パワー・オブ・ザ・ドッグ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096550

作品紹介・あらすじ

「『エデンの東』や『ブロークバック・マウンテン』を髣髴とさせる」(ガーディアン紙) 、「時と場を完璧に再現し思い起こさせる」(ボストン・グローブ紙)と各紙誌で絶賛。
ジェーン・カンピオン監督、ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト主演でNetflixでの映像化が決定。

1920年代、モンタナ州。快活で賢い兄フィルと地味な弟ジョージは牧場を共同経営する裕福な兄弟だ。ジョージの前に不幸な初婚を経たローズが現れ、二人が結婚したことで、家族に亀裂が入ってゆく。露わになる本心、剥き出しになる人間の弱さ、立ちはだかる西部の論理。そして物語は、衝撃の結末を迎える!美しい大自然のなか、アメリカ社会のタブー、飲酒・人種差別・同性愛に斬り込み、世界の絶賛を得た幻の名作、本邦初訳!

感想・レビュー・書評

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  • 【Licaxxxの読書×鑑賞文・第7回】あらゆる感触のフェティシズムに浸れ!|@DIME アットダイム
    https://dime.jp/genre/1288027/

    パワー・オブ・ザ・ドッグ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
    https://www.netflix.com/jp/title/81127997

    「パワー・オブ・ザ・ドッグ」 トーマス・サヴェージ[角川文庫(海外)] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322003000244/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ジェーン・カンピオンの受賞スピーチが炎上。「人種差別」「ホワイトフェミニズム」(猿渡由紀) - 個人 - Yahoo!ニュース
      https:...
      ジェーン・カンピオンの受賞スピーチが炎上。「人種差別」「ホワイトフェミニズム」(猿渡由紀) - 個人 - Yahoo!ニュース
      https://news.yahoo.co.jp/byline/saruwatariyuki/20220315-00286599
      2022/03/15
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      生々しい経験に魅了/『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ジェーン・カンピオン監督インタビュー | MOVIE Collection [ムビコレ]
      h...
      生々しい経験に魅了/『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ジェーン・カンピオン監督インタビュー | MOVIE Collection [ムビコレ]
      https://www.moviecollection.jp/interview/117180/
      2022/04/25
  • 映画を観て、これは原作を読んだらよりわかるものがあるはずだ、と手に取った。
    ものすごく繊細で詳細に描かれたひとたちの、それぞれの生き様(愛)を、その歪さと純粋さを感じた、気がする。映画の余白の多い感じも好きだし、原作小説の繊細さもすき。なんだろう、常に一歩引いたような描き方だからなのか、詳しく書かれてるのに、それが歪さを引き立てて、逆に肝心な部分ははっきりと明確に言葉にされてなくて後半は手が止められない感じだった。(私が読み取れてない見逃してる場合もあるけども…)

    すごいな。
    強くて弱くて攻撃的で繊細なフィルという人物を、愛しく思った。映画でも思ったけど。
    映画も小説も、私はそれぞれ好きだな。
    またいつか読み直したいなと思う。

  •  翻訳者が巻末解説で書いているとおり、ぼくも「すごい本に出会ってしまった」。

     1967年に本になった作品。原作者は1915生まれで2003年没。小説の背景は1920年代のモンタナ。
     
     主人公は牧場主の兄弟。兄は、切れ者で、冷徹で、実務的で、仕事一筋。人からも尊敬されるが、心を表すことはあまりない。弟は、外見も内容でも兄に劣等感を感じてきたが、子連れの未亡人と結婚し家に引き入れることで、兄との間に次第に距離ができてゆく。

     淡々と描かれてゆく牧場の労働者たちと経営者兄弟の日常。モンタナの美しくも厳しい自然の中で営まれる人間たちと家畜たちの日々。

     短編小説をいくつも重ねたような切れ味で、エピソードが積み重ねられる中、明確なストーリーを感じずにいるのに、それでもページを繰る手が止まらない、そういう類いの小説である。

     さらには、歴史小説としても読めるくらい、当時の移民・先住民・労働者などの生活や政治的経済的立場が活写されて無言の評価を作家的視点で下している点なども、かなり魅力的である。

     濃縮された時間を、美しい文体と、氷のような不思議な緊張感の中で、何か不穏なものだけが感じられ、ページをきりりと締め付けているような、そんな一冊である。きりっと張りつめた空気を生み出す独特の文体も、豊かな個性で描き分けられた登場人物たちや、町の人たちの生活の活写を盛り上げられ、支えられてゆく。

     小さな物語の蓄積で作られてゆく小説世界は、兄弟の生活に新しい妻と連れ子の若者が現われることで、安定を欠いてゆく。じわじわと張りつめてゆく緊張感と、三角関係から四角関係へ変容してゆく奇妙な怖さが、見えざるエンディングへの高まりを作ってゆく。

     この作品は映画化され、この11月から上映館で、12月からNetflixで、公開される。こんな機会がなければ、作品が翻訳されることはなかったろう。作品の予告編はネットで観ることができる。予想通り、美しい映像である。優れた原作小説を味わった後、ぼくとしては映画館へ足を運び、この物語を再体験してみたいと思っている。

     ともあれ長く埋もれていたこんな「すごい本」を読めるようになったことに、ただただ感謝!

     ちなみにドン・ウィンズロウの麻薬戦争三部作の第一作『犬の力』と、原文は同じタイトルであり、巻頭の引用も同じ以下のものである。

    <私の魂をつるぎから、わたしのいのちを犬の力から救い出してください----『詩編』>

  • 緊張感が常に漂うような展開で、物語に引き込まれる。内容は巻末の説明でもある通り心理劇で、腹の探り合い的な展開で話が進む。ただ宣伝の帯の煽り文句と背表紙のあらすじは内容にそぐわない。

  • 舞台設定は好みのはずやけど、なんか合わんかった。再読したら変わるかも。

  • 唸った。翻訳物特有の難しさがあり、純粋にのめり込めなかった。
    翻訳者違いがあるようなので、そちらも読んでみたい。

  • 20世紀前半のアメリカ西部の地で牧場を営むフィルとジョージの兄弟。兄のフィルはあらゆる才能に恵まれていて牧場の仕事をこよなく愛している。弟のジョージは内気で鈍重だが堅実で、フィルはからかってばかりいても弟を深く愛していた。だがジョージが子持ちの未亡人ローズと突如結婚したことから、フィルの身辺に不穏な空気が漂い出す。
    先に映画を見ていたのでストーリーは分かっていたが、人物や風景のリズムのある描写、自在にエピソードを連ねて読者の好奇心を刺激する構成等、本の方がよりのめり込むことができた。
    自分の好みに合わない者は、他人はもちろん親でも容赦なく見下すフィルの苛烈さには、自分の脆さや恐れが隠されていることは早い段階で気付かされる。だからこそ弱さをさらけ出す人間が我慢できないのだろう。フィルが哀れでならなくて、結末にはホッとする気もした。

  • 淡々とストーリーが進む今作。映画の方も拝見しましたが、原作のほうが内容が詳細。
    フィルは保守的な人物で人種差別や女性差別のいち面があり、1920年代の時代背景と人物の心理描写がうまいと感じた。

  • ものすごい牽引力のある語りで、途中で読むのを止められなかった。
    本屋で最初の数ページを立ち読みした時点で「止められないモード」となってしまい、イッキ読み。

    ジェットコースターのような展開があるわけではなく、話は淡々と進んでいく。
    なのに、なぜか読むのがやめられないの。続きが気になって気になって。
    牧場を共同経営する兄弟の片方に、ある日突然恋人ができ、・・・という、言ってみれば割とよくある家族の愛憎劇なのだけど、そういう話にありがちなメロドラマ感は全くなくて、1ページ目からずっと文章が緊張感に満ちている。読んでいる私もはりつめていて、おかげで落ち着いて本を置く隙が全くない。何かに追われるようにどんどん読んでしまう。

    加えて、雇われカウボーイたちの描写がさらに独特の雰囲気を添えている。
    時代設定は "Roaring 20's" と言われた1920年半ば。牧場経営はすでに時代遅れになりつつある頃。
    通信販売のカタログのページを何度も眺め、書き慣れない文字と格闘しながら発注書を書き、商品の到着を待つことが娯楽の一つとなっている男たち。
    一人の若いカウボーイが書きかけた手紙の「おかさん カウボーイでいるっていいだよ」という素朴な文章に象徴される、彼らの粗野で無学な様子、未来のなさ、厳しい労働環境の描写は、すべてがまるで「滅びゆく種族」に対する挽歌のように哀切で、読んでいて時々激しく胸にこみあげてくるものがあった。

    フィルの「孤独」も切なかった。
    私も小さな田舎の過疎の町で育って、文学とか抽象的なことについて語り合うような友達は大学に入るまで見つからなかったので、知に対するある種の飢餓感のようなものをずっと感じながら大きくなったのだが、そうした欲求が満たされる環境になるまでは、自分がそれをどんなに欲しがっていたかすら分かっていなかったことなどをぼんやりと思い出した。

    それ以外にも、アメリカ社会の病的なまでの「男らしさ」への信頼や、世代交代における旧世代の無力さとか、人の心の奥の底知れなさとか、社会が押し付ける縛りから自由であるとはどういうことか、などなど、いろいろと考えさせられることがもりだくさんの小説だった。

    読み終わった後で、映画化されていると知った。
    しかも今年のアカデミー賞で監督賞受賞したって!
    ちょっと驚いた。小説を読んだ限りでは、このおもしろさは小説でしか表現できないものだなぁ、などと考えていたので。
    きっと映画として、別のおもしろさが加わっているんだろうと思う。
    別の作品として、ぜひ見たいです。
    正直に言うと、フィルは私の中ではカンバーバッチのイメージではないけれど。(ちょっと品が良すぎる気が・・・)

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著者プロフィール

1915年、米国ユタ州ソルトレークシティー生まれ。モンタナ大学で創作や執筆を学んだあと、37年に東部メイン州コルビー大学入学。 在学中の39年に同じ小説家となる同郷のエリザベス・フィッツジェラルドと結婚。保険調査員や配管工の助手、溶接工、鉄道の制動手などの仕事をしながら、執筆。44年に処女小説『The Pass』を刊行。89年には、最後の作品『The Corner of Rife and Pacific』がPEN/フォークナー賞の最終候補作となったほか、太平洋岸北西部書店協会賞を受賞。2003年、没。

「2021年 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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