文庫版 妖怪の宴 妖怪の匣 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 143
感想 : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096840

作品紹介・あらすじ

誰もが知っている"妖怪"。この不思議な存在は、どのように人々の心に育まれたのだろうか。伝統文化、アニミズムから、特撮、オカルト、UMAに至るまで、さまざまな例を引きながら"妖怪"の真実に迫る!

感想・レビュー・書評

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  • 2020/11/20 読了
    さっさーと読むのが良い

  • ・京極夏彦「妖怪の宴 妖怪の匣」(角 川文庫)を読んだ。「例によって驚くような結論はありません。本書は、『考える』試みというだけなのであり、論文や評論ではないからです。あまつさえエンターテインメントでもミステリでもないので、胸のすく解決も、どんでん返しもありません。」 (360頁)何があるのかといへば、「本書でふれている事柄をひとつも知らなくても」(同前)何も困らない。「この本は『無駄』なの です。時間の無駄、紙の無駄、労力の無駄ーーあらゆる無駄の集積です。」(同前)大体、妖怪自体が「どこをとっても無駄ーーあらゆる 無駄の集積なの」(361頁)だといふ。しかし、である。「無駄のない人生ほど、つまらないものはありません。」(同前)といふわけ で、本書の存在意義もそこにあるといふことであらう。「人間には、社会には、無駄が要るのです。(中略)私たちは、日々懸命に、努力して無駄を生み出しています。」(同前)その無駄の一つが本書なのである。本文だけで370頁近くもある本書が無駄の集積なら、それ は正に「時間の無駄、紙の無駄、労力の無駄」である。筆者の時間、読者の時間、筆者には原稿料が入るだらうから最終的には無駄には終はらない、たぶん。しかし、読者にそれはない。結局、無駄で終はるしかない。そんな書を物しただけでもこの京極といふ人は立派であ る。京極は全日本妖怪推進委員会の肝煎りであつた。過去形なのは今はないからである。なぜか。妖怪を「推進する必要がなくなってしまった」(367頁)からである。妖怪ブーム、ここに極まれり、と書きたくなるが、ところが実際には更に先に進んでゐるらしい。 「“妖怪“は、明らかにこれまでとは異なったフェイズにはいりつつあるようです。」(同前)このフェイズ、本書のやり方にならへば、 変化する過程の一区切り(大辞林)といふことであらうか。「“妖怪“は常に時代とともに新しい枠組みを獲得していくものなので」(同 前)、「それぞれの時代の“妖怪“的なものを俯瞰するに、その差は歴然としています。」(同前)昭和には昭和の、平成には平成の、そ して令和には令和の妖怪がいる、らしい。私にはこのあたりは分からないのだが、現在は実に多様な形で妖怪が世間にあふれてゐるとは思 ふ。それらは皆無駄なのである。本書で最も優れてゐるのは、妖怪や本書は無駄だと言ひきつてしまふところである。世の中、無駄を省かうとの動きばかりである。そんな時流に刃向かうことなく、本書は無駄だ、「“妖怪“はテキトーなものなのです。(原文改行)“妖怪 “はそのくらいのゆるい感じがいいようです。」(8頁、「ゆるい」に傍点)と書きつつも、本書をなした京極を、私は〈尊敬〉してしまふ。
    ・本書は実に理屈つぽい書である。大体、推理小説といふもの、理屈がなければ作れない。それなりの理屈とトリックがあるからこそ小説として成立する。京極の長大な作品群に無駄はない。本書は余技にしては手がこんでゐる。辞書に博く言葉の意味を求めることから始める。それは実に細かい。「ばけもの」に始まり、とりあへず「おばけ」に終はる。かういふのが無駄の実体なのか。そんな無駄が読者を幻惑してやまないのが京極流なのであらう。個人的には、第2部の「幽霊について考えてみる」からまともに読み出したといふ感じである。 無駄がこたへて、ついそれに乗つてしまつた……かういふゆるい読み方こそが本書の醍醐味であらう、と言へるかどうか。たぶん言へな い。相当の覚悟で臨まないと本書は読めないと書いておく。さう、そんなゆるい、無駄の、であるが、実に難い書であつた。続編が出たら読まう!

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著者プロフィール

京極夏彦
一九六三年生まれ。九四年『姑獲鳥の夏』でデビュー。九六年『魍魎の匣』で第四九回日本推理作家協会賞(長編部門)、九七年『嗤う伊右衛門』で第二五回泉鏡花文学賞、二〇〇三年『覘き小平次』で第一六回山本周五郎賞、〇四年『後巷説百物語』で第一三〇回直木三十五賞、一一年『西巷説百物語』で第二四回柴田錬三郎賞を受賞。他の著作に『数えずの井戸』『死ねばいいのに』『虚談』『ヒトごろし』「書楼弔堂」シリーズ、「京極夏彦の妖怪えほん」シリーズ、『遠野物語remix』、『地獄の楽しみ方』などがある。

「2022年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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