花髑髏 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096130

作品紹介・あらすじ

名探偵由利先生のもとに突然舞い込んだ差し出し人不明の手紙、それは恐ろしい殺人事件の予告だった。指定の場所へ急行した彼は、箱の裂目から鮮血を滴らせた黒塗りの大きな長持を目の当たりにするが……。

感想・レビュー・書評

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  • 横溝正史『花髑髏』角川文庫。

    4ヶ月連続復刊刊行の由利麟太郎シリーズ第4弾。名探偵・由利麟太郎と助手の三津木俊介の活躍を描いた『白蝋変化』『焙烙の刑』『花髑髏』の3編を収録。

    フジテレビ系列で吉川晃司を由利麟太郎役に5週連続でドラマ化。テレビドラマの第1話は奇しくも本作の表題作『花髑髏』だった。舞台は現代にアレンジされ、奇妙な風体の由利麟太郎がヒーローぽく冒頭から登場するのだ。作品を読む限り、由利麟太郎は枯れた人物のイメージだったが……何しろあの吉川晃司なのだから仕方がないか。

    『白蝋変化』。由利麟太郎シリーズとしては珍しく混み入ったプロットの短編。妻殺しで死刑囚として刑務所に収監された男の脱獄を企て、悪者たちに依頼した男の元恋人。しかし、悪者たちが誤って脱獄させたのは稀代の女蕩しで四本指の悪党、白蝋三郎だった……と、ここまでは事件の触りにしか過ぎず、やがて予想外の大事件へと発展していく。そして、いよいよ由利麟太郎が登場する。

    『焙烙の刑』。最後の最後に由利麟太郎が登場。由利麟太郎シリーズはこういうパターンが多い。

    『花髑髏』。表題作。由利麟太郎に花髑髏から届いた挑戦状……原作は意外にあっさり。テレビドラマの方はだいぶ脚色しているようだ。

    本体価格800円
    ★★★★

    • moboyokohamaさん
      原作と映像作品がお互いを高め合う作品になるっていうのは難しいのでしょうね
      原作と映像作品がお互いを高め合う作品になるっていうのは難しいのでしょうね
      2020/06/17
  • 犯行を予知するかのような手紙に導かれ、事件に遭遇する表題作をはじめ、計3作収録の中短篇集。死刑を宣告された元恋人を救い出そうとしたら、別の囚人を脱獄させてしまう『百蝋変化』が一番好き。

    『百蝋(びゃくろう)変化』
    大老舗・べに屋の主人・諸井慎介は死刑を言い渡された。妻・梨枝を殺害し、その死体をバラバラにして焼き捨てようとしたのだ。かつて恋仲だった月代は、彼を信じて救い出そうとする。仲間の石黒たちとともに、監房へ繋がる横穴を掘り進めることには成功した。だが、そこに囚われていたのは慎介ではなく、数々の犯罪を繰り返した極悪人・百蝋三郎で──?!

    監房の入れ替えがあり、別人を脱獄させてしまうというハプニング!しかも百蝋三郎の瞳を見ると女は虜にされてしまうという!恩を感じて百蝋は月代を見逃したが、ここからが奇妙な事件の本番だった!
    「べに屋の妻殺人の犯人は慎介なのか?」
    「百蝋を裏切って密告した千夜子が土蔵の檻に入れていた青年は何者なのか?」
    どの登場人物も困惑しながら真相を追う冒険活劇という読み心地。事件が重ねられていくライブ感と、百蝋と青年の戦い、死刑へのタイムリミットとハラハラする要素満載。由利先生はあまり活躍しなくて残念だったけれど、最初から最後までどんでん返しのお祭りだったのが面白かった。

    『焙烙(ほうろく)の刑』
    日東映画のスター俳優・桑野貝三は、また従姉である瀬川葭枝(よしえ)に呼び出された。彼女は画家である夫・直人から届いた手紙を貝三に見せる。直人はどうやら誘拐されているらしく、貝三に身代金を持たせて手紙の指示通りにさせてくれと綴ってあった。不可解ながらもその指示通りに怪しげな車に乗り込む貝三だったが──。

    炮烙って『封神演義』で妲己がやっていた惨い刑罰か!そう閃きつつも、これが事件にどうつながってくるのかわからない。つかみどころのない事件に振り回されながら、たどり着いた真相を示すワンシーンが強烈。焼かれた銅の柱に押しつけられたような衝撃と死の匂いが沸き立つ。それにしても、由利先生たちは良いとこ取りというかほぼ活躍しないという。

    『花髑髏』
    「あなたは一度も失敗したことのない名探偵だそうですね」
    突如、由利先生に舞い込んだ差出人不明の手紙。最後には「花髑髏」という名前らしきものが添えられていた。殺人事件が起こると予言し、その場所へ向かった由利たちが見たものは血が滴り落ちる長持で──。しかし、それは恐ろしい事件の始まりに過ぎなかった。

    死体のそばに置かれた血染めの髑髏の標本と野菊の花。まさしく花髑髏!一命をとりとめた日下家の養女・瑠璃子。事件が起こってから姿を消した一人息子・日下瑛一と書生の宮園魁太。由利の知り合いながら、どうにも怪しげな素振りが多すぎる湯浅。犯人ははたして誰なのか?!

    精神病院に関連したとある問いは、現代でも通じる内容があって考えさせられる。犯人の正体はすぐわかったけど、名前のところは矛盾している気がする。由利先生がやたら犯人を「こんな頭脳を持ったやつはいない」と言ってるのは買いかぶりすぎではなかろうか。最初から事件に関わっていれば由利先生が何とかしてくれる!と思ったら、やはり惜しくも間に合わない感じは様式美なのかな。


    p.78
    静寂は時によるといかなる意味のことばよりも、人に恐怖をあたえることがある。

  • 長編「白蠟変化」、短編「焙烙の刑」「花髑髏」の
    計3編収録。
    いずれも名探偵・由利麟太郎&新聞記者・三津木俊助のコンビが活躍するが、
    ドラマ化された「花髑髏」に辿り着くまでが長かった……(苦笑)。
    以下、各編についてネタバレなしで少々。

    「白蠟変化」
     タイトルの読みは「びゃくろうへんげ」。
     1936年『講談雑誌』連載。
     男女の愛憎入り乱れる中を飄々と飛び回る怪人・白蠟三郎。
     悪人だが意外にしおらしいところもある(笑)し、
     妙な哲学を持ってもいて、
     愛する人の冤罪を晴らそうと必死になっていた女性をいじらしく思ってか、
     妙な気の回し方をする、という……。
     一人二役や悪漢の跳梁ぶりは非現実的だが、
     エログロナンセンス活劇として愉快に読めてしまった。
     が、最後の由利先生と俊助の溜め息がほろ苦い。

    「焙烙の刑」
     1937年『サンデー毎日』掲載。
     タイトルは、中国古代・殷の紂王が行った火炙りの刑のこと。
     俳優・桑野貝三は画家・瀬川直人と結婚した
     又従妹の葭枝から相談を受け、
     奇妙な事件に巻き込まれた――。
     桑野が賢明にも、それを友人・三津木俊助に打ち明けたことで
     由利麟太郎が担ぎ出され、事件は解決するが、
     年の離れた妻の日記を読んで嫉妬に狂った夫が
     手の込んだ策を弄するところが奇怪、気色悪い。

    「花髑髏」
     1937年『富士』掲載。
     精神科医・日下瑛造が殺害され、養女・瑠璃子は負傷。
     瑛造の息子・瑛一、日下家の書生・宮園魁太、
     瑛造の友人・湯浅博士に疑いの目が向けられ……。
     ドラマを先に観てしまったが、充分に楽しめた……
     というか、やはり別物である。
     バス停の名前に変更されていた「二本榎」が
     本当に二本の木だったところで、ちょっと笑ってしまった。

    • darkavengersさん
      こんばんは。
      おじゃまします。
      「花髑髏」自分も観ました。

      ネットで調べてみましたが色々と改変されてるんですね。
      面白いと言えば...
      こんばんは。
      おじゃまします。
      「花髑髏」自分も観ました。

      ネットで調べてみましたが色々と改変されてるんですね。
      面白いと言えば面白かったのですが、ラストの独房のシーンはいかにもフジテレビ系のドラマっぽくて..........後味が悪くても良かったのではないかと。

      OPと第2話で吉川晃司がお得意のシンバルキックを披露したのには苦笑しました。
      2020/06/26
    • 深川夏眠さん
      こんばんはです~。
      そうそう、吉川氏の大立ち回り!
      原作の由利先生のイメージ・人物像とは
      だいぶ異なるキャラクターになっていますが、
      ...
      こんばんはです~。
      そうそう、吉川氏の大立ち回り!
      原作の由利先生のイメージ・人物像とは
      だいぶ異なるキャラクターになっていますが、
      ドラマなので、
      あれはあれでいいなと思っています。
      5話で終了とは寂しいな……。
      2020/06/26
  • 短編集。

    どちらかといえば表題作よりも、白蠟変化が印象的。
    映像化したら迫力がありそうな気がする。心理的な要因が大きいのにビジュアルでぐっと惹きつけるような。所謂、犬神家的な要素を強く感じました。

  • ドラマ化ときいて読んでみた。
    中編「白蠟変化」と短編「焙烙の刑」「花髑髏」の由利先生シリーズ3編収録。
    分量的にも内容的にも「白蠟変化」が印象深いので、なぜ表題をこっちにしなかったのか謎。
    金田一シリーズと違ってかなり通俗的なスリラーで驚いた。面白かったが突っ込みどころ満載。特に白蠟三郎の存在感がすごすぎて、由利先生はほぼ空気。そして最後のオチは笑った。

  • 『探偵・由利麟太郎』
    フジテレビ/毎週火曜放送
    2020年6月16日から

  • 表題作より印象に残る『白蠟変化』。ずっとしてやられてばかりだった白蠟三郎が、終盤にようやく本領発揮してからもう一展開。直接手を下さないやり口に震えたし、これは勝てないわと笑ってしまった。推理力だけでは事件を真に解決できない。男女の機微まで察せるかどうか。脱獄させようとするほどの愛情だった月代が、まさかあそこまであっさり立ち上がるとは。

  • 初めての由利・三津木シリーズ。
    戦前のこの時代特有の、不自由さや因襲が恐ろしく薄気味悪い。令和版のドラマも面白かったけど、原作はやはり格別。横溝先生の描く美男美女と怪人はそこにいるだけで背筋が凍るよう。
    エロスとグロテスク、人のおぞましさに立ち向かう由利先生と三津木くんが格好良いです。
    展開がスピーディでとても先を読めない。由利先生の慧眼に感服するばかり。
    三作とも、とても面白かった。

  • 奇想天外で愉快。
    色んな要素を詰め込んだ1冊。
    横溝正史さんもノリノリで楽しく書いたんじゃないかな。
    戦後間もないあけすけな明るさと東京区内にシンと沈む街と鬱蒼と茂る樹木の作る暗闇が見える。
    現代ではなかなか出せない世界観は流石です。

  • 全三編ありますが、どれも男女の恋愛が発端となっているのが面白いです。

    中でも『白蠟変化』は、終盤の無情感が好きでした。しかし、由利麟太郎や三津木が活躍するというよりかは、白蠟三郎の暗躍がメインです。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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