魔力の胎動 (角川文庫)

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  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096741

作品紹介・あらすじ

彼女には、自然現象を見事に言い当てる、不思議な“力”があった。彼女によって、悩める人たちが救われて行く……。東野圭吾が価値観を覆した衝撃のミステリ『ラプラスの魔女』につながる希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ラプラスの魔女「円華」の強さが光る! 現代人の悪癖や醜態の示唆に富むシリーズ第二弾 #魔力の胎動

    ■きっと読みたくなるレビュー
    主人公ラプラスの魔女「円華(まどか)」が、苦悩している人たちに手を差し伸べるシリーズ第二弾。前作とも関連する作品も含まれる、全5編の短編集。

    面白いなぁ~
    本作のキャラクター特性を生かした作品集で、バラエティに富んでいて読者を飽きさせない。人と人の繋がりや発展を描くのがホントお上手で、どの作品にもわかりやすく強いメッセージ性がある。

    そして前作のキャラクターの物語に登場の仕方や関わり方が、めっちゃ上手いんだよなぁ。ついつい前作を本棚から持ち出し、ペラペラめくっちゃう。そして本シリーズの世界観に没入しちゃう。これ神業だと思いますよ、さすが日本一のミステリー作家だと思います。

    個人的には前作よりも切れ味があって好きですね。目いっぱい楽しませてもらいました!

    ○あの風に向かって翔べ
    引退間近のスキージャンプ選手の物語。
    一編目ということで設定もプロットもキャラ付けも分かりやすいですね。そしてやっぱり円華が可愛いということを思い出す。

    ○この手で魔球を
    プロ野球選手、ナックルボーラーバッテリーの苦悩。
    円華の責任感、意思を強く感じる作品。カッコイイ…惚れる

    ○その流れの行方は
    息子が川で事故にあってしまったことを悔やみ続ける父親が…
    最も東野先生らしい作品、家族の問題を優しく描く。円華の想いはいつもシンプルで強い。読者に大切なことを思い出させてくれます。

    ○どの道で迷っていようとも
    パートナーを失って作曲ができなくなった音楽家の物語。

    ★5 素晴らしい!
    前作とシンクロする作品で、短編にもかかわらず色々なエッセンスが濃縮されています。大切なことを教えてくれる、読んでおくべき作品です。

    ○魔力の胎動
    本シリーズのエピソードゼロ。
    謎解きと真相が秀逸ですね。そして愛に溢れ、切なくも哀しいお話です。

    ■きっと共感できる書評
    2023年7月、また悲しいニュースを聞きました。誹謗中傷する人間は、罰せられるべきです。そして、こうあるべきと理想を述べたり、変えていこうという姿勢も大切です。

    しかし世の中全員の心をひとつにするのは、現実的に不可能なんです。できるなら、とっくに戦争なんてなくなってるよ。

    襲ってくる言葉の津波から罵倒される人たちを救うには、一体どうすればいいのでしょうか。いつもよく考えることなのですが、それは本当に難しく… それこそ、魔力が欲しいと祈りたくなりました。

  • ラプラスの魔女のスピンオフ的な一冊。
    ナユタを中心に置いて話を進行させた円華の活躍。
    でも、ラプラスの魔女ほどにはキレがなかった気がする。でも円華は魅力的なキャラなので次回作を楽しみにしたい。

  • 『ラプラスの魔女』に続くシリーズ第2作目。
    再読です。
    ブクログを始める前に読んだのだけど、
    内容をあまり覚えていなかった…。
    ちょっとショック!

    第一作目の『ラプラスの魔女』で
    温泉地の硫化水素事件を解決に導いた
    不思議な能力を持つ
    ピンクのニット帽の高校生、羽原円華。
    この作品『魔女の胎動』は、その前日譚。
    その不思議な力で、円華が
    関わる人々に救いの手を差し伸べます。

    1章:飛距離が伸びなくなったスキージャンパーに。
    2章:自信を無くした捕手に。
    3章:息子の事故で自分を攻め続ける高校教師に。
    4章:曲を作ることができなくなった作曲家と
    この作品の語り部である鍼灸師の心の闇に。

    そして、第5章は第一作目への橋渡し。
    とある温泉地の駅。
    女の子の手から飛ばされてしまった紙風船。
    突然の強い風だったにもかかわらず
    正しい落下位置にすっと手を伸ばした少年がいました。
    『ラプラスの魔女』を読んでいれば、それが誰で、
    どんな問題を孕んでいたのかが閃くという仕組み。
    お洒落なエンディングです。

    円華は独特の世界観を持っています。
    「人は原子で、物質を構成する基本的な粒子。
    一人一人は無自覚に生きているだけだとしても、
    集合体となった時、劇的な物理法則を実現していく」
    科学を愛する東野圭吾さんらしい世界観だなと思いました。

    久しぶりに読んだ東野圭吾さんはやっぱり面白い。
    途中で辞められなくなって、つい夜更かし。
    もうすぐ ラプラスシリーズ3作目 が発売されます。
    図書館派の私が手に取るのは少し先になりそうだけど
    わくわくしながら、待つのを楽しむことにします。

  • ラプラスの魔女のサイドストーリ
    前作を読んだのが約3年前
    ストーリや登場人物はほとんどが忘却の彼方でしたので、前作のあらすじ、ネタバレをググって予習しました

    これ、続けて読まないと面白さが半減かも...

    ストーリとしては短編連作の物語
    鍼灸師のナユタとともに、円華の能力が様々な人々を救っていきます。

    第一章は引退目前のベテランスキージャンパーの物語。
    円華が風の向きを予測し、スタートのタイミングを合図することで、風にのって長距離ジャンプが可能に。
    家族の支えが暖かい

    第二章はナックルボールを補給できないキャッチャーを立ち直させる物語。
    円華の立てた作戦とそれが実行できる円華がすごいですが、それをさらに確実なものとした先輩キャッチャーが素晴らしい。これまた暖かい。

    第三章は息子が植物状態になってしまった水難事故から立ち直れない父親の物語
    円華が水難事故を再現することで、父親を救います。

    第四章は同性愛者であることカミングアウトした作曲家のパートナーが謎の死。パートナーは同性愛者と広まったことを苦に自殺したのか?
    円華がその真相を明らかにすることで、作曲家を立ち直らせるとともに、ナユタ自身の過去や甘粕才生との関係が明らかになります。そこで、ナユタ自身も吹っ切れることに。
    この章は考えさせられます。
    LGBTに対する考え方、とらえ方。
    そこにあった「愛」
    この章はよかった。

    第五章はそれまでの癒しや救いとは関係なく、「ラプラスの魔女」に出てきた青江先生の物語。
    火山ガス中毒死の事故原因を解き明かしていきます。

    5章って必要?
    4章まででよかったのに(笑)
    円華の能力が救う様々な人々ってな感じで...

    ということで、ラプラスの魔女のストーリを忘れないうちに本書を読むことをお勧めします。

  • 「ラプラスの魔女」の前日譚。

    工藤ナユタは鍼灸師をしている。彼の顧客の1人である坂屋に呼ばれ、施術をする。坂屋はスキージャンパーだ。近年の成績はあまり芳しくない。不振の原因解析のため、2人の知り合いである、流体工学が専門の筒井の元で先日の試合の映像を見ていると、そこに別の要件で筒井を訪ねてきた羽原円華が現れる。成り行きで坂屋のことを聞いた円華は、彼のために一役買うと申し出る。

    本書は、連作短編集となっている。ナユタの顧客やゆかりのある人の悩みを円華が不思議な力を使って解決に導く。実は円華はある目的のために行動していたのだが、その目的とは?というのが読みどころ。

    最後に、「ラプラスの魔女」のもう1人の主人公である青江教授が、なぜ赤熊温泉の事故を調査することになったのかについても一編書かれている。

    「ラプラスの魔女」の話の背景を補完できた。次はいよいよ最新刊を読もう。

  • 上司に"ラプラスの魔女"とセットで借りたので読んでみた!
    自然現象を視点に色々な謎を解いていく短編集。
    ミステリー要素は少し少なめかな?
    でもどう繋がってくのか気になってあっという間に終わってしまった!
    この後から読む"ラプラスの魔女"とどう繋がるのか楽しみ!

  • 魔力の胎動 東野圭吾

    1.ラプラスと主人公。
    「ラプラスの魔女」との関連物語。
    ラプラスとは、1749から1827年に存命したフランスの数学、物理、天体学者。
    現象のすべては、原子の動きで決定されるとの理論を導いた人。

    小説の主人公は、この「ラプラス理論」を実践できる少女。
    物理、気象を読み解き、事件または事故の真相に迫る。

    「魔女の胎動」。
    こちらも、同じく、事件または事故の真相に迫る。
    殺人事件を紐解くわけではないため、平和である。

    ------------
    2.魔力の胎動/物語
    短編集。
    ①引退間近のスキージャンパー。
     足にけがもあり、爆弾抱える。
     有終の美にむけて、少女が考えた対策とは?

    ②盲目の作曲家。
     大切なパートナーが崖から転落。
     失意にくれ、作曲活動は疎遠に。
     事件か?事故か?
     少女が考えた証明理論とは?

    ③教師。
     大切な1人息子が水難事故に。
     両親として、飛び込んで助けていたら、、、。
     後悔の念を引きずる彼に、少女が見せた現実とは?

    ------------
    3.読み終えて
    仕事の原因を、環境/外部✖️能力/内部と考えた場合、環境を整える、パフォーマンスが再現できる状態にするは大切です。

    小説は、少女が、この環境を見事に再現していきます。特殊な能力を用いながら。

    そうした視点で、小説をとらえなおしました。


  • ラプラスの魔女シリーズ2作目。短編集。
    円華が周りで困っている人を助けていくお話。
    読んでいて円華の行動力と言動が気持ちよかったです。
    新しく登場したナユタの人物像にも惹かれるものがあり、上手く設定を生かした短編とその繋がりを考えるのも楽しめました。満足です。

  • 「ラプラスの魔女」の、前日談を含むスピンオフ作品集。

    第一章から第四章までは、円華が奇跡を起こし人々を救う連作短編(第一章は不調続きのロートルジャンパーに円華がいい風の吹くタイミングを合図する「あの日に向かって飛べ」、第二章は捕球イップスの捕手を立ち直らせるべく円華が一計を案じる「この手で魔球を」、第三章は息子の水難事故で自責の念に駆られつづける教師の心を円華が救う「その流れの行方は」、第四章はLGBTであることをカミングアウトしパートナーを喪った音楽家の心を円華が癒す「どの道で迷っていようとも」)。そして第五章は、「ラプラスの魔女」の3年前に起きた火山ガス中毒死の事故原因を青江先生が解き明かす「魔力の胎動」。

    スポーツ選手ものでずっと行くのかと思ったら違った(それはそれでアリなんだけど)。

    気が強くストレートな物言いの円華、いい味出してる。

  • うーん、いまいち。
    短編なんだけど、最終章は表題作だけど、読む気にならなかった…
    ラプラスを読んだはずだから、ラプラスと続けて読めば面白いのかも。

    確かに、それまでの章は、まあまあ勢いもあり、物理学に詳しすぎる女の子という異様な設定でも、ついつい読んじゃったけど、
    4章めの、LGBTの話になってからは、なんか結末が中途半端で、結局ナユタってどうなったんか謎で(吹っ切れはしたんだろうけど)
    5章めはナユタも円華も出てこんし、なんだかなぁ、と、脱力感。

    もっと面白く書けてただろうに。東野さん。
    残念。

    私の代理が足りないってのもあるんだけど。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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