最後の晩ごはん 地下アイドルと筑前煮 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 426
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096819

作品紹介・あらすじ

夜だけ開店中の芦屋の定食屋「ばんめし屋」に現れた、迷惑な酔客。カラフルな髪色をした彼女はなんと地下アイドル。人生に疲れ、昔ファンだった海里に会いに店に来たというが、酔いのあまりに大暴走で……

感想・レビュー・書評

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  • 夜だけ開店の<ばんめし屋>シリーズも14作目。ついに最新巻に到達した。

    今回の客・レイナの登場は不穏。泥酔した挙げ句、海里にアイドル時代のオーラがない、品切れのトンカツをどうしても食べたいなどと言いたい放題、死ぬの何だのと大騒ぎ。
    しかしそこは長らく夜中の店で客商売をやってきた夏神。見た目もあっての堂々としたあしらいでレイナを黙らせる。対照的に柔らかなロイドとただ心配する海里に後押しされてタクシーで帰っていく。

    今回は珍しく厄介な客に悩まされるのか…と思っていたが、そこはホッコリするこのシリーズ。次の日のレイナは酒が抜けてすっかりしおらしくなっていた。
    話を聞くと、地下アイドルとして活躍していた彼女はグループの空中分解と共に様々な出来事が重なってすっかり未来にたいする希望を失っていた…。

    今回は直接的な幽霊話は無し。そのタイプもこれまであったので特に違和感は感じなかったが、最後にちょこっとだけ「それっぽい」現象が。

    かつての海里もそうだったが、今回もどん底にいるレイナを夏神の料理が救う。お金をかけた材料でもない、豪勢なメニューでもない。雑炊だったり煮物だったりといわゆるシンプルなメニュー。
    でもそこにかけられている手数が自分のためだと思うとすんなりと口に入っていく。
    やはり食というものは究極の話、命の根源、大事なんだなと思う。

    この14作目にしてついに夏神にも心の安寧が訪れる。
    その前触れは亡くなった彼女の夢なのだが、こんなささやかなことですら幸福感だったり彼女に対しての思いを新たにしたり、物事を前向きに考えられるようになったということが、これまでどれほど苦しい思いをしてきたのだろうかと思えて切なかった。
    だが夏神の表情が明るく、海里やロイドはもちろんのこと、常連客の坂口にまで彼女のことを話せるようになったことは素直に嬉しい。
    幽霊として姿を見せることはない彼女だが、もしかしたらレイナの時のように、何らかの形で夏神を見守ってくれているのかも知れない。

    一方の海里。これまでも度々役者の道へ戻る第一歩のようなものがあったが、今回はついに朗読劇へ出演することが決まる。後押しをするのは勿論、師匠の倉持悠子と作家の淡海。
    淡海の書き下ろし原稿と倉持悠子のレッスンで、どんな朗読を聴かせてくれるのか楽しみだ。

    常連客の坂口と目が不自由な瞳との交際もゆっくりと、二人のペースであるが順調らしい。喧嘩もできるというのはそれなりに親密度が増してきた証。今後もゴタゴタはあるかも知れないが、<ばんめし屋>の面々も見守っていることだし大丈夫だろう。

    今後も楽しみ。

  • シリーズ第14弾。
    この物語の舞台である「ばんめし屋」に現れたのは、地下アイドルのレイナ。
    「人生最後の夜にトンカツを食べに来た」と、泥酔状態で暴れる。
    今回はどうなる事かと思ったが、これまた良いお話しにまとまり、胸が熱くなりました。

    夏神は、亡くなった彼女が夢に現れ、「愛しい人が今も傍にいてくれる。共に歩んでくれている」
    と言う感覚を得る。
    これまで長い間苦しんできた夏神が、やっと穏やかな気持ちを持てるようになったのかな。
    新聞の連載「昔の味を、今日の食卓に」の仕事も順調らしい。
    なんだか読者である自分まで、その仕事に参加している気になり、ワクワクしてしまう。

    海里は、ついに朗読の舞台に立つチャンスをもらう。
    こちらもまたワクワクしてしまう。
    この朗読の師匠である悠子さんの言葉が、いちいち心に響き、良いなぁ。
    「摩擦を避けるための無難な選択が常に正しいとは限らない」とか、たくさん考えさせられる言葉が出てくる。

    今回は幽霊の登場はなかったが、それっぽい現象は起こる。
    思い出の料理のチカラって、凄いなぁと、しみじみ感じる。

  • シリーズ14作目。
    もうそんなに来たんだ、と驚く。
    だが、マンネリを感じないのは、物語が少しずつ進んでいるからだろう。

    キャラクターともすっかりお馴染み。
    読み始めると安心する。
    「久しぶり、何してた?」という問いに、実はこんなことがあってさ〜、と主人公・五十嵐海里くんが話してくれるエピソード…そんな気がする。
    今回は、「亡くなった人の、この世に残した思い」が、今までとは少し違った形で表現される。

    海里は演じることに一歩踏み出す。
    夏神は、また一つ吹っ切れた。
    ロイドの“年の功”が渋く輝く。

    今回のお客様は、元・地下アイドルのレイナ。
    若い頃は、バンドで、アイドルで、世に出ようと思う子はたくさんいる。
    魅力ある世界なのだ。
    しかし、不安定な立場だけに、その後を考えるのは難しそう。

    倉持悠子さんというキャラクターを登場させることで、随分、作者の伝えたい内容を言えているではないか、という気がする。
    “安易に同意してしまうことの危険性”にも気付く。

  • 最後の晩ごはん、14巻目。
    海里の芸能人時代のファンという、元地下アイドルの女性、レイナが泥酔状態でばんめし屋に現れ、言いたい放題の大暴れ、どうにかなだめてタクシーまで呼んであげるばんめし屋の面々は本当にお人好しで良い人揃い。私だったら警察呼ぶ(笑)何となく、レイナはファーストサマーウイカのイメージだった。レイナも彼女みたいに解散後に人気者になればいいな。それにしても、何においても全肯定してくれるロイド…毎回思うけど、一家に一台欲しい、この眼鏡。
    そして、夏神さんが亡くなった彼女のことを口に出して語れるようになったことが嬉しい。いつか、彼女がばんめし屋に現れてくれるのかなーなんて思ったり(それはシリーズが完結する時だろうか)
    結構長く続いているシリーズだけど、毎回登場人物たちが少しずつ前に進んでいくのが分かって良い。続きも楽しみです。

  • 中盤、引っかかる点が。
    ノック3回のマナーについて。

    マナーを守る海里に対して、悠子は「摩擦を避けるための無難な選択が常に正しいとは限らないこと、時には頑固に自分が思う道を行くことも大切だってこと。これはマナーの話じゃなく、むしろ表現者としての振る舞いの話よ」と。

    これは違う。
    表現者としての振る舞いを説く引き合いに、マナーを持ち出すのはおかしい。

    確固たる自信がない限り、マナーを守る必要はないと言っているようなもの。
    冠婚葬祭のマナー、食事のマナー、色々あるが、マナーとはそもそも表現の方法ではなく、相手や周囲を思いやることが根底にあるもので、主となるのは己ではない。

    悠子自身、「迷い箸をしてしまいそう」とマナーを気にしているではないか。

    前回までは素敵な人だと思っていたが、この件で「なんだ?このおばさん…」と一切の魅力を感じなくなってしまった。

  • 14弾。地下アイドル。幽霊がくるばんめし屋。会いたくて望んでいても来ない人もいる。亡くなった人への想いを抱いて、残った人はいきていく。

  • 今回のレビューは少しドラマチック。

    Amazonからこの本が届いた時
    私は別の本を読んでいたので 
    やはりこのシリーズを楽しみにしている妻に
    先に回した。

    一昨夜読み終えたらしく私の枕元に。
    その夜は少しだけ読んで眠りに落ちた。
    昨夜も読みながら寝落ちしたが 
    まだ3分の2くらい。

    …そうして今朝 やっとわかった。
    昨夜の夕食に 妻が
    山盛りの筑前煮を作った理由。

    しかも一度も入れたことのない
    甘栗入りで。

    「…大根、人参、牛蒡、レンコン、蒟蒻、鶏肉…」

    具材もほとんど同じやん。

    「食材をようけえ使うから、絶対失敗せんようにて、全部下茹でしてました」

    作り方まで…再現してたんや。。

    振休の朝 コーヒー飲みながら読み進めていて
    そのシーンにようやく行き着いた。

    「これや!」

    登場人物にとって大切な料理。まだ少し取り置きしていたはず。妻が再現してくれたその味をもう一度 昼食に食べようと思う。

    レイナの祖母の味。亡き母が大好きだったという筑前煮。

  • シリーズ14弾。もう14弾⁉︎
    海里や夏神の成長・葛藤に応援してあげたくなる。
    もちろん料理からも目が離せず。
    ただ、今回はストーリーにあまり入り込めず(>_<)

  • 今回は、幽霊さんの登場がなかった!幽霊になりかけた(?)レイナさんのお話。
    レイナ母と淡海先生が知り合いだったっていうのは、ちょっと不自然かとも思ったけれど、先生の自宅と芦屋神社の位置関係、またロイドとの出合いの場だったことを思えばまあ許される範囲かな。
    悠子先生の強い力(影響力ってことよね?)の話には感動した。次回作では海里くんの朗読も聞けそうで楽しみ。
    そしてなにより精神的にも強くなった夏神さんが、まぶしくさらにかっこいい(^^)b

  • 元地下アイドルが死にたいと思うほどの事情をもって、暴風雨の中店に泥酔状態で現れる話。
    今回は幽霊が出てくるわけではないですが、離れていても、顔がわからなくても親は親なんだなと思いました。
    甘栗入りの甘い筑前煮というのがどういうものなのか気になります。

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著者プロフィール

作家。監察医。講談社ホワイトハート「人買奇談」にてデビュー。代表作は「鬼籍通覧」シリーズ、「奇談」シリーズ(講談社)、「最後の晩ごはん」(KADOKAWA)、「時をかける眼鏡」(集英社)など多数。

「2022年 『最後の晩ごはん ゲン担ぎと鯛そうめん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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