場から見たら彼だってやはり被害者だよな、と私には思えます。
    たぶんこれはきっと登場人物みんな絡んでくるんだろうなと思いはしたけれどそういう展開ですかと予想の斜め上でした。結末は予想通りでしたが。
    「ジャッジメント」以来注目している作家さんの一人です。

  • 登場人物が皆、やるせないほど痛々しい。だがグイグイ読んでしまう。星吾が14歳の時に、カツアゲから守ってくれた大学生が目の前で刺殺された。すぐに救急車を呼べば助かったのに星吾は逃げた。そのことが報道され、嫌がらせや誹謗中傷を受け人間不信になってしまう。大学生になり友人や好きな人ができても心は翳る。薄い本だが結構考えさせられた。生きていれば皆心に何かしらの罪悪感や傷を抱えているもの。どう反省しどう折り合いをつけていくか。物語としては後半残り僅かのページから怒涛の畳み掛け。目まぐるしかったが面白かった。

  • 少年が犯した過ち。救急車を呼べば助かったかも…というところが肝なのはわかるけど、それで無関係な人間が寄ってたかって14歳の少年を叩きまくれるって、人間はほんとに怖いなと思った。あなたがたに裁く権利などありませんよ。自分が正しいことを証明して気持ちよくなりたいだけの癖して。

    被害者家族の苦しみを思うとやりきれないけど、それでもやっぱり、臆病だっただけの少年の悲劇にも同じように胸が痛む。被害者を思うと許せない、と思う気持ちは理解できる。でもそれは、わたしたちが決めることじゃない。

    物語は、希望が見えるラストでほんとうによかった。最後の絵の描写と、名前を呼んで手を振るシーンには、じんと来てしまいますね。 彼らの交流が丁寧に描かれてきたからか、どちらにも感情移入できてしまう……特にラストで視点が代わってから、彼の複雑な感情がひしひしと伝わってくるのがすばらしかった。 2人がお互いにぐちゃぐちゃの感情を抱えながらも、今後もよき友人でいられることを願います。

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著者プロフィール

1976年長野県生まれ。11年「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞。2016年、同作で単行本デビュー。他の著書に『罪人が祈るとき』『救いの森』がある。

「2020年 『イノセンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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