テスカトリポカ

著者 :
  • KADOKAWA
4.18
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本棚登録 : 1402
感想 : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041096987

作品紹介・あらすじ

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。

感想・レビュー・書評

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  • 海外の翻訳小説を読んでいるようだった。
    正直、読むのにエネルギーが必要だった。…つかれた。笑

    こんな暴力以上の暴力の描写のオンパレードが直木賞で…いいの…?笑
    とくに序盤、読みながら何度も顔をしかめた。あまりに暴力描写がすぎる。笑

    「死因は失血性ショック死だったが、おそらくその前に恐怖と苦痛で、老作家の心臓は止まったはずだった。おそらくは。調べようにも心臓がなかった。えぐりだされて、胸に穴が空いていた。」(70ページ)

    テスカトリポカとは、「煙を吐く鏡」という意味の、それはそれは恐ろしいアステカの神様の名前だった。そしてーーー。

    恐ろしい描写が多いのは、決して娯楽のパフォーマンスではなくて、血や心臓を神に捧げることでこの世界の安寧を祈る、アステカの儀式が由来していた。

    序盤、顔をしかめながら読んでいたはずなのに、いつの間にかすんなりと「暴力描写」を受け入れている自分に気づく。
    「それ」は、暴力ではなく、崇高な信仰のように思えたからなのかもしれない。
    後半、心臓を摘出するシーンは、なんだか神聖なる儀式のように感じてしまった。


    いろいろな組織と、いろいろな人物が絡み合っていた。
    人物には本名と、「あだな」がついており、正直1度読んだだけではすべてを把握しきれなかった。

    児童心臓売買のくだりは興味深く読み進められた。
    尋常じゃないほどの屈強な体だが、天涯孤独で、精神が幼く、ひどく純朴に育ってしまったコシモのたどってきた人生については、同情というか、切なさ、侘しさを感じた。
    環境が少しでも違えば、コシモは優秀なバスケットボール選手にも、素敵な職人にもなれたはず…。

    こんなに暴力描写のオンパレードなのに、読後感は切なさと侘しさでいっぱいになる不思議。

    クライマックスの時期は2021年8月で、今よりほんの少しだけ先の未来で、臨場感があった。
    この本の世界を1番味わえる旬は、まさにいまだと思う。
    いまの時期に読めてよかった。

  • 物語と時間をめぐる究・極対談――佐藤究×京極夏彦 特別公開! | カドブン
    https://kadobun.jp/feature/talks/bxo1s6yh0o0g.html

    テスカトリポカ 佐藤 究:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322003000419

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      『テスカトリポカ』 | 英国アート生活
      http://loki-art.jugem.jp/?eid=2059
      『テスカトリポカ』 | 英国アート生活
      http://loki-art.jugem.jp/?eid=2059
      2021/06/14
  • オリンピックのために来日、失踪したウガンダの選手が
    一昨日四日市で発見保護され、昨日無事帰国の途についたということで、安心しました。
    この数日、暇さえあればこの『テスカトリポカ』を読んでいた私、
    「悪い人に言葉巧みに誘われ利用されるのではないか」と心配してしまったので。

    まあ、そんなことは滅多にありませんね。
    これはフィクションです。
    川崎はとても平和な街ですよ。
    (たとえば溝口緑地には島崎藤村が書いた国木田独歩碑があり
    昼間は保育園の子供たちが遊んでいます)

    でも膨大な資料を基に作られ、まるでノンフィクションのようなこの作品、一冊書き終えるのに物凄い労力を費やしたのでしょう。
    一週間前に発表された直木賞、そういう部分が評価されたように思えてなりません。

    今回私としては珍しく候補作を二冊読んでいました。
    『星落ちて、なお』『スモールワールズ』
    どちらも受賞するといいなと思っていました。

    『テスカトリポカ』は「ところどころ滅茶苦茶面白い」
    特に2021年8月のところなんて、
    「いままで頑張って良かった」と思いました。

    頑張った……そう、すごい労力を費やしました。
    「じかんがほんをよんでいる」
    コシモの哲学を借りれば。

    直木賞受賞作でなければ、絶対読まなかったでしょう。
    もし私が選考委員だったら、やはり
    『星落ちて、なお』『スモールワールズ』を選んだと思います。

    今は早々と夏休みの宿題を終えたみたいな
    (子どもの頃は8月末、下手すると9月に終了させていた私)
    達成感はあります。

  • こんなに厚くて内容もハードで大丈夫か私?と思ったのも束の間。読み始めたらどんどん引き込まれていった。少し前に麻薬カルテルの話を読んでそういう世界のことが少しは理解できていたせいか。また登場人物が生育歴なようなものから描かれていて感情移入しやすかった。残酷な描写が多いのにアステカ儀式の重要性が前提にあるせいか暴力性を感じさせないから不思議な感じでした。とても興味深く読みました。

  • ものすごくタフな作品。とても丁寧で細かな筆致に驚かされた。登場人物のセリフは比較的少ないが、心理描写が豊富なので引き込まれた感がある。内容は極めて暗黒小説っぽいのだがコシモの純粋さが淀みそうな空気を吹き飛ばしてくれて読後感はそれほど悪くはない。ただアステカの宗教が難しく噛み砕ききれない部分はある。

  • 冒頭の「艶やかな黒髪、黒曜石のような目の少女」に一瞬で魅せられ、あっという間に読んでしまった。でも読む人をかなり選ぶ本だと思われる。

    こないだ読んだ村上龍の「半島を出よ」と同じくらい面白かった。(現実的な怖さは向こうのほうが上だった。)

    前半は外国のシーンがメインなので、怖いながらも「どこか遠い国でのお話」と心の距離を保って読むことができた。後半、舞台が日本になったあたりから、え?そんなに上手く行く?とリアリティーのなさが目につくようになり、少し白けてしまった。あんなに体の大きい子が街の中をうろうろして警察や近所の人が放っておくわけないし。いくら宗教団体とはいえあんなに大規模な施設を簡単に作れるわけないし。日本なめんな。

    と、そうやって冷静に分析して「ゆえに、ありえない。」と恐怖を抑え込める程度ではあった。私が求めているのは、どんなに自分を納得させようとしても納得しきれない、現実に起こりうるかもしれないという恐怖で夜中も目が覚め、心が締め上げられるような感覚。そういう小説を読みたいんだ!と、そのことに気付いただけでも儲けものだったのかもしれない。この小説も読み手によってはそういう力を孕んでいるであろう。

    心臓血管外科医の表現はとても良かった。「頭蓋骨」をちゃんと「とうがいこつ」と仮名が振ってあったりするところも良かった。「生物学的感傷性(バイオセンチメンタリティー)」という表現は私には初見だが、なるほど、と思わされた。外科医ではないが同業者から見て、心情も、技術内容も、了解可能であった。

    「ナルコ•イ•メディコ」の結末が悲しかった。「調理師と断頭台」でもなく、最後は「パブロ•イ•コシモ」だったんだなあ。聖書を読むパブロ。そこにほんの少し救われた。

    南米のことや古代文明のことなどは全く知らず、スペイン語もわからないけれど、仮名を振ってくれているおかげで、まるで二重の言語を理解しているような、その文明のことをより理解できるような、不思議でお得な感覚を味わえた。煙を吐く鏡。

    ***

    全然関係のない話だが、最後に一瞬登場する「小児性愛死体愛好者」という言葉を見て、朝井リョウの「正欲」で描きたかったことはこういうこと?と思った。いや、違うかな。今でも何を対象とした「性欲」ならあの話にぴたりと当てはまるのか、自分の中で納得ができなくて、理解できなくて、ずっと気になっている。この小説の中にも、他人からは理解されないさまざまな人間の欲の形が描かれていた。人間は欲深い。

  • #佐藤究 #テスカトリポカ 読了。
    これはすごい。2021年、絶対読むべき一冊だと思います。
    圧倒的な暴力描写が、呪術めいた語り口によっていつしか神秘的な儀式に置き換えられていく様は、それこそドラッグのような没入感を感じます。やったことはありませんが…。
    しかし、これほどまでに集中して読み切った本はしばらくなかったので、久々に読書に耽溺しました。
    簡単に内容として。
    日本に生まれたメキシコ人とのハーフである主人公が、ドラッグカルテルのボスと数奇な運命を経て出会い、そしてアステカの神秘的な教義のもとに結びついた"ファミリア"とともにドラッグに代わる新たなビジネスに関わっていく。やがてアステカの神々。特に表題のテスカトリポカにささげられた心臓が、象徴として物語の中心となっていきます。
    読後感は、殺人などのグロテスクなはずのシーンが、そのアステカの神々の物語と合わさることによりいつしか儀式として崇高な行為のように思えてくるのが不思議でした。
    乱暴に切り開かれた胸郭から、えぐり取られた心臓を掲げる。それがまるで太陽に照らされて輝くルビーの大玉のように見える描写が印象的であり、倫理観を抜きにすれば、人がいけにえにささげられる根源的な意味。なぜ古代にそのような行為が行われてきたかの意義が見いだせたような気がするそんな一冊でした。
    漫画「ヨルムンガンド」や「デストロ246」が好きな人には特におすすめ。

  • えげつないのに、純粋で神秘的な物語。
    二律背反してそうなこの2つの要素が絶妙にマッチしてる世界観、、、
    新しい世界を垣間見えた気がしました。
    これだから読書はやめられない!

  • これは私の心構えの問題なのですが、正直読後「ようやく読み終えた」という達成感よりかは疲労感を強めに感じました。
    作中、内臓を大いに感じることができますが、私の内臓にもなかなか響きました。
    分厚いです。話が。
    文章も丁寧で、登場人物も多く、また各人物に対しての情報も多く、気軽に読み始めた私は縦軸と横軸の整理が大変でした。
    ただこの方の場合、乱雑に点があって繋げていくというより、綺麗に縦軸と横軸を引いていって交差点が点滅する順番も決めているのだろうなと思うように最後までまとまっていて、この本の厚みよりも厚い話をよくまとめたなという印象が強いです。

  • これはすごい。文句なしの星5。
    残虐で暴力的、そして麻薬が出てきたりと、かなりアングラな世界。アングラなんだけど、どこか神秘的。それはきっと、私たちとはほぼ無縁の、南米はアステカの儀式が根底にあるから。だから、きっとどこか神秘的で魅力的に感じるんだろう。
    ラストシーンは、それまでのあれこれが目まぐるしく私の中を駆け回り、思わず涙ぐんでしまった。
    もう一度言うが、これはすごい。ボリュームも熱量もあるけど、是非色んな人に読んで欲しい。

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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年に佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。2018年、受賞第一作の『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞および第39回吉川英治文学新人賞のダブル受賞を果たす。2021年『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞を受賞し、第165回直木賞候補作になる。

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