- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041096673
作品紹介・あらすじ
著者と収録作品(五十音順)
新井素子「のっく」/上田早夕里「石繭」/恩田陸「冷凍みかん」/図子慧「ダウンサイジング」/高野史緒「舟歌」/辻村深月「さくら日和」/新津きよみ「タクシーの中で」/萩尾望都「子供の時間」/堀真潮「トレインゲーム」/松崎有理「超耐水性日焼け止め開発の顛末」/三浦しをん「冬の一等星」/皆川博子「断章」/宮部みゆき「チヨ子」/村田沙耶香「余命」/矢崎存美「初恋」
ある朝やってきたベビーシッターはぬいぐるみ!?(「初恋」)
アルバイトで着ぐるみのウサギの頭を被ると不思議なものが見えて――(「チヨ子」)
短くて、すらすら読めて、面白さ太鼓判!
とびきりのお話を新井素子が厳選。
いろんな味が詰まったドロップの缶詰のように、ときめきや切なさ、驚きに怖さも、読み心地さまざまな15の物語。
ものの数分で非日常の世界へと連れて行ってくれる、豪華執筆陣による極上のショートショートアンソロジー。
感想・レビュー・書評
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市の図書館のネット予約のサイトで、何かを検索した際に出て来たのが本書であったが、全て女性作家のみで編集されていることと、タイトルにあった「ドロップ」に、レトロな可愛らしさと懐かしさを感じ(子どもの頃好きだった、サクマドロップス!)、借りてみました。
本書はタイトルの通り、ショートショートが全15作収録されており、実際読み始めてみると、ドロップよりは現実的な、それぞれの作家がフリーマーケットを開いているような感覚となり、私の頭の中では勝手に、「私の小説も読んでってよ~」と声を掛けられているような妄想も渦巻き、たまにはこうして、新たに読みたくなる作家を探すのもいいなと気楽に構えていたら、ショートショートの定義は思いの外、厳しいようで、まずは三つの要素として、『完璧なプロット』『新鮮なアイディア』『意外な結末』があり、前に同じようなものがあったら、それだけで駄目となるが(オマージュではなく盗作となるらしい)、別に三つの要素が無くても名作が生まれることだってある、そんな奥の深さも影響したのか、選者の新井素子さんのまえがきによると、本書を編み上げるまでに三年かかったそうで、お疲れさまでした。
でも、その甲斐あって、とてもお得感のある面白いアンソロジーになったと感じ、せっかくなので、15作全てについて、何かしら書いていきたいと思います。
「初恋」 矢崎存美
あっ、これ、フォローしている方々のレビューで何度か見たことある、あのシリーズだと思い、実際に読んでみたら、シュールなのか人情ものなのか、判断に迷う面白さも絶妙で、読みたくなった。
「チヨ子」 宮部みゆき
宮部さんって何でも書けるんだなと、実感した瞬間、思い出したのは、以前彼女の書いた絵本を読んだことであり、この物語も絵本を作る人でないと書けないような、子ども心に立ち返る大切さを思い出させると共に、それとは真逆の闇の部分まで思い出させてくれるのも、あの絵本と同様で、光と影の存在を共に認識しているのが彼女らしいと思った。
「舟歌」 高野史緒
新井素子さんが選者だからか、本書にはSFものが多く、ここから3作続いていくが、どれも強く印象に残り、SFって聞くと、その設定の奇抜さばかりに目が行きやすくなるが、高野さんのように、AIが進歩し過ぎてしまった世界で見られる、人間の存在感の侘しさに、今度は寄り添うことで新たなAIの価値を見出せる、こんな未来のあり方もいいなと思えたことと、高野さんはクラシックが好きなのか、その専門的知識に基づいた熱量の強い文章を読んでいたら、聴いたこともないのに、無性に舟歌が聴きたくなった。
「ダウンサイジング」 図子慧
サイズを小型化する意味があるタイトルに擬えた、それはあまりにも切ないものがあったけれど、それを支えるAIの、心から祝福するような終わり方に、これまた未来の一つの素晴らしきあり方の可能性を見せてくれたことも含め、偶然が生んだ、高野さんの「舟歌」との繋がりも面白かった。
「子供の時間」 萩尾望都
本書の中でいちばん好きだった、萩尾さんのSFものは、上層部がどこかへふっ飛んだ、へしゃげたカメのような漂流船や、アーシの乗るスクーターと呼ばれる小型宇宙船など、私でも想像することを楽しめた雰囲気ある世界観の中でも、一際、心に響いたのは、大切なものを失い悲しみに暮れていた夫婦の新たな出会いと、出会った相手の、その世界観ならではの想像を絶する人生と、第二コンピューターの誇りとが、交錯することで引き起こされた、もう一つの誕生に、SFでも親子の愛情を語ることは出来るのだという、至極当たり前なことを、改めて思い知った。
「トレインゲーム」 堀真潮
設定の奇抜さに反して、強さの度合いが分かっているだけに、結末が想像出来てしまったのが残念であったが、このアイディアが、列車内で起こるささくれ立った人間関係に目を向けたものである点に、堀さんの人柄の良さを感じられた。
「断章」 皆川博子
初めて読んだ皆川さんは、言葉は理解できても、物語が理解できない、その独特な世界に引き込まれ、私の中では、純粋さ故に美しい残酷さも生み出す、往年の海外メルヘンを読む感覚であった。
「冬の一等星」 三浦しをん
昔、よく読んでいたしをんさん。これが収録された「きみはポラリス」も読んだことがあるが、幸いなことに内容は覚えてなくて、改めて感じられたのは、しをんさんは誰よりも人間を信用してるんじゃないのかなってことで、エッセイではあんなことを書いているが(誉め言葉です)、まほろ駅前シリーズも含めて、彼女の様々な境遇の元で暮らす人達への温かい眼差しには、一種独特な輝きを秘めているようで、読んでいて安心する。
「余命」 村田沙耶香
村田さんの作品は、一部のエッセイとアンソロ以外、全て読んでおり、これは「殺人出産」に収録された、医療の発達で何度死んでも蘇生できる世界で、自ら死に時と死に方を選ぶことをトレンド化することによって、死のあり方を問い掛けながらも、生きることの大切さに気付かされる、彼女お得意の皮肉の詰まった一品。
「さくら日和」 辻村深月
辻村さんも昔、よく読んでいた方で、その頃は、徹底的に痛いものを突き付けてくる人という印象だったため、こうしたマイルドなものも書くんだなといった驚きはあったが、それでも、その痛みを体感させられるリアルな感触は、相変わらず健在だなと感じさせるものがあった。
「タクシーの中で」 新津きよみ
マトリョーシカのように、真相が次々と様変わりして現れながらも、絶えず付き纏う恐怖が印象的ではあったが、ちょっとリアルさが薄かった分、やや興醒めの感もあり。
「超耐水性日焼け止め開発の顛末」 松崎有理
理系の人が書いたような、その専門用語の羅列には思わず引いてしまったが、そうした現実的世界に於いて、突如割り込んでくる非日常感のシュールさが、騙し絵のようで面白かった。
「石繭」 上田早夕里
この方も、フォローしている方々のレビューで、何度か見て気になっており、ファンタジーの要素を上手いこと現実世界に取り込みながら著したのは、仕事が絡んだ生きることの辛さに対する共感と、それでも生きていけるものがあることに対する共感とが重ね合わさった時に現れる、それは心強さであるはずなのに、なぜか悲しいものを漂わせた点に、現実世界の厳しさや複雑さを思い知る気分であった。
「冷凍みかん」 恩田陸
恩田さんも、昔よく読んでいた方で、これが収録された「朝日のようにさわやかに」も読んだはずだが、やはり覚えていなかったので、再度楽しめた感があり、この人の作品は、時に回りくどい理屈っぽさを感じるのが苦手だったが、これはシンプルに、得体の知れない絶対的恐怖を淡々と描いているのが好き。
「のっく」 新井素子
新井さんの優しい文体で改めて気付かされた、ノックをするという、その行為の特別感には、普段、何気にドアをコンコンと叩く時の心境に、まるで人の心をそっとノックする時の、ささやかな気持ちがリンクするような神秘性があるようで、そうした思いがその行為に表れる様にこそ、人間の魅力があるのかもしれないと考えさせられるものがあった。 -
〈 いろんな味が詰まったドロップの缶詰のように、ときめきや切なさ、驚きに怖さも、読み心地さまざまな15の物語。〉
これもたださんの本棚でみっけ((´∀`))
15編のショートショート
そうそうたる、しかも女性作家ばかり
病院の待ち時間にと読み始めたのだが、引き込まれ、診察の名前呼ばれるのが嫌だった(笑)
これだけあって、面白くないものが一編もない、というのがすごい!
それぞれ、ホント ドロップスのように味わいが違う
編集の新井素子さんの「まえがき」特に「あとがき」がよかったな
短い極上の時間でした
≪ それぞれに 異世界のドア 用意され ≫-
はまだかよこさん、おはようございます。
こちらも読んで下さり、ありがとうございます
(^∇^)
確かにショートショートでしたら、ちょっと...はまだかよこさん、おはようございます。
こちらも読んで下さり、ありがとうございます
(^∇^)
確かにショートショートでしたら、ちょっとした待ち時間に最適ですよね。
それから、物語に入り込んでしまい、本来の物事が煩わしくなるお気持ちもよく分かります(笑)
レビューに笑い混じりで書いてありましたから、大丈夫とは思いつつも、病院の待合室が少し気になってしまいました。
お大事になさって下さいね。2024/03/24 -
たださんへ
ありがとうございます
高齢者には病院通いは日常ですアハハ
あのうっとおしい時間も読書タイムと割り切って
文庫本じゃないと...たださんへ
ありがとうございます
高齢者には病院通いは日常ですアハハ
あのうっとおしい時間も読書タイムと割り切って
文庫本じゃないと、ね
これはぴったりでした!
コメントありがとうございました2024/03/24
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新井素子さんの本は読んだことはなかったが、タイトルとコンセプトに惹かれて。表紙もかわいい。ワクワクするまえがき、友だちと感想を言い合っているような気分になれるあとがき、作品の並びにも唸らされるものがあり、大満足。どれかが心に突き刺さったというよりは、読書って楽しい!と思わせてくれた一冊。
(本書はたださんのレビューで知りました。ありがとうございます。)
以下は私的備忘メモ。
■矢崎存美「初恋」
再読だったが、そういえば初めから家族とか出てきてたんだったか…。
■宮部みゆき「チヨ子」
私のチヨ子は今も実家ではなく自宅におります。「初恋」からの並びも良い。
■高野史緒「舟歌」
誰も聴いてくれない?解決になった?
■図子慧「ダウンサイジング」
ここも前作からのつながりが見事。ラストじんわり。
■萩尾望都「子供の時間」
“赤ん坊は生まれたとき、みんな泣くんだ”
■堀真潮「トレインゲーム」
あはは
■皆川博子「断章」
(わからなかった)→あとがきの“絵画を鑑賞する気分”との言を得て再読。たぷたぷ。
■三浦しをん「冬の一等星」
“星座を探すような歯がゆさ”
■村田沙耶香「余命」
彼女の描く世界では色んな物がなくなっているけど、ここでは「死」がない。
■辻村深月「さくら日和」
食べたい。じゃなくて、初恋にきゅん。
■新津きよみ「タクシーの中で」
二転三転。
■松崎有理「超耐水性日焼け止め開発の顛末」
知ってる作品かなと思ったら違った。私が読んだのは高山羽根子さんのUVものだった。UVものというジャンルの成立を見ることになるとは。
■上田早夕里「石繭」
“虚構と物語があれば何とか道を歩いていける”
■恩田陸「冷凍みかん」
やばっ。
■新井素子「のっく」
のっく大事だな。-
たださん、コメントありがとうございます。
「舟歌」私の浅はかな感想がお恥ずかしい…ただ○○てくれる存在がAIというのが、私がAIをあまり信じ...たださん、コメントありがとうございます。
「舟歌」私の浅はかな感想がお恥ずかしい…ただ○○てくれる存在がAIというのが、私がAIをあまり信じきれていないためか、そんなのつとまるのかなあという疑いが邪魔してしまっていました。たださんのコメントを読んで味わい直せました。また、人間だったとしても「ただ○○」って難しいかもしれないなあなど…。
アイコンは、『チヨ子』に触発されたのも変えた理由のひとつです(*^^*) うん十年もののぬいぐるみです。2024/06/29 -
akikobbさん
あくまで私見なので、そこまで言って下さり、恐縮です(^_^;)
私が感じたのは、先入観を持たずに余計な茶々をいれない存在...akikobbさん
あくまで私見なので、そこまで言って下さり、恐縮です(^_^;)
私が感じたのは、先入観を持たずに余計な茶々をいれない存在は、時に大事にされるのかなといった印象で、人間にはそれが出来そうも無いから、AIに託したという見方もできそうな、ショートショートらしい、いい作品ですよね。
akikobbさんのレビューですと、恩田陸さんの「冷凍みかん」、まさにその一言に尽きると思いまして、私は二度目だったのですが、読み始めてすぐに内容を思い出しました。
これは怖い。
それから新しいアイコン、「ぶたぶた」を思い出させる味のある表情がいいなと感じまして、長年大切にされてきた雰囲気を醸し出しているような、不思議な魅力もありますね。2024/06/29 -
『冷凍みかん』、素朴さや懐かしさやみかんの色鮮やかさからの急展開が、ショートショートらしいですよね。芥川の『蜜柑』や星新一の『おーい、でてこ...『冷凍みかん』、素朴さや懐かしさやみかんの色鮮やかさからの急展開が、ショートショートらしいですよね。芥川の『蜜柑』や星新一の『おーい、でてこーい』を思い出しました。
村田沙耶香さんも、このアンソロジーに馴染みながらも、どう見ても村田沙耶香という個性を放っていて好きでした。
アイコン変えようかなと思っていたところに、ぶたぶた→チヨ子のコンボでこの子を思いついて撮影しました♪ぶたぶたは片耳がひっくり返ってますが、この子は鼻がこすれて繊維がハゲてるのが特徴ですw2024/06/29
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15人の作家によるショートショートのアンソロジー。内容も雰囲気も文章も、それぞれ違って楽しめる。
別の本に収録されていて読んだことがあるものもあったけれど、知らない作家さんの作品を読むことが出来てよかった。
堀真潮さん著「トレインゲーム」
電車内トラブルを回避する方法がユニークだなあ。スカッとする話は短いほど気分がいい。
村田沙耶香さん著「余命」
こんなふうに死を選べる世界を想像してみる。どれだけ生きたら満足するかしら。
松崎有理さん著「超耐水性日焼け止め開発の顛末」
どんな顛末なのかと思ったら、そう来るとは。これぞショートショートという感じで面白かった。 -
女性作家による15のショートショート作品集。
バラエティ豊かで、ドロップみたいにいろんな味のお話が集められてます。不思議な話。怖い話。ニヤリとする話。ゆっくり楽しく読了。
三浦しをんさんの「冬の一等星」は、出典文庫を読んでいたのにすっかり忘れてて。不思議で素敵な話でした。しをんさん、改めていいなぁと。
新津きよみさん、堀真潮さん、辻村深月さん、松崎有理さんが特に気になりました。さらに他の作品も読んでみたい。
まえがき&あとがきが新井素子さん(あぁこの口調?文体?懐かしいです)
まえがきで、長くて選にもれた作品が幾つかあると書いてらっしゃったのも大層気になります。
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ショートショートのサイズで、色とりどりのお話に出会えて、なかなか幸せ。
あっという間に読み終えてしまった。
三浦しをんの「冬の一等星」だけ読んだかな?
二回目読んでも、ドキドキしてしまう誘拐劇。
文蔵さんと映子のやり取りが、最後まで読み切って思い出すと、切なくなる。
新たな発見が、堀真潮「トレインゲーム」。
電車の座席を巡って、熱いバトルが繰り広げられる。私、今の定期券だったら割と強いカード引けそうな気がするんだけどな(笑)
オチに笑わされたので、あらためて元の本買う。
恩田陸「冷凍みかん」も、宮部みゆき「チヨ子」も短くても上手くて、面白い。
大体、冷凍みかんから地球儀を想像することも、着ぐるみを着た目から懐かしくて大切なものが見えることも、その着眼点がすごすぎる。
読まされたのは、辻村深月の「さくら日和」と、続く新津きよみ「タクシーの中で」。
「さくら日和」は、特別にたい焼きをもらう女の子の恋心に寄り添って読むんだけど、クライマックスからのお母さんのさぁ、娘の気持ちに対する気遣いがめちゃくちゃ素敵な描写で、沁みたよー!(急に熱く語る)
「タクシーの中で」は、それとは対照的に構成がすごく面白い。
ある意味、よくあるホラーの設定なのに、いつまでもいつまでもゾワ!が繰り返されて最後まで混沌とさせるのが、ほんとすごい。
短いからこそ、そういう、書き手のうまさが際立つのかもしれない。
アンソロジーにあるチグハグ感が、この一冊ではそれぞれの得意な武器出してますよー!って感じで、とても良かった。 -
新井素子編集の、女性作家によるショートショート集。
まず、まえがきから面白い。新井素子さんの文章を読むのはかなり久々なので、変わらない「新井節」に嬉しくなる。ショートショートと呼ぶには長めの作品もちょいちょいあるけれど(選択にあたっての苦労は、まえがきで述べられている)、そりゃ載せたくなるよなという名作ばかり。どれもさすがと言いたくなる、粒ぞろいな一冊だ。
お気に入りは…
萩尾望都「子供の時間」活字でもしっかり萩尾ワールド!いずれ出典元の作品集も読みたい。
図子慧「ダウンサイジング」ある意味シビアな現実に、色々考えさせられる。淡々としているけど切ない。短いながら重厚な世界観、コバルト作品を描いてらしたときから好きです。
堀真潮「トレインゲーム」初読みの作家さんだが、電車内での挑む/挑まれるゲームとは発想がユニークだし、爽快感もあり。
村田沙耶香「余命」構成も、意外な結末も、どれを取っても完璧。これぞショートショート!と言いたくなる傑作、ヒィッと声が出そうになった。
15粒のドロップは甘いかと思えば苦かったり辛かったり酸っぱかったりもするが…おいしいことは間違いないです!アンソロジーの魅力をたっぷり味わえる。 -
ハズレなく、どれもとても面白かった。
短編の物足りなさもなく、ショートショートの面白さが詰まっていた。
特に好きだったのは、
初恋…出だしからびっくり、面白い!
トレインゲーム…現実にこんなゲームあればいいのに
冬の一等星…心あたたまるエピソード。いい人だったんだろうな、どこ行ったんだろう、また会えるといいな。
さくら日和…女の子の甘酸っぱい恋愛がよかった
タクシーの中で…二転三転する感じが好き -
宮部みゆきさん、辻村深月さん、恩田陸さんetc...
名前を見ただけで胸が躍る豪華執筆陣。
『これは読まなければ!』という気持ちになるショートショート集です。
15人の女性作家によるショートショートのアンソロジー。
ベビーシッターがぬいぐるみだったり、着ぐるみを被ると不思議なものが見えたりと、非日常的な物語がぎゅっと詰まっています。
短いながら、どの作品も印象に残るものばかり。
とっても読みごたえがあります。
それぞれの作品が独自の世界観を持ち、短いページ数の中でしっかりと物語が展開されます。
個人的なお気に入りは恩田陸さんの『冷凍みかん』。
メモの秘密が明かされる展開は秀逸でした。
『私は大人になるまでも、大人になってからも、星座を探すような歯がゆさを何度も味わった。「あの星とこの星を結んで」と説明しても、並んで夜空を見上げるひとに、正確に伝わっているのかどうかはわからない。確認する術もない。多くの人が経験したことがあるだろう、歯がゆさだ。
そんなとき私は、文蔵と見た夜空を思い起こす。全天の星が掌に収まったかのように、すべてが伝わりあった瞬間を。あの時の感覚が残っているかぎり、信じようと思える。伝わることはたしかにある、と」
『冬の一等星』三浦しをんより
この言葉には、多くの人が共感できる『伝えることの難しさ』と『通じ合う奇跡』が凝縮されています。
三浦しをんさんの『冬の一等星』は、不思議で切ない作品で、この言葉が物語の余韻をさらに深くしてくれています。
短い物語でも、心を動かす力があることを改めて実感したショートショート集。
物事の見方を少し変えるだけで、日常が違って見えることを教えてくれるでしょう。
短時間で読めて気軽に物語の世界に浸りたい人、参加されている女性作家のファン、そしてちょっと不思議な話が好きな人におすすめです。
ベッドサイドに置いて、寝る前に1話ずつ読むのも良いかもです。
著者プロフィール
新井素子の作品






既刊小説のアンソロジーなんですね。冒頭の矢崎さん「初恋」は、あのシリーズの...
既刊小説のアンソロジーなんですね。冒頭の矢崎さん「初恋」は、あのシリーズの、確か第一作の第一話じゃないかと思われます。第一作は丸ごと一冊読むとさらに楽しめますのでご興味持たれたらぜひ♪
他にも、舟歌やSFなど気になるキーワードがたくさん…。
でもいちばんの衝撃は恩田陸さんが女性だということ…。名前しか存じ上げず、てっきり男性だと思いこんでいました…はずかし。
そうです。全て初出が別にあるアンソロジーなので、知らない作家が多い方が、きっと楽しめる...
そうです。全て初出が別にあるアンソロジーなので、知らない作家が多い方が、きっと楽しめると思いますが、読んでみようと思っていただけたこと、とても嬉しいです!
ありがとうございます(^∇^)
そして、矢崎さんの「初恋」は・・・正解です(笑)
初めて読みましたが、面白いのと、ちょっと切ないのとが、ない交ぜになっているのが良いですね。
第一作、是非読みたいと思います♪
あとは、akikobbさんが挙げられた辺りも良くて、SFを読んで、しんみりしたのは初めてかもしれず、特に萩尾望都さんは、漫画だけでなく、小説もこれだけ印象に残るような素晴らしいものを書かれることを知ることが出来たのが、本書を読んだ、いちばんの収穫でした。
それから、作家の性別の勘違いは、名前がそれっぽいと、どうしても間違えやすいですよね。私もありますよ。
恩田さんに関しては、新潮文庫の作者紹介が写真付きだったので、女性だと知っていましたが、私の場合、稲垣足穂を女性と勘違いしたり、あとは、海外の絵本作家の名前が、生まれた国によっても、男性なのか女性なのか迷うときがあって、レビューを書くときにネットで調べることは、よくあります(^^;)